2000.6
新世紀の社会福祉とは2〜利用者主体の視点から

インタビュー
これまでの福祉サービスの議論はともすれば、法律、制度、お金が中心に考えられ、実際に福祉サービスを利用する、提供するのが人間であると考える部分が少なかった。社会福祉事業者法から社会福祉法にしたのは、事業者中心の考えから利用者中心への転換を意図している。事業、利用者の利益の保護、市町村の地域福祉の有り様を規定しているため、事業法という名称は不適切である。
社会福祉法の利用者の利益の保護では、
1.サービス提供者の情報開示
2.福祉サービス利用の援助制度(地域福祉権利擁護事業、成年後見制度)
3.苦情解決(施設内・社協による運営適正化委員会)
4.第三者評価がある。

副田あけみ「利用者としての主体性と責任」
介護保険によって自治体行政当局と利用者との関係は変わった。制度以前の、個々のサービス適用の要否、サービス内容、提供組織、費用負担のすべてを一方的に決めていた。しかし、制度施行後は、要介護認定、費用負担の決定を行う当局と定められた範囲であるが、サービスの内容、提供組織を選択、自己決定できるものになった。要介護認定に対しても不服申し立てを行う権利も法的に認められた。しかし、自己決定や選択がなされるだけの情報や判断能力を考慮しているだろうか。こうしたことをサポートするのは在宅介護支援センターの即員や介護相談協力員としての民生委員であるが、一般の人々の協力も必要である。また、介護認定後のケアプランも作成を自分で行おうとすれば膨大な手間暇がかかり、ケアマネに依頼する方が負担が少ない。しかし、ケアマネに任せきりにすると自分の生活主体としての要望がないがしろにされがちになる。〜自己作成はかなりの負担であるこの負担の軽減なども行政は図る必要がある。
利用者は選択・交渉・拒否によってサービス提供組織に対する権限を行使できる。しかし、情報や知識の違いや、サービスの慢性的な不足、地域によっては寡占状態におかれており、実際に決して対等な立場で契約するという関係にならない。選択の余地がないどころか、提供組織が利用者を選択する可能性すらある。ケアマネはプランを立てる際には利用者の立場に立つことが求められているが、あくまでも努力義務であり実効性に欠けている。〜適正な制度運用のモニターという市民としての責任を果たすことが必要である。
役割喪失や能力喪失を体験していく老後においてその生活の有り様を自分自身で設計していこうという能力を維持・発展させていく方法の一つとして、中高年層の人々の相互支援グループを地域に作ることが考えられる。そのグループの中で共通する生活上の問題や課題・ニーズを共有する、ソーシャルアクションなどを起こすなどで組織化し、声を挙げていくことが必要である。

二文字理明「スウェーデンにおける利用者主体の福祉サービス」
ノーマライゼーションの思想の原型は1940年に政治の舞台に登場していた。しかし、当時は障害者の雇用であって、知的障害者へサービスではなかった。しかし、デンマークのバンク−ミッケルセン、スウェーデンのニリエ、ブラッとゴードラに代表されるこの思想が一種の時代精神となって社会に共有される。LSS(人間としての尊厳にふさわしいケアを受ける権利)の法的な整備の下で施設解体が実施され、1990年代に施設解体という到達点をみる。グループホームへの転換である。
しかし、インテグレーションとしてすべての人々を対象にしてきたのか。強制不妊手術の実施など福祉社会の基礎が根底からゆらいでもいる
成年後見制度では、すでに実施効力を持ち得ている。その際LL文書(やさしい文書表記版)による広報などが行われており誰のためのサービスなのかが明確である。

キーワード
成年後見制度
苦情解決
第三者評価
オンブスマン

2005.12.20

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