2000. 2
求められる保育サービス〜地域の子育て支援の中核を目指す

本号は、保育制度の概説としては過不足無く書かれている。よって、私のようにあまり詳しくない者にとっても分かりやすく、かつわりと読み応えのある者であった。

網野武博「多様化する保育サービスの現状と課題」
子育ての社会化は、保育に関する公的責任、社会的責任をどう果たすかという課題共に、私的責任つまり親の子育てをどう果たすかという根本的な課題とも深く関わるものである。保育サービスの多様化は、従来の公的責任の高師による子育ての社会化と深く関わる一方で、親自身も健やかに子どもを育てる役割をよりはたしていくことと深く結びついている。
保育所の社会的責任は、むしろ児童福祉法が制定された当初の方が分かり易かった。しかし間もなく行政の判断から幼稚園と区別され、保育に欠けると判断された児童のみが入所する施設と変容していく。社会通念上、専業主婦、母性神話、3歳児神話(3歳まで家庭の手で育てるべき)1970年代以降、乳児保育は特別保育として徐々に進められたがそのニーズを遙かに下回る対応が長く続いた。
しかし、少子化がすすみ、健やかに子供を産み育てる環境づくりが進展する中で、乳児保育は多様化する保育ニーズの一番手として重視され、急激に進んだ。そして、児童福祉法の改正が平成10年4月から施行され、乳児保育の一般化が成されるようになった。また、上述の神話も根拠がないという論を展開するようになる。また、平成12年度から社会福祉法人以外の経営主体の保育事業の参入が実施に移される。
とはいえ、母性神話などが根拠として無くなったとしても、家庭養育と社会的保育の均衡ある施策やサービスが必要である。母親の就労いかんに関わらず子育て支援体制の強化と就労している場合の育児休業の普及は必要である。〜さらにいうなら、働かないという選択肢を選んだ女性に対する施策は、働いて預けている女性と同等の施策が求められる。
保育サービスとは、親子の権利擁護の為に存在している。従来は措置制度のもとで、保護的な視点で権利擁護を行ってきたが、これからは、保護は当たり前のことで、さらに主体性を尊重した権利擁護サービスとなることが必要である。

菊地繁信「福祉制度改革で、保育サービスは変わったか」
現行保育制度の限界について


メモ
もっともベビーホテルなどが社会問題となっていたこと。乳児の窒息死事件などが明るみに出たことから、行政が付与した乳児保育、一時保育、夜間保育である。つまり、行政のコントロールを必要とした事によるサービスの拡大〜公的責任の拡大である。
また、現在でこそ男女共同参画社会が謳われるようになっているが、これなども政策誘導としての側面が大きく影響されている。母性神話、3歳児神話、専業主婦という言説もまた政策誘導の賜物であったことを考えれば、今後保育のあり方も大きく政策面では変わってくるだろう。しかし、先に述べた、親と子供の権利擁護、拡充された権利は縮小されることは許されない。ただし、建前としては…。
また、措置制度から契約制度に変わったとはいえ、サービス提供主体は従来通り市町村に限られており、保育所が利用者に対し直接責任を負っているかどうか明確では無いという問題点も指摘されている。また、保育士の待遇に関しても著しく流動化しており、専門性を付与するには待遇が保障されていないという問題(伊藤周平)もある。サービスの拡充と共に労働者の保障も行わないことには質の向上はあり得ない。
更にいうなら、少子化について、現在においては、すでに少子化は折り込み済みとして施策を展開する必要がある。
(2005.1.7)

ホームインデックス