1998.10
利用者本位のサービスの創造

座談会では
基礎構造改革の視点〜利用者本位について、それは何かについて論じている。これも手垢の付いたロジックなので、あえて述べない。
内容を端的に言えば、介護保険制度が先行して始まった基礎構造改革。後に、障害者向けの支援制度→障害者自立支援と続き、介護保険も幾たびかの改正がみられている。当初、介護保険下で、低所得者の利用料の支払いが出来ないのではないかといった懸念は払拭されている。
また、昨今言われている福祉の人材の流出と不足〜賃金の低さは問題視されておらず、サービスの質は職員の質にかかっていると脳天気なことを言っている(正論には違いないけど)。まぁ、1998年と言えば、まだ不況真っ盛りで、人材〜他業種のリストラからの一時しのぎは、いっぱいいたからね。
その他、権利擁護、成年後見制度、オンブスマン制度の紹介などを述べている。
オンブスマンは、後でも述べているけど、施設内で完結しており、地域に開かれた形で代弁されていないことが問題となっている。とはいえ、オンブスマン導入により、チェック体制、基準作り、ケアの質の向上、目標が出来るという利点がある。
また、市場で言うところの効率(コスト論)では、福祉は測れず、ニーズ充足率、あるいは援助目標達成率のようなもの〜福祉ベースの効率論の確立が必要であると述べている。

保育所の変遷に関する論文では、
歴史的には、お世話をして上げるとか、面倒をみると言った供給側の論理が強かったこと。親の育児責任が強かったため、例えば長時間保育によって受ける児童の心理的影響などは、悪影響になりがちであると言った論調が多かった。時代が流れ、保育所の社会的役割の一つに、従来の指針では母親に変わって保育するであったが、『家庭養育を補完する』へ変遷する。このことから、子供中心から、子供の健全な成長と家庭の支援を謳うことになる。
それに伴って、従来親が就労しているか、親族関係に急病が出たりする以外は利用できなかった、「一時保育」がリニューアルされ、誰もが気軽に利用できるようになった。
また、育児相談や子育て支援事業などは、専ら保育所を利用していない家庭を対象に「保育所」が行っているが、つい近年まではこうした未就労の世帯の児童を保育することは、行政の極めて強い規制があり、否認されていた。などの紹介が興味深かった。

この他、重心の施設のサービス評価基準の策定(東京)とか湘南福祉ネットワーク・オンブスマンの取り組みなどの紹介がある。
オンブスマンとは、そもそもスウェーデン語で、一般的には代理人、弁護人、護民官などと訳されている。しかしその定義や意味については、世界的にみても多義的であり、特にわが国では、オンブスマンという言葉を使用した活動が様々な形態で生み出されており、整理が必要な時期に来ている。
はじめにオンブスマンが立ち上がったときは、利用者の権利擁護と言うよりも施設管理者の諮問期間的な位置づけで始まっている。そのため職員にはオンブスマンの役割が、管理者側による査定・人事考課と受け止められる場合がある。または、施設の苦情解決的に意味合いで、マイナス面の指摘に終始しがちで、その結果、職員が萎縮し、自主性・主体性が阻害され、職場が活性化しない。あるいは、個別施設の自己完結的な取り組みになり、地域レベルの実践に広がっていかないなどの血管があったとされる。
サービス評価では、外部の評価基準に照らし合わせて、Aの評価基準になるためには、現在の施設設置基準による予算措置だけでは大変難しい。それでも、施設の権利侵害、モラルの問題が明るみになり、社会の厳しい見方が出始める中で、福祉に携わる私たち自身が真摯に評価に向き合い、着実に、誠実に事業を推進することで、逆に予算的な不備や行政への要望を明らかにして行くべきだと考える。

2007.4.2

ホームインデックス