1997.8
福祉実践におけるスーパービジョンの現状と課題

福祉実践におけるスーパービジョンの課題

スーパービジョンとは何か
仕事の様子を見守りながら、その成果が所定の水準に達しているかなど、室を高めるために、仕事そのものよりは仕事をしている人間に対して向けられる、指導監督的、教育的、支援的活動を指して広く用いられている。
福祉の場合は、福祉サービスの展開に不可欠で、専門的SWを育ているために有効な手段。欧米におけるSWの養成の歴史は、スーパーバイザーのもとで積まれた実習を含む専門的訓練プログラム抜きには考えられない。

対人援助サービスにおけるスーパービジョンの必要性
1.対人援助サービスにおける援助目標の設定に当たって客観性を保証する。
日常的な生活課題に関わる援助目標の過程に個人の限られた生活体験からの判断に入り込まないように絶えず自己点検を行うこと。複数の人間の判断を含めることで過ちを出来るだけ少なくする。
2.望ましい援助関係の形成と維持のために
対人援助サービスでは、展開する人間関係によって権利侵害や乱用が双方で起こりうる。そうしたトラブルに介入できるスーパーバイザーの存在は大きい。予防するための学習会など間接的に援助関係をサポートできる。
3.福祉サービスの社会的公平性の担保として
様々な福祉サービスの提供はときに、他機関に頼ったり、他の制度などを援用したりすることになる。そうしたときに、サービスが偏ったりしないように、スーパーバイザーによる最良により調整などが行われることが望ましいとされる。
4.職場全体におけるスタッフ育成計画のために
多様なサービスを求められる福祉の現在、新しいチームを編成したり、サービスステーションを発足させたりする必要が出てくる。新しいニーズにも対応して行かなければならない。それらを見通し、様々な特技を磨いて貢献できるスタッフを、計画的に育てていかなけれならないことがある。

スーパービジョンの現状をめぐって
良い先輩の助言によって目を開かせられたり、適切な指示によって専門職として自分を育てられたという体験は多いのに、それらがフォーマルなスーパービジョンを通じて獲得された例は、本当に少ないのが現状である。

本来その人の人格を充分に認め、その判断における主体的な「ことの運び」の事実を評価することと少しも矛盾することなしに、「仕事のしかた」の改善を求めることは出来るはずである。同時にまた仕事の仕方として申し分がなくても、それが本人の大変な心理的負担感や、極度の緊張や、自己の価値観との矛盾の上に成り立っているならば、そこを何とかしなければ、仕事の中でその人が充分に生きているとは言えない。
自己覚知に支えられた、自然な暖かさの伝達、それまでクライエントの生活の中に少なかった、自立を助ける人間関係の提供者としてのふるまい、直面している問題の、合理的現実的取り扱いにおけるモデルとしての自己の活用、といった課題が存在する。スーパービジョンは、そうした複雑な援助課題に対処するワーカーを支え、教育し、「スーパーバイザーから良い援助を受けた」体験を通じて「クライエントへの良い援助のあり方」を学び取る場となるのである。

スーパービジョン充実の要請
現代では、新人をどのように教育し、どのように配置してサービスの質を高めるか。また、次々に要請される新しい考え方の消化、アセスメントやケアプランの導入と、継続的な教育・訓練の課題は多く、それらを施設長一人で処理することは出来なくなっている。施設経営の業務も一層複雑に、専門的になって、施設長の業務負担も増大している。その中でいわば中堅職員、指導的職員を養成し、その人々が新人やボランティア、実習生達のスーパービジョンを担えるようにするということが、切実に求められている。
援助技術、生活問題分析のための知識と技術、社会福祉政策・制度、行政と地域の実情に関する情報、そして高い職業倫理、関連職種への尊敬と、協力のための組織者としての力等々総合的に学ぶ道を求めている人が多い。

スーパービジョンの明日を目指して
1.仕事と人間を分離しつつ、つないでみる姿勢。それには仕事上の人間的な悩みを率直に語り合い、共有する機会を作る工夫など
2.
ケースレビュー。それぞれの役割におうじ、順次担当者が説明していくというもの。メンバー全員(スーパーバザーも含む)は、特別なコメントを付けることなくただ聞くというミーティング。一切の指導的雰囲気を排除した援助活動に関して考えるという機会の提供という意義を持つ。
3.
2の上に定期的スーパービジョンを組み込む。積み重ねる。また、外部の専門家を導入した専門SWのスーパービジョンの実施から始める方が良いという職場もある。
4
.実習などの教育機関の系統的なプログラムの研究など

座談会より
人を個別化として捉え、いわゆる民主的に物事を進めるべきだという考え方が、かえって現場のスーパーバイザーを苦しめている点である。多数決で援助方針を決めるのがいいチームであって、いわば権限によるリーダーシップはダメだと思われている。
かつて日本にスーパービジョンが導入されたときには、よりよいサービス提供のためにいわば援助者の人格を変えることがスーパービジョンだと捉えられてきた。
スーパービジョンでは、バイジーもバイザーも相互依存しながら成長しあうのが望ましい。

その他

実践レポート
養護施設におけるスーパービジョンの実際と課題

障害児施設におけるスーパービジョンの実際と課題
じつは、ここの「めばえ学園」HP開設しています。

ケースカンファレンスの場を用いてのスーパービジョン
投げかける存在、情にほだされない、飽くなきケースに対する好奇心などスーパーバイザーの心構えなど

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