1997.5
福祉経営再考

社会福祉法人経営の現状と課題

「施設整備業務などの再点検のための調査委員会 第1次報告書」
を中心に社会福祉法人経営と課題について。−彩グループによる厚生省との癒着や献金について

今回の事件は、社会福祉施設の整備そのものが、補助金や施策融資形の公費がかなりのウエイトを占めている仕組みを悪用された。加えて、厚生省から出向していた県の担当課長が関与して、次から次へと特別養護老人ホームなどの認可を受け、施設建設に伴ったいわゆる「丸投げ」という手法を通じて多額の利権が発生したという、ある意味ではきわめて特異な事件と整理する。


座談会「今、社会福祉法人経営に求められるもの」

措置制度について
社会福祉法人というものは、護送船団方式で、施設整備に公費が大変はいる。足りない分は社会福祉・医療事業団その他の公的金融から借りられる。運営コストに関しては行政の措置委託費額に・県ないし市に補填をされて、一部の費用徴収はあるに施与原則的には公費で賄われている。利用者も行政が選んで施設に提供すると言うことで、俗に「措置箱」施設などという言葉もある。しかし、それらは、公的な水準維持という点では一定の役割を果たしてきたが、これから問われてくる福祉サービスの質の向上、利用者の選択性などを考えていくと非常に窮屈で、経営をもう少し弾力化した方がいい。

必要以上のサービスを措置制度の下でやろうとすれば、余計なことをするなと行政から言われる(公共財産である、行政の指導監査など)し、地域住民も障害者や老人に関してのクレームが来ることがある。(ノーマライゼーションの思想の下、街の中に作ろうとすれば、近隣住民から環境(騒音、ゴミ、車の問題など)を盾にした障害者への強い排他運動が起こることは往々にしてある)

理事について
連帯責任だけが強くて、何かあったときには非常に重い責任を負わされるにもかかわらず、報酬も充分にもらえないような状態になっている。なり手がなかなか見つからず、理事長になった人間が、学校時代の友人や知人に頼んでいるのが実態である。−根本的な見直しが必要。
具体的な問題では、理事機能の活性化は、最低必要な条件で、そのためには、それだけの財政的な保証も必要になってくると思うし、理事長の専任制とか理事の役割分担など、抜本的に替えていかないといけない。

これから
利益を上げることが問題なのではなく、上がった利益をどう社会福祉法人の経営基盤を強化すると共に住民に還元していくかと言うことがある。また、様々なサービス供給主体によるサービスが増えていく中で、サービス水準をリードしていくことが社会福祉法人の役割である。

四分の三の補助金といっても四分の一の自己資金分を、民間篤志家に集めさせる時代は終わっており、むしろ良いサービスをしているのだから四分の一分は減価償却できるようにする必要がある
(運営費の経費を節約したりするのは、あってはならないこととしていままでで処理されてきた。貯めたお金を建設費や借金の返済にするという経営努力は出来ないこととしてきた。措置制度上)
社会福祉法人の借入金返済の過重な負担にあって、これを軽減して、健全な社会福祉法人を育成していくことが監査強化より優先して行政が取り組まないといけないことである。
法人の経営努力で出来た余剰金と怠慢による余剰金が一緒くたになっている。そこら辺の指針や指導が今後必要になる。

行政では、エンゼルプランや、障害者プランなど長期的な展望に立った計画が立てられている。しかしながら、受け皿の社会福祉法人には単年度で全部処理して、予算があまったら全部使えないと言うのはおかしい。法人のやはり長期戦略をもって、少なくとも地域にどう還元させるか、行政も施設にそういう戦略を持たせるように働きかけないといけない。

メモ
減価償却費が認められていない。複式簿記も認められない。寄付もダメ(誤解を招くという理由)。
施設の建設費の補助金や施設入所者の措置費の国の基準は「最低線」として設定されているはずなのに、いつの間にか「最高限度」と同意語のように扱われてきたことが問題。
今後権利意識の強い人たちが高齢者になった場合、そのような水準では無理である。経営者がいかに優れた理念をもっていても財源が脆弱であれば、利用者は安心できない。しかし、大企業をバックにしたところでは、責任者は企業から送り込まれる。どちらかといえば定年間近の第二の職場的な位置づけである。よって、長期的に止まることはないので、活気的な施設は育たない。また、責任者は素人であるから、施設運営に「経験者」を得ようとする。その経験者は往々にして行政を退職したような人々であることが多く見受けられる。彼らは確かに組織や制度に関わる知識は豊富であるが、処遇はもちろん、福祉とは何かといった点でも必ずしも理念の理解や知識が充分であるとはいえない。むしろ、行政職を退いて、第二の職場として、老後を過ごそう、というひとや腰掛け的に数年だけの職場と安易に考えているような場合がほとんどである。そのように、素人の経営者と行政経験者によって始められる施設が活気ある施設になるはずがない。彼らの発想は「国の基準」「既成の方式」からはみ出すことがなく、「最低線で当たり前」と思っています。そうすると、当然処遇を高める努力には、冷淡と言うことになるわけです。

資料
「施設整備業務などの再点検のための調査委員会 第一次報告書について」など

ホームインデックス