1997.12
民生委員・児童委員の新たな展開

座談会『新・強化方策』
民生委員制度の源といわれる済世顧問制度が岡山で発足し、今年で80周年を迎える。また、来年は、民生委員法制定50周年に当たる。この制度が今日まで受け継がれてきた背景には、生活者の感覚で、直接地域住民とのふれあいや人間関係を基本にしてきたからである。
戦後の混乱期には、生活保護世帯への援助が民生委員の活動基盤であり、行政協力機関としての役割が大きいものであった。気軽に相談できるのが民生委員であり、生活福祉資金の貸し付けなども当時のそうした中から生まれたものであった、
近年になり、福祉行政が拡充し、福祉サービスも増大する。低所得者への経済的援助から、むしろ高齢者や障害者への相談や対人サービスへ比重が増す。
民生委員の性格は自主性にあるが、どちらかというと委嘱され、頼まれているという意識がまだ強い。公認の世話役として認知されているのだから、積極的な概念で捉え直すことが出来るはず。
新・強化方策では
活動の重点としては、個別援助活動の強化、在宅支援を進めるネットワークづくり、福祉の街づくり、子育て環境の整備・児童委員活動の推進、協同活動の積極的展開、民児協の機能強化をあげている。

住民の声を身近な市町村などに伝えていく「意見具申」の活動を積極的にしてほしい。
また、民間レベルでの様々なネットワークの橋渡しとして(障害者を持つ親、高齢者団体、近隣など)活躍することが求められる。そうした中で、行政との関わりの明確化など、民生委員が活動しやすい環境整備が必要となる。
情報の保護との関連で、民生委員は、住民票を詳しく知ることが出来ない、行政がつかんでいる要保護者の状態も分からないなどあり、民生委員が協力機関であるなら、もっと行政に協力してほしいなどの意見がある。
ネットワークに関連して、民生委員同士のネットワークの形成をもって、ここの活動の推進を図っていくことがまた必要である。

民生委員は世界でただ一つ、日本にしかない制度であり、その働きが世界の一つのモデルとして発信することが大事である。

民生委員・児童委員の概要
民生委員は、「民生委員法」によってその設置が定められ、「児童福祉法第12条3項」によって、同時に「児童委員」を兼ねている。従って、正確には「民生委員・児童委員」という呼称である。
民生委員は厚生大臣によって委嘱が行われ、3年に一度改選が行われる。(ただし再選もある)各地にくまなく設置されている民生委員は、その一人一人が必ず定められた「担当区域」を持ち、この区域を基盤に活動を行っている。
民生委員法や児童福祉法の他に、生活保護法をはじめとする社会福祉関係諸法に民生委員の行政協力事項が規定されている。これらの法律や通知、要綱などに基づいて行われる活動がいわゆる行政協力活動と呼ばれるものである。

民生委員・児童委員活動の歴史

論文より
民生委員は、補助機関から協力機関に変更になったが、気分として、戦前の制度などから、地域社会の名望家、有力者、官業協力者としての認識が継承されてきたと言っても過言ではないであろう。しかも、この気分は今日においてもなお関係者の中に、顕在的にか潜在的にか、「よき時代」として継承されているように思われる。
すでに、保育所の利用が利用者による施設選択を前提にする申請主義に改められている今日、民生委員の制度や活動においても名望家的、家父長主義的な気分を払拭するような思い切った改革が必要とされている、
提言として
従来の福祉行政にたいする協力機関という漠然とした位置づけのあり方を規定上より最寄り明確理奈ものに改めることが必要である。すなわち、ややもすれば社会福祉供給体制の末端に位置する機関として理解されるような位置づけのあり方を再検討し、地域社会の中で住民サイドに立つ独自の立場から、社会福祉供給機関と地域住民を媒介にする相対的に独自機関としての正確を明確化することが必要である。
この他にも、リーチアウトによる福祉問題の掘り起こしや、申請への意欲などの提言があった。

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