1997.10
ボランティア・ NPO活動への資金支援のあり方を探る

座談会

公費を補う民間資金の時代(昭和40〜50年代)
福祉関係に助成する民間財団は創業者を記念して作った個人的な色彩のものがいくつかある程度で、主なものは、共同募金、年賀葉書の配分、船舶や自転車などの公営競技の助成などであった。また、助成側は社会福祉法人などの法人にしか助成をせず、公費の不足部分を民間助成が補う役回りであったこと。それも、助成は行政と相談して行うなど、民間助成を公がコントロールする形であった。

多様な福祉活動の広がりと助成団体の成立期(昭和60〜平成初頭)
有償ボランティアの台頭、互酬性による、会費の出し合いによる運営、企業による社会貢献や活動助成の意義が徐々に認識されてくる。そして、一部の企業による独創的なNPOやボランティアに対して助成を試みるようになる。
しかし、公的助成も民間助成も人件費に対する助成などは原則として認められず、物件購入費などが中心であった。また、平成初頭にかけて、高齢者政策などから、大口の助成団体の設立などが起こる。また、共同募金などの配分の対象も、ボランティアを視野に入れるようになってくる。

現時点では、行く末は分からないが、市民活動に法人格を与えることを含めた市民活動法案が衆議院を通過し、継続審議となっている。ボランティア・ NPO活動を支援し広げていくための社会制度、国民意識、具体的な手法など、いろいろなレベルの問題が、改めて再点検を必要とする時期が来ており、その中で活動への資金支援も大きなテーマの一つとなっている。

活動の創成期には、方向付けや情報面のサポートが大事
NPOに対する資金支援が活性化されない大きな要因は、なによりNPOに関する情報不足にある。支援団体が、NPOをしようとしても、どのNPOがその気持ちにこたえるミッション、プログラムを持つかを支援者が知ることは現状では非常に困難である。また、NPOの全体像(ミッション、プログラム)が社会的に明らかになっていない。
予算や計画などの複数年にわたる報告などが欠如していることが多い。(小さい団体ほどその傾向が顕著である)〜運営能力の向上が求められる。

助成側には厳しい経済情勢の中で工夫が求められている
財団は基本財産の運用益で運営するのが原則である。しかし、数年前は7〜8%の利回りであったものが、現在は2%台である。外積をを利用して、危険ぎりぎりで運用している場合で3〜4%である。従ってどこの財団も、過去の運用資金の半分か4分の1ほど減っているのが実状である。
財団法人が社協を通して募集を行う場合など、年度当初に年間スケジュールを示すなど仲介の手数を省く工夫が必要である。

NPOは社会の変革者として自覚と戦略を持つこと
行政や企業では出来ないこと、社会的ニーズとなっていることをすることである。利益を追求することや方によって予算を執行するだけでなく、こういうこともできますといった提案をすることにある。その結果、そのような活動に行政が意義を認めて法的な整備をしたり、先駆的な活動に資金助成をして支援することが出来るわけである。また、どうやら利益になりそうな部分は、企業が有償サービスでやろうということに結びつく。
また、ボランティアはただでなく、人手や場所など、それには十分な資金が必要であるということを訴えていくことが必要である。
また、セルフヘルプグループなどの自助団体などは、NPOとまでいかなくても恒常的な運営資金が必要となる。

現在、制度的な問題で助成団体として一番困るのが、社会保障の仕組みが昭和20年代の骨格のままであること。当時、共同募金や社会福祉法人というのは大変効果的な制度であったと思われるが、様々な社会福祉法の絡みの中で改善されていないのが実態である。
よって、社会福祉事業に助成する財団は、特定公益増進法人の資格を得られない。社会福祉法人に広範な権限を与えているからなのか、財団法人では信用が足らないのか不明であるが、社会福祉については全ての社会福祉法人に集中するように、非常に狭く法律で規定されている。

*論文より、財団法人に関する補足
NPOもボランティア団体も国の手厚い保護のもとに行われてきた。そのことが支援を市民の手から遠いものとしてきている。
社会福祉事業へ助成する財団は、研究助成や奨学金の財団ほどには、多く存在しない。たくさんの財団が参加するには、多くの人たちが福祉に関心を持つことが大切であり、金の多寡は問題ではない。
アメリカは、公開(ディスクロージャー)が徹底しているため、データが利用しやすく、法制度も整いやすい。また、個人献金が圧倒的に多いのも特徴である。
財団法人側としては、ボランティアに対して助成をしたくても、いつ消えてしまうのか分からない物に対して助成するのは、事務局としては怖いと話される。助成したからには、何年か活動してもらわないと困るという意見もある。
地方の財団にしても、公益団体が圧倒的であり、公的な資金でのバックアップで行われるにしても、資金の出し方には、ぜひ柔軟で弾力的な配慮をしてほしい。

論文より補足

NPOは、ミッションや戦略が必要であるということに関連して、
社会に合わせて自らの活動を絶えず見直したり、もっとも効果的・効率的なマネージメントを行うよう促す環境がほとんど整っていない。同様に支援団体の支援プログラムに対してもNPO、市民からの評価が行われず、それを社会の変化に合わせて改善していく圧力がほとんど働いていない。

「社会貢献マーケット」形成の重要性
支援団体や市民など、NPOをとりまく環境を緩やかなネットワークを形成し、情報の伝達や双方性、選択性や多様性を引き出し、それに応じて資金の運用やプレゼンテーションを行うというもの。そうした、情報の広場や、環境の整備を提案したり、協力したり、自らで作り上げるということ。ネットの世界では、WEBというマクロの世界の中で、プロバイダ、ユーザーという双方性や一方的なものでなく、他者との緩やかなつながりの中から、サークルや経営などその意図に応じて、様々な企画がある。うまくいっているユーザーにはスポンサーが付くこともあるし、企業のバーナーを引っ張ってくることで、資金を生み出したりするといったこともNPOでは必要になる。もっとも、NPOは、集合体であり、人による目的の徹底や、戦略の展望などを示して、成果を上げていくことが求められるので、全てが当てはまるというわけではないが。

支援団体は、複数でもかまわないし、時限的な援助であることを認めることも必要である。外部からの支援もさることながら、自助的なところで運営していけるだけの体力を付けていく工夫が求められる。

ボランティアとNPOの枠の広さについて
NPOの中には、生協活動や同窓会活動などが含まれる場合もあるし、NPOそのものも私立大学や交響楽団のような事業型NPOもあれば、限りなくボランティアに近い草の根活動型NPOもある。(政策提言型、行政監視型など)
ボランティア活動も狭い福祉ボランティア活動から環境、人権、防災など広く市民活動として社会貢献するボランティアまで広がりを見せてきているので、その境界線は果てしなく曖昧になりつつある。
市民の公益的活動は、古くは宗教団体による篤志活動、地縁型の相互扶助までさかのぼることが出来るだろうが、今日的観点からすれば、冷戦体制の終焉と福祉国家体制の揺らぎと共に台頭しつつある企業のフィランソロピーや市民公益活動を念頭に置く必要がある。

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