川は流れて

 
 仕事で相棒だったタケさんは水元公園の近くに住んでいる。裏に小川が流れていて、それが河川事業によって川底から堤防まで全部コンクリートで固められてしまった。盛り土の土手に比べれば、確かにコンクリートの川はこざっぱりして見える。だがそのことと引きかえに川の水が汚れ始めたというのだ。コンクリート化が汚れをつくったとタケさんはみている。
 自然の浄化作用は谷川でおしっこをしても十メートル流れればもう飲めるほどになってしまうといわれている。そういうことは、今まで水の力だけによるものだと思っていたがタケさんのはなしで気がついた。浄化というのは、水自身の力だけではなく川底も川岸も含めての作用によるものだったようだ。
 有明海の海苔が海水の汚れで不漁になったという。その原因を作ったのは、諫早(いさはや)湾の干拓事業にあると地元民が告発している。
 諫早湾は干潟が広大な位置を占めているので、沖合を堰きとめれば土地ができると考えたのは鎌倉時代からのはなしだったらしい。しかし三年前に湾の中央部分に鉄板を差し込んで潮受け堤防を作ってしまったのは、規模が大きいものだった。
 潮の満ち引きがあっても鉄板に阻まれて湾の遠浅に海水が往来できない。そのために海の浄化ができなくなってしまった。タケさんの小川がコンクリートで打ち固められたのとまるで同じだった。
 諫早湾というのは有明海の中では決して大きいものではない。有明海を人間の顔とすれば、エクボぐらいの大きさでしかないほどだ。そのことから専門家は、有明海の汚れと諫早湾の干拓事業との関係性に慎重な姿勢をみせている。
 しかし逆に言えば、そんな小さな湾の人工化が、もっと大きな海の汚れを招いているということに驚かされないのだろうか。
 
(2001.03)
 
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