街角の署名
道路には警察のワゴン車が常駐しており、玄関口に制服警察官が立っている。恐らくあの感じでは四六時中監視の目が光っていて、外出することなど出来ないだろう。刑務所から中野区に出たというが、そこでも、次に移った北区でも状況は同じだったに違いない。 昨年の十一月の初旬、清掃車の中で新聞を見ていたら、「上祐が金町四丁目へ」という見出しが飛び込んできた。そこが二日後の担当現場だと気づいた途端、他人事ではなくなってしまった。乗り込んできた収集職員のカーネギーに新聞を示して、「今度、寄って見ようよ」と頼んでいた。
郵政の寮。そのごみを取り終えるとカーネギーが車に乗り込んでくるのがいつものパターンだった。そこから二百メートル先を左に曲がったところに上祐が住んでいるマンションがあるらしい。助手席で渋るカーネギーをなだめて車を走らせると、曲がり角には町会のテントが張られてもう監視体制は整っているようだった。
サイレン灯のついているワゴン車の脇をゆっくりとすり抜けると、玄関口から婦人が出てきた。その人が警察官の横から顔をのぞかせて、助手席のカーネギーに朝の挨拶をしている。「ダレなの?」と聞くと、「あの人は管理人のおばちゃん。最近までここを担当をしていたから知り合いなの」。
町会では決起集会を開いて反対運動は盛り上がりをみせる。正午にはみんなが集まって、マンション前で気勢をあげてもいるらしい。「住民の意思を示さないと、そのまま居座っちゃうからな」とカーネギー。
「ところで−−−」と気になっていることをたずねてみた。「町会のテントに(署名をお願いします)と貼り紙があったけど集めた署名はどこに持っていくのだろう」。抗議のためにオウムに持っていくのだったら、気持ちが悪いと思ったからだ。
「靖国神社に持っていくんだろ」訳知り顔でカーネギーが答えた。おい、奉納してどうなる。そうしている間に、清掃車は都営住宅のごみ集積所に着いた。
(2001.01)
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