オオイヌノフグリ (大犬陰嚢)


 コバルトブルーの花は結構可愛いのに、数ある野草の中でもひときわユニークな名前を頂戴しているのが「オオイヌノフグリ」だ。明治になってから帰化が確認され、大正時代に全国に広がったヨーロッパ原産の帰化植物。花期は3〜5月。

 名前の由来については、どの本を見ても果実の形が犬の体のある部分(フグリ)によく似ているところから名付けられたものだと解説している。確かに似ていると言えば似ている。しかし、なぜイヌノフグリではなくてオオイヌノフグリになったのか? 実は日本には少し小型で花の色がピンクの「イヌノフグリ」という在来の野草がある。近年は減ってきているとかで目にする機会があまりないが、明治になって帰化したオオイヌノフグリにとっては大先輩と言うべき草である。恐らく、この草と区別するために大きいという意味を表す「オオ」を付けてオオイヌノフグリと呼んだのだろう。
 このオオイヌノフグリという名前があまり上品とは言えないので、もっと上品な名前、たとえば「ルリクワガタ」とか「オオヒョウタングサ」とか「ルリカラクサ」とかに変えようではないかと言い出した学者がいたそうだが、残念ながら一般には受け入れられなくて、結局今でもオオイヌノフグリが罷り通っているのだということだ。原産地のヨーロッパで「キャッツ・アイ」(猫の目)、あるいは「バーズ・アイ」(鳥の目)などと呼んでいるそうである。