ヒ ガ ン バ ナ  (彼岸花)


 ヒガンバナ科の多年草で、日本全土に分布する。花期は9月。

 秋の彼岸の頃に一斉に花が咲くので、「彼岸花」の名が付けられた。花期が短く、田んぼの畦や土手などを赤色で埋め尽くすように咲いたかと思うと、間もなく姿を消してしまう。名前の通り、お彼岸の頃しか見ることができない花である。私の田舎では「キツネバシ」と呼んでいたが、たぶん方言の一つである「キツネバナ」から転訛したものだと思われる。花の名前につく「キツネ」には毒という意味があり、確かにヒガンバナは根(鱗茎)に毒を持つ毒草である。「曼珠沙華」はこの花の別名で、赤い花という意味の梵語(古代インドの言語)だそうである。墓場に生えることも多いことから、「ユウレイバナ」あるいは「シビトバナ」の方言もある。
 名前の由来からは少し外れるが、私が育ったのは海辺で、漁師がヒガンバナの白い鱗茎を利用してタコ(蛸)を釣っていた。タコには白いものに絡みつく性質があって、釣具店へ行くと白い瀬戸物と針を組み合わせた仕掛けをタコ釣り用として売っている。漁師が使っていた仕掛けも基本的にはこれと同じもので、瀬戸物の代わりにヒガンバナの鱗茎を半分に切ったものを使う。毒のあるものを使って釣ったタコを食べても大丈夫なのだろうかと本気で心配したものだが、中毒を起こしたという話は聞かなかったから、たぶん大丈夫なんでしょうねえ。