ヘクソカズラ (屁糞葛)


 オオイヌノフグリに負けず劣らずのユニークな名前を頂戴しているのが「ヘクソカズラ」。アカネ科に属する日本在来のつる草で、7〜8月にかけて花を咲かせる。

 茎や葉を傷つけるとひどい悪臭が漂う。と言えば、もうこれ以上の説明はしなくても名前の由来はご想像いただけると思う。悪臭のゆえに大変ユニークな名前を頂戴したわけだが、万葉集の中にヘクソカズラの名前で登場していると言うから、その歴史は古い。それにしても万葉の貴族たちは一体どんな顔をしてヘクソカズラの和歌を詠み上げたのだろうか。名前はユニークだが花は可愛らしく、その姿を早乙女の笠に見立てた「サオトメバナ」や「サオトメカズラ」などの上品な別名も持っていて、平安貴族が歌に詠んだ気持ちも何となく分かるような気がする。他にも花の中心の姿形をお灸の痕に見立てた「ヤイトバナ」の名もあるそうだ。ヘクソカズラと花がよく似ていて海岸に生える近似種があって、こちらは可愛いらしい方の名前を頂戴して「ハマサオトメカズラ」と呼ばれている。海岸に生えるサオトメカズラというわけである。