SATRI  MC  HEAD  AMP XT-1の製作

平成 15年7月16日 更新

製作準備

先日いただいた 回路図を元にMCヘッドアンプを作ろうと部品の調達をはじめました。手持ちの部品庫を調べたら 2SA733 2SC945のコンプメリメンタリーTRが6個ずつ見つかりました。抵抗330Ωが手元にないので、追加購入が必要ですが、コンデンサー、トリマー、電源、ケースと一応そろいました。
ケースは、30年前に、テレビのステレオ、2カ国語放送を聞くために作った復調器の残骸が残っていましたので、丸洗いして流用するつもりです。切換器とLEDが残っていたので、MICMCMMの切換をやれる様にするつもりです。うまくいったら、電池駆動のMC専用イコライザー付きヘッドアンプでも作ろうと思います。本日は、電源とケース、切換表示のみ完成しました。電源は、シェナーダイオードを使いベース設置で定電圧を得るタイプの電源で、±15Vがでている様です。

                                

SATRIアンプ製作開始

SATRI UNIT一応できました。

 

SATRI MC HEAD AMP UNIT  SATRI MC HEAD AMP

  問題点の大量発生                     

とりあえず配線して特性を確認しましたが、問題点がいろいろと見つかりました。

1.プロトタイプ XT-1の問題点と対策と効果の確認

1)周波数特性が100Hz以下でレベルが下がる。
原因入力に使用していたコンデンサーの容量不足で低域が下がった。コンデンサー容量は
4.7μF
のタンタルコンデンサーでした。100Hzから下がり始め10Hz1KHzの基準より6dBレベルが下がっている。この状態で、コンデンサーを思いきりあげて100μFにしたところ、逆に+3dBがりました。コンデンサーの容量をいろいろ替えて見たところ、22μF+1.0 10μF-1.0dBとなりこの間に最適点が有る模様です。手持ちで16μFが無いのでとりあえず、22μF変更しました。高音域は500KHzまでフラットです。

2)ノイズレベルが高い

@設計図通りの性能(100Hz以下が下がる特性の時)
無信号で出力100μV程度のノイズが有ります。オペアンプで作成したヘッドアンプよりやや低い程度です。アンプに繋いでノイズのレベルを確認したところボリュームが12時の位置で目立ち始めます。(定格入力で1Wでるレベル)電源ノイズもわずかに残りますがホワイトノイズです。オペアンプで作成したヘッドアンプは、11時の位置でノイズが目立つのでやや良いレベルと判断しました。 

Aノイズ対策第1段 初段のコンデンサー変更(周波数特性補正後)
初段のコンデンサーを22μFに変更後、低音域があがり、電源ノイズが目立つようになりました。また1MHzまで特性を調べると、なんと100KHzから下がり始め600KHで−2dB下がりそれから上がりだし1MHzで+3dBになりました。これ以上は測定不能です。最終段の抵抗にコンデンサーを並列に入れるとノイズレベルが下がりましたが周波数特性も高域が落ちます。現象から見ると、1MHz以上の領域で発振していることが考えられます。発振するとゲインがあがるので、電源ノイズがあがると考えられます。50pFのスチレンコンデンサーを最終抵抗に並列に入れることで、ノイズレベルが80μV から40μVにさがりました。音質は電源ノイズ性の音です。電源OFFでも20μV有るのどこからか誘導電波でも拾っている可能性が有ります。もしかして蛍光灯かパソコンかもしれません。


残留ノイズと電圧の相関(ボリュームの位置を時計の短針の時刻で表します。)
40μ
Vでは、12時の位置からノイズが目立ちます。

80μVでは、11時の位置からノイズが目立ちます。
120μVでは、10時の位置からノイズが目立ちます。

周波数特性は、コンデンサーを入れることで高音で変化しましたが、低音の変化は有りません。25KHzまでフラット 40KHzからかなり急激に落ちます。(スチレンコンデンサー銀色はくがプラスチックのケースから見えるタイプを使用)10KHzの矩形は、少し角が取れていますが一応矩形の形状です。50pFでは少し大きいようで22から33pF程度が良いかもしれません。

Bホワイトノイズを削減する。
コンデンサーの頭を触りノイズがでる場合極性を入れかえて使用すると良好であると経験から実施して見ました。電解コンデンサーの天上にホットメルト接着剤のポリエステルのグルーを乗せて絶縁したところ、ホワイトノイズがぱたりと止まり、電源性のノイズだけになりました。 
前に作成したMCヘッドアンプにも採用しました。高域のノイズ成分が下がりホワイトノイズがピンクノイズに成りましたが、ノイズレベルは変化有りませんでした。(ノイズレベル 120μV 10時の位置からノイズが目立つ)


C外部からの誘導電波による、電源OFF時のノイズ対策
電源OFFでもノイズ(40?V)がでることから、引き回しているシールド線に外部から誘導電波がのりノイズをあげている可能性がありフェライトコアに巻き付けてシールドしました。フェライトコアを設置する事で電源OFF時のノイズは15μVになり、アンプに繋いでも問題のないレベルになりました。


D電源回路の改善
電源性のブーンというノイズを取るために電源トランスを取り除き、AC100Vの入力でDC±15VがでるIC電源を採用しました。その後の調べで、\3300 ±15v 0.17A 5wの性能であることが判りました。ノイズレベルは 電源ON40μVから50μVにあがりましたが電源性のノイズが無くなりホワイトノイズが戻って来ました。やはりトランス内蔵は無理が有るようです。トランスからの誘電ノイズ及び電源のリップルノイズが混じり込んできた様子です。電源の変更で実用域に入って来ました。


3)ゲインが10倍程度しかでない。

出力の抵抗を5KΩで10倍(20dB)10KΩ?に変更したら24倍になりましたが、ノイズレベルの上がり、電源ノイズの影響が強くなり、10時の位置からノイズが目立ちます。ゲインをあげるのは少し無理が有るようです。

ノイズ対策と高域の特性を補完して、出力の抵抗を5KΩに固定して確認しました。

LPの基準音源による SATRIMC HEAD AMP ライン出力測定結果
SATRI MC HEAD AMP+ LUXKIT RIAA AMPLINE 出力をモニターしています。基準音源は、DENONの音響特性評価用の1.0kHz 0dBの正弦波信号を使い、測定はLEADERACメーター LMV-182を使用しました。

カートリッジ名称

出力インピーダンス

SATRI出力

AUDIO TECHICA

MC-3

10Ω

0.82v

DENON      

DL-103

40Ω

0.88v

DENON

DL-303

40Ω

0.43v

ENTRE 

EC-10

10Ω

0.30v

PHILIPS 

922

4Ω

0.33v

SATIN 

M-14

40Ω

2.70v


SATINは、もともとMM入力で使用可能な高出力タイプのMCですので別として、いずれも実用域に入っています。逆にゲインをあげるとDL-103Sなどでイコライザーアンプがクリップするかもしれません。LINE出力は1.0Vが定格です。1.0Vメインアンプに入力するとアンプの定格出力がでます。ゲインは 現状の20dB(10倍)多くても26dB(20倍)程度がヘッドアンプとして限界と思われます。一番低い EC-10でも実際の視聴音量にあげるのにボリュームを11:00まであげれば充分ですからノイズレベルを下げて、ゲインは現状を維持する方向で進めます。 


4)SATRI MC HEAD AMP の高音の伸びが少ない

@第1次 音だしの感触(100Hzから低音域が下がった特性での性能)

まだしっかり聞いていませんが、ノイズレベルは、実際に音を出すとあまり気になりません。蒸気機関車のSE(サウンドエフェクト)で鳥声や遠く離れた蒸気機関車の音がノイズに埋もれることは有りませんでした。少し効果がでた?レベルが低かったアントレーのMC-10カートリッジとDENONDL-103Sのレベル差が以前ほど感じません、アントレーの出力があがった様に聞こえます。SATRI 効果?SATRIでもレベルが低いヘッドアップではかなりノイズ対策が必要であることが判りました。


A第2次音だしの感触(20Hzから25Hzまでフラット初段と終段のコンデンサー変更電源対策済)

ノイズが気になり出すレベルは、11:30になりかなり改善されました。アントレーのMC-10カートリッジの出力があがった様な気配が有ります。以前は12時まであげてやっと普通に聞こえるレベルでしたが、12時まであげると、通常2W以上ピークで20W程度音がでます。意外と邦楽器の「鼓」や「かわらけ」のピークが鋭くなんと20Wでていました。あのテラーク製作のチャイコフスキー作曲「1812年序曲」の大砲の音と同じレベルです。

蒸気機関車の音を出していたら、本物が走っているかと子供がびっくりしてのぞきに来ました。はっきり言えませんが、低音は少しこもり気味で量はたっぷりでます。高域はやや線が細く、艶やきらめき感が少し物足りない感じがします。最終段抵抗に並列で入れてあるスチロールコンデンサーが高域を少し吸収している様子です。 

しばらくこのまま聞いて必要ならば 50pFから22pFに替えてみることにします。

今まで使用していたオペアンプのヘッドアンプに比べ良くなった点

ノイズレベルが下がり静寂感がでている。前回ノイズに埋もれて聞こえなかった永平寺の梵鐘の陰に

隠れた水の音も聞こえる。越元楽(えてんらく)の静寂の中から浮かび上がる「笙(しょう)」のぞくっとする音色が無理なくでている。太鼓の音もずしんと響く低音特性はかなり低音までのびている。

少し足りない点

バイオリンなどの倍音成分が少し足りなく、線が細くて艶や輝きが少ない。

パイプオルガンの音の定位が、少しぼやけている。なっているパイプが見えない。

中央付近の上部に音がでてこない。→CDの音に感じが似ている。

音が上に抜けて行く感じが少し弱い。天井が少し低くなった様な感じ。天井桟敷から聞いているような音場である。モーツアルト「アイネクライネナハトムジーク」のストリングやヘンデル「水上の音楽」の金管楽器の艶が今ひとつでてこない。やはり50pFのスチレンコンデンサーを22pFに替える必要が有りそうである。でもノイズレベルが下がり艶が無いといってもわずかな差であるため実用上は問題ない。


BプロトタイプXT−1の最終調整

SATRI MC HEAD AMPのプロトタイプXT-1の周波数特性を調整しました。

最終段の抵抗に並列で入れたコンデンサーの容量50pFから22pFに変更しました。

20KHzで落ち始めていた特性が、32kHzまで伸び 3dB落ちる周波数が50Khzから125KHzまで伸びました。10KHzの矩形波は、見た目ではあまり変わりません。測定しているコードの影響がでているかもしれません。

ノイズレベルは50μVから70μVに上がりましたが、実際に音だしして見ると11:30から気になる点ほとんど変わらず一安心です。

SATRIHEAD AMPノイズの音質はホワイトノイズよりもやや低音によったピンクノイズ系の音です。深夜のためヘッドホーンで確認しましたが、幾分ブラスの音が輝きを取り戻しストリングスに艶がでた気がします。矩形波は見ると角やディップのくびれもなくよけいな音を付け加えた様な音は有りません。安いラジカセ等では、矩形波を入れると派手に角を出していかにも高音が伸びている様に高域の音を派手にしている物が有りますが素直な形です

X軸の単位は 1が10Hz 3が1KHz 5が100KHzと対数表示です


ノイズ対策で電源を替え、最終段のコンデンサー容量を変更することで周波数特性が変化しました。対数表示の5の100kHz以降の特性が大幅に変わりました。10Hzから50kHzまでフラットにできました。

SATRI MC HEAD AMP の最終調整後の音の確認
友人のKGさんから借用した
DENON DL-303 LSATRI MC HEAD AMP xt-1との組み合わせでいろいろなジャンルの音を出して音質を確認しました。

試聴のための準備

1)カートリッジの借用した状態

SHELL ビクターアルミ製 リード線はストレートの銅線でゴムダンパーと無しカートリッジ取り付

け部分は、スライド式のため、カートリッジとの接触面積が少ない。針先にゴミがこびりつき、接点が酸化して音がでなかった。接点をラビングコンパウンドで磨き直し、針先をアルコールで洗浄して音だし。高音域に変な音がまつわりつき、ストリングスがやたらキンキンうるさい。低音がでない。
やたら高域にシフトした音で聞くに耐えられない。
この音は、シェルが鳴いている時にでる現象です。


2)カードリッジシェルを交換

リード線をツイストペアに変更、ゴムのダンパーを追加した結果、高音のまつわり付いた音が無くなりストリングスが素直に鳴り出したが、低音がでてこないのでシェルを交換しました。

「アントレーES-12」重さ12gのアルミ切りだしシェル リード線は銀リッツ線ツイストペアで配線、ゴムダンパー無し、シェルのつまみには熱収縮チューブで防振加工してあります。このシェルの組み合わせは、過去にいろいろ評価した結果もっともカートリッジの音が素直にでる組み合わせです。(共振も吸収も有りませんが少し重いのが難点)変化した点 低域が元気にでてきた。高音域の変なまつわり付く音が無くなった。出力 10時で実用視聴領域に入るため、低出力と感じない。ここら辺がSATRI効果かもしれません。

SATRI MC HEAD AMPの試聴感想

小編成の室内楽

1)モーツアルト「アイネクライネナハトムジークス」で、バイオリン、コントラバス、チェロ

バランスよくモーツアルトのハーモニーを再現してくれます。音質的に満足

ちなみに演奏者は、ジャンフランソワ パイヤール指揮 パイヤール室内管弦楽団

ΣRATO ERX−2307

2)リュリ 「トランペット、打楽器、オーボエのためにエール」

フランス ブルボン王朝 最盛期のルイ14世に使えた宮廷音楽家 リュリの代表作で

屋外馬術競技 カルゼルの際に演奏される音楽です。従って金管楽器が強烈に音をffで演奏し負けずに大太鼓や小太鼓が鳴り響き広大なベルサイユ宮殿の庭に音が広がって行く様子がうかがえます。頭の中には、30年前に行ったベルサイユ宮殿の噴水と池の光景が浮かんできました。

さて音は、フレンチホルンの最たる、輝きに満ちた明るいホルン、トランペットと太鼓の低音がマッチして輝きに満ちた演奏です。音質的に満足

演奏 ミシェルピゲオーボエバンド ハイドン「王宮の花火」B面にはいっています

ΣRATO ERX−2189

フレンチホルンの明るい音の再現ができるしバウマンのドイツホルンも再現できる点では、DL-303の音は、単に線が細くて高音域が伸び上がっているわけでもなさそうです。

3)
J.S.BACH「トカッターとフーガ ニ短調 BWV565

あまりのも有名なオルガン曲ですが、少しパイプの大掃除してパイプの中の埃がなくなった様な明るい音です。少し低音がでてこない感じ。でてないわけではないが高音のパイプの音が華やかさに負けている感じがします。少しこの音はイメージと違うような感じがします。やや不満
ドイツのイエスボロー教会のパイプオルガンがこんなに明るいと思えません。現地にいって聞いてないので正確には判断出来ませんが。

大編成のオーケストラの大音響演奏

4)ストラビンスキー バレー音楽 火の鳥

リッカルドムーティ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 DAM 特製45回転厚手LPです。

冒頭大太鼓とコントラバスで始まる、地の底からわき上がるような重低音充分でています。→満足

第2主題の甘いオーボエとバイオリンのデュエットが美しい「魔王カスチェイの踊り」の大太鼓のドッドンドッドンがすごくなまめかしく迫力がある。大満足

次のpppに繋がる静寂感がもうたまらない。ノイズレベルが実用域に達している感じがする。

終曲 FFFのブラスがほえる感じ、これもフレンチ管の明るい感じ、大太鼓のドッドンに負けずにストリングスがかなでるメロディの分解能も悪くないがやや低音に引っぱられ気味 わずかに不満


5)ジャズ オスカーピーターソン トリオ「THE WAY I REALLY PLAY MPS ULS-1573-P

一般家庭でのミニコンサートを録音したレコードで、トリオもリラックスして、特にベースがノリに乗って、もう大フィーバーな録音です。ウッドベースがやや軽く、ドラムもやや軽め、少しもたつく感じがします。やや不満

しっかりとしたウッドベースのズン、ズン、ズンとコード進行する感じが少し歯切れが悪くもたついています。


6)まとめ
このカートリッジの持ち前をもっとも発揮するのは、室内楽のストリングスを中心にした小編成の
オーケストラではないでしょうか?

ジャズや大編成のオーケストラでの低音は、少し歯切れが悪く軽い傾向があります。高音域は、伸びてバイオリンの倍音の歪みが少し目立つ傾向が有ります。

(輝きや艶ではない高調波歪みです。周波数特性的には、10Hz付近が持ち上がっている)

やや色づけされた感じが残りますが抑制が有る程度効いているので、心地よいと感じる人も有るかもしれません。なんでも明るくなる傾向が有ります、フレンチホルンをかなでるのが最高の組み合わせかもしれません。ドイツホルンの渋い音もアルプスを越えて少し明るい音になります。

カートリッジの個性に隠れてMC HEAD AMPの音質に関してのべませんが、ノイズ意外音質に影響を与えることは有りませんでした長くなりましたが、DENON DL-303 SATRI MC HEADAMP XT−1の音質評価でした。

 

今後の課題

プロトタイプ「XT−1」は、コンデンサーの追加や電源回路の変更等いろいろ調整して、一応実用可能な範囲に追い込みましたが、まだノイズレベルが目標レベル(ボリュームを1時まで上げてもノイズが目立たない)にまで達成しておりません。従って今後の課題は、ノイズレベルを下げることと高域特性を伸ばすことです。

@回路のノイズ対策
 
プロトタイプ「XT−2」では、初段の増幅回路にローノイズコンプリメンタリーTRを使用する

ローノイズタイプでも不十分な時は、初段のトランジスターを3個並列に繋ぎ、1個あたりの電流減らしてローノイズ化を図る。LEDにコンデンサーをカップリングしてローノイズ化を図る。
XT−1にて効果を確認して容量を決定する予定。
A電源ノイズ対策
電源をACから
006PのDC ±9Vに変更して、電源ノイズを減らす。

9vでLEDが点灯しない場合は、LEDの保護抵抗を10KΩから1/25KΩに変更しノイズレベルが変化するか確認して決定する。

AC電源を使用する場合は、誘導電波の影響を排除するために、電源パッケージを作りケーブルで繋ぐ。
トランスはシールド型のトランスを使用し3端子レギュレターまたは、
AC-DCコンバーター
IC電源を使用する。

B誘導ノイズ対策
内部配線を、ツイストペアのバランスタイプのシールド線に変更する。

秋葉原で 1m 120円で購入しました。心線も太くてシールドも良好です。

以上

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