2005年5月22日更新



デジタルマルチアンプに挑戦 

A AKAIのスピーカーネットワークの特性確認とカットオフ周波数の検討


1。AKAIのスピーカーユニットの特性の確認と改善目標

まず、AKAIのスピーカーの特性を調べて、改善すべき点を決めました。市販のスピーカーユニットのネットワークをはずしてマルチアンプで駆動することは、スピーカーメーカーに対する挑戦になるかもしれませんが、自作の醍醐味でもあります。いろいろやってだめならば元に戻せるようにネットワークは分解せずに保存しておくことにしました。

上に上げたデータは以前、FFTで測定してAKAIのデータです、中音域があがり、低音と高音がでていない特性で高音をもう少しあげたくても調整不能でした。また箱が小さくて38センチウーハーを入れている割に低音がでませんが、高音があがればかなり素直な音になるのではと期待して改造を進めることにします。低音の補強は、箱をふた周りほど大きくすれば可能ですが今回は、実行しません。将来的には検討の余地があります。

2. ネットワークユニットの特性確認
ネットワークをはずして回路を確認して判明したこと。市販品であるが故にコストを下げるために工夫しているが、性能に影響を及ぼしていた可能性があることが判りました。

1)高音が調整できない。
  ホーン型のツイターとコーン型ツイター、ドーム型スーパーツイターの3種類のスピーカーユニットで高音部分は受け持っていますが、LCのハイパスフィルターにて高音部成分を分離してあとアッテネーターで音量を調整しています。この出力をホーン型のツイターに入れていれている所までは常識的ですが、ドーム型スーパーツイターとコーン型のツイターには、ホーン型のツイターの出力からコンデンサーを通して分割しています。つまりホーン型ツーターとドーム型スーパーツイターのレベルを個別に変更できない回路なのです。これで高音レベルを思うように調整出来ない理由が明確になりました。
 とりあえず、ホーン型ツイターを使い音を追い込んでからドーム型のスーパーツイターを追加する方向で高音部を改善することにしました。

2)ドーム型ツイターとコーン型ツイターに使用していたコンデンサー
  2つのユニットには、無極性の電解コンデンサーが使用されていました。容量は0.47μF と1.0μFです。6dB/OCT 8オームで特性で20KHzと10kHzに  カットオフ周波数がなります。しかし、ツイター用のLC回路からでていますので位相特性はかなりずれがでていると思われます。
 電解コンデンサーは、容量的に小型に出来るため良く使われていますが、音の面ではあまり推奨されていません。コストダウンのために電解コンデンサーを使ったのでしょう。

3)フェライトコア入りのコイルを使用している。
一般的にはネットワークで使用するコイルは、フェライトコア入りのコイルはコアに使う材料の特性が音に影響されるとされていますので空芯コイルを使います。ただし、空芯コイルで必要なリアクタンスを得るにはコイルの巻き数が増えるため、大型になり価格も高くなりますので、市販品ではコア入りのコイルを使う場合が有ります。性能が犠牲になる可能性を含みながらもコストダウンのために採用する。メーカーの論理でしょうか?

4)カットOFFの特性
  カットオフの特性を計算した結果を以下に示します。

ユニット インピーダンス コイル コンデンサー カットオフ周波数
38センチ ウーファー 8Ω 1.0mH 無し 1.2kHz 6dB/octでハイカットしている 
12センチ スコーカー 8Ω 2.5mH 22μF 680Hz 12dB/oct でローカット,ハイカットはなし
ホ−ン型ツイター 8Ω 0.35mH 2.8μF 4kHz 12dB/octでローカット
コーン型ツイター 8Ω 無し 1.0μF 10kHz 6dB/octでローカット
ドーム型スーパーツイター 4Ω直列2個 無し 0.47μF 15kHz 6dB/octでローカット


AKAIのスピーカーのネットワーク回路

ウーファーをかなり中音域まで延ばして使い、スコーカーのハイカット回路がない、ツイターが4kHzから使っている点などからしてどうしても中音域がだぶつきウーファーやスコーカーの分割共振の影響がでて中高域に歪みがでてくる可能性が高いと分析出来ます。とんでもないネットワークです。
そこで中音域を受け持つスコーカーの領域を広げて、ウーファーのカットオフ周波数を下げ、ツイターのカットオフ周波数を上げる方向で改善を進めることにします。後はどこに落としどころを決めるかです。

3.カットオフ周波数の検討
1)低音域のカットオフ周波数の検討
実際には1200Hzまで音がでていないかもしれないので、まず38cmウーファーのハイカットを3WAYのチャンネルデバイダーで動かしながら確認して行きました。音としては、1000Hz位まででていることが確認できましたが、良い音としては700Hz以下が実力でした。

2)中音域のスコーカーのカットオフ周波数
12センチのフルレンジに近い特性でしたので分割共振がでる7000Hzより上はハイカットしてツイターに分担してもらい高調波歪みをなくすことにしました。  低音側は、300Hzくらいから対応しているようです。ウーファーとスコーカーの分担をどこで区切るかはまだ決まっていません。カットオフ周波数を低くすると音が離れて音像が広がり中抜け傾向がでます。逆に高くすると真ん中に音が集まってきて暑苦しくなります。現在は350〜500Hzくらいの間で最適点を探している最中です。

3)高音域
3.5kHzくらいでは歪みが多い音になりますので5kHz以上にローカットをもって行く必要が有ります。現在7kHzに設定しています。チェンバロやヴァイオリンの高音域の再生が良好になりましたが、少しのびが足りない感じですので、スーパーツイターを追加する方向で検討していきます。歪みがひどくて聞けなかった J.S.BACHのカンタータのソプラノの声も伸びやかになり、カットオフ周波数を上げた効果が出てきています。


チャンネルディバイダーとカマデンデジタルアンプ2台

しばらくは少し微調整をしながらエイジングしていろいろ聞き込んで見ることにします。


4.エイジング後の特性確認 (2005/05/22時点の特性と設定値)
1ヶ月ほど微調整を繰り返してエイジングを行い、ドーム型スーパーツイターを追加して更に1ヶ月ほどエイジングを行いやっと特性が落ち着いてきたので測定をして見ました。ホワイトノイズをノートパソコンから出してFFTで測定しながら微調整を行いました。5/6に測定した時の特性より更に追い込みましたのでデータを最新版に更新します。
結果、低音の凸凹がなくなり100Hz〜10kHzまでほぼフラットな特性で以前に比べれば明らかに高音域のレベルが上がっています。11.5kHztにやや大きな谷ができていますが、18KHzまでレベルがでており、改善前に比べると明らかに素直な特性になって来ました。(18kHz以上は使用しているマイクの特性上測定不可能な領域です。)

低音特性の変化 
150〜250Hzの凹みが無くなり、100Hz以下のレベルも上がり、5/6の特性よりさらに低音がでてきた実感と合っています。
ゲルギエフ指揮のストラビンスキー作曲「春の祭典」のバスドラの「ドスン・ドスン」の音が気持ちよくでてきます。1812年序曲の大砲の音もそれなりにでてきました。改造前に比べると低音がでていますが、「ズシン」の領域までは再生出来ない様です。やはり箱が小さいのがネックなのでしょうか?

高音特性の変化
ドーム型スーパーツイターも機能しているようですが、0.68μFのコンデンサーの容量を1.0μFに増やして10kHz カットオフに修正した結果です。
前回あった15kHzの谷は無くなり連続スペクトルになりましたが、11.5kHzの谷間は残ってしまいました。指向性も含めたホーン型のツイターの特性(癖かも)しれません。
コンデンサー容量を更に2.2μFまで増やして見ましたが、11.5kHzの谷は埋まりませんでした。つまりドーム型のスーパーツイターは12KHz以上しか再生できないことになります。この谷間を5cmのコーン型のスーパーツイターでカバーしていたのでしょうか?
こうなると指向性の良いツイターかスーパーツイターを追加してこの帯域を作り直す必要が有るようです。

切替周波数 レベル 5/6時点からの変更点
ウーハー 680Hzにてハイカット 12db/Oct  −6db カットオフ周波数を500→680Hz
スコーカー 680Hzでローカット
6800Hzでハイカット
12db/Oct 0dB カットオフ周波数を5000→6800Hz
ホーンツイター 6800Hzでローカット 12db/Oct −4dB
ドームスーパーツイター 10000Hzでローカット 6db/Oct −4dB 1.0μFのコンデンサーを使用
カットオフ周波数を15k→10kHz

測定には、フリーソフトのefu WG(Wave Generator Ver.1.31) 及び WS(Wave Spectro Ver.1.31)を使用しました。

一番上5/6の測定結果 中間が5/22測定結果 再下段は改造前の特性です


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