平成15年8月10日 更新

オーディオにおける「エイジング」の持つ意味




「エイジング」とは

世の中にあるあらゆる物に寿命が有ります、人間やペットなどの動物に寿命がある様に、電機部品にも寿命が有ります年を経るごとに変化して行く現象が本来の「エイジング」と言うべきでしょう。
ここでこれからのべる「エイジング」は、物そのものの寿命を表す言葉ではなく、人間や動物が成長して一定の大きさにまで成長して安定する現象をとらえて「エイジング」と定義します。
つまりオーディオにおいて「エイジング」とは、電機部品の特性の変化を早めて安定して性能に追い込むことです。
新品の自動車を買ってすぐにエンジンを全速力で回転させると壊れるので、100Km走るまでは、回転数を上げないでくださいと注意された経験有りませんか?この 「慣らし運転」が、今回使う「エイジング」に近い言葉です。

「エイジング」の必要性
オーディオでは、アンプ、スピーカー、ケーブルなど、音楽の電気信号が通過する部分を交換するととたんに音が変わります。接点を磨いたり、入力プラグを磨いたりしても音が変わります。しかししばらくするとまた元に戻ったりする現象が有ります。
接点の接触抵抗が変わる。スピーカーケーブルを繋ぎ替えると変わる。この変化を早急に修復するまたは安定させるために
行うのが「エイジング」です。性能を安定化させ本来の姿を見極めるために「エイジング」が必要です。


ただ単に繋ぎ替えて時間を置くだけでは、その装置の持っている本来の性能が把握できません。一定の決まった音源で鳴らし続けるとその音になれて、その音だけをうまく再生する「シーズニング」(味付けの意味)がされてしまいます。ジャズや室内楽や大編成のオーケストラ、ヴァイオリン、ピアノ等のあらゆるジャンルの音を再生出来る装置を望むならばなおさら「エイジング」が必要です。

「エイジング」に適して音源は
1,音源の周波数範囲が広い。
2,インパルス性の高い音源である。
3,時間的に周波数の範囲が平均的にバランスしている。
  (低音ばかり続いたり、高音ばかり続いたりしない)
4、音量が一定で、突然大音量で鳴ったり音がとぎれたりしない。

これらの条件をすべて備えている音源としては、ホワイトノイズが有りますが、音楽を聴くためには少し抵抗が、あると思います。


実際のエイジングの方法

我が家で行うエイジングは、ガメラン音楽を鳴らして行ってます。金属打楽器を使った演奏は、エイジングにぴったりの条件を兼ね備えており、1時間大きな音で「ガメラン」を流すと、スピーカーやケーブルの性能が安定して来ます。

 実例1 フルレンジスピーカーの場合

実際の例を以下に示しますフルレンジスピーカーの特性変化です。上段は、エイジング前の特性です、下段は「ガムラン」を30分鳴らした後の特性です。1KHz付近からだらだらと下がっていた特性が上がって来ています。実際の音楽を聴いてもこの差が判りました。別の測定になるので正確な比較は難しいですが、この後さらに高音域があがってきた結果が有ります。


上段 エイジング前 下段 ガムランによるエイジング後

 実例2 デジタルアンプの場合

は、デジタルアンプと25センチ 2WAYスピーカーの特性の変化です。
1kHz〜10kHzまでのへこみが無くなり、やや高音域がでっぱり気味の特性になりました。さらにエイジングすると10kHz付近のピークがへこみフラットな特性が得られると思います。2週間ほど、友人に貸し出したため、アンプの特性が高音域上がりに「エイジング」された物と推定されます。


デジタルアンプ、貸し出し前の特性、戻って来たときの特性

 実例3 SATRI MAIN アンプの場合

次は メインアンプの変化です。この場合エイジングに時間がかかりました。約1週間毎日1時間ずつ「ガメラン」音楽をかけて、ジャズやクラッシクをかけた結果です。可聴領域では、低音部分が上がり、100kHz以上の領域があがていきています。
わずかな差ですが、音楽を聴くと弦の艶や輝きが変わりました。レベルが下がっていたためあまり気煮ならなかった、超高音域の歪みがレベルがあがってきたため目立ち出しました。正弦波では20kHzまでしか聞こえない耳でも、矩形波や三角波に
含まれる高周波に乗っている歪みが聞こえて来たことに成ります。


濃いブルーが元の特性、赤がエイジング後の特性です

3つの実例で実例2を除き、すべてより良い方向に特性が変わっています。ほかに2例ほどエイジングで変化した例が
有りますが
、過去の経験からみてすべて、特性がよりフラットな方向になるようです。

実例2でも初め聞いたときは、高音、低音が足りず中音ばかり目立つ傾向であったと報告を受けてますので、足りない高音をアンプがエイジングであげたと考えるとより良い方向へ変化していることになります。


自作派は、この「エイジング」を充分考慮して音を追い込まないと的はずれな結果となりますので注意してください。


 インパルス性の高い音源
楽器には、ヴァイオリンやチェロなどの弦を擦って音を出す楽器やリードをならしたり唇を振るわせたりして音を出す楽器と 打楽器の様に物をたたいて音を出す楽器が有ります。前者の楽器は、一定の波形が連続していますが、後者の打楽器の類は、打ち付けた時に発生する音が次第に減衰する特長をもています。この減衰を伴う音をインパルス性の音源と言います。
スピーカーの追従が悪いと、インパルス性の音の再現が出ません。普段使っていない筋肉を運動する事で鍛えることと同様にインパルス性の音源を使うことで、スピーカーのコーン紙の追従性を改善することが可能です。

 ガメラン音楽とは
ガムランとかガメランとか言います音楽は、 インドネシアのバリ島を中心とする、ヒンデュー教の宗教音楽と土俗宗教の音楽が合体して完成された、打楽器によるオーケストラです。低音は、大きな銅鑼(ドラ)、中音から高音にかけては、真鍮のゴング、メローディーラインは、鉄琴、ほかに太鼓や鈴、木魚、等で奏でられる音楽で、インドの民話 「ラマーヤナ」を題材とした影絵劇や踊り子の踊りで進む物語の伴奏を行っています。すべて竹で出来た楽器で奏でる地方も有りますが、一般的には金属打楽器で演奏されます。

 ホワイトノイズとは
FM放送の放送局が無い部分で聞こえてくる、「ザー」と聞こえるノイズで、10Hzから20KHzまでの音がランダムに混じり合った音です。周波数特性がフラットでスピーカーやアンプの特性を測定するときに使用します。高音域が−3dB/OCTで下がった特性のピンクノイズもよく使われます。

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