8.Nikon SP

今から40年以上も前の話しですが、先代の主人はヨーロッパの優れた工業技術を学ぶため、欧州に行きました。
このころの日本といえば、池田内閣の所得倍増計画に沸き、高度経済成長の真只中にあり、日々、工業技術の向上に勉めていました。先代の主人は生粋の技術者ではありませんでしたが、若き技術者と二人でスウェーデンからイタリアまで、欧州を訪問することになったのでした。
日本からスウェーデンまでは北極を越え飛行機で30時間以上。ジェット旅客機が実用化される前の時代でした。

現代のようにクレジットカードがあるわけでもなければ、海外に日本の銀行があるわけでもありません。欧州でアクシデントにあったり、お金を紛失したときなど、万一の時にはこのカメラを売却して、帰国の費用を捻出しようという今では信じられないような役割をこのカメラは負っていたのでした。
幸い、トラブルもなく、欧州訪問時の数百枚のスライドとともにいまは静かな余生を送っています。


初期型で、シャッター幕は布製。

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