アリスは子犬に踏みつけられないように、大きなアザミに身を隠しました。アリスがアザミの反対側から顔を出した瞬間、子犬はまたもや小枝に飛びついて、勢いあまってまっさかさまにひっくり返っていました。アリスは、これではまるで馬車馬とじゃれているようなものなので、いつ踏みつけられるか分からないと思い、もう1度アザミの向こう側へ走りました。子犬は小枝に向かって何度も突進を繰り返していましたが、ちょっと進んではずっと後ろの方へさがるのでした。その間中ずっとしわがれ声で吠えていましたが、最後には離れたところにぺたんと座って、息を切らせながら口からだらりと舌を出し、目を半分閉じてしまいました。

 これは逃げ出すのに絶好のチャンスです。アリスはすぐにその場を離れると、息が切れるほどくたくたになるまで走り続けました。子犬の鳴き声が聞こえなくなるほど遠くまで逃げました。

「何て可愛い子犬だったんだろう」アリスは金鳳花(きんぽうげ)に寄りかかって休みながら、その葉っぱで自分をあおぎました。「何か芸を教えてあげたかったな。それができる大きさだったらね。あ。あたし、元のサイズに戻らなきゃいけないこと、すっかり忘れてた。えーと....どうすれば良いのかな。何かを食べたり飲んだりすれば良いんだけど、問題はそれが『何か』ってことよね」

 確かにそれが『何か』ということが最大の問題でした。アリスは周囲の草木を見回しましたが、今の状況では食べたり飲んだりするべきものは見当たらないようでした。そばにはアリスと同じぐらいの大きさの巨大なキノコが生えていました。その下や両側や反対側を見たアリスは、その上に何があるのか見たくなりました。アリスはつま先立ちで背伸びをして、キノコの縁から上を覗いてみました。アリスの目と、キノコの上に座っている芋虫の青い目が合いました。芋虫は腕を組んで、長い水煙管(みずぎせる)をぷかぷか吸いながら、アリスにも他の何ものにも目をくれずにいました。






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