歌で・・・・・




ネルフ女子更衣室

「何でよ!!何でシンクロ率が上がらないのよぉ!!」

バンッ!!
アスカはロッカーを殴った、殴ったその手は真っ赤になっていた。
そしてアスカのその顔は目に大粒の涙を溜め今にも零れ落ちそうになっていた。
アスカはその涙を拭った、拭うとまたロッカーを殴った。

「私は泣かない、エヴァに乗れなきゃ私はお払い箱なのよ。」

アスカは自分にそう言い聞かせた。
幼くして母と死別し、常にエリートであり続ける少女は
自分の価値をそこにしか自分の価値を見出せなくなっていた。
そういうもので見出した価値はいずれ消えいく幻想でしかないのに・・・・・・
アスカは制服に着替え顔をよく洗った。
それは泣いたことが誰にも知られない為である。
アスカは顔を洗い終えると更衣室を出た。
アスカが更衣室を出ると扉の前にはシンジがいた。

「あら私を待っていたの?すいませんねぇ、シンクロ率が低い私が
 無敵のシンジ様に。」

アスカは刺々しく言った。
するとシンジは

「アスカ泣いているの?」

と聞いてきたのだ。
アスカはまさかと思い顔を拭ってみるが涙は零れていない。

「何言っているのよ!泣いてないわよ!!」

アスカは声を荒げて言った。

「泣いているよ。アスカは心が泣いているよ。」

アスカはさっきまでの自分が見透かされたと思った。
心もで泣いているというのはよく分らなかったが、泣いていた自分を
シンジに見透かされたのが、アスカはたまらなく悔しかった。

「アンタに何が分かるっていうのよ!!!」

アスカはそう言った、言うというよりは叫んだに近い。
シンジは少し肩を竦めると

「アスカ、僕はアスカに何があったか分らない、アスカの過去に何があったかも
 分らないよ。でもシンクロ率が全てじゃないでしょ?」

アスカは文句を言おうとしたがシンジがそれを遮った。

「アスカ僕の好きな歌にこういう歌があるんだ。」

永遠なのか本当か 時の流れは続くのか
いつまでたっても変わらない そんな物あるだろうか
見たきた物や聞いた事 今まで覚えた全部
でたらめだったら面白い そんな気持ち分るでしょ

答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方
涙はそこからやってくる 心のずっと奥の方


「って歌なんだ。」

アスカはそんな歌がどうしたと言おうと思ったが、あえて言わなかった。

「アスカに悲しい過去があったかもしれない。でも全ての過去がそうじゃないでしょ?
 楽しい思い出、嬉しかったこと、色んな事があったでしょ?」

「私にはそんな思い出なんかないわ。」

アスカはそう言うとアスカはシンジに自分の過去を話した。
何故話したか分らないが。
それを聞いたシンジは

「確かにそれは辛い過去だね。でもアスカのママが生きていた時の楽しい記憶も否定するの?
 それにエリートになる為に努力してきたんでしょ。色んなことを勉強して覚えて
 でもその全部がでたらめだったら面白くない?歌の歌詞にもあるけどね。
 綺麗な花は?図鑑に載っているもの美しさは実際の美しさではないし。覚えた公式で
 人生が計れる?計れないでしょ。今までアスカがエリートになる為に見てきた物や聞いた事が
 でたらめだと思ったらいいんじゃないかな?そうすればいいと思うよ。」

シンジは珍しく饒舌に言った。
アスカはそんなシンジに驚きながらも

「アンタの言ってることがよく分らないわ。」

「う〜ん、だからねエリートでも構わないけど14歳の女の子がするようなことをしようよ。
 アスカ自身のためにさ。」

アスカはシンジのこの言葉にまとも驚いた。シンジは自分のことを
14歳として見てくれてることに。
今までアスカは過酷なまでの訓練等で厳しく一般兵と変わらない扱いを受けてきた。
最も日本支部に来てからはそんなことはなかったが。
アスカは少し目に涙を浮かべて

「でも誰かが一緒に居ないと経験できないこともあるわ。
 ・・・・・・・・恋愛とか・・・・・・・。」

アスカは顔を真っ赤にしてそう言った、最後は消え入りそうな声だった。
するとシンジは

「僕じゃ駄目かな?」

シンジも顔を真っ赤にしてそう言った。

「私でいいの?シンジは。」

「アスカじゃなきゃ駄目なんだ。だからさっきは泣いてるのが分ったんだ。
 好きな人が泣いてるのを見るのは辛いからね。」

アスカはシンジに抱きつくと泣き始めた。
するとシンジは戸惑いながら

「アスカどうしたの?」

「これが返事よ。」

アスカはそう答えると、2人はどちらからでもなくKISSをした。
それはとても短いものであったが2人が気持ちを伝え合うには十分だった。

「ねぇアスカ、さっきの歌には続きがあるんだ。」

「続き?」

「そうだよ。」

なるべく小さな幸せと なるべく小さな不幸せ
なるべくいっぱい集めよう そんな気持ち分かるでしょう

情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう
花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方


「アスカこれから2人で小さな幸せも、不幸せも体験していこう。
 そうして僕らの絆が深めようよ。」

「そして2人の心にも花を咲かせよう。2人だけの同じ花を。」

アスカは顔を赤くしながら

「そうねシンジ。でも14歳らしい行動じゃないわ。それって
 どっちかというと結婚みたいだわ。
 取り合えず最初はデートからよ♪」

そう言ったのアスカの顔にはとびきりの笑顔を見せた。



END



あとがき
ブルーハーツの「情熱の薔薇」って歌があるんですが
その歌が大好きなんでこの歌でSSが書きたくなって書きました