リツコ



『ゼーレ』が己らの歪んだ希望を成就させんと
起こそうとした『サードインパクト』
しかしそれは、まだ幼さの残る少年、少女によって防がれた。
今までの戦いでの人々は疲弊しきっていたが
再び訪れた平和の中で『生きる』喜びを
そして素晴らしさを謳歌していた。
そんな中の1コマ

「ふぅぅぅ、私が結婚するなんて思いもしなかったわ。」

ため息まじりに言うと
自分の指にはめられた指輪をまじまじと見つめた。

「相手がゲンドウさんだなんてね。でも男と女はロジックじゃないものね。」

そう言ったリツコの顔は穏やかな笑顔を浮かべていた。

「それにしてもあの人があんな人だったなんて。」

リツコはゲンドウが自分にプロポーズしてきたときのことを思い出した。


半年前

リツコはいつものように自分の研究室で残業していると
突然、研究室のドアが開くので振り返って見ると
そこには碇ゲンドウの姿が自分を弄び利用し捨てた男の姿があった。
リツコは散々、自分を利用するだけ利用した男は忘れた、そうした筈だった。
しかし自分の心の中では、心の奥底では忘れきれていなかった。
今でも自分の心はあの人をゲンドウを欲していた。
リツコはそれを感じると、何故か自分が惨めに感じられ涙を零した。

「赤木君いやリツコ君。話がある。」

「今更何のようですか?」

リツコは自分の心を隠し、抑え、そして感情のない声でそう答えた。
ゲンドウは、少しリツコに歩み寄ると徐にポケットに手を入れると
小さな箱を取り出した。
リツコはそれが何であるか一瞬、理解出来なかったが
すぐにそれが何であるか分った。

「リツコ君、私と結婚してくれないか?」

ゲンドウは静かに言った。
リツコはこの予想だにしない一言に戸惑った.。
まさかゲンドウが自分を必要としているとは思わなかったからだ。
しかしリツコは素直にゲンドウの申し出を受けることが出来なかった。

「今更ですか?今更、私と?ユイさんが還って来なかったから?
 それとも!!」

リツコ堰が切れたように激情をゲンドウにぶつけた。
するとゲンドウは先ほどと表情を変えずに

「確かに、サードインパクトは未然に防がれたためにユイは還って来なかった。
 だからと言ってその代わりではない。リツコ君には、今まで酷いことをしてきた。
 だから、リツコ君の残りの人生を償わせてくれ。
 この通りだ。」

ゲンドウはリツコに深々と頭を下げた。

「償いだなんて、償いだけでは嫌です。私を愛してください。
 ゲンドウさん。」

「あぁ、愛しているよリツコ。」

二人は互いを強く強く抱きしめ合った。




「・・・ぁさん。義母さん。リツコ義母さんってば!!」

リツコは突然のシンジの声に思い出から現実に戻った。

「リツコ義母さん、父さんが呼んでたよ。
 それにしてもどうしたの?」

「ゲンドウさんにプロポーズされたときのことを思い出していたのよ。」

「義母さん、今幸せ?」

このシンジの問いに
リツコは穏やかな笑みを浮かべ

「えぇ、幸せよ。」



END


あとがき

突然リツコさんの話が書きたくなったので
突発的に書いてしまいました。
本編では幸せにならなかったので
だからですかね。