想い




「はぁ・・・・」

学校の屋上でアスカは青く青く透きとおる空を見上げ
溜息をついた。

私はどうしたいだろう?私はシンジとどうなりたいだろう?
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
私はそれが分ってる。どうしたいかが分ってる。
けどそれを踏み出すのが怖いだけ・・・・・・
伝えた想いが拒絶されたら・・・・・・・

そう考えたアスカの目元には何時の間にか涙が零れていた。
アスカ本人が気づかないうちに・・・・

アスカは空を見上げながら自分にまた問いはじめた。
自分のその気持ちに。

私はいつからシンジのことが好きになったんだろう?
いつから?
いつから?
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
私が好きだって気が付いたは、使徒戦役が終わってからシンジが好きだって気が付いた。
全てが終わって私が目覚めた時私の傍にいてくれたのはシンジだった。
その時シンジは涙を零して、零して喜んでくれた。

「良かった。目が覚めて本当に良かった。」

ってそればっかり言って泣いてた。
私は最初はそれが気持ち悪かった。その涙が、その言葉が。
だってその頃の私にとってシンジは
『私から何もかも奪った存在』でしかなかった。
私よりシンクロ率が上・・・
エースパイロット・・・・・・・
皆から大切にされる・・・・
だから私はシンジが憎かった・・・・そう憎かった。
シンジが看病に来る度にシンジに対して有らん限りの罵詈雑言をぶつけた。
それでもシンジはただ微笑むだけで、私に対して微笑むだけで。
それが私の心を苛つかせたっけ。
ある日、その苛つきをシンジにぶつけたわ。

「そんなに私に恩売ってどうするの?私を抱きたいの?だったら最初から抱けばいいじゃない。
 こんな周り回りくどいことしないで。私みたいな価値のない女なんて」

こう言ったわ、シンジに。
そうしたらシンジは俯いてそして次の瞬間に私の頬を叩いてこう言ったわ。

「アスカ!!僕はそんなんでアスカの看病に来てたんじゃない!!!
 僕はアスカに良くなってほしくて、ただ良くなってほしくて来てるんだ!!
 それに自分をそんなに安く言うな!!!」

それを聞いた私は自分の心の中の凍てついていた何かが溶けたわ。
そう心の中の凍てついた何かが・・・・・
そしてその時気が付いたの、目が覚めてから私の傍に居てくれたのはシンジだけだって
他にも使徒戦役の時、イスラフェルの時励ましてくれたり、サンダルフォンの時マグマの中から
助け出してくれたのもシンジだったって。

アスカはそう考えると、目を閉じて手を胸に当てると

・・・・・・・・そう私はシンジが好きなんだ・・・・そう好き・・・・・・・・・・・
この想いが私の体、心に広がって私を包み込んでいく・・・・・・・・・・
でも怖い怖い、この想いが拒絶されたら。

そう考えるアスカの耳に何かが聞こえてきた。何かのメロディが

Who can say

where the road goes

where day flows

-only time

And who can say

if your heart chose

-only time

アスカは歌の聞こえてきた方を振り向くとヒカリがいた。

「アスカが何を悩んでるかは分かるわ。碇君のことでしょ」

「うん」

ヒカリにはアスカが悩んでいるか直ぐに分かった。
親友の考えてる事などお見通しらしい。

「アスカさっきの歌の意味わね。

 誰にわかるというの

 道がどこに向かっているのか

 一日がどこに流れていくのか

 時だけが知っているのよ

 誰にわかるというの?

 あなたの心が選んだ愛が

 大きく育っていくかどうか

 時だけが知っているのよ

 アスカ貴方が貴方の想いを碇君に拒否されるのを恐れてるのは分かるわ。
 でもそれではずっと碇君に思いは伝わらないわ。
 私はね歌の歌詞の意味をこう考えているの。
 自分の道、自分の想いが何処に繋がって何処に辿り着くのかは誰にも分らないわ。
 それは時だけが過去から今そして未来へ続いている未来だけが知っているから。
 そして貴方の想いが思い続けるだけか、その相手と共に育つかは時だけが知っている
 って考えてるの。アスカ」

アスカはそれを聞くといったん下を向き目を擦るとまたヒカリの方を向くと

「・・・・・・・・・いい歌ね、けどね『時』任せなのは私らしくないわ。」

そう言ったアスカの顔はさっきまでとは違い何か決意した表情だった

「うじうじ何時までも悩んでるのは私らしくないわ。共に想いを育てることが出来ないんだったら
 言って駄目な方がいいもの。・・・・・・ありがとヒカリ」

そう言うとアスカはヒカリにウィンクをして駆けて行った。
ヒカリはそれを見送ると上を向き

「・・・・・・そうね。私も一歩を踏みださないとね。」

そう呟くとヒカリも駆けて行った。
二人の少女は自分の道の新たな一歩を踏み出した。
想いを未来に紡ぐ為に・・・・・



END


あとがき
エンヤに触発されて・・・・エンヤいいですよね。もう最高ですよ。
癒されるよ。だから影響されて書きました。