アスカ〜恋する十字架〜
   

第4話 闇

シンジは考えていた。綾波という転校生が自分の耳元で囁いた言葉
『夜を支配する』
この言葉が気になって仕方がなかった。

綾波さんの言っていた事は何なんだろう。

僕が夜を支配する意味が分らない一体どういう意味なんだろうか?

そもそも夜を支配する事なんて出来るはずがないじゃないか。

もう、いいや。考えるのは止めよう切がない。

帰り支度を終え学校を後にした。
シンジは帰り道ずっと1人で考えていた。考えるのをやめようとしたが気になって
その思考のループから抜け出せないでいた。そしてあの言われたときに感じた恐怖が
今は逆に妙な高揚感というような感覚に変わってきていた。
全身の血管という血管に巡り新たに自分を再構築するそういった高揚感であった。
ところで
アスカはというとヒカリと一緒に学校帰りのショッピングに行ったので、だからシンジは1人で帰っているというわけだ。
話はシンジに戻る。
シンジは思考のループに未だ抜け出せないでいた。
考えても考えても分かるような答えではないと既に『分かっているのだが』考えることがやめられない。
自分の深層から込み上げて来る気持ちなのだ。もはや考えるという次元ではないのかもしれない。
人間が『人間とは何か』という問いくらい今のシンジを掴んでいる。。

駄目だ。いくら考えても分らないや、でも何でこんなに気になるんだろう。

こんなに気になったのは初めてだ・・・・・いや初めてじゃないかな。

いつも一緒に遊んでいたアスカにドキドキして

アスカを初めて女の子って思ったときもこれくらい気になったけど今回は同じかそれ以上かも。

いやそれ以上だ。・・・・・気になるっていう次元じゃないもの。

何かよく分からないけど僕を捕らえて離さない。

シンジは帰りに通る近所の公園が見えたので公園のブランコに座って考えることにした。
気になる事があったときはいつもそこのブランコで考え事をしていた。
辛い事や悲しいことがあったときもそうしていた。
アスカを女の子と初めて意識したときもここで考えた。
要するにシンジにとってここのブランコは一番物事を考えやすい場所なのだ。。
キーコ、キーコ
キーコ、キーコ
キーコ、キーコ
いくらブランコを漕いでも分らなかった。
行ったり来たりするブランコと同じようにシンジの思考も
綾波は何故そんな事言ったのか。
夜を支配するとはどういう意味か。
この2つの考えを行ったり来たりするだけであった。
ブランコに座って考えていると、ふとシンジの視界に月が満月が映った。
いつものそれに比べて赤色、血のような満月で、そしてもの凄く新円で深遠で深淵で吸い込まれるような満月であった。
それは普通ならばおぞましく見える月だろう。誰にとってもおぞましい月に見えるだろう。
しかし今のシンジはその月が輝き放つ魔性の『赤』に魅入られていた。

何だろう。月を見てこんな気持ちになった初めてだ。

シンジは全身が月に吸い込まれるような感じで
それでいて全身神経という神経が鋭敏になっていくのを感じていた

何て言うんだろう、いや言葉に出来ないなこの気持ちは。

シンジはブランコから立ち上がって月を見上げた。
シンジが魅入られている光景はとても神秘的なものであった。
線の細い美少年が月の光を浴びながら月を見上げているのだから。
その光景はあまりにも儚い、見る者はそう思うだろう。
シンジはどれくらい月明かりを浴びていただろうか。
すると突然体の奥から得体の知れない衝動が沸き起こってきた。
それは調理実習の時と同じ感覚であった。

ドクン ドクン ドクン 

ドクン ドクン
 ドクン

何なんだ。この感覚はあの時と同じだ。

一体何なんだよ。この感覚は、何だ意識が剥ぎ取られそうだ。

意識が別の遠くへ行くようなそんな感覚・・・・だ。

ハァ ハァ・・・・だ・・・め・・・だ。意識が・・・・・

自分が・・・・自分でなくなっていく・・・・も・・・・・う駄目・・・・・だ

シンジの意識が途切れようとしたその瞬間

「あなたは夜を支配するわ。」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・



綾波の声が頭をよぎった瞬間にシンジは気を失った。


「どこだ此処は?あれ?僕はどうしんだっけ。そうだ気を失ったんだった。
 最後に確か綾波さんの声が聞こえた気がしたんだけどな。」

シンジはそう言いながら辺りを見渡すと辺りは真っ暗だった。
光が一切射しこまない一切の闇だ、吸い込まれるような暗闇だ。
上下左右、時間すべての感覚がない。当に無そのものだ
シンジは常人なら気が狂ってしまうような真の暗闇の中に1人きりなのだ。
しかしシンジはその暗闇を気にすることなく歩を進めている。
いや気にしないのではない、気にする必要がないと言った表現のほうが正しいだろう。
何故ならシンジは微笑んでいた。その微笑みはいつものシンジの微笑ではなく邪悪で醜悪な微笑が張り付いていた。
シンジがしばらく歩いていると、目の前に外灯が見えてきた。
その外灯に近づくと人影が見えてきた。
シンジはその人影に近づいていった。
近づくとその人影は女性だということ分った。
その女性はお尻を地面にぺタったと座っている。
シンジには少なくともそう見える。
更に近づいてみると・・・・・・

「嫌ァァァ!!!助けて!!!私が何したっていうのよぉ!!!」

女性は恐怖で歪んだ顔でそう叫んだ。歪んでいると表現するよりも恐怖という感情そのものが張り付いていた。
女性が座っているように見えたのは見間違いであまりの恐怖で腰が抜けて逃げ出そうにも逃げ出せないのだ。
それでも女性は必至に逃げようとしているが腰が抜けていて逃げ出すことが出来ない。

「大丈夫ですよ。僕は何もしませんよ。どうしたんですか?」

シンジは優しく女性に声をかけ、女性を安心させようとした。
しかし

「嫌ァァァァァァァァァ!!!!!!」

女性はまた叫んだ。
シンジはどうしたんだろうか?と思った。

「大丈夫ですよ。僕は何もしませんから。」

シンジはそう言うが女性に反応はない。
シンジの声が女性にはまったく聞こえていないようだ。
すると1つの影が近づいてきた。
いや人影だ。その人影は女性に近づいていく。
その人影が近づいていくと女性の顔は更に恐怖で歪んでいく。これ以上歪めようのない程顔を
恐怖で歪めていく。
シンジは女性を助けようと思いその人影に手を伸ばすが

「な、何なんだ!手がすり抜けた!」

なんとシンジの伸ばした手が人影をすり抜けたのだ。あろうことかすり抜けたのだ。
シンジでなくてもこれには誰だって驚くだろう。
そして人影は女性に近づいていく。
人影は女性に近づくと覆い被さった、覆い被さると女性の首筋に
人影の口と思われる場所を当てると女性の首筋から真紅の流れが生まれた。
それが女性の血であるということ理解するのにシンジは時間が掛かった。
シンジがそれを理解した時には女性は顔が青くなっていた。

「あぁぁぁぁぁぁぁ、何をしているんだ!!!お前は!!!!!!!!!!」

シンジはそう叫ぶのが精一杯だった。
その声に反応するように人影がシンジのほうに振り向いた。
その振り向いた顔は女性の血液で紅く染まったいた。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!何なんだぁーーーー!!」

そう振り向いたその男の顔は『シンジ』であった。
女性から啜った血液で紅く染まった『シンジ』であった。

「お前か・・・ははははは」

「あーっはははははははは!!!!」

もう一人の『シンジ』は高らかに笑い声をあげた。狂ったかのように笑っている。

「何が可笑しい!!」

シンジが『シンジ』に対して叫んだ。すると『シンジ』が

「いや、これくらいのことで恐怖するお前が愉快でな。まぁ何、まだ早かっただけだ。
 まだ時間がある。その時までサヨナラだ。いやその時にハジメマシテかな?」

そう言うと『シンジ』は接吻をしてきた。自分に接吻された。
するとシンジの意識は遠ざかっていった。
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

「夢・・・・・・?か・・・・・」

目が覚めたシンジはさっきと同様にブランコに座っていた。
周りは既に真っ暗になっていた。シンジはブランコに乗ったまま寝たいたようだ。

「ふぅぅぅぅ。後味の悪い夢だったな。」

涎を垂らしていたので口を拭うとシンジの手の『血』が付いた。
真っ赤な血が・・・・・・

「あれは夢ではなかったのか・・・・夢では・・・・・一体何なんだ・・・・・」

シンジは有り得ようのない事態に愕然としていた。




第4話 END



あとがき
1年もの間を空けてしまいました。申し訳ありません。私の中で書くということに
熱意をもてなくなったので書かなかったんですが、それでは駄目だ、掲載させてもらってるんだから
書き上げなければと意識を改め書きました。稚拙なものですがよろしく。