アスカ〜恋する十字架〜

第2話 変化

酷く暗く、光が一切射しこまない漆黒の闇の中に一人の男がいる。
その姿は確認することは出来ないが漆黒の闇に浮かぶそのシルエットからそ確認することが出来る。
そしてその男は何かをぶつぶつと呟いてる。まるで呪詛のように言葉が男の口から紡ぎ出されている。

「日常は酷く脆弱で・・満たされることはなく虚ろな存在。
 脆弱な世界にしがみつき己の欲望だけを満たすことに終始し
 快楽だけを享受しようとする醜い人間ども・・・・・
 その人間どもは自分たちが頂点だと思っている。・・・・・それは間違いだ。
 醜い豚どもより『至高』の存在は存在する。我らが糧となる存在よ。
 今は儚い夢を見ているがいい。そしてその夢は終わることない葬送曲となる。
 ふははははははははははははは!!!!!」

男は自らの傲慢を吐き捨てると、男はゆっくりとその身を翻した。
男が此方を振り返ると一瞬光が差しその姿を映し出した。不気味な男の姿を・・・・その顔は
『シンジ』だった。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
シンジはベットから飛び起きた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ何だ夢か。くそ胸糞の悪い夢だな。」

シンジはそう言うと制服に着替えるためシャツを脱ごうとシャツに手をやると
そのシャツは寝汗でびっしょりと濡れていた。。
それからどれだけ魘されていたか確認することができる。
シンジの部屋のドアが開いた。

「シンジ、どうしたの?」

ユイが心配そうな顔で入ってきた。

「大丈夫だよ、母さん。」

「でも顔色良くないわよ。本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ。今何時?」

「もうすぐ学校の時間よ。」

「ホント?やばいよ。早く仕度しないと。」

シンジは素早く制服に着替え、身だしなみも整える。

「あれ、今日はアスカは起こしに来なかったなぁ。
 どうしたんだろう?」






光溢れる世界、激しく光が生み出される世界。
そこに1人の少女がいた。
逆光で姿を見ることは出来ないが逆光の中に見えるシルエットから
少女であること分る。

「人々は一生懸命に神より与えられた命を生きている。
 その命の輝きは誰にも奪う事はできない。
 命の輝きにより世界は光に満ちている。
 その輝きを奪おうとする者がいるなら
 この私が断罪する。」
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

「ゆ・・・・め。」
アスカは目を覚ました。酷く目覚めの悪い寝起きだった。
無理は訳の分からない。まるで神の啓示のような夢を見たのだから。
アスカは時計の方に視線をやると
時計が示した時刻はもう学校へ行く時間を示していた。
アスカは急いで制服に着替えた。この時間ではシンジを起こしに行っている余裕はない。
登校途中でシンジと会うだろう思いアスカは家を出た。

「にしても変な夢だったわ。何だったのかしら?あの夢は。」

そう思いながらアスカは走った。




通学路

シンジが今日の悪夢について考えていると
後ろの方から

「シンジーっ!おーい!」

とアスカの声が聞こえたので振り返るとアスカの姿があった。

「おはよう、アスカ。今日は遅いね、どうしたの?」

普段アスカが遅れるということはなく、それはアスカがシンジを起こし始めてから
初めてのことであった。

「うん、ちょっと変な夢を見たからそれでね。」

「そうなんだ。僕もなんだよ、アスカ。」

「シンジもなの。」

アスカはちょっと驚いた感じで言った。

「だけど僕の場合は悪夢だけどね。」

「悪夢?一体どんな内容だったのよ。」

シンジは少しおどけたような感じで両手をヒラヒラさせながら

「マンガの読みすぎのような内容でね。言うのも恥ずかしいよアスカ。」

シンジは恥ずかしいのではなく、ただアスカに言いたくなかっただけである。
何故言いたくなかったかは、シンジ自身よく分らないが何となく言いたくなかった。
言えば良くない事、何か嫌な事が起きるかもしれないと不思議とそう思ったからだ。

「アスカの夢は?」

「あたしの?シンジ、レディーにそんこと聞くもんじゃないわ。」

アスカもシンジと同じ理由だった。アスカは何となくではなく絶対に言いたくなかった。
アスカがふと腕時計に目をやると時間は遅刻寸前だった。

「シンジ遅刻するわ!急ぐわよ!!」

「わっ!待ってよアスカ!」

2人は全力疾走で学校に向かった。


              学校


二人は遅刻ギリギリで教室に滑り込んだ。
それを見てトウジとケンスケは

「「夫婦そろって遅刻ギリギリとはいや〜んな感じ♪」

それを聞いたアスカは顔を真っ赤にしてケンスケ、トウジに向かって怒鳴った。

「うっさいわねぇ!ジャージ馬鹿とメガネ!!」

単純直情型のトウジもそれに反応して

「なんやとぉ!!!」

アスカとトウジが臨戦体制に入ったところで、教室のドアが開き
このクラスの担任であるミサトが姿を現した。ミサトはにやりと笑うと

「鈴原君もアスカも席について。鈴原君がからかう気持ちもわかるけどねん。」

とからかってきたのでアスカは文句を言おうとしたら
隣に座っているヒカリが強烈なオーラを発しているので言うのをやめた。
当然そのオーラはアスカだけでなくミサト、クラスメイト全員にも届いていたのでクラスは静けさに包まれた。
人の発するオーラを見ることの出来る萱島君は

「洞木さんにはスタンドを出せるんじゃないかな。あのオーラいずれ具現化しそうだよ。」

と言ったとか言わないとか
ミサトは気を入れなおして教科書を開き

「はいそれじゃあ、今日も授業張り切っていくわよぉ!」

ミサトが授業を始めるとトウジは既に涎を垂らし

「Zzzzzz・・・わ、わいのたこ焼きがぁ・・・Zzzzzz」

と寝言を言っている。
それを見たミサトは、米神に青筋をぴくぴくさせると

「また寝てるのね鈴原君はぁ、それに寝言までぇ、いい度胸じゃない(怒)」

ミサトはトウジのそばまで歩みよると

「今日という今日こそは、絶対許さないからねぇ!」

「『必殺!ミサトヒールクラッシュ!!」

『ミサトヒールクラッシュ』とは相手の目にも止まらぬ神速で踵落としを放ち
更に履いているヒールで相手に強烈なダメージを与える鬼のような技である。
誰もがこれは喰らうだろうと思っていたその刹那、トウジはゆらりと起き上がり

「甘いで!鈴原流鉄肘砕き!!」

そう叫ぶとミサトのヒールの踵に高速で肘を打ち上げ折ったのである。
また技を破られたミサトは肩をがっくりと落とし項垂れていた。
今度はヒカリがユラリと立ち上がり絶対零度のオーラを放ちながら

「静かにしてください。次やったら許しませんからね。」

この一言に

「「はい、わかりました委員長!」」

とミサトとトウジは見事にはもった。
この後、ミサトの授業は平常どおりに進められた。流石にトウジも起きていた。




               家庭科の調理実習


アスカはエプロンをしながら、シンジに

「シンジ、今日の実習は何を作るの?」

「今日はね、鯖の味噌煮とほうれん草のおひたしとお豆腐の味噌汁だよ。」

それを聞いたアスカは声のトーンを少し落として

「ふ〜ん。和食ね。あんまり好きじゃないなぁ。」

とアスカが不満をもらすとヒカリは少しにやりと笑うと

「でもアスカ、和食は立派なダイエットフードなのよ。」

とヒカリが言うとアスカはダイエットフードという言葉に反応して
少し目の色を輝かしながら袖まくりを始めた。

「しょ、しょうがないわねぇ。」

と言うアスカを見てシンジとヒカリは思わず笑ってしまった。
するとアスカが

「何、笑ってんのよ。」

「なんでもないよアスカ。」

「そうよ。アスカ。」

と話していると、実習室の扉が開き
実習には到底合わないフリフリの服を来た教師伊吹マヤが入ってきた。
マヤはこの学校でミサトと同じくらい生徒から人気は高い教師である。

「じゃあ皆さん、今日は調理実習です。今日作るものは
 鯖の味噌煮、ほうれん草のおひたし、お豆腐の味噌汁です。
 怪我しないように気をつけて作ってください。
 それじゃ班になって。」

生徒達はいっせいに班を作り始めた。
シンジの班は、シンジ、アスカ、トウジ、ケンスケ、ヒカリの5人だ。
シンジとヒカリは料理が得意なんでこの班は心配ない。
他の生徒もその事を知っているのでシンジ、ヒカリと組もうとしたが
アスカとトウジに邪魔に遭い断念した。ケンスケは上手いこと一緒になったというよりは
ケンスケは必然であった。

「シンジ任せたわよ。光もね。」

「任せるよ。俺は何も出来ないし。」

「わいもや。」

とアスカ、ケンスケ、トウジ。
この3人は始めから2人に任せるつもりだったらしい。
シンジ、ヒカリもそれは分ったていたので、それ程気にしていない。
2人は肩を竦めながら

「しょうがないね、あの3人も。」

「ホント。でも私たちだけで十分だからいいんじゃない?」

「それもそうだね、洞木さん。

となかなかいい雰囲気かもし出している。
2人は料理話に花を咲かせていた。

「アスカちょっと包丁取って。」

シンジはヒカリが鯖をさばいていて包丁が使えないので
アスカに頼んだ。

「包丁?はい。」

シンジに渡そうとしたとき、包丁の刃先がシンジの指先に
触れシンジの指先が切れ少し血が出た。

「ごめん!シンジ大丈夫?」

アスカが声をかけるがシンジは黙っている。
シンジはそのまま姿勢で動かない。微動にしない
シンジは得体の知れない感覚を覚えたのと同時に自分の頭の中に声が響いてくるのを感じた。

血だ。血が出てる。何だ?この感覚は何だ?今まで血を見ても何ともなんなかったのに。
頭がボーっとする、それに体が熱い。何なんだ?声が聞こえる、頭に直接響いてくる。
誰だこの声は

―『血が欲しいんだろ?』―

違う!

―『違いはしないさ』―

僕はそんなんじゃない!!映画に出てくるような吸血鬼じゃ!!

―『そうだとしたら?そうだったらどうするんだ?シンジ?』―

「違ぁぁぁぁぁぁう!!!!」

突然そう叫ぶとシンジはそのまま気を失った。
この只ならぬ様子にクラスメイトが傍に駆け寄ってきて皆シンジの心配をしている。
アスカはシンジの突然の出来事に何がなんだかわからなくなってしまった。
今頭の中にあるのはシンジをこうしたのは自分ということであった。
只の切り傷に過ぎないがシンジを気絶したことは事実である。

シンジに怪我させちゃった。私がちゃんと渡さないから。

アスカが考えていると頭に何かが響いてきた。何かの意識のようなものが響いてきた。

―『当然です』―

何が?
シンジが怪我したこと?気絶したこと?それともシンジのあの様子?

―『全てです。起こるべくして起きた始まりの出来事。貴方の使命も』―

何、もう訳わからないよ。何がどうなってるの。朝から変な夢は見るし。
訳わからないことが起きるし。変な声は聞こえるし・・・・・

みんながシンジの心配をしていると素のそばにいたアスカも倒れ気絶して倒れてしまった。
アスカも倒れたので教室は更にざわついている。マヤは他の先生を呼びに行った。
アスカは遠ざかる意識の中、シンジの言った「定められた『運命』」という言葉を思い出していた




第2話 END



あとがき
遅れました(汗。
しかし1ヶ月更新は守ります。にしても相変わらずへたれだ。
これからもよろしく〜。頑張るんで