カール大公
布告と軍への一般命令



 5月30日にマインツで発せられたカール大公の布告と軍への一般命令

 横柄なフランス政府による不公正で贅沢な要求が平和に対する全ての希望を消し去り、新たな戦役を不可避にした結果、皇帝陛下は休戦の停止を通知した。戦闘状態は31日の11時から正午12時の間に再開される。
 陛下はこの重要な危機に際し、この軍の指揮権を快く私に授与し、それによって私に対する最も喜ばしい信頼の証拠を与えてくださった。最大限の力を発揮することが私の義務である。私は、そのよき行為に我ら共通の国の安全と名誉ある平和の獲得がかかっており、同じ熱意と惜しみない愛国心に活気づけられた我が指揮下の全兵士が、忍耐強さと勇気をもってこの重要で有益な結末を達成することを求め、信じている。私は最も厳粛な方法で彼らにそれを強く勧める。
 兵たちの将軍に対する、そして将軍の兵たちに対する相互信頼はこれだけ偉大な計画を実行するには不可欠であり、義務の遂行は極めて高貴かつ神聖である。この信頼こそ、私が名誉ある指揮権を持つ軍に求めているものであり、さらに私が抱く誠意に値するものだと自任している。
 私は、最も不変の勇気と揺らぐことのない忠誠を持つことを既にこれだけ模範的かつ数多く証明しており、これまで戦場へ率いた中でも最も優れ最も勇敢な軍の一つを先導することに誇りを持っている。
 皇帝陛下の世襲領に対する偏愛とえこひいきを全く示すことなく、どこであれ手柄をたてたものは区別なく当然支払われるべき報酬を得るであろう。またどこであれ苦難があれば同様に私の哀れみを呼び起こすだろう。我らのつながり、視点、長所は非常に強く結ばれており、全てのものは私の愛情と支援に対する同様の権利を持つ。
 相互の尊重と経験に由来する正当な信頼に基づく同じ精神は、我々を活気づける筈だ。
 将軍たちは、祖国への愛情と、名声と栄光への高貴な熱狂を強めることで、それぞれの指揮下にある兵たちの間でこの義務に対する全般的な忠誠心を高めるようさらに努める。彼らは兵たちを、世論を誘惑し社会のつながりを断ち切る一時的な逆上状態から守る。彼らは、軽率な会話、根拠のない非難、政治的な醜聞に伴う熱狂、あるいは性急な判断により、個人が全部隊の耐えざる忍耐力を破壊することを許さない。彼らはドイツ人の精華の中にある完全な信念と、我らの大義の正しさに対する最も強烈な感情を維持し、兵たちの指揮官と彼ら自身に対する信頼を鼓舞する。敵を、少なくとも彼らの相対的な勇気と強さを侮るのは確かに軽率だ。しかし彼らを我々より高く評価し、まだ何の証拠もないのに彼らに優位を帰するのは最も臆病な行為である。
 我々は我々にとって最も親愛な筈である全てのもののために、そして信仰と、政府体制と、財産と、真の政治的自由と、秩序と、法律を、あらゆる社会的結びつきを踏みにじり、あらゆる理想と所有権を破壊した人々の攻撃から守るために、そして信仰、良心、義務感の欠落、あらゆる人間性を共倒れにしようとする試みから守るために戦う。
 我々はあらゆる文明国の権利を守る。ドイツはその幸福とその保護を我々に信任した。我々はこの偉大なる責務に答えなければならない。我々にその意思があれば、我々はそれを達成できるだろう。
 元帥は指揮下にある兵たちのこの感情に訴える。そして、将軍たちの才能と努力、さらに彼ら自身があらゆる機会に明示している勇気と大胆さに無限の信頼を置いていることを確約する。

 カール大公、元帥

google book "A Collection of State Papers Relative to the War Against France" p21-22


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