7.SiO2の精製による高純度化          このページや、下層のHTMLファイルに直接リンクされた方は、このボタンをクリックして下さい。

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  「水晶と鉱物」の最終章として、天然石英から不純物を除去する方法についてまとめてみた 目標は不純物の総量が10ppm以下の石英粉で、特に鉄分(Fe)は0.5ppm以下、アルカリ金属(NaKLi)が各々0.1ppm以下の半導体グレードである 主に単結晶引き上げ用の石英ルツボに使用されているが、約\1,000/kgと非常に高く供給量も少ない 一方、太陽電池グレードの金属シリコンは、現在、半導体用シリコンの一部を流用しているが価格が高くて供給量も少ないため、発電効率が金属シリコンより低いもののシリコンの使用量が少ないアモルファスの薄膜型(寿命が短い)が主流になっている もし、不純物の総量が50ppm以下の天然水晶なみの石英粉が安く製造できれば高純度カーボンで直接還元した比較的安価な金属シリコンが多量に得られ今後、太陽電池用シリコンの主流になると考えられる
  以下、3-4(3)で述べたインド産のグラニュラークォーツを原料とし、様々な選鉱・精製過程を経て水晶以上に純度の高い半導体グレードの高純度石英粉を製造する、現代の“錬金術”に迫ってみた 一部の工程では特許クラスのノウハウも公開することになるがこの技術を応用して発電効率が高い長寿命の太陽電池が製造され地球温暖化防止の一助になればと考える

  
7−1.物理的手法による不純物粒子の除去方法

  物理的手法だけでも、選別(手選鉱)、水洗(加熱急冷)、粗砕、粉砕、篩(ふるい)分け、水流分級、比重選鉱、磁力選鉱、静電選鉱など様々な工程があるが粉砕時に生じた石英微粉や微細鉄粉などのスライムを除去する水流分級は、浮遊選鉱などの界面化学的手法による精製装置と兼用することとし比重選鉱と静電選鉱は、元々不純物の少ない原料を使用しているため歩留りが悪くコスト削減を考えて省略する 従って、これらの工程で不純物を除去できるのは選別と磁力選鉱だけでその他の操作は後工程で不純物を除去し易くするために必要な準備工程である 以下、1t/hrの製品を生産する場合を例にとり各々の機械や装置の処理能力と留意点について簡単にまとめてみた 生産量を増やしたい場合は、それに見合った大型機械や装置を導入するか万が一の故障を考えて複数台を並列使用してもよい

(1)選別・水洗(加熱急冷)
  鉱石の選別は通常産地で行われ、運搬し易いサイズに割ってから手選鉱で汚れた塊を除去するのが通例であるが、表面の汚れは水洗によって除去でき更に表面が濡れた状態で内部の異物を透視して除去することも可能である 透視のための最適なサイズは5cm以下であるが、コストが掛かるために通常は袋詰めし易い15cm以下にして出荷されている
  一方、鉱石中に粒子として存在する不純物は、加熱急冷すると膨張率の差で粒界に亀裂が生じ、日本における後工程での除去を容易にするため産地で加熱急冷後に水洗と透視を行った方がコスト削減と品質管理上有効ではないかと考える つまり、加熱急冷のためにもサイズを5cm以下に揃え、水洗と透視選別後に袋詰めして出荷すれば日本で同じ作業をするよりも現地の方が安くできるはずで加熱急冷装置は可搬式のバーナータイプにして貸与すればサイズを小さくするコストと燃料代(ガスか燃料油)を含めても、FOB$10/t程度のアップで済むのではないかと考えられる 更に重要なことは、日本でジョークラッシャーなどで粗砕するとクラッシャーの磨耗鉄が混入しこの鉄は加熱によって磁石に付きにくい酸化鉄(α-Fe2O3)に変化するため、後工程での除去が困難になることである 産地でハンマーで割った方が鉄分の混入は少ない

(2)粗砕・粉砕・篩(ふるい)分け
  粉砕の目的は、製品の用途に合った粒度に揃えることと、不純物と石英粒を分離して選鉱し易いサイズに整えることにある つまり粒度は均一なほど良い訳で、過粉砕は極力避けなければならない 過粉砕の原因は、ボールミルなど粉砕機内の滞留時間が長いと最適な粒度に粉砕された石英粒が再度粉砕されるためで滞留時間を短くするには次の手法が有効である
   @ 湿式粉砕で供給水量を増やし、粉砕機内の流れを良くすること
   A そのためには、石英粒と媒体(ボールやロッド)が常に浮遊している振動ミルが良い
   B ミルの未消化を防ぐために、前工程の粗砕段階で、できるだけサイズを小さくすること
従って粗砕にはジョークラッシャーとロールクラッシャーを2段で使用し、粉砕には湿式の振動ミルを使用するのが最適な組合せだが振動ミルの粉砕媒体には太いロッドを使用する方が過粉砕が抑えられる 太いロッドほど歪みにくくロッド同士が線状に接するため粗粒の石英を優先して粉砕するのである 一方、ジョークラッシャーとロールクラッシャーは、原料のサイズを5cm以下にしてあればジョーやロールの間隙を狭く設定できるが両者(特にロールクラッシャー)での過粉砕は構造上起こらず振動ミルの腹下し(未消化)も防ぐことができる そして、振動ミルからスラリーポンプとサイクロンで粉砕物を高所に移動し振動篩で篩分けして粗粒を振動ミルに戻せば、効率の良い粉砕が可能となる

 a)ジョークラッシャー
  第一粗砕に使用するジョークラッシャーはどこのメーカー製でも構わないが、最大径15cmの珪石を粉砕できるものとし、最小隙間を1015mmと小さめにセットしても、1.5t/hrの処理能力があればよい ジョー(歯板)の材質としては通常は非磁性で耐摩耗性に優れた高マンガン鋳鋼が使用される 高マンガン鋼は後述するステンレス鋼(SUS304)と同じオーステナイト組織で摩耗などの強い歪みが加わるとマルテンサイト組織に変わって磁性を帯びるが摩耗片は比較的粗粒で後工程の振動ミルでも微粉砕されにくく磁選機で容易に除去できる 処理能力を上げるにはワンランク上の機種を選定すればよいがセットできる最小隙間が大きくなるので注意を要する 処理能力が1.5t/hrの目安となるモーターの出力は7.5kw程度で、ジョークラッシャーとしては小型の部類に属し、価格も250万円前後で差程高くはない また、摩耗した歯板は上下を逆にして再利用できる
  ガニーバック入りの原料は、解梱後にパンチプレート(SUS304)の作業台で検品し、ゴミや微粉を除いてから原料ホッパーに入れるが振動フィーダーでジョークラッシャーに投入して粗砕した後は一旦バケットエレベーター(SUS304)で高所に移動してから次のロールクラッシャーに投入した方がよい 原料処理作業のステージをできるだけ低くしたいためで原料ホッパーとジョークラッシャーの高さだけに抑えられれば原料が載ったパレットをフォークリフト(リーチ型)で持ち上げられる

 b)ロールクラッシャー
  第二粗砕に使用するロールクラッシャーは、ジョークラッシャーで15mm以下に粗砕した原料を23mmのロール間隙で粉砕するが、処理能力の割りには大きなモーターが必要で価格も高い このロール間隙で処理能力が1.5t/hrの目安となるモーターの出力は約15kwで、価格も500万円近くになるため、ロール間隙を5mmに広げてワンランク下の機種を選定してもよいが、後工程の振動ミルで過粉砕し易くなる 過粉砕によるロスを 5%としても、フル生産したら瞬く間に元が取れる計算でロールクラッシャーは大型の機種を選定した方がよい
  ロールの材質は表面研磨した高マンガン鋳鋼の一種で、やはり摩耗して混入した鉄粉は磁選機で容易に除去されるが摩耗して窪んだロールは研磨することによって再使用できるもののかなり時間が掛かるため予備のセットを準備しておいた方がよい ロールの型式がフラット型のロールクラッシャー(ロールブレーカー)で、ロール間隙を3mmにセットした場合のグラニュラークォーツの粉砕結果をジョークラッシャーの粉砕結果と共に下表にまとめた

サイズ (mm)   7.39↑   5.66↑   4.76↑   2.83↑   1.00↑   0.25↑  0.074↑  0.074↓
ジョークラッシャー 7.0 8.0 6.5 11.8 33.4 30.4 6.3 1.6
ロールクラッシャー 0.0 0.2 1.0 14.7 39.6 32.8 8.8 2.9
表 7-1 グラニュラークォーツのジョーとロールによる粉砕結果の一例(単位:wt%)

 c)湿式振動ミル(ロッド式)
  粉砕工程で一番重要な振動ミルは一番コントロールが難しく、機種の選定に当っては充分なテストが必要であるが粉砕効率が高い振動ミルは、同時にライニングや粉砕媒体の摩耗も大きいので導入後の実機での検証も重要となる 一般的な振動ミルは上下2ドラムの直列型で上段で粉砕された石英粉は下段で更に粉砕される しかし過粉砕を極力避けるためには、ドラムが水平に並んだ並列型が効果的で片側のドラムで磨鉱(粗砕で表面に顔を出した不純物を剥離する)を兼ねた予備粉砕を行い振動篩で篩分け後にオーバーサイズをもう一方のドラムで粉砕するという2段構えにでき装置の全高も低く抑えられる ちなみに、2ドラムを直列で粉砕した実験結果は、0.3mm↑が 3%と少ないが 0.074mm↓が 25%と多く、明らかに過粉砕となる しかし、1ドラムのみでは 0.3mm↑が 32%と多いものの、もう一方のドラムで粉砕でき、両者を合わせた 0.074mm↓が 10%以下に抑えられるのである。
  振動ミルのライニングとボールやロッドなどの粉砕媒体の摩耗度を比較した場合、ライニングよりも粉砕媒体の方が10倍以上摩耗するので摩耗度が小さいライニングにはゴムも使用できる しかし有機物の混入は避けるべきで、湿式で使用する場合はステンレス鋼(SUS304)などのライニングも有効である ステンレス鋼の摩耗粉が混入してもマルテンサイト組織に変わって磁性を帯びるようになるため磁選機での除去が可能であるが、逆に強磁性の軟鋼(SS41)を水中で使用すると酸化され易く微細な酸化鉄(赤錆)は磁石に着きにくくなるので注意を要する 同じことは摩耗度の大きい粉砕媒体にも言えるが、高価なSUS304はコストに影響するため、比較的安価(約半値)で磁石に着くSUS430の方が媒体に適している もしライニングや粉砕媒体にSS41を使用する場合は、原料を供給する前に30分程の空運転が必要でこれもコストアップの要因となる 鉄以外の媒体は後工程で除去しにくいため融点を低下させるアルミナ等は石英ガラスの用途に使用することはできない
  粉砕媒体には太いロッドを使用する方が過粉砕が抑えられことは既に述べた 通常使用するロッドの径は25mmで、これを30mm程度に太くするとよい。 これ以上太くすると1本のロッドが重くなって扱いにくい 更に供給する水量が多い場合も過粉砕を抑えられるが水量が多過ぎると次に述べる振動篩のオーバーフローが急激に増え目詰まりを起こして振動ミルに戻るため、これも過粉砕の原因となる しかしそれ以上に問題なのは、振動ミルが粉砕しきれなくなって腹下しを起こし循環するスラリー濃度が高くなってスラリーポンプが詰まってしまうのである 従って、原料の供給量とロッドの充填量と水の供給量のバランスが微妙であるが原料の供給量を1.5t/hrに固定すると、ドラムの容量が200リットル×2の振動ミルを使用してロッドを1500kg充填し、後は供給水量の調節だけでコントロールするしかない
  ドラムの合計容量が400リットルの振動ミルは約800万円とかなり高価で、モーターの出力も30kwでかなり大きいが通常のコニカルミルと比べると過粉砕を防止できるだけメリットはある 最も摩耗が激しいロッドの交換はは、3ロット(製品3t)につきドラム当たり1本分程度で、30φ×1800LSUS430(約10kg)が4千円程度の価格だったら差程のコストアップにはならない

 d)湿式振動篩(円形タイプ)
  振動ミルと同じくらい管理が難しいのが湿式の振動篩(ふるい)である セットした金網のアンダーサイズがオーバーフローしないようウレタンゴム製のタッピングと強烈なシャワーを併用して目詰まりを防止し過粉砕の原因となるアンダーサイズが全て通過するようやや大きめの機種を選定しした方がよい 振動ミルからスラリーポンプで揚がってきたスラリーをサイクロンで濃縮して振動篩に投入するがスラリーポンプとサイクロンを振動ミルのドラム毎別々の2系列にし振動篩も別々に2台使用した方が管理し易くなる つまり、2台目の振動篩のオーバーフローを極力抑えつつ常に一定量がオーバーするよう振動ミルの供給水量をコントロールし1台目の振動篩のオーバーフローは定期的にサンプルを取ってアンダーサイズの量が少なくて安定することに気を付けなければならない 振動ミルと振動篩をコントロールし易くするためにロールクラッシャー後の粗粉を一旦ホッパーに貯めてから振動フィーダーで原料を定量投入することも重要である このように、振動ミルの過粉砕と振動篩の目詰まりを防止するためには振動篩付近にオペレーターを常駐させ、振動ミルに供給する水のバルブと流量計及び振動フィーダーのコントローラーを手元に置いて管理するのも一法である
  振動篩を湿式(シャワー付き)で使用すると乾式よりも能力がアップするため、1.5t/hrを処理するには直径1000mmの円形篩で充分だが、価格差は余り無いので1200mmのワンランク上の機種を採用した方がよい 円形篩を選んだのは、振動モーターのウエイトの位相を変えることにより好みの篩分け効果が得られるためで金網の段数を2段にして1段目で少し荒目の金網を通して目詰まりを防止する効果と合わせより効率的な篩分けが可能となるからである 本体と金網の材質はSUS304とし、底部(パン)のみクロロプレンゴムのライニングを施せば側面の摩耗は位相の調節でかなり防げる 何れにしても2段式の円形篩にシャワーリング装置を付けると200万円近くになり、スラリーポンプとサイクロンを合わせて2系列で500万円もする重要な設備で、過粉砕防止に留意しなければ半額以下で済むのである
  ここまでの粉砕と篩分けの工程で、処理能力に直接影響する機械の総額は約2050万円になり、過粉砕を無視すると1600万円で済む 差額の450万円を金利は入れずに10年で償却すると、月産150トンと少なめに見積もっても 0.25/kgになり、50/kgもする原料が過粉砕で10%もロスすることを考えれば、いかに安いか分かるはずである 別の見方をすれば、過粉砕によって生産量が10%も減ることになり、仮に売り上げが1億円/月だったとすれば、実に1千万円も毎月失われるのである。

(3)磁力選鉱
  湿式の振動篩で篩分けした石英粉は、湿式マトリックス型高磁力磁選機に通して、粉砕工程で分離した不純物粒子を除去するが同時にジョークラッシャーとロールクラッシャー及び振動ミルで混入した粉砕媒体の鉄粉も除去しなければならない 特に、媒体の鉄粉は磁性が強くて高磁力磁選機のマトリックス(格子型エレメント)を詰まらせてしまうため前段階で磁力の弱いシンプルなドラム型磁選機で除去しておく必要がある 一方、高磁力磁選機は上下2段式にして、上段は高磁力可変型(max.10kGauss)で微細鉄粉と強磁性の不純物を除去し下段の超高磁力磁選機(2030kGauss)で弱磁性の不純物を除去する合計3段構えの磁力選鉱が有効である
  参考までに、23万ガウスの超高磁力磁選機で除去可能な、ペグマタイト中に含まれる鉱物の磁気的性質(磁性)を一覧表にした 単位は1000ガウスであるが、鉱物の状態によってかなり幅があることに留意されたい

鉱物名 組成(結晶水を除く) 頻度 粒子の外観 比重 磁性 酸溶解 浮選
(粉砕鉄) Fe(Cr,Ni,Mnを含む) 黒灰(不透明) 7.8 0.1〜1 ◎希酸 イオン
磁鉄鉱 Fe2O・Fe2O3 黒(金属光沢) 5.2  1〜3 ◎塩酸 陰3〜5
チタン鉄鉱 Fe2O・TiO2 黒(金属光沢) 4.8  3〜5 ○弗酸 陰5〜7
赤鉄鉱 α-Fe2O3 赤褐(不透明) 5.3  7〜15 ○弗酸 陰3〜5
金紅石 TiO2(数%Feで置換) 赤褐色(透明) 4.2〜4.3 20〜40 △硫酸 陰5〜7
黄鉄鉱 FeS2 金色(不透明) 5.0 30〜40 ○硫酸 陰5〜7
黄銅鉱 CuFeS2 金色(不透明) 4.1〜4.3 ○硝酸 陰・陽
銅藍 CuS 藍青(不透明) 4.6 ◎硝酸 陰・陽
黒雲母 K2O・6(FeO,MgO)・Al2O3・6SiO2 黒褐片(半透) 2.9〜3.2  5〜10 ○弗酸 陽・陰3
鉄柘榴石 3CaO・(Fe2O3,Al2O3)・3SiO2 緑褐粒(半透) 3.6〜3.7  7〜15 × 陰3〜4
電気石 Na2O・6(FeO,MgO)3B2O3・6Al2O3・12SiO2 黒褐柱(半透) 3.0〜3.2 10〜30 ○弗酸 陰3〜4
Al柘榴石 3(MgO,FeO)・Al2O3・3SiO2 赤黒粒(半透) 3.6〜3.9 20〜40 × 陰3〜4
角閃石 (2CaO,Na2O)・5(MgO,FeO)・4(2SiO2,Al2O3) 緑褐柱(半透) 3.2〜3.3 20〜40 ○弗酸 陰5〜6
緑泥石 3(MgO,FeO)・Al2O3・4SiO2 暗緑片(透明) 2.6〜2.9 20〜40 ○弗酸 陽3〜4
紅柱石 Al2O3・SiO2 淡紅柱(半透) 3.2〜3.3 × 陰3〜4
白雲母 K2O・3Al2O3・6SiO2 無色片(透明) 2.8〜3.1 △弗酸 陽2〜3
正長石 K2O・Al2O3・6SiO2 白桃柱(半透) 2.57 ◎弗酸 陽2〜3
曹長石 Na2O・Al2O3・6SiO2 無色板(透明) 2.62 ◎弗酸 陽2〜3
灰長石 CaO・Al2O3・2SiO2 無色板(透明) 2.76 ◎弗酸 陽2〜3
(石英) SiO2   無色(透明) 2.65 ○弗酸 陽7〜8
表 7-2 ペグマタイト中に含まれる各種鉱物の選鉱方法 (磁性の単位:千ガウス)(浮選の数字はPH)

 a)湿式ドラム型磁選機(1〜2千ガウス)
  湿式振動篩から排出された石英粉と水のスラリーは多量の粉砕鉄を含んでいて、このまま高磁力磁選機を通すと目詰まりを起こすため比較的低磁力の永久磁石を用いたドラム型磁選機で除去しなければならない ドラム型磁選機はドラム表面の磁場強度が1500ガウス程度で 5cm離れると半減するが、スラリーをできるだけ薄めて23cmの隙間を通せば、SUS430はもちろん、SUS304や高マンガン鋼の摩耗粉もほぼ完全に除去される しかし微粒の粉砕鉄は相対的磁性が弱く給鉱の流れが速くなると磁選機を通過してしまうため磁気ドラムの幅が大きい機種を選定して流速を抑えればよいが底板にイボ状の突起があるゴムシートを張り付けて流れを乱すと同時に底板の摩耗を防ぐ対策も有効である 逆に、振動ミルのライニングやロッドに強磁性のSS41を使用した場合は、スラリー濃度が高めでも容易に除去されるが粉砕鉄が磁化し易く、磁性物の排出口に大きな塊を形成して流れを悪くするので定期的に除去しなければならない しばらく放置すると酸化されて固化するので注意を要する
  原料の処理量が1.5t/hrで粉砕媒体にSS41を使用する場合は、磁気ドラムの幅は400mm程度で充分だが、実機試験の結果で2t/hr程度に能力アップしたり、粉砕媒体をSUS430などに変える場合を考えて、最初から600mm幅の機種を選択した方がよい 一部ゴムライニングを施した400mm幅のドラム型磁選機は120万円程だが、600mm幅にしても150万円は越えない。 一見簡単な装置に見えても、使い方によっては価格以上の能力を発揮するので、600mm幅を2段式に設計してもらうこともできる

 b)湿式高磁力磁選機(1万ガウス)
  湿式高磁力磁選機は磁場強度の違いにより数種類のタイプがあるが、磁性鉱物の種類や含有量によって磁場強度を変えて選鉱するのが一般的である しかし、元々不純物の少ないグラニュラークォーツを原料にした場合次に述べる超高磁力磁選機だけで十分だが構造が単純なドラム型磁選機では除去できなかった相対的な磁性が弱い微粒粉砕鉄を完璧に除去することを考えれば超高磁力磁選機の前に通常の高磁力磁選機で処理した方がよい 但し、ドラム型磁選機を通過してしまった微粒粉砕鉄が多い場合、磁場強度が強過ぎると磁化してマトリックスを詰まらせてしまうため磁場強度を010kGaussの可変型にして実機試験を行う必要がある もしドラム型磁選機でほぼ完璧に除去できていれば、最大の10kGaussにセットすることにより、次の超高磁力磁選機の負荷を軽減すると共に不純物のなかでも磁性の強い磁鉄鉱やチタン鉄鉱と黒雲母はこの段階で殆ど除去されるのである
  磁場強度が10kGaussの湿式高磁力磁選機は、処理量1t/hrで約500万円とロールクラッシャー並の価格だが、消費電力は約3kwとかなり少ない 定格の処理量が1t/hrと少ないのは、国内珪砂などの不純物が多い原料を処理するため、給鉱濃度を約25%と少なめに設定しているからで、不純物が少ない場合は最大35%まで上げられる しかし実機試験では、振動篩の強烈なシャワーで大量の水を加えているにもかかわらず、1.5t/hrは問題なく処理でき、ドラム型磁選機の後に小型のサンドコーンでも設置して余分な水と超微粉をオーバーフローさせれば、2t/hrの処理も可能である 但し余り濃度を高くし過ぎるとマトリックス(格子型エレメント)に石英粉が残留して歩留りが低下するので注意を要する

 c)湿式超高磁力磁選機(2万ガウス)
  上記の高磁力磁選機と同様に、マトリックスを使用して磁場強度を高めている回転トラフ(樋)型で、空芯磁場が20kGaussもあるトラフ内に、強磁性の鋼板(実際は加工し易いSUS410)をエクスパンド状に加工した格子型のマトリックスを充填しマトリックスの角(尖った部分)に磁力が集中することにより、理論的には30kGauss近くの磁場を発生させている マトリックスの網目を細かくすれば角が増えて分離効率がアップするが処理能力が低下するというジレンマがあるものの条件さえ合えば、表 7-2にある磁性鉱物の殆どが除去可能で、更に空芯磁場が30kGauss位の電磁石が開発されればこれらの磁性鉱物を内包して浮遊選鉱では除去できない石英粒もかなりの確率で除去できるようになる
  空芯磁場が20kGaussの超高磁力磁選機は、定格処理量が1t/hrで約750万円と振動ミル並の価格になるが、消費電力は約10kwと通常の高磁力磁選機よりかなり増え、空芯磁場が30kGaussだと、軽く1000万円を越えて消費電力も40kwに達すると予想される むしろ価格は同じ1000万円でも、空芯磁場が20kGaussで定格処理量が3t/hrの機種(約28kw)を採用し、マトリックスの網目のサイズを1/2にすれば尖った角が4倍に増えて、処理量を1/3に減らせる分も加味すると分離効率が12倍になり、定格処理量が1t/hr30kGaussと同程度の効果が得られるかもしれない もちろん、実際の処理量は定格の1.5倍に設定できることは、上記の高磁力磁選機と同様である
  このように、磁力選鉱でほぼ完璧な不純物の除去にこだわる理由は、後工程の浮遊選鉱では、たとえば雲母浮選の1工程が省略できるためで浮選前の脱スライムもドラム型磁選機の後のサンドコーンで終わらせてしまえば合計で3時間程の時間短縮につながる つまり、後述するバッチ式攪拌混合槽がフル操業時に3台(約200万円×3)不要になり磁選機の増額分をカバーできること以上に人件費の節減にもなるのである

  
7−2.界面化学的手法による不純物粒子の除去方法           目次:

  磁力選鉱によって粉砕鉄粉の大部分と磁性不純物の大半を除去したスラリー(水に浮遊する石英粉)は、超微粒の鉄粉を含んでいるため水流分級で石英微粉と共に除去しておく必要がある これらのスライムは浮遊選鉱の効率を低下させると同時に、後工程の酸処理で使用する混酸(H2SO4HF)を汚染するため、混酸のリサイクル使用が困難になるのである 水流分級にはバッチ式の上昇水流分級装置を磁力選鉱の後に設置するが浮遊選鉱や酸処理用のバッチ式攪拌混合槽で兼用することもできる
  一方、界面化学的選鉱法の代表である泡沫浮遊選鉱は、不純物濃度の高いスラリー(=パルプ)に界面活性剤を加えて不純物に吸着させ泡沫と共に除去する方法であるが、不純物の極端に少ないスラリーでは不純物と共に石英粒も泡に付着して持ち去られる割合が多くなり歩留り低下の割りには品位が向上しないのが実情である 従って、不純物の少ない石英粒の浮遊選鉱は比較的低濃度で水量の多いスラリーを混合槽で良く攪拌し添加する捕収剤の量も少なめにして時間を掛けて行うとよい

(1)水流分級によるスライムの除去と予備酸洗
  スライムを除去するための水流分級は、通常は7−5で述べるように、超高磁力磁選機の下に設置したタンクからスラリーポンプで連続的に移送しサイクロンで水をしぼって上昇水流分級装置に1ロット分を貯めた後下部から水を供給してゆっくりと微粉(スライム)をオーバーフローさせるが各装置の互換性を持たせるためにバッチ式攪拌混合槽にも水流分級の機能を付加しておくとよい 水流分級にバッチ式攪拌混合槽を用いる場合底面にフィルターが組み込んであるため水が排出されて攪拌機のプロペラが埋まらない程度まで石英粉を貯められる そして、底部から水を逆流させながら攪拌機を回せばオーバーフローと共に微粒のスライムが排出されるのである
  オーバーフローが始まったら攪拌機の回転数を落として水流を絞り、ゆっくりと時間を掛けて石英微粉と超微粒の鉄粉を取り除くが攪拌機の回転数と水量と処理時間の関係はオーバーフローに含まれる石英微粉の量と粒度のデータを取って操業時のマニュアルに反映させなくてはならない 過度の攪拌と多過ぎる水量は、歩留りを著しく低下させるので注意を要する 水流分級の終了後は底面のフィルターを通して真空脱水を行いリサイクル混酸の充填後に攪拌機を回して不純物の粒子表面を活性化するための予備酸洗を行うが酸洗については7−3項で詳しく解説する 予備酸洗が終了したら真空脱水して混酸をリサイクルタンクに戻し簡単な水洗を行ってから次の浮遊選鉱の工程に入る

(2)浮遊選鉱の原理
  ペグマタイト中に含まれる各種鉱物(表 7-2参照)は、粒子表面の性質が程度の差こそあれ疎水性(親油性)と親水性に分けられるが、疎水性の鉱物はもちろん親水性でも適当な界面活性剤によって疎水化された粒子を気泡に付着させその気泡(フロス)を水面上に浮遊させて掻き出すことで特定の鉱物粒子を分離するのが浮遊選鉱の原理である
  疎水性の鉱物としては、ダイヤモンドや黒鉛、硫黄などの元素鉱物や、黄銅鉱や銅藍(どうらん)などの硫化鉱物の一部が挙げられこれらは共有結合の占める割合が大きく表面がイオン解離しにくい無極性であるためどのような条件下でも泡に付着して浮遊する しかし、不純物の大半を占める酸化鉱物や珪酸塩鉱物は共有結合の他にイオン結合の性質も持った有極性であるため表面がイオン解離し易く親水性となって水やアルコールなどの有極性液体に濡れ易くなるが鉱物の種類によっては共有結合とイオン結合の割合に差があり、水溶液のPH次第で表面がマイナスイオンに解離するかプラスイオンに解離するかの差が生じるのである 両イオンが等しく存在するPHを等電点と呼び、等電点よりも酸性側ではプラスイオンが多くなり陰イオン捕収剤(界面活性剤)のマイナスの極性基が鉱物粒子(鉱粒)に吸着されて反対側の非極性基(アルキル基)が表面を覆うようになり鉱粒の表面が疎水化されて泡に付着し浮遊する そして逆の場合も同様で、鉱物ごとに固有の等電点の差によりPHを調節して陽イオン捕収剤と陰イオン捕収剤を使い分ければ特定の鉱物だけを浮遊させて除去することができる
  一般に石英を含めた金属酸化物(酸化鉱物)の表面は、金属原子(Me)と酸素(O)の結合が切断されているため、水中(H-OH)では表面が水酸化物(MeO-H,Me-OH)になっているが酸素との結合力が弱いアルカリ(土類)金属はプラス(Me+OH-)に解離し易いため、等電点はアルカリ性側に寄り酸素との結合が強い珪素(Si)やチタン(Ti)は酸性側に寄って、3価の鉄(Fe)やアルミニウム(Al)等は中性〜弱アルカリ性になることは、表 6-2H-OHの結合力(120kcal/mol)と各金属の酸素との結合力の差からも推測できる。 実測値でも、石英(SiO2)のPH3、金紅石(TiO2)のPH5、磁鉄鉱(FeOFe2O3)や赤鉄鉱(Fe2O3)のPH7、コランダム(Al2O3)のPH9とかなり一致している また、アルカリ(土類)金属(Na,K,Ca,Mg,etc.)の酸化物は不安定で単独の鉱物としては存在しないが珪酸塩鉱物の一部を構成していてその比率が高いほど石英よりも中性側に等電点が移動している このように石英の等電点が低い理由は、≡Si-OH の結合力が他の金属酸化物よりも大きいためで、≡Si+へのイオン解離が起きにくく、PH3より中性側の領域では≡Si-O-H+の形でマイナスに解離するが、酸性度が強くなってH+イオンが増えてくると、≡Si-OHH+→ ≡Si+H2O と切断されてプラスに解離するのである
  一方、同じ珪酸塩鉱物である長石と雲母を浮選する場合は様相がかなり異なる 長石類の等電点は石英とほぼ同じと考えられ通常の浮遊選鉱では分離が難しいものの、PHの調節に弗酸(HF)を用いれば、PH3以下の強酸性領域でも陽イオン捕収剤によって長石が浮遊してくる これは弗酸が長石の表面を溶解し、≡Si-O-NaF- → ≡Si-O-NaF のように、酸素(O)と結合しているナトリウム(Na)やカリウム(K)をイオン化して、長石の表面がマイナスに解離するためと考えられる このことは、表 6-2 にあるNaKの、OFに対する結合力の差からも理解できるが前述のように、≡Si+イオンまで解離しないのは弗酸が弱酸だからである また、雲母類は等電点がPH3.5程度で石英のPH3とは差があり、PH3.0で陰イオン捕収剤を使用すれば浮遊させることができるが条件幅が狭すぎて浮選の効率が悪い しかしPH調節剤に硫酸(H2SO4)を用いれば、雲母の破砕面(へき開面)を覆っているK+イオン(図 4-17参照)が硫酸のSO4 2-イオンに引っ張られて、雲母の表面がマイナスに解離するため、PH3.0以下でも陽イオン捕収剤で浮遊するのである。 PH調節に塩酸(HCl)や硝酸(HNO3)を使用した場合は、K+イオンとの結合力が硫酸イオンより弱く、弗酸(HF)を使用すると、雲母類の鱗片状の表面を覆っているSiO4四面体層が弗酸で溶解され直ぐ下層の金属酸化物からなる八面体層(図 4-16参照)が顔を出して、酸性領域でプラスに解離するため、陽イオン捕収剤では浮遊しなくなる

(3)浮選剤の種類と調製
  このように浮遊選鉱の原理は複雑で、更に使用する浮選剤にも様々な種類があり目的に応じた使い分けが難しい しかし、原料にグラニュラークォーツを使用する場合は不純物の絶対量も少なくパルプ(石英粉の)濃度を薄くしてやればどんな浮選剤を使っても浮遊してくるという面白い挙動を示すのである 従って、浮選剤は極力シンプルな薬品を少量使用し後処理工程で容易に除去できるものに限定した なお、下記した各浮選剤のグラム数は1バッチの石英粉1トン当たりの添加量で、浮選剤の混合液を添加後にパルプ濃度40wt%前後で攪拌してから希釈し、粗粒(0.10.3mm)の場合は30wt%前後で、細粒(0.020.1mm)の場合は添加量を倍増して20wt%以下で浮遊選鉱するとよい

 a)アミンクロライド混液(陽イオン捕収剤)
  @ アミン塩酸塩捕収剤:30g/t÷0.650g/t
      ファーミン R24H(花王)〜ココナツアミン(60%)メタノール溶液
         CnH2n+1NH3ClC8C1015%C1250%C14C1625%
         水中でCnH2n+1NH3+Cl-に解離する
  A 起泡剤:150〜250g/t
      ノニオン HS-215(日本油脂)〜オクチルフェノールエーテル
         C8H17-ベンゼン環-O(C2H4O)15H (凝固点18℃、水溶性、ケロシン不溶)
         長鎖のアルキル基を持つ捕収剤ほど捕収力は強いが泡立ちが弱くなるため
         アルキル基の比較的短い非イオン性起泡剤を加える 添加量は実機で検証
  B 燃料油:100〜200g/t
      石油ベンジン(ベンゼン,トルエン,キシレン,n-ヘキサン等、初留点38℃、終点140℃)
         装置内にガスが充満しないよう、80℃位で加熱し揮発成分を除去した方がよい
         捕収剤が形成した疎水膜(親油性)を薄く覆って、気泡に着き易くするため添加
         ケロシンの方が効果的だが、終点が280℃と高くて真空乾燥では除去できない
  C 溶剤:50g/t
      イソブタノール〜C4H9OH (@〜Bが良く混ざらない場合入れる
         タンクの壁にアミンが付着するのを防止する働きもある

 b)アルキル硫酸混液(陰イオン捕収剤)
  @ アルキルスルホン酸塩捕収剤:120g/t÷0.6200g/t
      ニューレックスペースト H(日本油脂)〜ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(約60%
         C12H25-ベンゼン環-SO3Na (淡黄色ペースト状、水溶性、ケロシン不溶)
         水中でC12H25-ベンゼン環-SO3-Na+に解離する
  A 起泡剤:50〜100g/t
      ノニオン HS-215(日本油脂)〜オクチルフェノールエーテル
         C8H17-ベンゼン環-O(C2H4O)15H (凝固点18℃、水溶性、ケロシン不溶)
         陰イオン捕収剤の方が添加量が多くて泡立ちも良いので、起泡剤は少なくて済む
  B 燃料油:50〜100g/t
      石油ベンジン(ベンゼン,トルエン,キシレン,n-ヘキサン等、初留点38℃、終点140℃)
  C 溶剤:100g/t
      イソブタノール〜C4H9OH (@〜Bが良く混ざらない場合入れる

  a)とb)の混合液はポリ容器に入れて密閉保管し、1ロットの浮選毎にタンクに投入するとよい

 c)PH調節剤
  通常は硫酸や弗酸を少量滴下してPH調節を行うが、浮遊選鉱前に使用したH2SO4HF混酸の真空脱水残液を活用して、水で希釈するだけでPH2(長石浮選)〜PH5(鉄浮選)に調節するとよい。 しかし硫酸は非常に強い酸なので、一回だけの希釈ではPH値が上がらず、次節でも述べるようにH2SO4HFの混酸処理で発生した超微粉のコロイダルシリカを除去するための水流分級を兼ねて、目標のPHに上がるまでゆっくりオーバーフローさせることも一法である

 d)後処理用薬剤
  石英粒の表面に付着した捕収剤は、長鎖のアルキル基(CnH2n+1)を有しているため容易には離脱せず、乾燥しても僅かに残留して石英粉の流れが悪くなるため浮遊選鉱が終了した時点で次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を50100g/t投入し、良く攪拌する必要がある 次亜塩素酸ナトリウムは家庭でも使われている漂白剤で強力な酸化剤でもあるが、疎水被膜を酸化して破壊する作用があり陽イオン捕収剤と陰イオン捕収剤を連続して使用する場合は特に有効である
  一方、起泡剤を添加し過ぎると泡がなかなか消えず、後工程の混酸洗浄に影響することがあるので、消泡剤としてエマルジョンタイプのシリコーンオイルを使用するとよい この場合は最初に50g/tを加え、様子を見ながら更に50g/t加えるという方法が効果的である また、浮遊選鉱の過程で泡が出過ぎると物理的に石英粒を巻き込んで歩留りが低下することもあり水で希釈したエマルジョンを、原液換算で約10g/tずつ数回に分けて添加するのがコツである 更に図 7-1にも示したように、スクレーパーで掻き出された泡沫は排水溝から溢れ出るため希釈した消泡剤をシャワーで少量添加するとよい

(4)バッチ式浮遊選鉱
  浮遊選鉱はバッチ式攪拌混合槽(図 7-1)を使用して、雲母浮選→鉄浮選→長石浮選の順に行い、雲母浮選と鉄浮選の終了後にリサイクル混酸(H2SO4HF)による酸洗工程をはさむと石英粉に残留している混酸を浮遊選鉱のPH調整に利用できるが、残留HFは雲母の浮選を妨害するため上記の浮選の順番を考えた しかし前述したように元々不純物の少ない石英粉の浮選は捕収剤の種類による選択性が乏しく特に黒雲母や金雲母などの弱磁性の雲母類は念を入れた磁力選鉱でかなり除去されていることと、予備酸洗の弗酸でSiO4四面体層が溶解し、金属酸化物の八面体層が表面に現れて鉄浮選でも除去できるようになるため雲母浮選は省略してもよい

 a)雲母浮選(雲母類の除去)
  次節でも述べるようにH2SO4HF混酸の廃酸は、HFSiO2と反応してH2SiF6に変化し、HFの能力を失ったと思っていたが硫酸の存在下で加水分解が起こり、その量は少ないものの再びHFが生成して、雲母の表面を溶かしていたことが分かった つまり、磁力選鉱後にリサイクル混酸で洗浄してしまうと上記したように金属酸化物の八面体層が表面に現れ陽イオン捕収剤を使用した通常の雲母浮選はできなくなる 従って、リサイクル混酸による予備酸洗は雲母浮選の後に行うとよい
  磁力選鉱が終了して上昇水流分級装置で粗粒と細粒に分けられた石英粉はバッチ式攪拌混合槽に水と共に移送し攪拌機を回しながらパルプ濃度が3040%になるよう底部からフィルターを通して排水される 次にPH3になるまで硫酸を滴下して、アミンクロライド混液を約500g/t投入後、オーバーフローする直前まで温水を補給し攪拌混合槽の下部のエアノズルから空気を吹き出すと多量に発生した泡と共に雲母類が浮遊してスクレーパーで掻き出される 一般に鉱物粒子と浮選剤の反応には時間が掛かり浮選前に良く攪拌しなければならないが、アミン系の浮選剤は吸着反応が非常に速く浮選剤の投入と同時に浮選を開始しても差し支えない 浮選時のパルプ濃度は粗粒で約30% 細粒では約20%を目安とするが、1030%の間であれば問題ない 温水で希釈するのはアミンを溶解し易くし、浮選条件を一定(3040℃)にするためだが、過度の加熱は選択性を低下させる場合があるので注意を要する

 b)鉄浮選(粉砕鉄と金属酸化物の除去)
  雲母浮選の終了後は、次節の(1)a)でも詳しく述べるようにリサイクル混酸で洗浄して脱水するが、H2SiF6が硫酸で加水分解されて発生した超微粉のコロイダルシリカは鉄浮選を行う前に攪拌混合槽の下部から水を供給してゆっくり攪拌しながらオーバーフローさせて除去しなければならない また雲母浮選で使用した陽イオン捕収剤は混酸洗浄することにより大部分は分解されるのであらためて次亜塩素酸ナトリウムで洗浄する必要はない
  超微粉シリカを除去した後、攪拌機を回しながらパルプ濃度が4050%になるよう底部からフィルターを通して排水し、PH4を越えている場合は硫酸でPH34にして、アルキル硫酸混液を約500g/t投入後、20分程経ってからオーバーフローする直前まで温水を補給し、攪拌混合槽の下部のエアノズルから空気を吹き出すと多量に発生した泡と共に含鉄鉱物や微粒の粉砕鉄が浮遊してスクレーパーで掻き出される 含鉄鉱物の大部分は超高磁力磁選機で除去されているはずだが磁性の弱い赤鉄鉱の微粒子や柘榴石類電気石、角閃石、緑泥石などは残留している可能性があり特に粉砕鉄の微粉はすでに酸化されて弱磁性に変わっているため赤鉄鉱と同じ条件で浮遊してくるのである もちろん、雲母浮選で除去しきれなかった黒雲母も混酸洗浄で表面が活性化されて鉄浮選で除去することができ金紅石や紅柱石まで幅広い鉱物が浮いてくる
  表 7-4 の分析結果Bから推測すると、Aの予備酸洗に引き続きFeの他に、K,Ca,Mgもかなり減少していて赤鉄鉱の他に黒雲母や鉄柘榴石なども除去されているのではないかと推測できる そしてTiの減少幅は、@〜Fの各段階でBが一番大きいことが注目される 通常、Siは同じ4価のTiと置換され易く、石英の結晶内に均一に取り込まれているためどんな選鉱や酸洗を行っても減少させることは難しいので、このTiは明らかにチタン鉄鉱や金紅石から来ているものと考えられる しかし、Coが大幅に減少している理由は分からない

 c)長石浮選(長石類の除去)
  鉄浮選の終了後は、次節の(1)b)でも述べる本酸洗の後に脱水するが、超微粉のコロイダルシリカが生成される前に酸洗を止めているのでオーバーフローさせて除去する必要はない 本酸洗で使用したH2SO4HF混酸が僅かに残っている状態で攪拌混合槽の底部から水を供給して攪拌機を回し、パルプ濃度が3040%になったら水を止めて、PH23になっていることを確認し、アミンクロライド混液を約500g/t投入後、オーバーフローする直前まで温水を補給して攪拌混合槽の下部のエアノズルから空気を吹き出すと多量に発生した泡と共に長石類が浮遊してスクレーパーで掻き出される 浮選時のパルプ濃度は粗粒で約30% 細粒では約20%を目安とするが、1030%の間であれば問題ない 粗粒のパルプ濃度を高めに設定するのは大きな粒子は付着した泡だけでは上昇しにくいがパルプ濃度を高くすると浮力が働いて浮き易くなるためで逆に濃度が高過ぎると歩留りが低下するので注意を要する
  表 7-4 の分析結果Dから推測すると、AlNaは大幅に減っているが、KCaは差程でもなく、曹(Na)長石は弗酸に比較的溶解しにくいため、漸く長石浮選で除去できたものと思われる 次節でも触れるが、薄い弗酸でも正(K)長石はかなり溶解していて、次に灰(Ca)長石、曹(Na)長石の順に溶解し易い しかしこの曹(Na)長石でも、石英よりも遥かに溶解し易いのは事実である

 d)後処理
  各々の浮遊選鉱終了後は、シリコーンオイルを少量添加して泡を消しておいた方がよい そして、長石浮選の後に改めて酸洗を行わない場合は次亜塩素酸ナトリウムを50100g/t投入して良く攪拌する必要がある 強力な酸化剤で疎水被膜を酸化して破壊し真空乾燥では蒸発しない被膜を除去しておかないと製品を扱う上で流動性に支障が出たりアーク炉などで高速溶融して石英ガラスを製造する際に気泡の原因にもなる 特に流動性が悪いと、7−4で述べる高温処理の炉心管で石英粉の移動がスムースに行われなくなるので注意しなければならない

  
7−3.化学的手法による粒界不純物の除去方法           目次:

  超高磁力磁選機を通しても残留する微粉の粉砕鉄や含鉄鉱物は、表 7-2に示したように強酸に溶解するものが多く浮遊選鉱の前処理を兼ねた酸洗浄が効果的である 鉱物の種類によっては、効率よく溶解する酸の種類はまちまちであるが鉱物の種類ごとに別々の酸で洗浄すると、コストと時間と排水処理が煩雑になるので強磁性の磁鉄鉱と、浮遊選鉱で除去し易い黄銅鉱と銅藍を除けば粉砕鉄を含めた殆どの含鉄鉱物は硫酸や弗酸に溶解するので、H2SO4HF混酸の一種類で酸処理するのがよい
  しかし弗酸を使用すると、地方によっては排水中のF-イオンを6ppm以下に抑えなければならないという規制があり、排水処理がかなり大げさになってしまう 実際、10%の弗酸だけで酸処理した場合、石英や他の珪酸塩鉱物を溶解して SiO2+6HFH2SiF6+2H2O となり、H2SiF6(フルオロ珪酸)に代わって酸としての能力を失ってしまうため、全量排水処理しなければならない そして、排水規制を守るために過剰の消石灰Ca(OH)2を加えて中和すると、石英製品トンに対して約0.5トンの消石灰を消費するのである つまり、石英製品トン当たり250kgも使用する高価な弗酸(50%)に中和剤のコストとスラッジ(大半は未反応の消石灰)の処理代を加えただけで、100円/kg近くのコストアップになり、合わせて大型の排水処理設備が必要だった
  これに対して10H2SO45HF混酸を使用する場合は、後述するように使用済みの廃酸をリサイクルすることによって酸処理後の真空脱水で石英粉に付着して失われる分だけ常に補充すれば、大幅なコストダウンに繋がるのである たとえば、石英製品トンに対して失われる混酸の量を100kgとすれば、補充する弗酸(50%)は10kgで済み、排水処理に使用する消石灰も20kgに減少して、排水処理設備も小型にでき、硫酸や弗酸の受入れタンクも不要となる

(1)H2SO4HF混酸洗浄

 a)鉄浮選前の予備酸洗
  下図のバッチ式攪拌混合槽で雲母浮選を行った石英粉は、次の鉄浮選の前処理として、真空脱水後にリサイクル混酸を石英粉トンに対し1.25トンを混合槽の下部から充填し、同時に下向きの攪拌機を時間程回転させるが混合槽の下部円周端の石英粉の動きを良くするために浮選で使用するエアノズルから空気を吹き出させて混合を助ける そして予備酸洗終了後、使用済みの混酸を真空脱水してリサイクルタンクに戻し混合槽の下部から水を充填して次の鉄浮選に備える
  表 7-4 の分析結果からも分かるように、@の水流分級による脱スライムの後にAの予備酸洗を行った結果、FeNiが著しく減少している これは振動ミルのライニングにステンレス(SUS304)使っているためである 通常SUS304は磁石に着かないが溶接したり強い歪みを加えるとオーステナイト組織が一部マルテンサイト組織に変わって磁石に着くようになる しかし、10μ以下の超微粉は超高磁力磁選機を以てしても除去しきれておらずこれは粉砕媒体に強磁性の鋼材(SS41)を使用しても同じことで、磁力選鉱の前処理としてサンドコーンタイプの沈降分離装置で鉄の超微粉末をオーバーフローさせた方が良いかも知れない
  また同様に、AlKもかなり減少していて、正(K)長石が溶解されたと推測できるが硫酸と弗酸の混酸廃液では弗酸がH2SiF6(フルオロ珪酸)に代わっているはずなのになお長石を溶融できる理由として硫酸(強酸)の存在下で次の加水分解が起こっていると考えられる
     H2SiF6 + 2H2OSiO2(コロイダルシリカ) + 6HF  〔可逆反応〕
つまりフルオロ珪酸は加水分解によって超微粉末石英のコロイダルシリカを析出し再び弗酸(弱酸)に戻って石英の表面や正長石を溶融していたのである 常温でのリサイクル混酸中の弗酸濃度は%前後と考えられ、正長石を溶融するには充分な濃度であるが廃酸のリサイクルタンク(ポリエチレン製)で約50℃に加熱すれば、フルオロ珪酸の加水分解が更に進み弗酸の濃度も数%に上昇すると予想される このように硫酸と弗酸の混酸は“打出の小槌”となって弗酸を再生し続けるが生成したコロイダルシリカは浮遊選鉱の妨げとなるので、水流分級で除去した方がよい

 b)長石浮選前の本酸洗
  鉄浮選の終了後に簡単な水洗(リンス)を行って真空脱水し、混合槽の下部からリサイクル混酸を石英トン当たり1.25トン充填して、攪拌を開始すると同時に新しい硫酸(98%)と弗酸(50%)を各々10kg補充する 攪拌は1〜2時間でよいが、基本的には新しい弗酸が全量フルオロ珪酸に変化するまでとし上記したようなコロイダルシリカが浮遊し始める前に終了して、廃酸をリサイクルタンクに戻す 最後に真空脱水して下部から水を充填し、次の長石浮選に備える
  表 7-4 の分析結果Cから、本工程によって引き続き長石類を溶解しているのは明らかであるが、新しい弗酸の効果で曹(Na)長石と灰(Ca)長石が大幅に減少していることが分かる 恐らく予備酸洗ではHFの濃度が低いために曹長石と灰長石を余り溶解できなかったのではないかと考えられる 一方、粉砕鉄の残りは本酸洗でほぼ完全に除去されたと判断できるが実際の操業では完璧を期するためにこの後の長石浮選終了後に再度新しい硫酸と弗酸を各々10kg添加し、長石浮選の浮選剤の除去を兼ねた仕上げ酸洗を行うことをお勧めする

(2)バッチ式攪拌混合槽の設計と耐酸・耐摩耗対策
  酸洗浄に使用するバッチ式攪拌混合槽は、浮遊選鉱と水流分級の装置も兼ねているため、その設計にはかなり苦労した つまり、浮選機は攪拌と空気混和に重点を置きつつ浮遊した鉱物を迅速に除去するためには比較的浅い混合槽が理想なのに対し水流分級は攪拌よりも底部からの水の流れを重視しつつ充分な高さを確保しなければならないからである また、強度的に最も注意しなければならない箇所は底盤と胴体の間に挟むフィルター(テトロンクロス)で下部は底盤から支柱で保持されたFRP製パンチプレートで押さえられるが上部は胴体の内側に塩化ビニル(PVC)製のパンチプレートを載せて、溶接(重要)された塩ビボルトで下部のFRPプレートと満遍なく固定しなければならない ゼットエゼクターなどを使用して真空脱水する場合は強度的に問題ないが水流分級などで下部から水を供給する時にパンチプレートが膨らんでボルトが飛んでしまい、製品に混入する恐れがある

図 7-1 酸洗浄・浮遊選鉱・水流分級・水洗(リンス)用バッチ式攪拌混合槽

  この図面は正確な縮尺で書かれているが、ディスプレーの大きさによっては縮尺率が異なるため、主要部分に寸法を入れておいた 底盤下部の配管からはリサイクル混酸と水を供給すると同時にゼットエゼクターによるバキュームの他、排水と混酸の回収も行う この場合、各々に自動バルブを設置してゼットエゼクターはもちろん混酸や用水のポンプと連動させるとよい 浮遊選鉱用のAirノズルは、FRPの成形時に攪拌混合槽の下部円周端に埋め込むが特殊なノズルは使用せず塩ビ(PVC)パイプに小さな穴を無数に開けて、目詰まり防止で常に少量のAirを送り続け、Airの量が不足する場合は下部の配管からフィルターを通して供給してもよい
  浮遊選鉱や酸処理終了後の水洗(リンス)は、下部から水を供給して、底に溜まった石英粉を浮遊させてから攪拌機を回転させるが最後の工程で攪拌と脱水を数回繰り返した後は攪拌機を回しながら水をオーバーフローさせて微粒子を除き同時にスラリーポンプで次工程への移送を開始する 石英粉の排出口のパイプが詰まっている場合はパイプに水を注入し各工程の合間毎にパイプ内の石英粉を攪拌混合槽に戻すことも重要である 更に攪拌機の作動に支障がないよう考えて攪拌羽根の高さを最大処理量の石英粉が沈殿する高さに合わせたが攪拌機を上下可動式にすれば更に効率良い攪拌ができ場合によっては処理量の増加にも対処できる
  一方、耐酸・耐摩耗対策としては全体をゴムライニングする方法もあるがゴムライニングは微細なピンホールが残り酸が浸透して内部の金属を腐蝕する恐れがある そのため、摩耗し易い攪拌機(2.2kw,ゴムライニング付きで約40万円)を除いては、混合槽全体をFRP(繊維強化プラスチック)で制作するのが一般的であるが上記のサイズでは約200万円とかなり高い また、酸洗浄は50℃前後に加温した方が効果的なので耐熱性も考慮したプラスチックやゴムの材料特性を下表にまとめてみた

材   質   弗酸(10%) 硫酸(10%) 塩酸(10%) 硝酸(10%) 耐摩耗性 耐熱温度(℃) 価格
 テフロン樹脂 200〜260 20
 フラン樹脂 180
 エポキシ樹脂 150〜200
 ビニルエステル樹脂 × 150
 ポリエチレン樹脂 100〜120
 (塩化ビニル樹脂) 70
 弗素ゴム 280 50
 ブチルゴム 130
 クロロプレンゴム × 120
 (ウレタンゴム) × × × × ◎◎ 70
表 7-3 ライニングの耐酸・耐熱・耐摩耗性の比較(酸の温度:50℃、価格:ポリエチレンを1とした概算価格)

  
7−4.熱化学的手法による粒子内不純物の除去方法       目次:

  これまでの石英粉の精製は従来法の組み合わせで、浮遊選鉱の原理の解明や、H2SO4HF混酸のリサイクル使用によるHFの再生以外は、特に目新しい技術は無い しかし、本章で述べる「高温処理によるアルカリ金属の除去方法」は6-2(4)で述べた私の理論をもとに、様々な実験を繰り返して確立した技術でこのまま埋もれてしまうのは勿体ないと考え、温存していたノウハウを公開することにした
  もっとも、この技術を応用できるのは、半導体グレードの単結晶シリコン製造に係わる大型の石英ルツボ(不透明石英)や石英ガラス製品(透明石英ガラス)で一般の用途に使用するにはコストが掛かりすぎて採算が合わない 冒頭で述べた太陽電池グレードのシリコン原料としては後述する予定のタワー式上昇水流分級装置による粒度分け後細粒部分(OFF品)を使用する方が理に適っている つまりOFF品の方が安価(?)な訳で、粒度が細かいだけ反応性が良いと考えられる 一方粗粒部分は、浮遊選鉱でも除去しきれなかった鱗片状の不純物(弗酸にも溶けにくい白雲母などは石英の融点を下げるため石英ルツボのクリアポイントの原因になる)も除去され最適な高温処理用の原料になると共に、石英ルツボの黒点の原因となる粗粒の不純物が上昇水流分級装置の底部に残って除去されるのである

(1)高温処理による石英結晶内の金属イオンの除去
  従来の技術では、表 7-4 から分かるようにアルカリ金属はNa1ppmK0.5ppmLi0.2ppm、それにアルカリ土類のCa0.5ppmが限度になっていて、元々石英結晶中にSiとの置換型で均一に分散しているAlBTi、及び3価のFeと共に、浮遊選鉱と酸洗浄だけではこれ以上減らすことができない しかし、高温処理による熱化学的手法を用いれば石英結晶内の金属イオンが励起されて活動が活発になるのではと考え様々な文献を調べたところ、「SiO2の諸変態の転移関係図(参考文献1)」に、1250℃でβ-石英(不安定)⇔β-クリストバライト(不安定)の転移点が存在することが分かった つまり、結晶空隙の小さいβ-石英から結晶空隙の大きいβ-クリストバライトに変わればイオン半径の大きなアルカリ金属イオンでも移動し始めるに違いないと考えたのである 同様に、870℃にもβ-石英(安定)⇔β-トリジマイト(安定)の転移点があるが、転移速度が極端に遅いので候補から外した
  次に移動可能な金属イオンを推定すると、1価のアルカリ金属が酸素との結合力が弱く(表 6-2)、アルカリ土類金属も結合力が弱いものの、結合手が2本あるので同時に切断されるチャンスは少ない しかし、イオン半径の比較的小さい2価のMgは、天然石英が生成した時点で逃げ去ったためか元々含有量は少なくやはりイオン半径が小さい1価のLiについては尚更でこの事実からイオン半径の小さい金属イオンが移動し易いと考えていた そして、移動した金属を捕獲するために様々なハロゲンガスを使った実験の結果イオン半径が最大のKが比較的低温(1150℃)でも僅かに減少することが分かり元々含有量の少ないLi1300℃の高温でも時間が掛かることが分かった この結果は予想と正反対で、イオン半径の大きい金属が移動し易いということは前章で「島状クリストバライト」と呼んだ部分的なクリストバライト構造が、比較的低温の1100℃付近でも既に発生していて石英内のSi-O-Si結合が何らかの原因で切断と結合が繰り返される内にボタンの掛け違いを修正するようにクリストバライト内部の大きな空隙が移動しているのではないかと考えたのである6-2(3)参照
  様々な実験結果から、1100℃付近で出現し始めた島状のクリストバライト構造は、1250℃を越えると急激に増加することが分かった つまり、予想した転移温度よりも低い1100℃付近で長い時間をかければイオン半径の大きな(島状クリストバライトの空隙にぴったりはまる)Kから次第に減少し始め、温度を上げるに従ってNaLiと減少していくが、結合手が2本あるCaCu1350℃でも時間がかかり、ましてや結合手が3〜4本あるBAlFeTi は、ほんの僅かしか移動できないのである そして、石英粒の表面まで移動してきた金属イオンを捕獲するには、各々の金属との結合力が酸素より大きい塩素(Cl)や弗素(F)が最適であり、島状クリストバライトの移動を助長する活性水素を供給するために塩化水素ガス(HCl)や弗化水素ガス(HF)を充填すればよいが、HFガスは後述する反応装置の石英ガラスを浸蝕してしまうので使えない またHClガスの供給にはボンベ入りのガスを用いたが、原料の石英粉に液状の塩酸を滴下して高温の反応器内でガス化する方法も有効である
  塩酸ガスの存在下で高温処理した石英粉は、下表のFに分析結果を示したが、Alが僅かに上昇していることが分かる これは、13001400℃もの高温下で石英ガラスを長時間使用すると軟化し始めるので石英ガラス容器の外部を高純度アルミナのチューブで覆ったためである 生産効率とコストの観点から、処理時間を時間に抑えたため、ほぼ完全に除去できたのはアルカリ金属とCuだけで、FeTi及びBは分析誤差の範囲内なので減少しているかどうかは分からない しかし、Caは時間を掛ければ減少することが分かった 処理温度を1450℃まで上げられれば処理時間の短縮は可能であるが反応容器の石英ガラスの方が軟化して容易に変形することとクリストバライト化(失透現象)を起こして割れてしまう恐れがあり処理温度はもう少し低く設定した方がよい 合わせてゼットエゼクターで減圧する方法も有効だが、変形を加速してしまうので1300℃以下で使用しないと1時間も持たない しかし、使用済みのHClガスは水に急速に吸収されるので水を使用するゼットエゼクターで吸収すれば逆流を防止できる

不純物成分 @水流分級 A予備酸洗 B鉄浮選 C本酸洗 D長石浮選 E水洗浄 F高温HCl
アルミニウム(Al   66.39   49.94   42.85   26.05     5.90    5.85    5.93
鉄(Fe    8.82    1.56    0.93    0.58     0.47    0.48    0.45
チタン(Ti    3.37    3.17    2.63    2.37     2.40    2.43    2.35
ナトリウム(Na    9.5    9.0    9.0    4.2     1.4    1.2  <0.1
カリウム(K    3.5    2.2    1.4    0.9     0.6    0.5  <0.1
リチウム(Li    0.2    0.2    0.2    0.2     0.2    0.2  <0.1
カルシウム(Ca    3.38    2.84    1.94    0.96     0.55    0.47    0.40
マグネシウム(Mg)    0.32    0.16    0.11    0.06     0.05    0.05  <0.05
コバルト(Co    0.62    0.27    0.05  <0.05   <0.05  <0.05  <0.05
ニッケル(Ni    0.97    0.21    0.17  <0.05   <0.05  <0.05  <0.05
マンガン(Mn  <0.05  <0.05  <0.05  <0.05   <0.05  <0.05  <0.05
銅(Cu    0.05    0.03    0.04    0.03     0.02    0.02  <0.01
硼素(B              0.04    0.03
表 7-4 グラニュラークォーツの酸洗浄と浮遊選鉱と熱化学処理による品位の向上(単位:ppm)

(2)高温処理装置の耐熱・耐薬品対策
  アルカリ金属(K,Na,Li)を0.1ppm以下にするには、HClガスを用いた様々な実験の結果、1450℃で40分、1400℃で60分、1350℃で90分、1300℃で120分、1250℃で180分と時間単位で達成できるが、1250℃未満では1日近く掛かることが分かった。 しかし、時間的な制限から1400℃前後で熱処理するのが望ましく、このような高温下でHClガスに耐え得る材質で高純度のものは、石英ガラスかアルミナセラミックスしかない しかし、アルミナセラミックスは1900℃の高温に耐えるものの、アルミナのコンタミが懸念され、石英ガラスは1250℃以上での長時間の使用には、軟化やクリストバライト化等の様々な障害が現れる 従って炉心管として高純度石英ガラスを使用し高純度のアルミナチューブで外部から保護するという半導体の拡散炉にも使用されている手法を採用した
  1バッチ(約1時間)当たりの石英粉の処理量を250kg(見掛け容積約0.17m3)に設定すれば、石英ガラス管のサイズは内径500mm×加熱部長さ1m(全長約2.4m)と比較的コンパクトになり、その外側を内径550mm×長さ1.3mのアルミナセラミックスの保護管で覆って間欠的にゆっくり回転させれば、石英粉を適度に攪拌しながらHClガスが均一に通過するようコントロールできる 実際には、外径550±5mmの規格の高純度不透明石英管で、外径が550mm未満の管を選んで溶接で繋ぎ合わせ石英ガラス製のスパイラル板も石英管の内面に均等に溶接するが、完成品はかなり歪んでいるので540mmφ程度に真円研磨した方がよい その概略と付帯装置を下図に示したが、大口径のアルミナセラミックス管が入手できない場合はアルミナリッチのムライトチューブ(耐熱温度1800℃)等で代用しなければならない しかし製品に直接接触していなくても高温下では不純物がイオン化して移動するので不純物のコンタミの有無を実験で検証する必要がある 製品が汚染する以上に、炉心管の石英ガラスが不純物によってクリストバライト化し易くなり容易に割れてしまって操業自体が不可能になるからである

図 7-2 高純度不透明石英ガラス炉心管を用いた高温処理装置の概略図

  この図を見て石英粉やHClガスの挙動を理解できたら、その道のエキスパートで、普通の人にはなかなか理解できないと思う 特に石英炉心管内のスパイラル石英板はスクリューコンベアの様にそれ自体が回転して石英粉を押し出すのではなく炉心管と一体となって回転するため流動性の悪い石英粉は管と一緒に回転するだけで移動しない 更に、流動性のよい石英粉でも隙間なく管を埋めてしまうと、やはり移動できない つまり、石英粉は隙間の分だけ崩れて移動するため、排出口から排出された分だけ少しずつ移動することになりショートカットして未反応の石英粉が排出されることもなく十分に時間を掛けて熱処理が行われるのである 同様に、HClガスもショートカットすることなく、スパイラルで区切られた石英粉の間を均等に通過して効率よく不純物を除去できるようになる
  以下に、既に述べた反応機構を除く、各装置や機能について簡単にまとめてみた

 a)塩化水素ガスの充填
  石英炉心管の開口端にセットしたテフロンフランジの中心にノズルをネジ込み、HClガスの固定配管から短いホースを介して回転自在のユニバーサルジョイントで繋がれる。 HClガスは5kg入りボンベから供給されるがバイパス排気弁のみ開いてガスを炉心管に充満させた後は、流量計で10cc/秒程度に絞れば、ボンベ1本で80時間も連続運転でき、更に、使用するHClガスの不純物は水分や不活性ガスで高純度品を使用する意味がなく、通常品(99.7%)は2万円/5kg程で購入できる また、テフロンフランジはテフロンリングでOリングを締め付けて固定されるが、高価な代物なので、シール板(円板)のみテフロンコーティングしたSUS304のセットを使用してもよい

 b)原料投入と塩化水素ガスの排出
  石英炉心管の原料投入口と排気口は各々120度ずれた位置に開けてあるが、原料投入とHClガスの排出は同時に行えるよう角度を揃えてある(断面図参照) つまり、原料の投入時に炉内が加圧状態になるのを防いでいるのだがゼットエゼクターで吸引し過ぎると開口時にショックがあるので圧力調節弁で真空度を抑えている 初回の原料投入は各々のリミットスイッチで120度毎に回転を止めながら数回行い、上記a)のHClガス充填後の通常運転時もパイパス排気弁を僅かに開いて負圧を維持する また、原料投入口及び排気口と石英炉心管の隙間のシールはグリースニップルから耐熱性のシリコーングリースを定期的に注入するが排気口側は製品への混入を避けるために少なめにした方がよい

 c)通常連続運転と加熱処理後の石英粉の冷却
  加熱炉内の石英粉の滞留時間を1時間と仮定した場合、概略図に書いたスパイラル石英板のピッチでは、石英炉心管を1時間に2回転させるとよいが炉心管の隙間が少ないと10回近く回さなければならない それでも原料投入と製品排出毎に、各々60度の角度にセットされたリミットスイッチで1分間近く停止するので、十分な原料投入と製品の排出時間が確保される しかし、石英炉心管を1400℃前後で長時間加熱すると軟化するため停止させることができない場合は、炉心管の開口部を横長にして特に製品側の排出時間を十分に確保しなければならないが炉心管の内側がスパイラル石英板で支持され、外側は保護管で支えられているため多少変形しても回転速度が遅い場合は差程影響が無いと考えられる むしろ、ローラーの駆動が偏って捩じれてしまう方が問題である 一方、冷却炉で十分に冷却できない場合は石英炉心管の全長を伸ばして冷却炉を大きくするか炉心管の上部からシャワー水をかけてもよい 石英ガラスはこの程度の急冷には充分に耐えられる

 d)製品の排出と最終の仕上げ冷却振動篩
  上記したように、熱処理後にコーティングの耐熱温度まで冷却された石英粉は原料の投入時に発生する一時的な加圧状態を避けて別のタイミングで排出されるが、製品にHClガスが同伴することを避けるためで製品の排出時にもバイパス排気弁が僅かに開いていて炉内は負圧に保たれている つまり、バイパス排気弁用の炉心管の開口部は炉心管の強度が落ちない程度に小さな穴が沢山開けられているのである 一方、炉心管から排出された製品は冷却振動篩で洗濯板の様なテフロンの加工板上を踊りながら風で冷やされ、100℃以下になってから荒目のナイロン網でグリース塊などの異物が除去されて製品ホッパーに落とされる 図示したように、冷却振動篩は複数の高温処理装置から排出された製品を冷却することができ発生した粉塵も数台の冷却振動篩をまとめて1台のパグフィルター(集塵装置)で処理可能である 同じことは、HClガスを吸引して水に吸収させるゼットエゼクターについても言える

  以上で高温処理装置の解説は終わるが、何しろ高価な部材ばかりで、高純度のアルミナセラミックス保護管だけでも250万円は下らない さらには複雑な溶接加工を施した高純度不透明石英炉心管も同程度の価格と考えれば高価なテフロンコーティングを合わせて、加熱炉を除いても1000万円近く掛かってしまい、これだけの装置を導入するには余程の覚悟が必要である 失敗は許されないのである しかし、連続運転できるメリットを考えると、1台で50t/月の処理能力があり、消耗品が多いので5年償却としても5円/kg程度で済み、加熱炉の電気代と余り変わらない そして石英炉心管だけ1年償却にして、塩化水素ガスを加えても約15円/kgと、試してみる価値はありそうだ 但し、100万円をケチって1000万円を失わないよう充分に注意されたい

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