4.SiO2と珪酸塩鉱物の結晶構造(つづき-2)   このページや、下層のHTMLファイルに直接リンクされた方は、このボタンをクリックして下さい。

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4−5.Al-同形置換と「アルミニウム排除則」

  3-3(2)で述べたように、シラノール基(≡Si-OH)を有するSiO4四面体が、脱水縮合反応によって連結する際、濃度を増したAl3+イオンがAl(OH)3などの形で脱水縮合反応に加わり、SiO4連結体の一部として結晶構造内に取り込まれることがある そして、このSiO4連結体の内部では、Si4+イオンがAl3+イオンによって置換されたような形を取るため、これをAl-同形置換と呼んでいる。
  表 4-1 にも示したが、アルミニウムイオン(Al3+)のイオン半径は4配位と6配位とではかなり差があり、4配位におけるイオン半径は6配位の78%で約0.5Åと小さくなっている。 ちなみに、Si4+イオンの場合は74%で約0.4Å、Fe3+イオンは80%で約0.6Å、Mg2+イオンは83%で約0.7Åとなっている また、これらのイオン半径の違いは、酸素イオンとの結合で占める共有結合の割合ともよく一致し、Al-O結合は共有結合が約40%と、Si-O結合の約55%に次いで多い つまり、金属イオンに対する酸素イオンの配位数が少ない場合共有結合性の強いもの程、お互い同士が食い込む形で原子間隔を縮めているが各イオンのイオン半径は酸素イオンを1.3Åとして相対的に決めているため、金属イオンのイオン半径が犠牲的に小さく表示されるのである
  いずれにしても、Al3+イオンはイオン半径の大きさといい、共有結合の割合といい、Si4+イオンとよく似ているため、容易に酸素イオンの成す四面体空隙に入ることができるのである しかし、いかに原料マグマ中のAl3+イオンの濃度が高くなったとしても、無制限にAl-同形置換が起こるわけではない Al3+イオンの結合手が一本不足しているため、SiO4連結体が切れてしまうことと、イオン半径がSi4+イオンより大きいことから生ずる歪みを、均一に分散させなければならない必要性から、Al-同形置換は次のような優先順位のもとに行われる傾向にある

注)一点鎖線の上部には1/4置換を、下部には1/2置換を示す。
また、1層目の酸素イオン(四面体の頂部)は省略した。
図 4-15 Al-同形置換の基本形

〔第一優先〕Al3+Si4+に囲まれた位置に入り、Al-O-Alのような結合は起こらない
  これを「アルミニウム排除則」と言うが、AlSiは交互に並ぶことになるため
  Al-同形置換は最大でもSi4+の1/2(つまり1:1) しか起こらない。
〔第二優先〕四面体の4個の酸素イオンのうち共有されている数が多い四面体ほど
  Al3+が入り易い つまり、図 4-15(b) の1/4置換の例で、Al3+は3個の酸素イオンが
  共有された四面体の位置に入ることにより、全体のバランスが保たれ結合も強くなる
〔第三優先〕Al-同形置換によって、連結が切れてしまう四面体の位置にAl3+は入れない

  図 4-15 に示したように、(a)の単鎖状チェーンで Al-同形置換が起きた場合は、確率的に非常に弱い結合になる(辛うじて軸方向のチェーンを維持できたとしても、軸方向の結合が弱くなる)ため、単鎖状チェーンにおけるAl-同形置換は非常に少ない また、(b)の複鎖状チェーンにおける1/2置換の場合も長石を形成するための中間体にはなり得るが、単鎖状と同様 軸方向の結合が弱くなるため、角閃石などを晶出することは難しく、自ずと複鎖状チェーンのAl-同形置換は1/4置換が主流となっている 更に、(c)には層状(シート)の例を示したが、1/4置換の雲母の場合非常に安定した構造を維持できることが、図中の実線のつながり具合からよく分かる しかし1/2置換では、イオン半径の大きい2価のCa2+Ba2+SiO4六角環内に入ってシートをつなぎ合わせている場合のみ、結晶を形成することができるのである そしてこの現象は、網状(フレーム)の長石で顕著に現れる

  
4−6.層状珪酸塩鉱物の結晶構造                   目次:

  層状の珪酸塩鉱物は、複鎖状の角閃石に次ぐ高圧の下に形成されたものと考えられ、高圧cis型の単鎖状(あるいは複鎖状)のSiO4チェーンが横(軸)方向にも無限に連結し、SiO4六角環がハチの巣のようにびっしり並んだ平面状のSiO4シートを形作っている SiO4六角環1個当たりの最小構成単位は、複鎖状チェーンでは4個のSiO4四面体が必要であったのに対し、SiO4シートでは、複鎖状チェーンを軸方向に連結することにより新たに2倍の六角環が生じるため、2個のSiO4四面体で十分である 従って、層状珪酸塩鉱物の基本組成は[(Si2O5)2-]nで表され、代表的な例としては、白雲母KAl2(AlSi3O10)(OH)2や黒雲母K(Mg,Fe)3(AlSi3O10)(OH)2などの雲母鉱物と、カオリナイトAl2(Si2O5)(OH)4で代表される粘土鉱物がある また、この他にもタルクMg3(Si2O5)2(OH)2や緑泥石(Mg,Fe,Al)6(Si,Al)4O10(OH)8など、層状珪酸塩鉱物の種類は多い
  図 4-17 の平面図からも分かるように、雲母を代表とする層状珪酸塩鉱物は、SiO4六角環が平面状に連結し、六角環内の大きな空隙も角閃石の2倍に増えているため、比重は2.63.0と比較的小さい 更に、輝石や角閃石でも糊付けが弱くてへき開の原因になっていた“鼓の腹”同士が接する部分が層状珪酸塩鉱物では無限に拡がった構造となっているため薄く剥がし易く、モース硬度も13と非常に柔らかいのが大きな特徴である

(1)層状(シート)珪酸塩の構造的特徴
  層状珪酸塩鉱物の構造の大きな特徴は、SiO4四面体同士が二次元(平面)的に無限に連結しているため、輝石や角閃石とは異なり、必ずしもSiO4シートの“背中(頂点)”同士が2価以上の金属イオンで糊付けされなくても結晶を形成できるという点である つまり、カオリナイト(カオリン)など熱水変成作用で長石が分解して二次的に形成された珪酸塩鉱物は2価以上の金属イオンが少ない環境下でSiO4四面体が平面状に連結した結果、非常に弱い力ではあるが面同士の“ファンデルワールス”結合によって層状に積み重なり比較的大きな結晶に成長することができるのである そして、層状に積み重なる際のシートの最低単位は、SiO4シートが1枚だけのカオリナイト型と、SiO4シートが2枚張り合わさった雲母型の2種類あり、更にはSiO4シートに付着する金属イオンの種類によって2種類以上に分類される
  本節では、これらのモデルをよく理解するためにサンドイッチやトーストなど、食パンを使った料理にたとえて説明を加えてみた
  図 4-16(b) に示した1:1型構造は、無数のSiO4四面体が平面状に連結したSiO4六角環からできている1枚のSiO4シート(四面体層)と、SiO4四面体の頂点や水酸イオン(OH-) で形成する八面体層とが、交互に積み重なった“ピザトースト”状の構造で主にカオリナイトなどの粘土鉱物に見られる また、(a)の2:1型構造は角閃石と同様2枚の四面体層を少しずらしながら“背中(頂点)”合わせに重ねることにより、その間にSiO4四面体の頂点と一部OH-から成る八面体層が形成される構造はまさに雲母やタルクに見られる“サンドイッチ”状の構造である もちろん、両者とも四面体層が“パン”の役目を果たしていることは言うまでもない そして、四面体層はSiO4四面体自らの連結で強靱なシートを形成し八面体層は2価以上の金属イオンによってイオン結合で引き締められているが上の図 4-16 の側面図に太い一点鎖線(へき開面)で示した2:1型の四面体層同士(あるいは1:1型の四面体層と八面体層)の境目の接着は弱い“ファンデルワールス”結合によるものである
  従って、層状珪酸塩鉱物の共通点として、軸に垂直な面{001}に完全なへき開が生じ、薄く剥がれ易いことが挙げられる 更に、八面体層における軸方向のずれのために単斜晶系に属するものの、SiO4六角環からできている四面体層が構造上の骨格を成しているため六角の板状ないし鱗片状の結晶を形成することも共通点として挙げられる

図 4-16 層状珪酸塩鉱物の四面体層と八面体層の組合せ


(2)雲母やタルクの2:1型“サンドイッチ”構造
  白雲母KAl2(AlSi3O10)(OH)2や黒雲母K(Mg,Fe)3(AlSi3O10)(OH)2など、雲母鉱物の結晶構造は下の図 4-17 に示したが上述したように、2枚の四面体層(パン)と1層の八面体層(ハムなどの具)で構成される“サンドイッチ”状の2:1型構造を成すため、2個のSiO4六角環が最小構成単位となり、基本組成は[(Si2O5)2-]2で表される しかし、雲母類は角閃石の晶出後更にアルミニウムイオン(Al3+) の濃度が増加した条件下で形成されることから、図 4-15(c) の上半分に示したような1/4 Al-同形置換が確実に起こっているのである つまり、雲母鉱物の基本組成はアルミノ珪酸イオンとして (AlSi3O10)5-で表すのが一般的である
  そして、Al-同形置換で不足する正の電荷を補うため、SiO4六角環2個(SiO4四面体4個)当たり1個のカリウムイオン(K+)が、2個のSiO4六角環が“腹”同士合わさって形成される大空隙Gに取り込まれていること また角閃石と同様、四面体層の“背中(頂点)”同士が合わさった部分には、2個のSiO4六角環に対して2個の水酸イオン(OH-)が取り込まれ、より強固な八面体層を形成していることが大きな特徴である また、上下2個のSiO4六角環(四面体層)によって形成される3個の八面体空隙E・F(八面体層)は黒雲母の場合その全部が2価のMg2+Fe2+イオンで埋められ、白雲母の場合は、そのうち2個の八面体空隙が3価のAl3+イオンによって埋められて、残り1個(1/3)の八面体空隙は空席となっている このように四面体層の“背中(頂点)”同士の糊付けは比較的イオン半径の小さな金属イオンによって強固に行われイオン半径の大きなCa2+イオンは八面体空隙E・Fに入ることはできない

4個のSiO4四面体に対する八面体空隙数=点空隙E:2個,点空隙F:1個,   
                       (大空隙G:1個,OH-イオン:2個)
図 4-17 雲母の“サンドイッチ”型結晶構造(2:1型構造)

  雲母鉱物の単位層の厚さは、2枚の四面体層と1枚の八面体層から成る単一の“サンドイッチ”構造で、約10Åと非常に薄く、このままでは結晶の強度はかなり小さい ところが、Al-同形置換で取り込まれた大型のK+イオン(イオン半径1.6Å)は、図 4-17 の平面図(b)にも示した大空隙G(有効半径1.6Å)にぴたりとはまり“ファンデルワールス”力による四面体層同士の弱い結合を補強する働きを担っている つまり、“サンドイッチ”を幾重にも積み重ねられるよう、K+イオンは“クサビ”の役目を果たしているのである また、この“クサビ”は四面体層同士の層間のズレも防いでいることから雲母類の結晶は、かなりしっかりした構造となるため大きな板状結晶を作り易く、モース硬度は23と、層状珪酸塩鉱物の中では比較的高い値を示している しかし、この“クサビ”は雲母を軸方向に剥がす力には弱く、容易に薄い紙状に加工できるため、無色透明で良質の白雲母は古くからトースターやアイロンの絶縁体あるいは石油ストーブの窓などに電気絶縁・耐熱材料として使用されていた また最近では、薄片状の超微粉に粉砕することによって現れる銀白(シルバー)色を利用して化粧品やメタリック塗装の材料などにも広く利用されている
  一方、同じ2:1型構造でも Al-同形置換が少なく、ほとんどK+イオンを含まないタルク(滑石):Mg3(Si2O5)2(OH)2 の場合は、四面体層同士の層間の結合は非常に弱くなり、大きな結晶に成長することは稀で多くは六角板状となった微細結晶の集塊として産出している 同じ層状珪酸塩鉱物でありながらタルクのAl-同形置換が少ない理由としては、カンラン石や輝石など比較的Al3+イオンの少ない珪酸塩鉱物のうち、Fe2+イオンの少ないものが、変成作用により分解され二次的に晶出したためと考えられる 従って、タルクのモース硬度は1と鉱物中最も軟らかい部類に属し、粉砕された微粉は普通紙のコーティング材や樹脂・塗料などのフィラー(充填材)として利用されている

下の4枚は、「鉱物の加藤さん」提供の雲母(うんも)の写真です 左上は六角板状の白雲母が双晶を形成して鉄電気石を抱え込み、右上は6稜の星型をした珍しい写真です また、リシア雲母は白雲母の八面体層を形成するAl3+の1/4が、3倍のLi+と置換されてピンク色を呈し、別名「紅(こう)雲母」とも呼ばれています 右下の金雲母は黒雲母の変種で、鉄分をほとんど含まないため、黒褐色が薄れて黄褐色を帯びています

白雲母と鉄電気石(加藤氏提供) 星型(6稜)白雲母(加藤氏提供)
リシア雲母(加藤氏提供) 金雲母(加藤氏提供)

(3)カオリンや蛇紋石の1:1型“ピザトースト”構造
  1:1型構造の代表であるカオリナイト(カオリン):Al2(Si2O5)(OH)4の結晶構造は図 4-16(b) に示したような“ピザトースト”状の基本形を成し、1枚の四面体層(トースト)と、SiO4四面体の頂点や水酸イオン(OH-)で形成する1層の八面体層(トッピング)で構成されている そして、四面体層と八面体層が交互に積み重なった2層構造になっているため、最小構成単位はSiO4六角環が1個で基本組成は(Si2O5)2-で表される
  カオリナイトは多くの場合、Al-同形置換の最も進んだ長石類 (K,Na,Ca)(Si,Al)4O8の分解(水による変成)によって、二次的に晶出したものである 従って、長石にはAl3+以外のイオン半径の小さな金属イオンがほとんど含まれていなかったために豊富な水分の下にカオリナイトが再構築される際、専らイオン半径の小さなAl3+イオンがOH-イオンを固定して八面体層を形成することになり、四面体層のAl-同形置換は非常に少なくなったものと考えられる そして、長石中に豊富に存在していたイオン半径の大きな K+Na+Ca2+イオンは、小さな八面体空隙に入ることができないので、わずかにAl-同形置換の起きたSiO4六角環中に取り込まれるのみである つまり、カオリナイトの結晶は図 4-16(b) の平面図からも分かるように、SiO4六角環1個について雲母と同等のOH-イオンを1個(2層目)含むほか、3層目の3個のOH-イオンが、やはり2・3層間の3個の八面体空隙に入った2個のAl3+イオンによってつなぎ留められ、この3層目のOH-イオンが無限大に広がった八面体層の面を形成している そして雲母の両面と同様に、SiO4四面体自らの連結で強靱なシートを形成している四面体層が、反対側の面を形成している
  カオリナイトの単位層の厚さは、1枚の四面体層と1層の八面体層からできている“ピザトースト”構造のため、約7.5Åと雲母よりも更に薄い そして、層間は弱い“ファンデルワールス”結合で接着されているだけで雲母のような“クサビ”が無いため、軸方向のズレは雲母類のように一定ではなく、軸と軸の成す角度(β角)は同じ化学組成を持つカオリン族の中でも、カオリナイトの100°ディッカイトの97°ナクライトの91°と、様々に変化している これらの鉱物は、従来から総称してカオリンと呼ばれていて粘土の主成分となっているが層間の結合が弱いために大きな結晶にはなりにくく直径数μmの六角鱗片状結晶が集まった粘土の塊として産出する場合が多い 従って、カオリンのモース硬度は12と、タルクに次ぐ柔らかさで白色・微細鱗片状で光沢のある上質のものは、アート紙等の高級紙の表面コーティング用にまた低品位のものは、陶磁器などの原料として利用されている
  一方、同じ1:1型で、カオリンの八面体層の接着剤となっている2個のAl3+イオンが、3個のMg2+イオンに置き換えられ、八面体空隙の全てをMg2+イオンで埋められた蛇紋石(じゃもんせき)Mg3(Si2O5)(OH)4は、カオリンよりもモース硬度が少し高くなり、純粋なもので22.5、不純物が多いと5程度まで上昇する また、結晶は他の層状珪酸塩鉱物と同様 単斜晶系に属するが多くの場合、カンラン石や輝石が水分を含んで変質し蛇紋石になるため外観は塊状や繊維状(輝石の仮晶)で鉄分を含み緑色を呈するものが多い しかし、不純物が少なく白色に近いものは耐熱性に優れているため繊維状の塊を解きほぐし耐熱・保温材の石綿(実験装置などに使用するアスベスト)として利用されていたが前述の建材用の角閃石綿と同様、発癌性が問題となり現在は使用されていない

(4)緑泥石の2:1:1型“クラブサンドイッチ”構造
  最後に、雲母の2:1型構造の派生形である 緑泥石(Mg,Fe,Al)6(Si,Al)4O10(OH)8について簡単に触れてみたい 緑泥石の理想的な組成は、Mg3(Si2O5)2(OH)2・3Mg(OH)2で表わされ、一見、蛇紋石のMg3(Si2O5)(OH)4の2分子に相当するため混同され易い しかし、その構造は明らかに異なり、タルクの雲母型3層構造を軸方向に積み重ねた時に生じる、四面体層同士の接着面(図 4-16(a) のへき開面)に、ブルーサイトMg(OH)2を1層はさみ込んだ複雑な構造になっているのである つまり、カオリンや蛇紋石の1:1型2層構造である“ピザトースト”を幾重にも積み上げた構造に多少似てはいるものの実際は雲母やタルクの2:1型3層構造の“サンドイッチ”の外側に更に(ハム以外の)別の具を挟んで積み上げた4層構造で“クラブサンドイッチ(カントリークラブで出されたのが始まりと言われている幾重にも具を挟んだサンドイッチで、ナイフとフォークで食べる)”の形によく似ている そして、緑泥石の単位層の厚さは約15Åで、カオリナイトの2層構造のちょうど2倍になっているのである
  しかし、通常の緑泥石はタルクの場合と異なり、角閃石や黒雲母などのAl3+Fe2+イオンに富んだ珪酸塩鉱物が、熱水による変成作用で二次的に晶出したものと考えられ、かなりの量のAl3+Fe2+イオンが、八面体層やブルーサイト層のMg2+イオンと置換されている また、2価のMg2+イオンが3価のAl3+イオンに置き換えられた分だけ、逆に四面体層のSi4+イオンがAl-同形置換によってAl3+イオンに代わっている場合が多く更に、ほとんどの緑泥石は鉄分により緑色を呈しているのが普通である そして、ブルーサイトが四面体層を“ファンデルワールス”結合でつなぎ止めているためモース硬度もタルクよりは大きく蛇紋石並みの22.5で、比較的大きな単斜晶系の六角板状結晶を形作ることも可能であるがその多くは葉片状の塊あるいは微細鱗片の集合体としてあらゆる変成岩や堆積岩中の緑色成分を構成している

左下は「鉱物の加藤さん」提供のカオリナイトの写真で、六角鱗片状の微細結晶が集まった粘土の塊です また右下の写真は、私が丹沢で拾ってきた緑泥石で、片状に剥離できます 不純物が多いためきれいな青緑色とは言えませんが川床に転がっていると宝石のように見えるのが不思議です

カオリナイト(加藤氏提供) 緑泥石

  
4−7.網状珪酸塩鉱物の結晶構造                   目次:

  網状の珪酸塩鉱物は、高圧cis型のSiO4連結体を主体とした これまでの進化の流れとは打って変わって、trans型の連結が増えていることから、(圧力の低下に伴ってcis型からtrans型への転換が自由に起こる)鎖状の連結体から直接層状の珪酸塩鉱物よりも低い圧力下で形成されたと考えられる そして、珪酸塩鉱物の進化の最終段階として、SiO4四面体の全て(4個)の酸素イオンが共有されて連結に加わり、立体網状のSiO4連結網(フレームワーク)を形作るため、もはや金属イオンによるイオン結合を必要とせずそれ自体で大きな結晶に成長できるのである 従って、網状珪酸塩鉱物の基本組成は[(SiO2)0-]nで表され、その代表例は“石英”ということになるが金属イオンを含まないものは狭義の珪酸塩鉱物とは言えない しかし長石の場合は、その晶出時に濃度を増したAl3+イオンの影響で かなりのAl-同形置換が起こり、不足する正電荷を補うため SiO4連結網が形作るSiO4六角環の中心に、やはりイオン半径が大きすぎて濃度を増していた K+Na+,Ca2+イオンがイオン結合の形で取り込まれ、かろうじて珪酸塩の形態をとどめている
  網状珪酸塩鉱物の例としては、正長石K(AlSi3O8)や曹長石Na(AlSi3O8) あるいは灰長石 Ca(Al2Si2O8) などが挙げられ、図 4-18 に示した長石の結晶構造からも分かるように、SiO4四角環が基本構成単位となっていて、長石の基本組成は[(SiO2)0-]4で表される そして、1/4 Al-同形置換が起こると K+Na+などの1価のアルカリ金属イオンが、1/2 Al-同形置換では Ca2+Ba2+(バリウム)などの2価のアルカリ土類金属イオンが、SiO4四角環が交互に積み重なって生ずる大きな空隙に取り込まれて、不足する正電荷を補っている また、火成岩の空洞で熱水溶液から二次的に沈殿した様々な沸石類も、同じ網状珪酸塩鉱物に属しAl-同形置換も進んでいるが、別名「ゼオライト」とも呼ばれ出入りが自由な結晶水を多く含んでいるため、イオン交換剤や触媒として利用されている 代表的な例として、方沸石Na(AlSi2O6)H2Oや輝沸石Ca(Al2Si7O18)6H2Oなどあるが、その構造はもちろん結晶系も多岐にわたっている このように、網状珪酸塩鉱物はその構造上大小様々な空隙を抱え込み2価以上の金属イオンによる強固なイオン結合が無いため、比重は2.12.7と雲母よりも小さく、モース硬度は46で石英よりも軟らかい

下の2枚は、「鉱物の加藤さん」提供の沸石の写真で、左の方沸石は ザクロ石によく似た立方(等軸)晶系“偏菱二十四面体”の白い結晶です また、右の輝沸石は 正長石と同じ単斜晶系に属しへき開が良好で その表面が輝いて見えるため 輝沸石と呼ばれています

方沸石(加藤氏提供) 輝沸石(加藤氏提供)

(1)網状(フレームワーク)珪酸塩の構造的特徴
  長石の結晶構造は、下図 4-18 の平面図の上半分に示したように、trans型に連結したSiO4四角環が上(太線)下(細線)交互に、まるで自動車エンジンのクランクシャフト状に連結して軸方向に伸びた連結棒が基本構造となっていてこれまで述べてきた珪酸塩鉱物とは全く形態が異なっている このクランクシャフト型連結棒の基本構成単位であるSiO4四角環の連結手は全部で8本あるが、そのうち4本はクランクシャフトを形成するために使われ、2本はSiO4四角環を軸方向へ(直線的に)連結するために、残りの2本はクランクシャフトを軸方向(面を鏡面とした面対象)に連結するために使われている そして 軸方向に連結する際、クランクシャフトの凹み同士が合わさった部分には、大きな空隙(半径1.6Å)が2個の四角環につき2個形成され、SiO4四角環内のSi4+イオンがAl3+イオンと置換(1/4〜1/2)された数によって、K+Na+イオンまたはCa2+イオンが 2個の大空隙Hを埋めることになる
  SiO4四角環内のAl-同形置換の位置は無秩序(但し、4-5節で述べたAl-同形置換の規則は守っている)になりがちであるが、平面図の左下のSiO4四角環に番号で示したように確率的に大空隙Hのアルカリ(土類)金属イオンに一番近い位置から置換され易く1/4置換の場合は“1”または“2”が、1/2置換の場合は“1”と“2”が優先位置となっている そのため、Al-同形置換が起こったSiO4四面体は結合手が1個不足していることから、軸方向の結合が弱くなって面{001}に完全なへき開が発生する また軸方向の結合も相対的に弱くなり、面{010}にも良好なへき開が見られ、両者は ほぼ 90°で交わる 従って、長石は一定の幅で長く薄く割れ易い特徴を持っているが雲母のような弾力性が無く もろいため、下の図の側面図に示した面{110}に沿って裂開も起こり易く、平行四辺形の板状となる場合も稀にある

8個のSiO4四面体に対する空隙数=大空隙H:2個,その他:無数
図 4-18 長石のクランクシャフト型結晶構造(カリ長石)

  上の図は、難解な長石の結晶構造を理解し易いように描いたため、大空隙Hの有効半径は約1.5Åしかなく、軸に対する軸の傾斜角βも120°になっているが、実際には平面図の左下に“上・下”と“矢印”で示したように酸素イオンが少しずつ移動し、正方形のSiO4四角環がつぶれて菱形に変わる そして、大空隙Hの半径が約1.6Åに拡大し、傾斜角βも約115°に縮小して、下の図 4-19(b) に近い位置関係となっているのである

(2)長石型網状珪酸塩の“蛇腹(ジャバラ)”構造
  このように、長石の結晶構造は、あたかもSiO4四角環が脱水縮合して形成されたかのような形状をしているが、SiO4四角環の環状珪酸塩鉱物は非常に少ないため、長石が地球の地殻の64%も占めていることを考えると、SiO4四角環が長石の原料になったとは考え難く、ましてや独立型のSiO4四面体から、長石のような複雑な構造を直接形成するのは不可能に近い しかし、単鎖状や複鎖状チェーンは豊富に存在していたことからこれらを原料にして長石が形成される機構を考えてみる必要がある
  ペグマタイト形成中期に、雲母の晶出後 圧力がゆっくりと低下する過程で、原料になったと考えられる単鎖状あるいは複鎖状チェーンは、図 4-12(b) に示したようにcis型とtrans型のミックスしたチェーンに変化する そして、濃度を増したAl3+イオンによるAl-同形置換の程度によって、下図 4-19(a) のような複鎖状となったチェーンの六角環内に1価のアルカリ金属イオンあるいは2価のアルカリ土類金属イオンが取り込まれる 更に温度がゆっくりと低下するに従い、昔のカメラの蛇腹(じゃばら)が縮むように交互に折れ曲がると図 4-19(b) の軸に伸びたクランクシャフト型連結棒になるのである つまり 図 4-19(a) で、4個のSiO4四面体で形成する上向きの四面体列(太線)と下向きの四面体列(細線)とが上下にずれて折れ曲がることによりあたかもジャバラが縮むような形となる この時、四面体列の両端のSiO4四面体はそのまま平行移動すればよいが、中間の2個のSiO4四面体は 各々逆回りに 約70°回転することによりSiO4四面体が上下逆向きに変わる そして、複鎖状チェーンの六角環内に納まっていた大きなアルカリ(土類)金属イオンは押し出され、軸(平面図の前後)方向に連結する 面に対称な別のクランクシャフトによって挟まれることになるがその際、アルカリ(土類)金属イオンの大きさによって全体が変形し図 4-18 に示したような配列に近づくものと考えられる

図 4-19 複鎖状連結からクランクシャフト型連結への転換

  このような複鎖状チェーンからの長石変換は、文字と図の説明だけでは非常に分かりにくいが、ボール紙で正四面体(SiO4四面体)の模型を作って、各々の頂点を図 4-19(a)の通りゴムなどのフレキシブルな媒体で接着しジャバラを折りたたむように曲げてやると四面体列の内側2個の四面体が回転して隣の列の四面体との角度(Si-O-Si結合角)が縮小され、図 4-19(b) の形になることがよく分かる そして、このSi-O-Si結合角の縮小は温度の低下によって酸素イオン同士の反発力が減少したため起こったことは、あらためて言うまでもない

(3)K長石とNa長石の混溶体である“アルカリ長石”の構造
  正長石K(AlSi3O8)は別名K(カリ)長石とも呼ばれ、イオン半径が大きいK+イオン(半径1.6Å)が図 4-18 の大空隙Hを埋めているため、軸に伸びたクランクシャフトを形成する際、押しつぶされることなく 軸と軸及び軸と軸が直交したまま結晶が成長し、結晶系は軸と軸のみが傾斜(β=約115°)した単斜晶系となる また、へき開は前述のごとく、90°で交わる面{001}と面{010}に起こり易く、結晶も軸方向に発達した四角(面と面で形成)や軸方向に発達した六角(面と2種類の面{110}で形成)の白〜肉紅色柱状結晶になり易い 一方、曹長石Na(AlSi3O8)は別名Na(ソーダ)長石とも呼ばれ、イオン半径が比較的小さいNa+イオン(半径1.1Å)が大空隙Hを埋めているため押しつぶされ易く、軸と軸及び軸と軸もわずかに傾斜して、面と面のへき開面は約93.5°で交わり、三斜晶系に変化する
  そして、両者ともAl-同形置換が1/4しか起こっていないため、4-5節で述べたアルミニウム排除則を考慮に入れても図 4-19(b) に示した連結手(共有酸素イオン)の 同じ記号同士(aとa’、AとA’なども可能)が自由に重なり合い連結できることと高温時では両者とも単斜晶系に属すことから、正長石と曹長石はあらゆる割合で混溶することができ両者の混溶体を“アルカリ長石”と呼んでいる しかし、温度が低下する比較的早い段階(約1100℃)で、K+Na+イオンはイオン半径の差により分離しはじめ、K+イオンの多い部分は正長石として単斜晶系のまま晶出し、Na+イオンの多い曹長石の部分はつぶれて三斜晶系に変わるため、両者は軸方向に伸びた面{100}に平行な幅0.0011mm程度の層状の“ペルト(perthite)構造”を形成するようになる このようなアルカリ長石はペグマタイト長石とも呼ばれ肉紅色の正長石と白色の曹長石が交互に縞模様を形成するためまるで霜降りの牛肉のような外観がペグマタイト長石の大きな特徴となっている
  天然に産する正長石(カリ長石)は、Al-同形置換の位置がランダムな中温型のまま固化したもので、前述のごとく単斜晶系に属しているが、長時間かけてゆっくり固化した場合は、Al-同形置換の位置が図 4-19(b) に示したように 軸方向に規則正しく並ぶため、Al-同形置換によって膨れた四面体のひずみが集約され、軸以外の結晶軸もわずかに傾斜して三斜晶系に変わるのである このような低温型のカリ長石は“微斜長石(マイクロリン)”と呼ばれ、面と面の角度は89.5°となるが、外観だけでは正長石と区別することが難しい 次節の石英で詳しく述べるが、同じ組成の鉱物でも温度や圧力の生成条件が変わると全く異質の結晶を形成することがあり、特に石英を含めた網状珪酸塩鉱物は、SiO4四面体の全ての酸素イオンが共有されて連結しているため、温度変化に伴うSi-O-Si結合角の変化は そのまま構造の変化となって現れ高温型や低温型の数多くの同質異形(多形)が見られるようになる しかし、正長石と微斜長石も多形関係にはなっているが、その差異は極めて小さいと言える
  いずれにしても、結晶の大きく成長したペグマタイト長石は不純物が少なく、石英よりも融点が低い(約1200℃)ことから陶磁器やホーローの釉薬(うわ薬)として用いられ特に正長石に富んだ良質のものはカリウムが光沢を増すため、高級磁器の貴重な原料となっている また、風化花崗岩から分離精製されたアルカリ長石は融点を下げるためや アルミナ(Al2O3)を補給するために、ガラスや陶磁器(素地)の原料として使用されている

下の2枚は、「鉱物の加藤さん」提供のカリ長石類の写真で、左の正長石は単斜晶系に属し右上に大きな白色の柱状結晶が見えますが、下の黒い部分は煙水晶です また、右のアマゾン石(アマゾナイト)は 正長石とは同質異形の緑色の微斜長石で三斜晶系に属し、正長石と類似の結晶を形成します

正長石(加藤氏提供) アマゾン石(加藤氏提供)

(4)Na長石とCa長石の混溶体である“斜長石”の構造
  曹長石(Na長石):Na(AlSi3O8)は前項でも触れたように、イオン半径が比較的小さいNa+イオン(半径1.1Å)が大空隙Hを埋めているため押しつぶされ易く、軸、軸及び軸が互いに斜交する三斜晶系に属している そして結晶は、正長石の六角柱状結晶の面を発達させ、正長石の柱面{110}と頂部に現れた面と面(図 4-18 の平面図参照)で、面を六角に取り囲んだ白色の六角板状結晶になり易い 一方、灰長石Ca(Al2Si2O8)は別名Ca(石灰)長石とも呼ばれ、イオン半径が比較的小さいCa2+イオン(半径1.2Å)が大空隙Hを埋めているため やはり押しつぶされ易く、曹長石と同様 三斜晶系に属し、面と面のへき開面は約94°で交わっている 結晶も曹長石と同様、面の発達した六角板状結晶が主流となるが、軸に伸びた短柱状結晶も稀に見られる
  また、両者ともに大空隙Hを埋めているアルカリ(土類)金属イオンは、そのイオン半径がほぼ同じで 同じ三斜晶系に属していることから、曹長石と灰長石はあらゆる割合で混溶することができ両者の混溶体を“斜長石”と呼んでいる そして、前述のアルカリ長石とは異なり、両者が混溶したまま高温型から直接三斜晶系として晶出し低温型に転移しても構造的に大きな変化は見られない 曹長石と灰長石が唯一異なる点は、Al-同形置換が前者が1/4で後者が1/2ということであるがこの違いは上記の混溶を何ら妨げるものではない むしろ1/2置換型の灰長石が、アルミニウム排除則を考慮に入れた場合図 4-19(b) に示した連結手(共有酸素イオン)の 同じ記号同士(aとa’、AとA’は不可)でないと重なり合って連結できずクランクシャフト型連結棒を交互に裏返す必要があるため、灰長石単独の晶出はかなり制限されるが1/4置換型の曹長石と混溶することでその制限が緩和されるのである
  いずれにしても、1/2Al-同形置換が主流の灰長石を多く含む斜長石は、このページの初めの4-5節でも述べたように、SiO4四面体を形成する半数近くのSi4+イオンがAl3+イオンと置換されているため四面体の結合手が半減して非常に弱い結晶となるが、この弱い結合を2価のCa2+イオンで繋ぎ止めているのが斜長石であると言える 従って、炭酸ガスを含んだ雨水の風化作用には非常に弱く地球の創成期に地表を分厚くおおっていた斜長岩が高圧の熱水で風化され、溶け出したCa2+イオンが原始大気中の多量の炭酸ガスを吸収してより高度な生物が繁殖する環境を造り上げたことは2-4(3)でも詳しく述べた通りである もし原始地球に斜長石が無かったら、人間は誕生していなかったかもしれない

下の2枚は、「鉱物の加藤さん」提供の斜長石類の写真で、左の曹長石は透明できれいな三斜晶系 六角板状結晶の集合体です また、右のダンブリ石は 灰長石のAl3+イオンがイオン半径の小さいホウ素(B3+)イオンに置き換えられ、結晶系も三斜晶系から斜方晶系に変わってトパズによく似た柱状結晶を形成しますが、写真のような透明で輝度の高い結晶は宝石にもなります

曹長石(加藤氏提供) ダンブリ石(加藤氏提供)

 参考書・文献:
  1)「地球の探究」大原隆・西田孝・大下肇・編集/朝倉書店/1989.7.10
  2)「造岩鉱物学」森本信男・著/東京大学出版会/1989.5.31
  3)「鉱物工学」(第五版) 吉木文平・著/技報堂/1968.9.15
  4)「資源鉱物ハンドブック」坪谷幸六 他・編集/朝倉書店/1965.7.5
  5)「岩石鉱物」(図鑑) 木下亀城・小川留太郎・著/保育社/1967.1.25
  6)「理科年表」国立天文台・編集/丸善/1989.11.30

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