.SiO2と珪酸塩鉱物の基本構造(つづき)    このページや、下層のHTMLファイルに直接リンクされた方は、このボタンをクリックして下さい。

目次  3-4  次Page  前Page

  
3−3.珪酸塩鉱物の進化とSiO4四面体の連結度

  ここで言うSiO4四面体の連結度とは、表 3-3 にも示したように、4個ある四面体の頂点(酸素イオン)のうち、四面体同士の連結に関与している頂点の数のことである つまり、連結に関与せずに残っている頂点は、金属イオンとのイオン結合に供用され連結度の低い珪酸塩鉱物は、それだけ多量の金属イオンを消費することになる
  地球の地殻や上部マントルの形成時に、超高温・高圧のマグマが冷えるに従い、それまでバラバラに分散していた独立型のSiO4四面体(カンラン石)が、何らかの原因で頂点の酸素イオンを共有しながら連結を開始した 最も多く形成された連結体は単鎖状の連結体(輝石:コンドリュール中にも含まれる)であり複合型は単鎖状や環状を形成するための中間体に過ぎなかったと考えられる 単鎖状の連結体は更に段階を経て連結が進むものの、圧力低下が激しいと一気に網状の連結体(斜長石やトリジマイト:コンドライト隕石中にも含まれる)を形成する場合もある しかし、通常は図 2-4 に示したように、単鎖状の輝石を晶出した後、複鎖状(角閃石)、層状(雲母)と連結が進みこれらの比較的連結度の低い珪酸塩鉱物によって、金属イオンの大半が消費されてしまうと単鎖状の連結体から徐々に網状の珪酸塩鉱物(アルカリ長石や石英)が形成されたのである
  このように、SiO4四面体の連結度が増えることによって、珪酸塩鉱物が進化するわけであるが連結度を増加させる要因としては金属イオンの不足が挙げられる つまり、3-1節で述べたオルト珪酸イオンや連結度の低いポリ珪酸イオンは金属イオンとイオン結合することによって、原始的な珪酸塩鉱物として存在しているが一旦、金属イオンが不足すると、容易に珪酸イオンの重合が進んだものと考えられる しかし、SiO4四面体が自由な連結をするためには、適量の水分が必要なことと重合(酸素イオンの共有)を促進する原動力として珪酸イオンから酸素イオンを取り除く機構が必要である 従って、その背景には恒常的な酸素の不足状態(還元状態)が想定される

(1)SiO4四面体の連結を促進するFeAlと熱水の相互作用
  酸素の不足状態については、地球の原料物質である普通コンドライト(隕石)中に、かなりの遊離鉄を含んでいた(表1-5 参照)ことからも明らかである そして、原始地球時代のマグマ・オーシャン内では比重の大きい遊離鉄が沈降分離して地球の核を形成したもののマグマ中には、まだかなりの量の遊離鉄が凝集沈澱できずに分散していたと考えられる 更に、炭素質コンドライト中の水分から形成された高圧の原始水蒸気大気によってマグマ・オーシャン内の水分濃度は約2%に保たれていたのである(溶解平衡:2-2節参照) 従って1500℃近い高温のマグマ中では、溶融状態にある遊離鉄と水分(高密度の水蒸気)が反応して多量の水素を発生したと考えられるが、この発生期の水素(H)こそが、SiO4四面体の連結を促進する大きな原動力となったに違いない
  3Fe + 4H2O → 8HFe3O4〔磁鉄鉱〕  ・・・・・(3-3a)
  つまり、遊離鉄(Fe)が1000℃以上に熱せられると、高温の水蒸気と反応して還元力の強い水素(H)を発生し、SiO4四面体とイオン結合している金属イオン(Me)を還元して、シラノール(≡Si-OH)を生成する そして、シラノール基を有したSiO4四面体は、温度が低下するに従ってゆっくりと脱水縮合反応を起こし、SiO4四面体同士がその頂点で規則正しく連結を開始するのである
  Si(O- Me+)4HSi(O- Me+)3OHMe[:1/3Al,1/2Fe,etc]     ・・・・(3-3b)
  Si(O- Me+)4 + 2HSi(O- Me+)2(OH)2 + 2Me          ・・・・(3-3b')
  2Si(O- Me+)3OHSi(O- Me+)3-O-Si(O- Me+)3H2O〔複合型〕   ・・・・(3-3c)
  nSi(O- Me+)2(OH)2 → [-Si(O- Me+)2-O-]nnH2O 〔単鎖状〕   ・・・・(3-3c')
  Si(O- Me+)3-O-Si(O- Me+)3 + 2H
       → HO-Si(O- Me+)2-O-Si(O- Me+)2-OH+2Me        ・・・・(3-3d)
  1/2nHO-Si(O- Me+)2-O-Si(O- Me+)2-OH
    → [-Si(O- Me+)2-O-]nnH2O [n=4,6,8:環状、n≧10:単鎖状]    ・・・・(3-3e)
  一般に、石英を含めた珪酸塩鉱物の水に対する溶解度(図 6-3 参照)は、高温・高圧になるほど大きいことから(3-3c,c')及び(3-3e)の脱水縮合反応は、温度・圧力が低下するほど右に進むと考えられる しかし、地殻の平均組成(表 1-2 参照)からも分かるように現在の地殻には、珪素(Si1モルに対して水素(H)が0.14モル(H2Oとして1.25%)しか存在せず、たとえ、マグマ・オーシャン中の水分が2%であったとしても、(3-3b)の反応でさえ起こる確率は低い 更に、発生期の水素(H)は容易に水素分子(H2)に変わってしまうため、その作用範囲は極めて狭い 従って、触媒となる遊離鉄は原子状となって均一に分散している必要がありまた、(3-3c,c')及び(3-3e)の脱水縮合反応で遊離してくる水分(H2O)は、繰り返し(3-3a)の反応に使用されなければならない
  このようにして、SiO4四面体の連結(脱水縮合)は、図 2-4 に示した珪酸塩鉱物の進化の経路をたどりながら、非常に遅いテンポで段階的に規則正しく行われ花崗岩やペグマタイトが晶出する地殻形成の後期まで続いたものと考えられる その上、地殻形成後期の水分が濃縮(5%前後)された段階でも、珪素(Si1モル当たり水素(H)が0.5モル程度と差程増えておらず、独立型から一気に複鎖状以降の連結体に進化することは不可能に近い 複鎖状、層状、網状(石英も含む)の珪酸塩鉱物は一旦単鎖状の連結体を経て段階的に形成されなければならないのである しかし、高圧変成作用において水分が数十%に達した場合は珪酸塩が高圧の熱水に溶解し、バラバラになったSiO4四面体と金属イオンから、直接様々な珪酸塩鉱物が形成される可能性はある
  いずれにしても、複鎖状以降の連結反応にはかなりの水素(H)が必要となり、遊離鉄(Fe)の量にも限界がある また、温度が1000℃を下回った段階では、遊離鉄はもはや水素の発生源とはなり得ないのである ところが、表 3-2 にも示したように、(3-3b,b')や(3-3d)の反応で遊離してきた金属のうち地殻中に多く含まれているアルミニウム(Al)は、1000℃以下( 350℃位まで)でも水との反応性が強く、容易に水素を発生できると考えられる 従って、複鎖状以降の連結反応では、このアルミニウムが鉄に変わって主役になったとしても不思議ではない
  Al + 3H2O → 3HAl(OH)3〔ギブサイト〕 ・・・(3-3a')
  また、上式で生成したギブサイトは時間をかけて一部脱水され、AlO(OH)(ベーマイト)に変化する そして、これらの水酸化アルミニウムは、常圧では約300℃以上で更に脱水され、γ-Al2O3などに変化してしまうものの、高圧の水蒸気下ではかなりの高温状態でも存在できると考えられる しかし、1100℃以上の高温ではα-Al2O3(コランダム)に変化し、クロム(Cr3+)やチタン(Ti4+)などの微量の着色イオンを含んだルビー(紅色)やサファイア(青色)などを晶出することもある

   Al-同形置換    空隙を埋める陰イオン
   (Al/Si+Al)  (全イオン価/Si+Al)
図 3-8 各種珪酸塩鉱物のAl-同形置換と陰イオンの取込み

(2)SiO4四面体とAlO4四面体の連結から成るAl-同形置換
  右の図 3-8 には、珪酸塩鉱物の進化に従い、Al-同形置換の割合が増えていく様子を示したがおよそ1000℃で連結反応が進んだと考えられる 複鎖状以降の連結体では確実にAl-同形置換(太い実線)が起こっている この原因は、複鎖状以降の連結体の原料となった 単鎖状連結体がもっぱら1000℃以下で(3-3a')の反応によって生成したAl(OH)3AlO(OH)と、(3-3b')などで生成したSiO4四面体のシラノール基との脱水縮合反応によって 形成されたためと考えられる そして、単鎖状の輝石から複鎖状の角閃石層状の雲母網状の長石へと進化するに従って徐々に水酸化アルミニウムが濃縮されてくるためか確実にAl-同形置換の量を増してくるのである
  Al-同形置換の構造については4-5節で詳しく述べるが、SiO4四面体と同等に連結するためにアルミニウムイオン(Al3+)も、酸素イオン(O2-)が形成する正四面体空隙に入らなければならない 幸いにもアルミニウムイオンのイオン半径は 珪素イオン(Si4+)に近く、Al-O結合も共有結合の割合が約4割と、Si-O結合とよく似ているため比較的容易にAlO4の形で正四面体空隙に納まることができる しかしアルミニウムイオンは珪素イオンに比べ結合手が1本不足していることとイオン半径がわずかに大きい(0.5Å)ために、AlO4四面体構造はSiO4のような正四面体というわけにはいかない Al-Oの原子間距離が1.7ÅとSi-Oに比べ0.1Å大きいことから、AlO4四面体は一辺が2.62.9Å、O-Al-Oの結合角は 100118°の間で、それぞればらついているものと考えられる この事実は、α-石英の単結晶(水晶)でAl-同形置換が多かった場合、六角柱の柱面に“ねじれ現象”が見られることからも明らかである5-2(4)参照)
  また、Al-同形置換が起こった場合、アルミニウムイオンの(正)電荷が1個不足していることから、AlO4四面体の頂点(酸素イオン)では、負(−)の結合手が1本余っていて、常に活性化された状態にある そして、この活性化された部分に、1価の陽イオンである水素イオン(H+)やアルカリ金属イオン(Li+Na+K+)が捕獲され易く、隣接する結晶空隙の大きさと各々の珪酸塩鉱物が晶出する際のこれらの陽イオンの濃度によって、その種類が決定される つまり、結晶空隙の大きい雲母や長石では、イオン半径の大きいカリウムイオン(K+)やナトリウムイオン(Na+)が取り込まれ易く、逆に、イオン半径がゼロに等しいH+はあらゆる空隙に入ることができるため、むしろ水分濃度の方が問題となるのである
  従って、酸素イオンと水素イオンの結合した水酸基(OH)は、上の図 3-8 に示した(細い一点鎖線)ように、多量の水分の存在下で変成を受けた珪酸塩鉱物ほど多くなることが分かる しかし、実際には、結晶欠陥(SiO4四面体の連結の切断部分)や過剰の金属イオンによる、水酸イオン(OH-)の取り込みなど不確定要素が多く、OH基の量とAl-同形置換には必ずしも相関があるとは言えない 例えば、豊富な水分を伴って形成された代表的な高圧変成鉱物である緑泥石は過剰なマグネシウムイオン(Mg2+)と水酸イオン(OH-)からできているMg(OH)2(ブルーサイト)を、雲母型層状連結体の層間に挟んでいる また、代表的な高温変成鉱物である紅柱石は、過剰なアルミニウムイオン(Al3+) が、水酸イオンではなく酸素イオン(O2-)を直接取り込んでいる良い例となっている
  そして、代表的な水熱合成鉱物である水晶(α-石英)は、その結晶空隙が比較的小さいため、Al-同形置換で取り込まれる陽イオンは、その空隙にぴったりと納まるリチウムイオン(Li+)が優先的に取り込まれ、OH基はむしろ結晶欠陥部に多いという特徴がある 珪酸塩鉱物が最も進化した形である石英は単鎖状連結体同士の脱水縮合によって形成されたと考えられることから単鎖状連結体の長手方向の縮合が不完全になり易く、脱水縮合できずに残ったシラノール(≡Si-OH)がOH基を増加させる要因となっている しかし、その量はせいぜい50ppm程度で極めて少ない 熱水中で晶出した水晶が、OH基を差程含んでいないと言うことは、水素イオン(H+)は どこにでも入ることができる反面、かえって構造的な束縛がなく出て行き易いのかも知れない
  このように、Al-同形置換によって形成されるAlO4四面体は、単なるSiO4四面体の代行としての役目だけでなく四面体の活性化により珪酸塩鉱物に様々な金属イオンを取り込む素地を作っている 更にSiO4四面体と異なり、フレキシブルなAlO4四面体を提供することで、長石のような複雑な連結体を構築することが可能となったと言える

(3)SiO4四面体の連結をコントロールする金属イオンの種類と量
  これまで詳細に述べてきたように、SiO4四面体は高温・高圧の熱水作用で様々な連結体を形成し、温度・圧力の影響でその連結角は連続的に変化している そして、ある温度・圧力条件下で適当な金属イオンが共存していると、この金属イオンが珪酸イオン(SiO4連結体)とイオン結合し、それまでバラバラに分散していた珪酸イオンを束ねてその時の温度・圧力条件下で最適な珪酸塩を形成したと考えられる つまり、マグマの温度・圧力が連続的に変化(低下)していく中で、SiO4四面体の連結反応は徐々に進行するが、SiO4連結体の成す連結度及び連結角の各段階で、最適な金属イオンと結合することによって、SiO4四面体の連結型(図 3-5)が固定されたと言える
  従って、マグマ中の金属イオンの量が少なかったり、金属イオンの種類(イオン半径及びイオン価)が偏っていた場合は、これほど多様の珪酸塩鉱物は形成されず、SiO4四面体の連結反応は、その大半が石英の晶出まで持ち越されることになる 逆に、金属イオンの種類と量が豊富にあった場合は、SiO4四面体の連結反応が阻害されより原始的な珪酸塩鉱物が多量に形成されるのである 下の図 3-9 には、各々のSiO4四面体の連結方式を固定している、金属イオンの種類と量を示したが地殻の形成が始まった段階でもこれらの金属イオンには事欠かず、地中2900kmにも及ぶマントルはもちろんのこと地表100km圏内においても、カンラン石やザクロ石などより原始的な珪酸塩鉱物がその大半を占めていることがよく分かる
  また、高温・高圧の熱水が多量に関与した変成帯では、一旦、熱水によって金属イオンの多い原始的な珪酸塩鉱物が分解されより進化した(金属イオンを差程必要としない)珪酸塩鉱物を晶出することがある この場合は、熱水(高密度水蒸気)の作用によりSiO4四面体の連結が促進されるため、結晶空隙内に取り残された余剰の金属陽イオンが、水酸イオン(OH-)などの陰イオンを引き込んでいる例(電気石、カオリン、緑泥石など)もよく見られる いずれにしても、SiO4四面体の連結反応は、初期の段階においては金属イオン(の種類と量)によってコントロールされ逆に、マグマ中の水分量が増加した後期では高温・高圧の熱水によって促進されたと言っても過言ではない
  第1章の表 1-2 に示したように、地球を構成する珪素(Si)以外の金属元素は、1.鉄(Fe)、2.マグネシウム(Mg)、3.ニッケル(Ni)、4.カルシウム(Ca)、5.アルミニウム(Al)、6.ナトリウム(Na) の順に多い この中で鉄とニッケルは、表 3-2 から分かるようにイオン化傾向が小さく地球の形成時に比重の大きい遊離金属として沈降し地球の核を形成したためにかなり減少している 従って、下部マントルの珪酸塩鉱物中には鉄イオン(Fe2+)が比較的多いとしても、上部マントルや下部の地殻で珪酸イオンとイオン結合している金属イオンはほとんどがマグネシウムイオン(Mg2+)である マグネシウムイオンはそのイオン半径(0.8Å)やイオン化傾向、あるいは珪酸イオンを接着する意味でのイオン価(2価)と全ての条件において珪酸イオンとの相性が良いらしい

    SiO4四面体とイオン結合している金属イオンの量(全イオン価/Si)
図 3-9 各種珪酸塩鉱物における金属イオンの種類と量

  地球を構成している元素のうち、マグネシウム、珪素、酸素以外の全ての元素を取り除いてしまうと、残った3元素の比率から、地球上の鉱物はほとんどMgSiO3という輝石になってしまうと言う しかし、実際には他の金属イオンも豊富に存在しているため輝石よりも原始的で金属イオンの占める比率の高いカンラン石やザクロ石などの独立型珪酸塩鉱物を、多量に形成したのである このような、マグネシウムイオンの特徴のみならず、上の図 3-9 からも分かるように珪酸イオンとの相性という観点から他の金属イオンにおいても、何らかの傾向があるように見受けられる 以下、各々の金属イオンの特徴と珪酸イオンとの関連性について考えてみた(文中の各珪酸塩鉱物の融点は常圧下におけるもので、超高圧の水蒸気下では200300℃の融点低下が見込まれる)

a)マグネシウムイオン(Mg2+)と鉄イオン(Fe2+
  マグネシウムイオンと2価の鉄イオンは、イオン価の他にイオン半径もほぼ同じことから、珪酸塩鉱物中に占める位置は全く同等で、完全な互換性がある しかし,両者のイオン化傾向の大きな違いから、文頭の3-3(1)でも述べたように酸素の不足状態にある原始マグマ中では鉄の大部分が遊離し、金属鉄として分散していたと考えられる 従って、両者の比率(モル比)は、Mg2+Fe2+=9:1と圧倒的にマグネシウムイオンが多くしかも、両者はほぼ一定の比率のまま、イオン結合による接着剤として珪酸塩鉱物中に優先的に取り込まれていくのである
  表 3-2 に示したように、酸化マグネシウム(MgO)の融点(約2800℃)は非常に高く、その珪酸塩鉱物である、Mg2SiO4(カンラン石:融点1900℃)やMgSiO3(輝石:融点1560℃)も、他の珪酸塩鉱物と比べて融点が高い 従って、Mg2+のみから成るこれらの珪酸塩鉱物が優先して晶出することも考えられるが、実際には、Fe2+を約1割含んだ共融混合物として、(Mg,Fe)2SiO4 (融点約1750℃)や (Mg,Fe)SiO3 (融点約1500℃)の形で順次晶出することになる そして、マグネシウムイオンと2価の鉄イオンは角閃石や雲母の晶出でほぼ消費し尽くされ、長石や石英の晶出時にはほとんど残っていない

b)カルシウムイオン(Ca2+)とナトリウムイオン(Na+
  カルシウムはマグネシウムに次いで多い金属元素で、イオン価はもちろんのこと、イオン化傾向も似ているにもかかわらず、イオン半径(1.2Å)が非常に大きいために、原始的な珪酸イオンとの相性はあまり良くない しかし、原始マグマ中では、酸化カルシウム(CaO)は酸化マグネシウム(MgO)より比重が小さいため、マグマの上部に集まり易く比較的低圧(低温)の部分で、Ca3(Fe,Al)2(SiO4)3 (鉄ザクロ石:融点約1150℃)として晶出することができる
  ザクロ石を晶出後に残ったカルシウムイオンは、イオン半径がほぼ同じ(大きい)ナトリウムイオンと行動を共にする傾向がある 輝石以降の珪酸塩鉱物はSiO4四面体の連結が進み、複雑な構造に変化していることから、結晶空隙が大きくなったためと考えられる この場合、両者は比較的容易に入れ替わることができCa2+Na+の置換によって不足するイオン価はその近傍に、c)で述べる3価の金属イオンを取り込むことによって補われているのである しかし、SiO4四面体が連結していない独立型の珪酸塩鉱物では1価のナトリウムイオンは四面体同士の接着の役には立たずカルシウムイオンに同伴する可能性はほとんど無い また両者のイオンは、前項でも詳しく述べたように、Al-同形置換による正電荷の不足を補償する形で複鎖状以降の珪酸塩鉱物に取り込まれるという特徴も持っている このうち、2価のカルシウムイオンは、大きな結晶空隙の数よりAl-同形置換の数が多い場合に取り込まれ易く、Al-同形置換の量的変化は、両イオンの比率によって調整されると考えられる
  このように、カルシウムイオンとナトリウムイオンは、あらゆる割合で混ざり合いながら行動を共にし、Al-同形置換の最も進んだCaAl2Si2O8NaAlSi3O8(斜長石:融点1300℃前後)を終点として、一気に晶出してしまうのである 特にカルシウムイオンは斜長石の晶出でほとんど消費されてしまい石英の晶出時まで持ち越されることは少ない

c)アルミニウムイオン(Al3+)と鉄イオン(Fe3+
  地球を構成している元素の中で、アルミニウムはカルシウムに次いで多く存在しているが、原子数ではむしろカルシウムより多い しかし、アルミニウムはイオン化傾向が2価の鉄に近いため原始マグマ中ではかなりの量が遊離していたものと考えられる マグマ中で遊離した金属アルミニウムは、比重が小さい(2.7)ために上昇し易く、地殻中の存在度を著しく増加させることになるがやはり、大部分はアルミニウムイオンの形で、SiO4四面体の強力な接着剤としてザクロ石の形成に使用され、マントル深く沈み込んでいるのである 一方、3価の鉄イオンの場合イオン価はもちろんイオン半径がほぼ同じという理由からアルミニウムイオンと同伴し易いが酸素不足も手伝って、もともとその量(モル比)は相対的に少なかったものと思われる
  高温・超高圧の下でザクロ石を形成する際、イオン半径が小さい3価の金属イオンを接着剤とした、(Mg,Fe)3Al2(SiO4)3 (アルミニウムザクロ石:融点約1250℃)が真先に晶出し、アルミニウムイオンを優先的に消費してしまうため3価の鉄イオンは次第に相対的濃度を増していくことになる そして、比較的圧力の低いマグマ溜まりの上部で晶出したザクロ石は逆に、3価の鉄イオンを主体とした、前述の鉄ザクロ石 Ca3(Fe,Al)2(SiO4)3であったと考えることができる いずれにしても、イオン半径が小さい3価の金属イオンは、ザクロ石のようにバラバラのSiO4四面体を強固に結び付ける仕事は得手でも、SiO4四面体の連結が進んだ単鎖状(輝石)以降の珪酸塩鉱物ではむしろ、補助的な役割に回っている場合が多い 前述のナトリウムイオンの取り込みやAl-同形置換によって不足する正電荷を補う仕事である
  そして、アルミニウムイオンの最も重要な役割は、珪素イオンに取って代わりSiO4連結体の一部を担う、前項で述べたAl-同形置換である Al-同形置換用のアルミニウムイオンは上述の遊離した金属アルミニウムが、(3-3a')式のように高温・高圧の水蒸気と反応して生成した水酸化アルミニウムによって供給されるが水酸化アルミニウムが熱分解されずマグマ中に存在できるようになったのはその時の圧力にもよるが、およそ1000℃前後ではなかったかと推定される 一方、3価の鉄イオンがFe-同形置換を起こすことは ほとんど考えられない 3価の鉄イオンは、アルミニウムイオンと比べてイオン半径が大きいという問題以上に、Fe(OH)3 (水酸化鉄)が非常に不安定なためである 従って、Al-同形置換は石英でもよく見られるが3価の鉄イオンが石英の結晶内に取り込まれる可能性は、石英の原料となった単鎖状のSiO4連結体が、長手(軸)方向に連結し損なった結晶欠陥部分で、珪酸イオンとイオン結合する場合に限られる

d)アルカリ金属イオン(Na+K+Li+
  ナトリウムイオン(Na+)を中心とするアルカリ金属イオンは、イオン価が小さ過ぎるために、珪酸イオン同士の接着剤の役には立たず、イオン半径とイオン化傾向が大きいことも手伝って最後まで熱水(高密度水蒸気)中に残留する傾向がある このうち、イオン半径が最大のカリウムイオン(K+)は、結晶空隙が小さい原始的な珪酸塩鉱物にはほとんど取り込まれることがなく熱水中に最後まで溶解しているため地殻中のカリウムの存在度を劇的に増加させる原因にもなっている
  b)で述べたナトリウムイオンはもちろんのこと、リチウムイオン(Li+)を含めた1価の陽イオンは、Al-同形置換によって生じた正電荷の不足を補う形で、より進化してAl-同形置換の増加した珪酸塩鉱物中に取り込まれる場合が多い 特にイオン半径が最大(1.6Å)のカリウムイオンは、専ら、結晶空隙が最大となった雲母や長石に取り込まれこれらの結晶構造をより強固なものにしている また同じことは、やはりイオン半径が大きいナトリウムイオン(1.1Å)についても言えるが、カリウムイオンよりは小さいために熱水中に溶出し易い(風化を受け易い)傾向にある
  一方、イオン半径の比較的小さいリチウムイオン(0.8Å)は、その量は少ないものの、結晶空隙の小さい原始的な珪酸塩鉱物で、Al-同形置換が起こった場合などに取り込まれ易い 逆に、最も進化した石英(α,β)の場合も結晶空隙が小さくカリウムイオンとナトリウムイオンは石英の構造内に入ることは制限されるがリチウムイオンであればその制限はほとんど受けない 従って、マグマ中にリチウムイオンが多く含まれていた場合は最後に晶出した石英中のリチウムも増加し、Al-同形置換も多くなる傾向にある つまり、結晶空隙の小さな珪酸塩鉱物では、リチウムイオンによってAl-同形置換の量がコントロールされると言っても過言ではない しかし、リチウムイオンの存在度は極端に少なく、石英の構造内でAl-同形置換が起こった場合、不足する正電荷はナトリウムイオンや一部カリウムイオンによって補われるのが一般的である

  
3−4.珪酸塩鉱物の最も進化した「SiO2」への道程         目次:

  本節の内容は、第2章で述べたこととかなり重複するかもしれない しかし、本文の目的である石英(SiO2)の成因解明について、珪酸塩鉱物の進化という観点から、色々と考えてきたことを一度まとめておく必要がある
  最も原始的なカンラン石に端を発した珪酸塩鉱物の進化とは、マグマ中の温度・圧力あるいは水分や金属イオンなどの影響を受けながら、SiO4四面体が頂点を共有して連結することであった しかし、珪酸塩鉱物の最も進化した形である石英にたどり着くまでには紆余曲折した道のりがあり、特に高純度石英ほど その道のりは遠かったと言える 下の図 3-10 には、地球上で最も高純度(SiO2 99.99%以上)の石英と思われる、グラニュラー・クォーツ(Granular Quartz)アラスカイト(Alaskite)や天然水晶(Crystal Quartz)などに至る経路を、単純化して表しておいた この中でも天然水晶は、自然の純化作用を繰り返し受けて晶出した六角柱状の単結晶体でありまさに天然の芸術品と言える 以下、これら3種類の高純度石英と、その母岩である花崗岩やペグマタイト(巨晶花崗岩)あるいは珪岩の成因について、あらゆる条件を加味しながら順を追って考えてみた

図 3-10 天然の高純度石英が誕生するまでの道のり

(1)超高温・超高圧状態の原始マグマから進化したペグマタイト
  原始地球時代の末期に、直径10km前後の大型隕石が、表面のまだ柔らかかった地球に衝突した場合、深さ70100kmに至る、超高温・超高圧の巨大な原始マグマが形成されたであろうことは 2-3(2)で述べた通りである そして、この原始マグマの温度・圧力は約1500℃・23万気圧に達し、その成分は、主にカンラン石や輝石などが熱分解によってバラバラになり珪酸イオンと金属イオンに分かれたものである 融点が高く分解されにくいカンラン石(Mg,Fe)2SiO4 (融点約1750℃)でも、2万気圧前後の高圧下では、わずかな水分(0.2%程度)の影響で分解温度が 300℃近くも低下している
  この超高温・超高圧の原始マグマが、原始地球の外からの冷却に伴い、ゆっくりと温度が低下する過程で、下の図 3-11)コース(太い実線)に示したように、約1450℃(2.5万気圧前後)になると カンラン石(Mg,Fe)2SiO4が晶出し始める 更に原始マグマの周辺の低温部(約1000℃)では、ザクロ石も同時に晶出を開始している つまり、原始マグマの底部(約3万気圧)では、主にアルミニウムザクロ石(Mg,Fe)3Al2(SiO4)3が晶出し、鉄ザクロ石Ca3(Fe,Al)2(SiO4)3は、マグマの上部(約2万気圧)で晶出することは既に述べた通りである これらの最も原始的な(独立型)珪酸塩鉱物は、珪素(Si)1個当たりの金属イオンの消費量が最も多く、超高圧下で形成されるために、比較的イオン半径の小さいMg2+Fe2+を大量に消費してしまったと考えられる もちろん、Ca2+Al3+も、原始マグマ周辺の温度・圧力次第では、かなりの量がザクロ石として持ち去られたことは言うまでもない そして、比重の大きいこれらの晶出物は、マグマ中で沈降して上部マントルの主要鉱物となり残ったマグマは上昇して圧力が低下すると同時に温度も低下した
  マグマの温度が約1250℃まで下がってくると、濃縮された水分の働きで珪酸イオンの連結が進んで単鎖状の連結体となり、残っているMg2+Fe2+によって束ねられ、輝石(Mg,Fe)SiO3 が晶出し始める そして、輝石を晶出した後のマグマは比重差で更に上昇し、約1000℃で角閃石を晶出したのである この頃のマグマ中の水分濃度は1%を越えているため、温度と圧力の低下はほぼ水蒸気密度曲線に沿って起こり、圧力は約1万気圧まで低下している また、マグマ中の金属イオンはMg2+Fe2+が少なくなっているため、この時晶出した角閃石は、Ca2+Al3+を含む普通角閃石Ca2Na(Mg,Fe)4Al3Si6O22(OH)2であったと考えられ、その晶出量もかなり少なかったに違いない 輝石と角閃石は比重差で沈降し、マントルや下部地殻を形成するのであるが後に残ったマグマは比重の小さい流紋岩質マグマになり、更に上昇を続けることになる
  流紋岩質マグマの水分は既に2%前後に濃縮されていて、温度・圧力の低下は引き続き水蒸気曲線に沿って起こるが、マグマが上昇した分だけ、やはり圧力が優先して低下している しかし、大型隕石が地球に落下した頃は、既にマグマ・オーシャンもかなり冷え次項で述べる花崗岩体がほぼ形成されていたと考えられる つまり、流紋岩質マグマが上昇して花崗岩体の底部(深さ約20km)にぶつかると、温度の低下が加速されると共に両者の比重差が少ないためにマグマの上昇スピードが遅くなる そして、8900℃・約8千気圧で、温度低下の比較的速いマグマの周辺部から、雲母の晶出が開始される この時晶出した雲母はMg2+Fe2+がほとんど無いため、Al-同形置換の進んだ層状の珪酸イオンとK+(正電荷補償用)やAl3+から成る、白雲母KAl2(AlSi3O10)(OH)2である 白雲母を晶出後の残り少ないマグマはその周囲を花崗岩体に取り囲まれた半密閉型のマグマ溜まりを形成し、水分が2%以上に濃縮されて温度の低下とともに圧力も低下する そして、7800℃ ・約6千気圧で、最後に残ったAl3+Al-同形置換用)と1価のK+Na+イオン(正電荷補償用)を含む、アルカリ長石(K,Na)(AlSi3O8)が晶出し始める
  金属イオンが消費し尽くされ、余ったSiO4連結体は濃度を増した水分で比重が小さくなるため、更に上部に移動しながら3-2(3)のd)で述べたようなSiO4らせん体に変わり、ついに石英(SiO2)を晶出し始めたのである その時の温度・圧力条件を下の図 3-11 から判断すると、およそ6700℃・4千気圧(α-石英の安定領域上限)が考えられ次項で述べる花崗岩中の石英(β-石英)の晶出条件よりはかなり低温・高圧であるがゆえにα-石英が直接晶出したものと思われる α-石英晶出の末期には、過剰な水分の存在の下、残っている珪酸イオン(SiO4らせん体)の連結が促進され、α-石英の大きな単結晶が形成される場合が多い このようなα-石英の単結晶は、空洞上部にレンズ状の鉱床を形成して長い期間風化されずに残り上質のペグマタイト石英として高純度石英の原料などに利用されている そして、最後に残った水分(熱水)は、炭酸ガス(CO2)や亜硫酸ガス(SO2)、あるいは硫化水素(H2S)、塩素(Cl)、弗素(F)などのガス状物質、更には低沸点の硼素(B)化合物など、色々なガス状物質を含んだまま上部の花崗岩体のすき間に侵入し、硼素(B)を含んだ電気石などの気成鉱物や、様々な変成鉱物(接触交代鉱床)を生ずることになる
  一般にペグマタイトは、水分の増加によって著しく粘性を下げた流紋岩質マグマが、ガス状物質の助けも借りて、マグマを構成している各種成分の分別結晶作用が進み結晶が巨大化したものと言われている しかしいかに分別結晶化が進んでも、インド地方に産するペグマタイトのようにひとつの石英鉱床が数万〜数十万トンにも達するほど結晶が巨大化するとは考えられない 流紋岩質マグマの各成分は比重差がほとんど無いために比重の大きい鉱物から沈降分離する分化作用自体も起こりにくいのである 分別結晶作用が起こりうる条件としては、比較的小さい完全密閉型のマグマ溜まりで温度・圧力がゆっくりと低下した場合のみ考えられる
  下の図 3-11 の)コースにも示したように、大型隕石の衝突によって形成された超高温・超高圧の原始マグマは、他のコースよりも高圧の下に珪酸塩鉱物の進化が行われたため流紋岩質マグマの各成分(雲母、長石、石英)の晶出条件の間には大きな隔たりがある そして濃縮された水分の影響により、水蒸気密度0.70.8g/cm3の曲線に沿って、温度・圧力がバランス良く低下する過程で各成分の分解・溶融曲線を段階的に横切ることになるのだ 結果的に温度の低いマグマ溜まりの外側から中心に向かい雲母、長石、石英と順序よく晶出して巨大な結晶を形作るものと考えられる その証拠として、巨大なペグマタイトを産出するインド地方ではペグマタイトの周辺下部より順に、白雲母、正(K)長石、曹(Na)長石、石英と配列している傾向が見られる 更に、正長石と曹長石が混溶したアルカリ長石の中でも、溶融温度が低い曹長石の比率が高いものほど中心近くの石英鉱床と互層を成している場合が多いのである

珪酸塩鉱物の種類
      (主要鉱物):
 1 独立型(カンラン石)
 1' 〃 (ザクロ石)
 2 複合型(褐レン石)
 3 環 状(電気石)
 4 単鎖状(輝石)
 5 複鎖状(角閃石)
 6 層 状(雲母,緑泥石)
 7 網 状(アルカリ長石)
 7' 〃 (斜長石)
 8 シリカ(α,β-石英)
 
シリカ鉱物の安定領域:
α-石英
β-石英
トリジマイト
クリストバライト

マグマの種類:
玄武岩質マグマ
安山岩質マグマ
流紋岩質マグマ
図 3-11 原始マグマの深さの差による珪酸塩鉱物の進化経路の違い

(2)高温・高圧状態の原始マグマから進化した花崗岩
  ペグマタイト形成の原動力となった大型隕石の衝突よりも かなり前のこと、地表のマグマ・オーシャンが冷え始めた原始地球時代の中〜後期には直径数kmの中型隕石が数多く衝突したであろうことは既に述べた 中型隕石の衝突によって形成された原始マグマは、深さが50km前後に達し、温度・圧力は約1500℃・1.52万気圧で、特に圧力は大型隕石の衝突時より かなり低かったと考えられる もちろん、この温度・圧力条件では前項の場合と同様主成分となっているカンラン石や輝石は熱分解されてバラバラになっている そして、上の図 3-11 の)コース(太い点線)に示したように、この高温・高圧の原始マグマがゆっくり冷却される過程で、約1250℃(1.5万気圧前後)になると、カンラン石やザクロ石を飛び越えて輝石(Mg,Fe)SiO3から晶出し始めたのである ところが、輝石はカンラン石やザクロ石ほど金属イオンを必要としないためにかなりの金属イオンは次の角閃石の晶出まで持ち越されることになる 角閃石は、約1000℃・1万気圧から晶出したが、まだかなりのMg2+Fe2+が残っていることから、主に、4-4(3)で述べる斜方角閃石(Mg,Fe)7Si8O22(OH)2が多量に晶出したに違いない 輝石と角閃石は比重差で沈降し、残った比重の小さい流紋岩質マグマは、Mg2+Fe2+を残したまま上昇を開始した
  原始地球時代の初期に衝突した無数の小型隕石から、隕石中のカンラン石や輝石が熱分解されてバラバラになりマグマ・オーシャンが形成されたであろうことは既に述べた通りである(上の図 3-11 の)コース) しかし、中型隕石が衝突していた頃には、深さ約20kmにも及ぶマグマ・オーシャンの底部(56千気圧)で、温度の低下と共に斜長石が晶出を開始し(この時期は地表に近いほど温度が高い)マグマ・オーシャン中の斜長石の濃度を徐々に高めつつあった そして、マグマ・オーシャンの底部(低温部)で固化し始めた斜長石(比重2.75)と、下から上昇してくる流紋岩質マグマ(比重2.3)との比重差で、斜長石はゆっくり沈降して上記の角閃石と一緒になり下部地殻の主成分になったと考えられる つまり流紋岩質マグマは、温度の高い(1000℃近い)斜長石との接触によってその温度を下げることができず逆に、固化しつつある斜長石は温度の低い流紋岩質マグマによって冷やされ完全に結晶化して沈降したのである なかなか温度を下げることのできない流紋岩質マグマは、完全溶融したまま上昇を続けるため温度降下よりも圧力低下の方を優先させながら、深さ約520kmの間に分厚い溶融層を作り上げたと考えられる
  このようなマグマ同士の置換が、時間をかけて延々と行われている最中、隕石が更に大型化すると同時に衝突回数が減り、地表からの温度低下が更に進行して流紋岩質マグマは次第に冷却速度を速めていく そして、深さ1015km(800℃前後・34千気圧)を中心に、雲母、長石、石英と矢継ぎ早に晶出して、分厚い花崗岩体を形成したのである 花崗岩の晶出条件は、角閃石を晶出後のマグマの圧力低下が激しくペグマタイトの晶出条件と比べ、かなり高温・低圧側に寄っていることが上の図 3-11 の)コースからも分かる この時晶出した雲母は、Mg2+Fe2+がまだ残っているため、黒雲母K(Mg,Fe)3(AlSi3O10)(OH)2であった また、長石の場合は、Ca2+と一部のNa+がマグマ同士の交替時に斜長石の晶出によって持ち去られたため、残ったAl3+K+や一部Na+をかき集めて、アルカリ長石(K,Na)(AlSi3O8)が晶出した そして最後に残った石英は、比較的高温・低圧の条件下でβ-石英が晶出したと考えられる しかし、各成分の晶出条件が近接しているため差程大きな結晶に成長することができず、黒雲母、アルカリ長石β-石英の比較的小さな結晶の集まりである、黒雲母花崗岩が形成されたのである β-石英は常温ではα-石英に転移しているが、マグマ中の金属イオンが多かったことと十分な分別結晶作用が行われていないために、純度は差程高くなってはいない
  図 3-11 からも分かるように、800℃・34千気圧付近における、これら3成分の分解・溶融曲線(便宜上、直線で表した)は互いに交差している 特に黒雲母の分解曲線は、白雲母の曲線より少し高温側に位置すると考えられることから3成分はほぼ同時に晶出したものと思われる しかし、流紋岩質マグマに含まれている水分は、ペグマタイト石英の晶出時とは異なり2%前後で平均化されていることと、金属イオンがまだ多過ぎるために石英の晶出は多少遅れたことが予想される 事実、天然に産する花崗岩中の3成分の結晶粒子形を調べると雲母や長石が比較的自由に結晶化したと思われる自形の結晶となっているのに対し石英はこれらの結晶粒に挟まれた格好で、他形の結晶になっていて、この傾向を裏付けしている つまり、金属イオンを消費するためにまず黒雲母が晶出し、次いでMg2+Fe2+など2価の金属イオンが少なくなってから、その近傍でアルカリ長石が晶出したと考えられるがこれらの晶出が完了して水分が濃縮されてからでないとSiO4らせん体を形成できず、結果的にこれらの晶出物(自形の結晶)のすき間を埋めている残液からβ-石英が他形の結晶として晶出したのである
  一般的に花崗岩と言うと黒雲母花崗岩を指すが、稀に黒雲母の代わりに白雲母を含む白雲母花崗岩を産出する場合があり、石英の純度もかなり高い この成因としては、図 3-10 にも示したように一般的な花崗岩よりは かなり深い所で形成された原始マグマが、上の図 3-11)コースに近い進化の経路をたどってきたものと考えられる つまり、原始地球時代の中〜後期に中型の隕石に混じってたまに大型隕石が衝突した場合、原始マグマの深さが70km以上に達し、ペグマタイトの形成と同じような経路をたどったに違いない しかし、深さ520kmにわたる花崗岩体の形成がまだ完了していないために、Mg2+Fe2+をほとんど消費し尽くしてしまった流紋岩質マグマが、通常の流紋岩質マグマとほぼ同じ、深さ15km近くまで上昇したのである このような、白雲母花崗岩が形成される様子は、図 3-11)コースに重ねて示しておいたが、ペグマタイトの形成と大きく異なる点は「5」の角閃石の晶出後に圧力が優先して低下したと言うことである 従って、白雲母花崗岩の3成分(白雲母、アルカリ長石β-石英)の分解・溶融曲線は、黒雲母花崗岩の場合と同様にかなり接近していることからやはり大きな結晶を晶出することはできながマグマの進化の過程で2価の金属イオンをほとんど消費し尽くしているため石英を初めとする各成分の不純物はかなり少なくなっている

(3)高温変成作用によって再結晶化したグラニュラー・クォーツ
  原始地球時代の最後に火星級の原始惑星が衝突し、月が分離したと同時に巨大クレーターや巨大高地が誕生したであろうことは2-3(5)で述べた 巨大高地は海洋の誕生と同時に巨大大陸となり地球の内部から温度が上昇し始めると、巨大大陸の分裂と合体が幾度となく繰り返されその都度大規模な地殻変動が起きていたことも既に述べた通りである そして大陸の分裂時には、上部マントル(アセノスフェア)から高温で流動性の高い玄武岩質マグマが分裂によって生じた無数の割れ目を伝って上昇し、地殻(リソスフェア)の至る所で高温マグマの貫入による高温変成作用を起こしていたのである 一般に、高温変成作用と言っても、変成を受ける深さによって温度・圧力・水分の3条件が著しく異なりその変成度にも大きな差を生じている 従って、同じペグマタイト石英を例にとり、初期の大陸分裂時にまだ大陸の表面が分厚い花崗岩でおおわれていた場合と後期の大陸分裂時で、花崗岩体が風化侵食によりほぼ取り除かれていた場合の2通りの例について考えてみたい

a)初期の大陸分裂時におけるペグマタイト石英の高温変成作用
  下の図 3-12 に示したA⇔Bコースで、この時期、大陸の表面をおおっていた厚さ約5kmの斜長岩は完全に失われ、ペグマタイト石英の位置は、形成時の20kmから15km以下の深さに変わっている また、ペグマタイト石英の晶出によって吐き出された水分はその後の地温の上昇によって地表付近に押し出され、2%を切っていたものと考えられる このような条件下(A地点)で、高温(1200℃以上)の玄武岩質マグマの貫入を受けると、ペグマタイト石英の温度は少なくとも1000℃には上昇し、残っている水分の影響で圧力もかなり上昇しB地点付近と同等の温度・圧力条件下に長時間さらされた この時、石英の溶融曲線は破線(ロ)で示したように水分が減少している分だけ高温側に移動している 従って、直線(A→B)の一部分が、石英の溶融曲線(ロ)を越えた所でペグマタイト石英が部分溶融を起こし変成相(1:白粒岩)の範囲内でグラニュラー(小さな粒状結晶)化が進んだに違いない 同時に、石英の結晶内に含まれていた微量の金属イオン(Mg2+Fe2+Al3+)や水分(OH基)が、粒子のすき間(粒界)に吐き出されたことが考えられる つまり、石英の部分溶融は、SiO4連結網の切断と再結合を同時に進行させてイオン結合によって網目にぶら下がっている金属イオンや水酸イオン(OH-)を弾き出し、純化作用が進むのである
  グラニュラー化の進んだペグマタイト石英は、水分が自由に移動できるために、高温状態が長く続いた場合は水分を失い易く、高温のまま圧力が優先して低下する その後、温度が次第に低下していく中で変成相(2)(3)(4)を通過し粒界に吐き出された金属イオンとわずかな水分中の珪酸イオンから珪線石、紅柱石、緑泥石などの珪酸塩鉱物を晶出することが多い グラニュラー化した石英はβ-石英から晶出し途中でα-石英に変わるが、紅柱石や緑泥石の結晶は、石英粒子の間隙を埋める他形の結晶となっている また、2価の鉄イオン(Fe2+)は高温の熱水で酸化され、酸化鉄(Fe2O3 赤鉄鉱)の微細結晶となる場合も多く、再結晶化する前でまだ柔らかい石英粒子に食い込む形で高温・高圧のうちに自形の結晶として晶出している このようにして、高純度の石英粒から成るグラニュラー・クォーツが形成されるわけであるがその後、上層部の花崗岩体が風化侵食によってきれいに取り払われ(南インドのように)ちょうど地表に顔を出している例は非常に稀で、貴重な高純度石英の原料となっている
  また、A⇔Bコースで水分が多かった場合(おそらく5%以上)は、石英の溶融曲線(イ)を横切ることになり、ペグマタイト石英は、ほぼ完全に溶融したに違いない この石英の融体は、地殻変動によってひび割れした上層の花崗岩体に侵入しそのまま晶出して石英脈を形成したものと考えられ、完全溶融しているためにグラニュラー化は起きにくい 従って、純化作用もほとんど進んでおらず、石英の純度はペグマタイト石英がそのまま地表に顔を出したグラッシー・クォーツ(Glassy Quartz:一般珪石)と差程変わっていない

b)後期の大陸分裂時におけるペグマタイト石英の高温変成作用
  下の図 3-12 のコースで、上層の花崗岩体の大部分が失われ深さ5km以下となっていて、水分も地表に近いため5%を越えていたものと思われる このような条件下で高温の玄武岩質マグマの貫入を受けた場合、ペグマタイト石英の温度は、地点の地温が低いために1000℃を越えることはほとんど無い また、豊富な水分の影響で圧力も急上昇し、地点における温度・圧力条件にさらされるものの、地表に近いため温度低下も比較的早い 従って、地点では、石英の溶融曲線(イ)を横切って部分溶融を起こすことも考えられるが上層の花崗岩体の風化作用が進んでいるため、高圧の熱水は低圧部分に逃げやすく、地点に到達する前に圧力が低下してしまった可能性の方が高い つまり、グラニュラー化はほとんど起こり得ず、たとえ部分溶融が起きたとしても冷却が速いために純化作用も差程望めない 逆に、中途半端に部分溶融が起こると、比較的低温であるがゆえに水分(OH基)が増加する可能性もある 大概のグラッシー・クォーツは、このような高温変成作用を数回受けているのかも知れない

〔高温・高圧変成相〕
    (太い一点鎖線)
 (1)グラニュライト
     (白 粒 岩)
 (2)珪 線 石
 (3)紅 柱 石
 (4)緑 泥 石
 (5)角 閃 石
 (6)輝   石
 (7)ザ ク ロ 石
 (8)水晶(水熱合成)
 (9)カオリナイト

〔分解・溶融曲線〕
      (細い破線)
 石   英
 : 〃 (水分少ない)
 アルカリ長石
 : 〃 (水分少ない)
 雲   母
図 3-12 高温・高圧変成作用の機構と各種珪酸塩鉱物の変成相

(4)高圧変成作用によって再結晶化したアラスカイトや珪岩
  28億年前、分裂を開始したと考えられる巨大大陸は、その後35億年周期で合体と分裂を繰り返し、その都度大規模な地殻変動が起きたことは、2-5節で詳しく述べた そして大陸の合体時には、低速で衝突し合う大陸同士の接点付近で大陸塊が地中深く潜り込み超高圧状態にさらされたに違いない 従って、大陸塊同士の摩擦熱(圧縮熱)や地熱の影響で温度も上昇しいわゆる高圧変成作用が広範囲にわたって起こるのである
  一般に高圧変成作用と言うと、海水などを巻き込んで豊富な水分の存在の下に行われたと考えられがちであるが、必ずしもそうではない 海水が関与できるのは、比較的浅い部分での高圧変成作用に限られる つまり大陸の移動は、深さ100kmにも及ぶ固いリソスフェアが、粘性の低いアセノスフェアの上を滑るようにして起こることから大陸塊の衝突による高圧変成作用は、分厚いリソスフェア全体で行われていたのである いかに大陸塊の先端部分が地中に潜り込むと言っても、20kmを越えることは少ない 従って、高温変成と同様に高圧変成作用の場合も変成を受ける深さによって温度・圧力・水分の3条件が著しく異なりその変成度に大きな差が生じている 以下、初期の大陸合体時に、まだ大陸の表面が分厚い花崗岩体におおわれていた白雲母花崗岩と後期の大陸合体時で、花崗岩の風化・堆積作用によって形成された石英砂岩を例にとり高圧変成作用の機構について考えてみたい

a)初期の大陸合体時における白雲母花崗岩の高圧変成作用
  上の図 3-12 に示したA⇔Cコースである 上部の花崗岩体がまだ厚く、A地点の深さは1015kmで、やはり地温の上昇によって水分は2%以下となっている このような条件下で大陸の衝突による高圧状態にさらされると圧縮熱による温度の上昇も加わって、C地点とほぼ同等の温度・圧力条件になる つまり、急激な圧力上昇と、ゆっくりとした温度上昇である もちろん、A地点から更に地中深く潜った場合は更なる圧力上昇と地温の上昇が加味されることは言うまでもない また、この水分濃度における石英の溶融曲線は、やはり破線(ロ)で白雲母とアルカリ長石の分解・溶融曲線は(ホ)と(ニ)である 白雲母の分解曲線は、この程度の水分の減少ではほとんど移動しないと考えられる 従って、直線(A→C)の一部分が石英の溶融曲線(ロ)を越えた時点で白雲母花崗岩中の石英は部分溶融を起こすもののアルカリ長石と白雲母はそのまま取り残されるのである 石英はこれらの固体粒のすき間を埋めたまま純化作用が進み長石や雲母との粒界に不純物を吐き出し、自らは圧力の低下に従い石英の溶融曲線(ロ)を横切る時点でα-石英が他形の結晶として晶出するに違いない
  高圧変成作用は、大陸同士の衝突が終わるまで、気の遠くなるような時間をかけてゆっくり行われ、地殻変動の終焉後は圧力が優先して低下したものと考えられる 差程高くない温度は、地温の影響でなかなか下がらない 一方、粒界に吐き出された不純物は、主にMg2+Fe2+あるいはAl3+などの金属イオンであり、結合力の強いOH基は、温度が低いためにかなりの量が石英中に留まる そして、粒界におけるこれらの金属イオンは水分の量は少ないものの(超高圧であるがゆえに)その中に溶解しているかなりの量の珪酸イオンと結合して石英が再結晶化する前に、変成相(7)の領域でザクロ石を晶出すると考えられる ザクロ石は主にアルミニウムザクロ石がまだ柔らかい石英粒に食い込む形で自形の結晶として晶出するのである このようにして、高度の高圧変成作用を受けた白雲母花崗岩からアラスカイトが形成されるわけであるが石英粒の純度が高いものほど沢山のザクロ石を含んでいる傾向にある また、巨大な圧力によって生じる歪み(摺動作用)の方向に対して平行に白雲母の結晶片が規則正しく並んでいる場合も多い 一方、同様の条件で黒雲母花崗岩が高度の高圧変成作用を受けた場合はザクロ石の原料(金属イオン)には事欠かず、多量のザクロ石を晶出したに違いない 花崗岩やペグマタイト中にザクロ石を産する例は多いがこれらの岩石は多かれ少なかれ高圧変成作用を受けていると考えた方がよい
  また、A⇔Cコースで水分が多かった場合は、やはり石英の溶融曲線(イ)を横切るため、ペグマタイト石英の場合では、高温変成作用のA⇔Bコースと同様に完全溶融し地殻変動によってひび割れした上層の花崗岩体に侵入し、石英脈の形成に関与したかも知れない しかし、花崗岩中のアルカリ長石は完全溶融することは難しく、更に雲母類はそのまま残ってしまい雲母片の並び方によって摺動作用の方向が判明する場合が多い 大陸の合体時では複雑な地殻変動が起こるため、圧縮熱による局部的な温度上昇も十分考えられ直線(A→C)が立ち上がって、水分の影響で花崗岩が完全溶融することもあり得る 大陸同士の衝突の現場で、火山活動が激しくなるのもその良い例である この場合の変成作用は高温変成と何ら変わることなく、花崗岩の溶融・再結晶化による若返りも見られる

b)後期の大陸合体時における石英砂岩の高圧変成作用
  上の図 3-12コースで、堆積岩である石英砂岩の位置(地点)は、せいぜい深さ5km位までであったと考えられる もちろん、堆積岩である以上水中で形成されているため、海水の助けを借りなくても水分は楽に5%を越えている このような条件下で、大陸塊の衝突による高圧変成作用を受けた場合、A⇔Cコースと同様に急激な圧力上昇に加え圧縮熱で温度もゆっくりと上昇する そして、地点より更に地中深く押し込められた場合は地温勾配曲線に沿って地温の上昇が加味される以上に、圧力が上昇するのである 従って、直線()が石英の溶融曲線(イ)をわずかに越えて、部分溶融を起こす場合が多かったに違いない しかし、前述した白雲母花崗岩の内部で石英粒だけが部分溶融する場合とは異なり石英を主成分とする石英砂岩の場合は圧力のみ極端に高い条件下では結晶粒の成長が阻害されるのである そして、堆積岩である石英砂岩には、もともと不純物が多かった上に純化作用もあまり進んでいないことから高純度石英の形成は期待できない
  ただ、水分が濃縮されて形成されたと思われる小さな空洞で、石英から吐き出された不純物を原料に、角閃石や緑泥石あるいはカオリンなどの粘土鉱物が晶出しその周囲の石英を純化することはよくある 再結晶化した石英は、多結晶(微細結晶)質のα-石英として晶出し、強力な摺動作用の結果として結晶面に方向性を持ついわゆる結晶片岩の一種である、珪岩が形成されるのである また、同じ石英砂岩でも、グラニュラー・クォーツやアラスカイトなどの高純度石英が風化・堆積したものはこのような高圧変成作用を受けることによって、比較的高純度の珪岩を形成することがある ブラジルのバイア州やアメリカのアーカンソー州など、ごく限られた地方にのみ産出しているが品質はペグマタイト石英を遙かにしのぎ、むしろ次項で述べる天然水晶に近い場合が多い 唯一異なる点は、天然水晶を初めグラニュラー・クォーツやアラスカイト石英が、α-石英の単結晶から成る小塊あるいは粒であるのに対し、この高純度の珪岩はα-石英の多結晶(微細結晶の集合体)からできていることである
  一方、これらの石英砂岩が、海水を巻き込んで高圧変成作用を受けた場合は、コースの変成度(温度・圧力の程度)、あるいは石英砂岩の純度の違いにかかわらず高圧の下に石英の溶解度を増した海水から、天然水晶を晶出する場合もある この機構については、次項で詳しく述べることにする

(5)高圧変成作用に伴う石英の水熱合成で晶出した天然水晶
  前項のb)で述べた比較的浅い高圧変成作用で多量の海水が巻き込まれた場合、高圧の海水には様々な珪酸塩鉱物が溶解する そして、大陸の衝突に伴う地殻変動が停止した後、圧力が低下する過程でその時々の温度・圧力条件に見合った珪酸塩鉱物が海水が閉じ込められていた空洞内に晶出する場合が多い 中でも、石英砂岩がこの種の高圧変成作用を受けた場合は、400℃・5千気圧以上の条件で長時間保持されると6-2節でも詳しく述べるように、塩化ナトリウム(NaCl)を含んだ海水中に、石英が5%以上も溶解すると考えられる その後、地殻変動の終焉に伴う圧力降下によって石英が過飽和状態となり、母岩の表面に多結晶のα-石英が急速に晶出し始める そして、母岩の位置(深さ)に見合った圧力まで低下した後はゆっくりとした温度低下に変わり、多結晶の石英の上に単結晶のα-石英がゆっくりと成長するのである(高温・高圧下における石英の水に対する溶解度は図 6-3 参照
  つまり上の図 3-12コースで、地点は必ずしも石英の溶融曲線(イ)を越える必要はない 重要なのは地点の温度がいかに高かったかである 地点の温度が高いほど圧力の降下後は水晶の晶出領域(変成相(8):太い一点鎖線の円内)に長く留まると考えられるからである 例えば、前項 a)の最後に述べた火山活動に伴う流紋岩質マグマの貫入などによって、温度が500℃近くまで上昇した場合、5千気圧程度では石英砂岩の部分溶融はほとんど起こらないが、空洞を満たしている海水中の石英濃度は10%近くにも達する そして圧力の降下後、変成相(8)の円内にしばらく留まり、大きな水晶を晶出するのである この場合、初期の圧力低下の幅が小さいため多結晶質の層はかなり薄く変成度の低い母岩(石英砂岩)と共に、非常に脆い状態になっていたと考えられる 反面、単結晶は大きく成長し、完全な六角柱状の透明な水晶になるがその後の地殻変動で空洞がつぶされ易く、地表に顔を出した母岩も風化されて砂状になり易い ブラジルのミナス州で漂砂鉱床に産する六角柱状の大きな水晶塊やアメリカのアーカンソー州などに産する、砂岩状の母岩の表面に透明な水晶が成長した大塊はこのような機構で形成されたのかも知れない
  一方、上の図 3-12 に示した地点のように、1万気圧もの高圧状態に長期間さらされた場合は、母岩である石英砂岩が部分溶融して変成度の高い珪岩に変わると共に空洞中の海水の石英濃度も著しく増加する そして、初期における圧力低下の幅も大きいため、空洞を満たす程に多結晶質のα-石英を晶出するのである もちろん、流紋岩質マグマの貫入で温度が更に上昇した場合は、この傾向に拍車をかけることになる そして、変成相(8)を通過する際、残り少ない空洞内の空間に透明な水晶がびっしり晶出したと考えられ、ブラジルのバイア州やアンゴラの南部で高純度の多結晶質石英に伴って産出する水晶がその良い例である
  これらの高純度の水晶は原料となった石英砂岩の純度が高く、この石英砂岩は、グラニュラー・クォーツやアラスカイトが風化・堆積したものであろうことは既に述べた通りである しかし、通常の花崗岩の風化・堆積によって形成された純度の低い石英砂岩の場合は水晶の純度もかなり低くい 中でも多量に含まれているAl3+は、石英を構成しているSiO4らせん体の内部にAl-同形置換の形で取り込まれ易いため、文頭の3-3(2)でも述べたように晶出した水晶は六角形の柱面がねじれてしまうのである いずれにしても、完全に密閉された空洞内の海水から水晶が晶出する際やはり分別結晶化が進んで不純物が残液中に取り残される傾向が見られる つまり、後期に晶出した水晶の透明な先端部分は、不純物が濃縮された残液から晶出するため同じ水晶塊の不透明な裾の部分より不純物が多いという面白い結果になっている そして、水晶の晶出が終了した空洞内では、Al3+を主体とした金属イオンが濃縮されて、海水中の珪酸イオンと共に変成相(9)を通過する際カオリンなどの粘土鉱物が形成され空洞を埋めている場合が多い

 参考書・文献:
  1)「地球の探究」大原隆・西田孝・大下肇・編集/朝倉書店/1989.7.10
  2)「造岩鉱物学」森本信男・著/東京大学出版会/1989.5.31
  3)「鉱物工学」(第五版) 吉木文平・著/技報堂/1968.9.15
  4)「資源鉱物ハンドブック」坪谷幸六 他・編集/朝倉書店/1965.7.5
  5)「セラミックス」(シリカ特集・天然産シリカ鉱物とその成因) 堤貞夫/窯業協会/1985.4.1

ご意見ご質問は「こちら」までお寄せください。

上に戻る  次Page  前Page

Yahooのページ検索、及びGoogle等のサーチエンジンから、このページ(下層ディレクトリのHTMLファイル)に直接リンクされた方は、内容が正しく表示されていません。 左のHOME アイコンをクリックして初期のフレーム画面に戻り、左上のバナー「Quartz&Crystal」をクリックして現れた解説画面から、このページ「3.SiO2と珪酸塩鉱物の基本構造」のボタンをクリックして再表示して下さい。