2.地球の誕生と「SiO2」の進化          このページや、下層のHTMLファイルに直接リンクされた方は、このボタンをクリックして下さい。

目次  2-1  2-2  2-3  次Page  前Page

 
図 2-1 日本付近でのプレートの衝突


  平成2年5月19日付けの日本経済新聞の社会欄に、「プレートの移動」の記事が掲載されていた 国土地理院では十数億光年彼方のクエーサーから届く電波を利用した精密な電波干渉計でフィリピン海プレート上の父島と 北米プレート上の鹿島(茨城県)との2地点間の相対的な位置関係を測定した その結果、父島が最近の2年間で西北西の方向に7.4cm移動しているのが確認された
  地震多発地帯である日本列島付近では、従来の「プレート・テクトニクス理論」においてユーラシアプレート(EU)、北米プレート(NA)、太平洋プレート(PA)、フィリピン海プレート(PH)の四つのプレートが型にぶつかり合っている(図 2-1 参照) 動きの激しい東西方向では、EUNAPH)の衝突で日本アルプスが、NAPH)⇔PAの衝突で(PAが下に潜り込み)日本海溝が形成され北南方向ではNAPHの接点が丹沢山地になったと推定されていた
  しかし、東海地震の大きな鍵を握るフィリピン海プレートが日本に向かって動いていることを直接証明したのは初めてのことである その後、同じ手法を使った郵政省の観測によっても太平洋プレート上にある南鳥島が、本州に向かって1年間に4cm移動していたことが確認された

  
2−1.「大陸移動説」と「プレート・テクトニクス」            目次:

  世界地図を眺めると、アフリカを初めとする南半球の諸大陸が、まるでパズル合わせのように、一つの大きなブロック(“ゴンドワナ大陸”)に組合わさることが分かる 1912年、ドイツのヴェゲナーによって唱えられ始めた「大陸移動説」はこのような視点から、北半球の大陸をも合わせ、地球上の大陸はもともと一つの超大陸“パンゲア”として存在し分裂・移動によって現在の各大陸に分かれたというものだ その後 この「大陸移動説」は、1930年頃の「マントル対流説」、1960年頃のカナダのウィルソン等による「プレート・テクトニクス」や「海洋底拡大説」によって肉付けされ最近の「マルチプレート・テクトニクス」という理論に統一された そして、前述の4プレートのほか、インドを含めたオーストラリアプレート、アフリカプレート南米プレート、南極プレートなど、全部で10枚以上のプレートが互いにぶつかり合って、様々な地殻変動を引き起こしていると考えられている
  主にカンラン石や輝石などの珪酸塩鉱物からできているマントルは、地球の形成時に、中心部に集積されたトリウムやウランの核分裂(崩壊)による発熱で、温度が1000℃を越えている このような高温の珪酸塩鉱物は、固体の状態で粘性が低下して流動性を増すためマントルがゆっくり対流を起こすのである そして、マントル対流の上昇部分から地表(地殻)が割れて中から高温のマントル成分が顔を出し、下降部分では地表がマントル内に沈み込む つまり、マントルの上昇部分から下降部分までの間が、一枚の大きなプレートとして移動するのである
  プレート同士がぶつかり合う場所(マントルの下降部分)では、より進化した珪酸塩鉱物から成る比重の小さい大陸プレート同士が衝突したりプレート上の堆積物が他方のプレートで削り取られて大山脈をつくり上げる また、上昇してきたマントル成分主体の比重の大きい海洋プレートは大陸プレートの下にもぐり込んで大海溝を形成しその時の摩擦熱でマグマ溜まりができて火山地帯になり大きな歪みによって地震多発地帯にもなる そして、このようなプレート同士のぶつかり合いによって形成された代表的な例がヒマラヤ山脈や前述の日本海溝であると言える 更に、プレート同士がすれ違う場所では断層(横ずれ断層)帯が形成されやはり地震の多発地帯となるがアメリカ西海岸のサンアンドレアス断層がその良い例で1989年10月のサンフランシスコ大地震は比較的記憶に新しい
  一方、マントルの上昇部分では、地表が割れて中央部が陥没した地溝(正断層)帯や海嶺を形成し、マントルの一部が溶融してできたマグマが噴き出して火山も出現している キリマンジャロ山で有名なアフリカ東部の大地溝帯や東太平洋から南極付近、インド洋、大西洋と続く大海嶺はその良い例である 深海に位置する海嶺付近では、海嶺の裂け目からしみ込んだ海水が上昇してくるマグマと接触して熱水に変わっている そして海嶺の両側には、高圧の熱水がマントルマグマ中の有用金属分を溶かし込み再び海底に噴き出すことによって形成されたと思われる、無数のマンガン団塊が転がっているのだ アフリカの大地溝帯も、やがては引き裂かれて海水が入り込み、海嶺の一部になるであろう
  現在活動している海嶺が、もともとは大陸の地溝帯が発達して大陸を引き裂いたものであるとすれば、その原動力は一体何であろうか ハワイ島のキラウエア火山などのように、ホットスポットと称するマントル本体のマグマ溜まりから移動するプレートを次々と突き抜けてマントル起因の粘性の低い玄武岩質マグマを噴き出している場所が太平洋を中心に方々に点在している 北大西洋の海嶺の中心部で活動しているアイスランドのヘクラ火山はその一帯の火山活動(さらさらの溶岩を大量に噴き出している様子)がハワイ島のキラウエア火山とよく似ていることから、海嶺とホットスポットとの関連性も考えられる 更には、古い岩石の年代の測定結果から判明した(数億年単位の)大地殻変動の間けつ性など、色々な疑問点が解決されないまま残っているのである
  従って、これらの疑問を解くためには、地球や月が誕生した約46億年前までさかのぼる必要がある

  
2−2.地球の誕生と月の分離独立                   目次:

  小惑星帯の軌道上に誕生した無数の微惑星の中で、衝突を繰り返すうちにその角速度が失われ、現在の地球の軌道上に落ちてきた微惑星の破片が地球の原料になったであろうことは1-5節で既に述べた そして、その破片は鉄隕石(合金鉄)やコンドライト隕石として地球の軌道付近を様々な楕円軌道を描いて回っているうちに、お互い同士が高速で衝突することになるが合金鉄同士が衝突した場合は、破壊されずに合体して生長し始めた
  地球形成の初期では主に鉄隕石による核の形成が進み、次第にその衝突エネルギーで表面温度が上昇して柔らかくなるとコンドライト隕石が衝突しても破壊されることなく効率良く吸収されるようになる そして引力が増大し、これらの隕石が高速で衝突を繰り返すために表面はどろどろに溶けたマグマ・オーシャン(マグマ大洋)となって原始地球が誕生した
  この頃の原始地球は現在の水星程度の大きさしかないが、鉄隕石を主体に成長しているため、その質量はむしろ現在の火星に近く周囲に及ぼす引力はかなりのものであったと考えられる つまり、近隣の軌道上を回る大型の隕石(微惑星)や生長途上にある小型惑星をその大きな引力で引き付けて合体し、雪だるま式に質量を増やし続けた 更なる引力の増大は、隕石中に含まれていた揮発性物質が地球の圏外に拡散するのを防止しかなり遠方の軌道上の隕石をも引き付けるようになり、隕石の衝突エネルギーも増加する そして、恒常的なマグマ・オーシャンの存在は、隕石によってもたらされた様々な物質の進化と分化をも助長するのである
  更に原始地球では、次に挙げる3点の地球にとって最も重要な出来事が起こったと考えられる

図 2-2 現在の地球内部の成層構造

(1)隕石の溶融分化による原始地球の核とマントルの形成
  地球形成の核となった鉄隕石には、金属鉄(Fe)の他に約10%のニッケル(Ni)や、かなりの硫化鉄(FeS=トロイライト)が含まれている これは現在の地球の核(コア)の組成と ほとんど変わりはないが、隕石中の10%程しかない鉄隕石のみでは、地球の31.5%を占めると言われている 核(コア)を形成することはできない しかし、隕石中の約80%を占めている普通コンドライト(表 1-5 参照)を初め石鉄隕石などには かなりの鉄・ニッケル合金が含まれておりもちろん、酸化鉄(FeO)や酸化ニッケル(NiO)となると、炭素質コンドライトやエコンドライトにもかなり含まれていた
  原始地球のマグマ・オーシャンは、鉄が溶ける程の高温(約1500℃)となっているため、降り注ぐ隕石は一旦完全に溶融され比重の大きい鉄やニッケルが中心部に沈むことは容易に想像がつく 更に、酸化鉄あるいは酸化ニッケルもその一部が炭素質コンドライトがもたらした遊離炭素(C)によって還元され、遊離鉄やニッケルが沈降して核の一部を形成したものと思われる
  2FeOC → 2Fe↓+ CO2↑      ・・・・・・・・(2-2a)
 一方、コンドライト隕石中の、コンドリュールを形成しているカンラン石や輝石、あるいは、マトリックス中に含まれている斜長石などの珪酸塩鉱物は鉄やニッケルより比重が小さいため、溶融した状態でマグマ・オーシャンとして原始地球の上層部に残留する 更に輝石や斜長石は、1500℃もの高温では分解されて、より原始的なカンラン石に戻ったりこのカンラン石と分解された斜長石中の灰長石成分からザクロ石が合成されるなど、複雑な反応が進むことになる そして、カンラン石を主成分とし一部輝石やザクロ石から成る、地球の68.1%をも占めるマントルが、長い時間をかけてゆっくりと形成されたのである
  (MgSiO3)nnFeOnMgFeSiO4    ・・・・・・・・(2-2b)
   (輝石)          (カンラン石)
  MgFeSiO4CaAl2Si2O8CaMgFeAl2Si3O12  ・・・(2-2c)
  (カンラン石)   (灰長石)     (ザクロ石)
  現在の地球の構造は 図 2-2 に示したように、金属鉄を主成分とする中心の核(体積比16.5%、質量比31.5%)が半径3500kmにも及び、主に珪酸塩鉱物からできているマントル(体積比82.5%、質量比68.1%)が、その外側を約2850kmの厚さで包んでいる このような地球の成層構造はマグマ・オーシャンの最も発達した原始地球時代の後期にはほぼでき上がっていたものと考えられる

(2)隕石の「衝突脱ガス説」による原始水蒸気大気の生成
  引力がかなり増大して、マグマ・オーシャンが生じた頃の原始地球時代の初期には、地表は既に大気でおおわれていたと考えられている 大気と言っても水蒸気(H2O)や炭酸ガス(CO2)からできている原始大気のことである
  隕石の衝突によって発生する熱エネルギーは地表の温度を上昇させるが、初めの頃は、そのほとんどが輻射熱として宇宙空間に逃げてしまっていた そして、炭素質コンドライトによってもたらされた水分は、その一部が水蒸気となって放出されたものの地表温度が低いために、かなりの量がカンラン石や輝石に吸収され、蛇紋石が合成されたと考えられる
  Mg2SiO4MgSiO3 + 2H2OMg3Si2O5(OH)4 ・・・(2-2d)
 (カンラン石)  (輝石)           (蛇紋石)
  しかし、引力の増大によって、隕石が秒速10km前後で衝突するようになると、隕石が衝突した部分では温度が1000℃近くまで上昇する そして「衝突脱ガス」反応が起こって、蛇紋石に蓄えられていた水分が蒸発し(2-2dと逆の反応)水蒸気を主成分とする原始大気が形成されたと考えられている
  つまり、地球形成初期の頃は引力が小さ過ぎるために、炭素質コンドライトの衝突で放出された水蒸気の一部や揮発性成分を、大気として留めておくことはできない しかし、蛇紋石として地表に固定された水分は、その後、地表の温度が蛇紋石の分解温度(約600℃)に達すると、一気に水蒸気となって放出されるのである そして、増大した引力により、宇宙空間への拡散が食い止められ、大気となって地球をおおうようになる
  一旦、水蒸気の分厚い大気ができてしまうと、それまでは宇宙空間に逃げていた隕石の衝突による熱エネルギーが、水蒸気大気の保温作用で蓄積され始める すると、地表の温度はどんどん上昇し、ついに、カンラン石や輝石の溶融温度である1500℃に達し、マグマ・オーシャンが形成された そして前項で述べたように、マグマ・オーシャンの内部では遊離炭素による酸化鉄などの還元反応(2-2a)で炭酸ガス(CO2)が発生し始め、やはり原始大気の一部を構成するようになったと考えられる
  反対に、水蒸気と炭酸ガスの大気圧が高くなり過ぎると、これらのガス成分がマグマ・オーシャン中に溶解し、一種の平衡関係(溶解平衡)が生まれる つまり、マグマ・オーシャンの表面温度が1500℃位と、原始大気の圧力が300気圧前後でバランスして、ほぼ一定に保たれるのだ 炭素質コンドライトによって引き続き持ち込まれる水分はマグマ中の水分増加に寄与し、後述する珪酸塩鉱物の進化にも大きな影響を及ぼすことになる
  このように、原始地球時代の初めには、水蒸気と炭酸ガスから成る分厚くて圧力の高い原始大気が形成されていたわけである もちろん、炭素質コンドライトが持ち込んだ窒素(N)やアルゴン(Ar)など微量の揮発性成分も、大気の一部になったことは言うまでもない


(3)原始惑星の「衝突説」による月の分離独立と地球の誕生
  水星から火星に至る地球型惑星の軌道間隔には、一定の法則が存在しているようにも見受けられる しかし微惑星の破片が、図 2-3 にグラフで示したように地球と金星の中間点をピークとした質量分布曲線に従って確率的に分散していたと仮定すると地球と火星の軌道間隔がかなり開いているにもかかわらず火星の質量があまりにも小さ過ぎるように思える つまり、地球と火星の間の軌道上に火星より質量の大きい第四惑星が誕生していてもおかしくないわけであるが原始地球が成長して引力が増大した結果、生長途上の第四惑星を吸引合体してしまったと考えられる

図 2-3 地球型惑星の質量分布曲線

  月の起源については、火星級の微惑星(原始惑星)が原始地球に衝突し地球のマントル成分が飛び散って再度集積することにより月が生まれたと言う「衝突説」が現在最も有力な説になっている これまでは、地球と月が別々に成長したとする「兄弟説」などが考えられていた しかし、月の成分が地球のマントル(比重:約3.3)にほぼ等しいこと地球と月の角運動量が 他の惑星系よりも高い傾向を示していること、更に月は地球から見ると自転しておらず(月の裏側が見えない)あたかも地球の一部であるかのごとく運動していることなど「兄弟説」では理解できない現象も「衝突説」であれば無理なく説明できるのである
  原始地球時代が末期に近づいた頃、隣接した軌道上で生長過程にあった 現在の火星に近い大きさの原始惑星が引力の増大した原始地球に引き付けられて衝突した その頃、地球の表面をおおい始めた地殻はもちろんのこと冷えて固体にはなっているがまだ粘性が低く“ねばねば”したマントルを突き抜け固くなりかけた合金鉄の核(コア)まで達したものと思われる(この当時の地球は隕石の衝突により熱の供給が外部より行われたため中心部ほど温度が低いという現在とは逆の温度分布になっている) そして、その時の莫大な衝突エネルギーはマントルの奥深くまで溶かして液状にしまるで泥の中に大きな石を放り投げた時のように溶けたマントルが地球から38万km(月が誕生した頃はもっと近かった)の彼方まで飛び散ったのだ
  このようにして月が誕生したわけであるが、原始地球の溶けたマントルから形成されたためか、比較的高温の時代が長く続きその表面には、隕石の衝突による無数のクレーターの他に、黒っぽい溶岩の盆地(月の海)も沢山残っている この溶岩盆地は、大型隕石の衝突時に内部から湧き出した粘性の低い玄武岩質マグマが巨大なクレーターを埋め尽くしてできたとされていて、中には「雨の海」のように、月の直径の30%に相当する直径1000kmもの溶岩盆地もある おそらく、直径100km級の隕石(微惑星)が衝突した跡であろう
  月には直径が300kmを越える「海」が10個以上もあり、アポロ計画で持ち帰った「海」の岩石の年代測定から、その形成時期が今から3238億年前に集中している つまりこの時期は、数は非常に少ないが、直径が数10kmの超大型の隕石(微惑星)が衝突した時代であったと言うことができる また、直径100km以下のクレーターが多い、月の「陸」の岩石は、3846億年前のもので、この頃は最大直径10kmの大型隕石が数多く降り注いだ時期であったと考えられる しかし、アポロ計画の最大の成果は、「陸」の岩石の年代測定から月の年齢が約46億年と分かったことである
  一方、火星級の原始惑星が地球に衝突した場合、原始地球は全体がまだ柔らかかったために破壊を免れたとしても、前代未聞の超大型クレーターが形成されたはずである また、水星のカロリス盆地(大型クレーター)や、月の「雨の海」の反対側には広範囲にわたって盛り上がった特異な地形が存在していることから超大型クレーターの裏側には広大な高地が形成されていなければならない これらのことから、クレーターの直径は1万kmを越え、反対側の高地の高さは数10kmにも及んだに違いない いわば、上半分が偏平で下半分が大きく盛り上がった“こま”のような形をした地球が誕生したと考えるのが妥当であろう そして、地球の自転軸は“こま”の回転軸となり凹んだ部分の中心が北極に、盛り上がった部分の中心が南極になったのかも知れない 今から46億年前の劇的な地球の誕生である
  追記)平成9年11月2日の日本経済新聞の科学欄に、原始の地球に火星くらいの天体が衝突して月が誕生した「巨大衝突(ジャイアント・インパクト)説」に基づき東京工業大学の井田助教授等がコンピューター・シミュレーションの結果、約2千個の飛び散った破片が再度集積して月が誕生するまで、110年程の短い時間だったと発表している しかし筆者は、飛び散った小さな破片はすぐに冷えて固まってしまうためむしろ巨大な固まりとして溶けた状態ではじき出されたのではないかと考えている そして溶けたまま短時間で球状(地球の表層の密度差が影響して重心が地球側に偏っている)になり一緒に飛び散った無数の破片は 後から時間をかけて月や地球に落ちていったとすれば月があたかも地球の一部であるかのように行動し自転と公転周期が同じこともうなずけるのである その後、月と地球の潮汐作用(潮の満ち引きを起こしている作用)によって この関係が維持され続け地球からは月の裏側を永遠に見ることができないらしい

  
2−3.地殻の形成と月の分離に伴う「大地殻変動」         目次:

  原始地球で形成されたマグマ・オーシャンは、無数の隕石が次から次と衝突を繰り返すために、常に攪拌されている状態にあったと考えられる 従って、カンラン石や輝石から、比重の大きい鉄やニッケルを沈降分離させることはできても比重の小さい斜長石(灰長石)を分離上昇させることはできない まして、1500℃もの高温下では、2-2(1)で述べた、珪酸塩鉱物の分解反応(2-2b)などが優先してより進化した比重の小さい珪酸塩鉱物は、なかなか生成されにくい
  しかし、原始地球時代も末期に近くなると、その質量も大きくなって、引力の作用する範囲がかなり広がり、次第に隕石が大型化してくると同時に、その数も減ってくる つまり、近隣の軌道上で生長過程にあった小型惑星が、地球を目がけて落下してくるのである 小型惑星と言っても、まだ直径が10km位までの大きさであるが、これが現在の地球に衝突した場合、最大で直径100km、深さ30kmものクレーターを形成するくらいのエネルギーは持っている ましてや、表面がまだ柔らかい原始地球では、その深さは100km近くまで達したものもあったと考えられる 従って、これらの大型隕石が衝突した所にはマグマ・オーシャンよりも更に深いマグマ溜まりが形成されるがその絶対量が減ってきているため、地表は徐々に冷えて固まってくる そして、マグマ・オーシャンを含めた無数のマグマ溜まりで、様々な珪酸塩鉱物が形成されるのである

(1)様々な珪酸塩鉱物の進化と分化による地殻の形成
  珪酸塩または珪酸塩鉱物と言うと、カンラン石(Mg2SiO4)や輝石(MgSiO3)などのように、いかにも珪酸(H4SiO4H2SiO3)という酸があり、中和反応などによって珪酸の水素原子を金属で置き換えた化合物を想像し易い しかし、このような形の珪酸は、少なくとも常温・常圧下では存在し得ないのである 詳しいことは第3章で述べるが、珪酸とは、珪素(Si)と酸素(O)の化合物であり、珪素と酸素の結合力が強いために1個の珪素の周りに4個の酸素が強固に結びついた、SiO4が基本形となっている そして、SiO4が単独で存在する時は(SiO4)4-の形で、また、より進化したものほどO-Si-O-Si-O・・・・と連結が進み、例えば [(SiO3)2-]nのような形で、あたかも珪酸イオンとして振る舞っている 従って、珪酸塩とは(各種のガラスを含めて)これらの珪酸イオンと金属イオンがイオン結合したものを指し珪酸塩鉱物とは、主に珪酸塩が結晶化したものを指している
  さて、原始地球時代も半ばを過ぎて衝突する隕石の数が少なくなり、外部からの熱の供給が減ってくると、マグマ・オーシャンの温度が底部からゆっくりと低下し始める(この頃の地球は中心部ほど温度が低かった) また、2-2(2)でも述べたように、原始大気の大気圧が極限(約300気圧の溶解平衡)に達した頃、マグマ・オーシャン中の水分もかなり増加していて、その濃度は2%を越えていた(約300気圧における安山岩質や流紋岩質マグマの水分の溶解度に相当する)と考えられる そして、マグマ・オーシャンの底部にあたる深さ20km近くの所で、温度がゆっくり低下し約1000℃になると、水分の影響の下、それまでバラバラに存在していた珪酸イオンの連結が進み一部の金属イオンとイオン結合して斜長石が形成される マグマ・オーシャンの底部で形成された斜長石は、それ自体では分離上昇できないがその後の度重なる隕石の衝突によって適度に攪拌されるためマグマ・オーシャン中に拡散して次第にその濃度を増していったと考えられる そして、ついに斜長石を主体とした斜長岩から成る原始地殻を形成したのである
  しかし、このようにして誕生した原始地殻から、そのまま現在の地殻が形成されたわけではない 数は減ったとは言え大型化した隕石が、引き続き原始地球を目がけて降り注いでいるのだ 一旦は地殻を形成した斜長石は、大型隕石の衝突による超高温・高圧状態の下水分の影響で再び溶融分解され、輝石などに逆戻りした場合が多かったに違いない そして、地表から2050kmもの深いところでゆっくり冷却され輝石から角閃石、雲母、アルカリ長石、石英と進化して、様々な珪酸塩鉱物が誕生したと考えられる
  つまり、斜長石は、珪酸塩鉱物が進化する過程での一時的な退避場所のようなもので、大型の隕石がまだ柔らかい原始地殻に衝突するたびに一旦、珪酸塩鉱物の基本形である輝石などに戻ってから再構築されより進化した珪酸塩鉱物に変身(変成)するのである 従って、マグマ・オーシャンがゆっくりと冷えていく過程で繰り返し大型隕石の衝突によって鍛えられた斜長石から、次第にアルカリ長石や石英に富んだ地殻が形成された そして、金属成分の少ないより進化した珪酸塩鉱物ほど分解されにくくなるため、次第にその濃度を増していく アルカリ長石や石英は、少量の雲母を含んだ形で比重の小さい流紋岩質マグマを形成して浮上するためこれまで斜長石が占めていた原始地殻のかなりの部分(深さ520km)が、流紋岩質マグマがゆっくり冷えて固まった花崗岩に置き換えられる 一方、比重がわずかに大きい斜長石の大部分は、逆にゆっくりと沈んで輝石や角閃石と一緒になり安山岩(閃緑岩)や玄武岩(斑れい岩)を形成したと考えられる このようにして、約40%(以上)の斜長石と20%のアルカリ長石、それに20%近い石英を主体とした、厚さ1040kmの現在の地殻が誕生したのである しかし、地表から約5kmの表層部分は、進化し損ねた斜長岩によって依然と薄く包まれている

(2)地殻の原料となる様々な珪酸塩鉱物が進化するための条件
  原始地球時代の後期、主に斜長石からできているマグマ・オーシャンがゆっくりと冷えていく過程で、繰り返し中〜大型隕石が地表に衝突すると、深さ50100kmの所に超大型のマグマ溜まりが無数に形成される マグマの成分は、マントルから譲り受けたり斜長石の分解で生じたカンラン石や輝石が主体であり、水分も深さ約20kmのマグマ・オーシャンよりは少ないものの、1%近くは含まれていたと考えられる もちろん、温度や圧力は非常に高く、マグマ溜まりの底部ではカンラン石と輝石が完全に溶融していて、1500℃・2万気圧前後に達していた
  マグマの主成分が、カンラン石(Mg2SiO4)と輝石(MgSiO3)であるとは言うものの、実際にはこれらの成分が別々に溶融しているわけではない マグネシウム(Mg)と一部入れ替わった鉄(Fe)や、斜長石の成分であるカルシウム(Ca)やアルミニウム(Al)、それにマグマの溶融温度を下げているカリウム(K)やナトリウム(Na)などのアルカリ金属が、珪酸と共にこん然一体となってマグマ(原始マグマ)を形成している そして、これらのバラバラになった珪酸イオンと金属イオンを原料に、その時々の温度・圧力条件に従って水分の助けを借りながら様々な珪酸塩鉱物が形作られていくのである
  従って、図 2-4 に示した珪酸塩鉱物の進化経路(太い実線)のように、出発点となる原始マグマの初期の温度・圧力条件によって最初に晶出する珪酸塩鉱物の種類が決まり、その後の珪酸塩鉱物の進化の経路も決まる 更に、原始マグマの初期条件は、隕石の大きさとその衝突速度によって決まると言ってもよい

a)コース:大型隕石の衝突で原始マグマの初期条件が2万気圧以上に達した場合
  原始マグマが、地表から70km以上の深い所に形成され、初期条件が2万気圧(推定値)を越えていた場合は、カンラン石とザクロ石の晶出から始まる カンラン石は温度の高いマグマの中心部(約1450℃)で晶出し、ザクロ石は温度の低いマグマの周辺部(約1000℃)で晶出を開始するのである そして、温度・圧力が低下するに従い順を追って輝石角閃石、雲母、長石、石英と、より進化した珪酸塩鉱物が晶出する
  マグマの圧力は、マグマ中の水分が多い場合、図 2-4 の水蒸気密度曲線に沿って温度の低下と共に減少する しかし、水分の比較的少ない、原始マグマの圧力低下を決定的にしたのは、比重の大きいカンラン石やザクロ石あるいは輝石などの晶出物が沈降して分化が進むにつれ残ったマグマが上昇するためである 沈降後のカンラン石やザクロ石、あるいは輝石の一部はマントルに還元され角閃石を晶出後の残り少ないマグマは、深さ約20km付近でついに上昇を停止した(次に述べる流紋岩質マグマとの比重差が無いため、これ以上は上昇できない) そして、外側からゆっくりと冷えていくに従い、雲母(主に白雲母)、アルカリ長石石英の順に晶出してペグマタイト(巨晶花崗岩)を形成することになる
  このような大型隕石の衝突は原始地球時代の末期に集中し、その数は少ないものの、地球の誕生(約46億年前)後もしばらく続いたものと考えられる

b)コース:中型隕石の衝突で原始マグマの初期条件が1万気圧以上に達した場合
  一方、原始マグマの初期条件が2万気圧にも達しなかった場合は(大部分のマグマ溜まりが、深さ50km前後でこの条件に相当していたと考えられるが)、約1250℃で輝石の晶出から始まる 更に圧力の低い部分(1万気圧以下の上部マグマ)では、斜長石の晶出が開始される場合もある 比重の大きい輝石は、沈降することによりその大部分がマントルに戻るが残ったマグマは上昇して約1000℃で角閃石を晶出するのである
  斜長石の比重は差程大きくはないが、角閃石を晶出後の残留成分(融液)よりは重いため、角閃石と共にゆっくり沈降し、一部の輝石と一緒になって、深さ2050kmの下部地殻の主成分(安山岩〜玄武岩質)となる 比重の小さい残留成分は流紋岩質マグマとなって更に上昇し、その後の地球全体の温度低下に伴って、深さ520kmの広範囲にわたって花崗岩体を形成し、上部地殻の主成分になる 花崗岩はアルカリ長石と石英、それに少量の黒雲母からできている
  質量の最も多い中型隕石の衝突は原始地球時代の後期に集中し、地殻の形成は専らこの時期に行われたものと考えられる

c)コース:小型隕石の衝突で原始マグマの初期条件が1万気圧に達しなかった場合
  小型隕石の衝突が最も多かったのは、初期〜中期の原始地球時代であり、専らマグマ・オーシャンの形成とその維持に役立っていたと考えられる 従って、この時期のマグマの深さはせいぜい20km前後で、圧力も1万気圧以下であった そして、今まで繰り返し述べてきたように、マグマ・オーシャンが冷えて1000℃を下回ると斜長石の晶出を開始するのである 一旦、斜長石が形成されると珪酸塩鉱物の進化は停止するため、石英の生成はほとんど見られないが圧力が急激に低下する表層付近では、トリジマイトを晶出する場合も多い

(3)各種珪酸塩鉱物の晶出に及ぼす温度・圧力と水分濃度の関係
  既に述べたように、原始地球時代では、高圧の原始水蒸気大気とマグマ・オーシャンとの間に一種の溶解平衡が成り立ち、マグマ・オーシャンの水分濃度は約2%で一定に保たれていた 一方、大型隕石の衝突によって形成されたマグマ溜まりではマグマ・オーシャンの成分と水分の少ないマントル成分が攪拌されたため、水分濃度は減少して1%以下に低下している しかし、大型のマグマ溜まりがゆっくり冷えるに従い、原始的な珪酸塩鉱物から順次晶出し始めると残ったマグマが上昇すると共に水分濃度も増加してくるのである
  温度・圧力の低下に従い様々な珪酸塩鉱物が形成されるが、カンラン石や輝石など原始的な珪酸塩鉱物は金属イオンによるイオン結合の性質が強く、高温の熱水によって分解され易い そして圧力が高いほど分解(溶融)温度も低くなるがその傾斜が緩いため、これらの珪酸塩鉱物の晶出は主に温度の低下と共に進行する(もちろん水蒸気密度曲線に沿って圧力も多少低下する) しかし、より進化した珪酸塩鉱物である長石や石英は濃度の高くなった水分の影響を受けて、後述するように圧力が高いほど溶融温度が著しく低下するため長石や石英は主に圧力の低下と共に晶出したと言っても過言ではない
  下の図 2-4 には、石英とアルカリ長石の溶融曲線と白雲母の分解曲線を、細い点線で示したが、5千気圧以上の高圧部分は推定の域を脱しないので、便宜上直線で示してある また、図中の番号は、次章で述べる珪酸塩鉱物の分類(表 3-3 参照)に対応しその進化の経路を太い実線で示した そして、大きな楕円(A,B,C)は、各種マグマの安定領域である

珪酸塩鉱物の分類
      (主要鉱物):
 1 独立型(カンラン石)
 1' 〃 (ザクロ石)
 2 複合型(褐レン石)
 3 環 状(電気石)
 4 単鎖状(輝石)
 5 複鎖状(角閃石)
 6 層 状(雲母,緑泥石)
 7 網 状(アルカリ長石)
 7' 〃 (斜長石)
 8 シリカ(α,β-石英)
 8' 〃 (トリジマイト)

シリカ鉱物の安定領域:
α-石英
β-石英
トリジマイト
クリストバライト
図 2-4 各種珪酸塩鉱物の進化とH2O系における生成条件
        〔参考〕 マグマの種類(主要鉱物):
          (玄武岩質マグマ(輝石,灰長石)
          (安山岩質マグマ(斜長石,角閃石,黒雲母)
          (流紋岩質マグマ(アルカリ長石,石英,雲母)
 溶融温度/圧力
[1200℃/12000atm]
[1050℃/ 8000atm]
[ 750℃/ 4000atm]

  ここで、高温・高圧下における水分が、珪酸塩鉱物の溶融温度や分解温度に与える影響について言及しておこう 珪酸塩鉱物の骨格を成している珪素と酸素のSi-O結合は、3-1節でも述べるように、共有結合とイオン結合が約半分ずつを占めているため有機的な結合と無機的な結合を兼ね備えた非常に強い結合である そして、珪素と酸素が立体的な網状に結合した石英は珪酸塩鉱物の中でも最も安定した鉱物となっている
  しかし、この一見安定な石英も、高温・高圧下では水蒸気(H2O)が強力な融剤となり、結合の一部が切断されて無数の枝状の水酸基(OH)を形成し、著しい融点の低下を引き起こす
  ≡Si-O-Si≡+ H2O → ≡Si-OHHO-Si≡   ・・・(2-3a)
つまり、上式からも分かるように、左辺の水蒸気(H2O)が唯一高温の気体として存在するため圧力が高いほど反応が右に進むことになる そして、一部の網状連結が切断されるに過ぎないものの切断されずに残っているSi-O-Si結合が酸素原子(O)を軸に回転するようになるため、粘性が著しく低下して溶融温度そのものが低下したように見えるのである
  また、この網状連結体の珪素の一部をアルミニウム(Al)で置き換えられたアルカリ長石も、高温・高圧の水蒸気によって同様な融点低下の傾向を示している しかしアルカリ長石は、イオン半径の大きいカリウム(K)やナトリウム(Na)が結晶の空隙を埋めているため、Si-O-Si結合の回転が阻害され、融点低下は石英ほど顕著ではない
  一方、進化のあまり進んでいない珪酸塩鉱物は、重合度の低いSi-O-Si結合体(連結体)同士が、2価以上の金属イオン(Ca2+Mg2+Fe2+Fe3+Al3+ etc.)によるイオン結合によって束ねられている 従って、このような珪酸塩鉱物は高温の水蒸気によって加水分解され易くその分解温度は圧力の増加と共に緩やかに下降する傾向にある 珪酸塩鉱物を珪酸(酸)と金属水酸化物(塩基)の反応によって生成した化合物であると仮定すれば加水分解も起こり得るわけで、比較的高圧下では、水分の影響で加水分解とよく似た反応(金属成分の溶脱)が起きている
  珪酸塩鉱物の加水分解は、2-4(4)で述べる風化作用と密接な関係にあるが、イオン化傾向(表 3-2 参照)が小さい金属を多く含むものほど下記の順のように加水分解を受け易い
  カンラン石(Mg)>輝石(Mg)>斜長石(Ca)>アルカリ長石(K)>雲母(KMgFe)>石英
カッコ内は、珪酸とイオン結合している主な金属で雲母はイオン化傾向が小さい金属を多く含んでいるものの結晶内部に水酸基(OH)を持つがために加水分解されにくいのかも知れない しかし、これに熱が加わると様相は一変する 構造内に水酸基(OH)を持つ雲母類は、脱水反応によって分解が加速されるため他の珪酸塩鉱物と分解され易い順序が入れ替わるのである また、同じ雲母類でも、白雲母>黒雲母>金雲母の順に熱分解され易いが圧力が上昇するほど分解温度が高くなる傾向にある

(4)珪酸塩鉱物の最も進化した形である石英「SiO2」の生成
  珪酸塩鉱物の形成の理論については、第3章で詳しく述べるが、進化の最も進んだ珪酸塩鉱物と考えられる石英を例にとった場合、石英を多量に生成させる条件は
  第一条件:地表からの深さが20km前後での高温・高圧状態が長く続くこと
  第二条件:自由なSi-O-Si結合を助ける水分が豊富に存在していること
  第三条件:石英の形成を妨げる金属成分が少ないこと
の3点である
  第三条件の金属成分の影響については、3-3(3)で詳しく述べるので、ここでは簡単に触れておくが、要するに、金属イオンが豊富に存在すると珪酸イオン(SiO4)4-の連結が阻害され、より進化した珪酸塩鉱物が形成されにくいのである しかし、逆の見方をすると、連結が進んでいない珪酸イオンほど沢山の金属イオンと結合できる(表 3-3 参照)ためより原始的な珪酸塩鉱物を多量に晶出した後は金属イオンが急激に少なくなり、珪酸イオンの連結が加速される そして、比較的高温・高圧のうちに珪酸イオンの巨大な立体網を形成し大きな石英の結晶(ペグマタイト石英)を晶出することができる
  第一条件の温度・圧力と第二条件の水分の量には密接な関係がある 上の図 2-4 に小さい赤丸(ピンクの小楕円)で示したように、各々の珪酸塩鉱物には晶出し易いおおよその温度・圧力条件(圧力方向に幅の広い小楕円の範囲内)がありその条件は水分の量によってかなり自由に移動すると考えてよい つまり、それぞれの赤丸と小楕円は水蒸気密度曲線に沿って図 2-4 の右上から左下方向に移動し(小楕円の範囲は狭くなる)水分量が多いほど左下の低温・低圧領域でも晶出できるのである 特に、次章の図 3-12 にも示すように、多量の水分を伴った高圧変成領域において顕著となっている
  この原因は、3-2(2)でも詳しく述べるように、珪酸塩鉱物の骨組みとなっている珪素と酸素の結合角度(Si-O-Si結合角)が、各々の珪酸塩鉱物の種類ごとにほぼ一定の値を示すことにある また、その結合角は圧力が低下すると開き、温度が低下すると閉じるために両者のバランスした水蒸気密度曲線とほぼ平行な、左下がりの曲線上で一定になっている そして水分が多い場合は、珪酸塩鉱物の粘性が低下することや水に溶解される珪酸塩鉱物の絶対量が増えるために、低温・低圧領域においても各々の珪酸塩鉱物の形成が進むのである
  石英のSi-O-Si結合角(β-石英:155.5°,α-石英:146.5°)が安定な温度・圧力条件は、水蒸気密度が0.60.7(g/cm3)前後の曲線とほぼ同じ位置関係にある 特に、結合角の小さいα-石英は0.7(g/cm3)の曲線を越えた高圧側に位置しその延長線上(左下)に人工水晶育成(水熱合成)の温度・圧力条件(×印)が分布している 温度・圧力が低いほど、石英の水に対する溶解度が小さいため、多量の水分を必要とすることがよく分かる
  一方、水分が比較的少ない場合は、石英の原料となった流紋岩質マグマのように、高温・高圧下で溶融した状態でないと石英を形成することはできない しかし幸いにも、高圧下では水分の影響で石英の溶融温度が著しく低下していて図 2-4 に示した石英の溶融曲線と水蒸気密度 0.60.7(g/cm3)の曲線が交わる約700℃・34千気圧付近が、最も石英の形成に適した条件であると考えられる そして、この圧力条件は地表から1015kmの深さに相当し、流紋岩質マグマ中の水分の量は25%程度であったと思われる(流紋岩質マグマは、約4千気圧で10%近くもの水分を溶解することができる)
  ところが、α-石英が巨大な結晶を形成したペグマタイトの晶出条件となると話が違う ペグマタイトは流紋岩質のマグマ溜まりが外部から冷却されることによってその周囲から中心部に向けて、雲母、アルカリ長石、α-石英の順にゆっくりと晶出したものと考えられ、アルカリ長石やα-石英の晶出時にはマグマの上昇は完全に停止していたのである 従って、ペグマタイトの晶出条件は、雲母やアルカリ長石の晶出に適した白雲母やアルカリ長石の分解・溶融曲線と水蒸気密度0.70.8(g/cm3)の曲線が交わる、約800℃・57千気圧付近だったと言える つまり、地表から20km前後の圧力条件である そして、α-石英(ペグマタイト石英)は、上昇を停止したマグマ溜まりの内部(完全に外部から閉鎖された空洞内)で、5%以上に濃縮された水分の影響を受け、温度の降下と共に圧力も低下し約600℃・4千気圧で晶出したものと考えられる ゆっくりした温度の下降と、豊富な水分の存在の下にα-石英が晶出したためかペグマタイト石英は純度が非常に高く、中には巨大な単結晶として産出されるものもある
  このように、原始地球時代の末期には、大型隕石の衝突によって超高温・超高圧の原始マグマが形成されカンラン石やザクロ石などの、沢山の金属イオンを消費する原始的な珪酸塩鉱物を多量に生成した そして、金属イオンが少なくなったマグマは比重差で上昇し温度・圧力が低下するに従い、珪酸イオンの連結が加速されて巨大なペグマタイトが形成された 珪酸塩鉱物が最も進化した形の石英が、巨大な結晶であるペグマタイト石英として、深さ約20kmの地殻中で誕生したのである しかし、想像を絶するような出来事が、地球形成の末期に待ち受けているのだ

(5)月の分離独立に伴う「大地殻変動」で誕生した「巨大高地」
  今から約46億年前、地球形成の末期に火星級の原始惑星が衝突し、飛び散ったマントルから月が誕生したであろうことは2-2(3)で既に述べたがこの時、地球の反対側は大きく盛り上がり、巨大な割れ目が幾筋も発生したと考えられる そして、強力な衝撃波(圧縮波)で加熱溶融されたマントル成分(マグマ)が、物凄い勢いで割れ目から吹き出しハワイのキラウエア火山を数千倍に拡大したような割れ目噴火が幾重にも起ったであろうまさに想像を絶するような天地創造の一場面である このようにして形成された「巨大高地」は直径約15千kmと、ほぼ地球の直径に相当し、その高さは現在の海抜に換算すると、中心から半径3千kmの円周上で約20km、中心付近では30km近くあったものと思われる
  マントルの形成時に、炭素質コンドライトによってもたらされた遊離炭素は、その大部分が酸化鉄の還元のために消費されるが一部は集積して高温・高圧の下、鱗状黒鉛や微細なダイヤモンドに変わっていたと考えられる しかし、良質で大粒のダイヤモンドは、地下300kmの圧力条件(10万気圧以上)でないと形成されにくく、温度条件は2500℃もの超高温を必要とするが、原始地球では到底望めないような温度である 仮にダイヤモンドができていたとしても、人間の手で掘り出すことはできない 瞬時に取り出さないと、黒鉛や他の結晶系の鉱物に変わってしまうのだ 幸いにも、火星級原始惑星の衝突に伴う「大地殻変動」はそれを可能にした 衝突時の強力な衝撃波でマントルを急加熱し、ダイヤモンドを合成したあげく、深さ300kmもの地底からカンラン岩質マグマを急上昇させて地上にダイヤモンドをばらまいてくれたのである ところが、後の海洋の形成に伴う大洪水によって流されてその大半が海底に沈んでしまったと考えられ、今は大噴火の痕跡として残る火山岩頸(マグマ噴出時の通路)や砂れきの堆積層にわずかに発見されるのみである
  現在、世界的に有名なダイヤモンド鉱床は、南アフリカのキンバリーやシベリアのレナ川上流にあるミールヌイなどであるが、これらは太古代に形成されたと思われる最も古い地質の安定地塊(クラトン)上にある 特にキンバリーの鉱床は、キンバライトと呼ばれるカンラン石を主体に輝石やザクロ石からできている火山岩頸(けい)中の凝灰質(凝固した火山灰)部分に集中している 一方、太古の大洪水によって浸食され流されたキンバライト中のダイヤモンドは「巨大高地」上を遠く何千kmも運ばれて誕生したばかりの原始大洋に沈んだものも多かったと考えられるが一部は比重がダイヤモンドより少し大きいザクロ石(ガーネット)と共に、半径3千km以内の窪地や浅瀬に堆積し、新しいダイヤモンド鉱床として最近発見された例も多い ナミビアの南西海岸にある世界最古のナミブ砂漠では海岸線の大砂丘の下に埋まっている太古の泥岩層の表層部に、最高品質のダイヤモンドが散らばっていて近くにはガーネット粒でできた砂丘も点在しているのである

高純度水晶・石英の産地(●印)
1,アメリカ東部高地
 アーカンソー、ノースカロライナ
2,ブラジル東部高地
 バイア、ミナス・ジェライス
3,アフリカ南西部高地
 アンゴラ南部、ナミビア
4,マダガスカル北部高地
5,インド南部高地
 タミールナド、アンドラプラデシ
6,オーストラリア西部高地

珪石(珪岩)・珪砂の産地(○印)
7,オーストラリア北西部海岸
8,中国南部高地
9,ロシア中部高地
10,ノルウェー南部高地
11,アメリカ中東部高地

ダイヤモンドの産地(◆印)
1,南アフリカ中部高地
 キンバリー(凝灰質火山岩頸)
2,ボツワナ東部
3,ロシア東部高地
 シベリア高原東部ミールヌイ
4,ナミビア南西部海岸
 ナミブ砂漠〜南アフリカ(砂)
5,ザイール(コンゴ)南部高地
 ザイール〜アンゴラ国境(砂)
6,ブラジル南東部高地
 ミナス州ディアマンティナ(砂)

[かっこ内の"砂"とは、砂れき層か
堆積岩中に産出する事を意味する]
図 2-5 約46億年前に誕生した巨大高地のパズル合わせ

  図 2-5 には、ほぼ円に近い巨大高地の仮想地図をクラトンの集まりとして示したが、太い赤線の上半分のゴンドワナ大陸は、約2億年前に分裂を開始する以前の姿にかなり近いと考えられる その他のクラトンについてはダイヤモンドの主な産地(◆印)を円の中心近くに置いたことと、半径約3千kmの円周上に水晶やペグマタイト石英などの高純度石英の産地(●印)を配してみただけで、あくまでも推測に過ぎない 高純度石英の主な産地は、ほとんどが旧ゴンドワナ大陸内のクラトン上にありその分布が弧を描いていることから、他の高純度石英の産地も同一円周上にあったと考えたわけである
  前項で述べたように、珪酸塩鉱物の最も進化した形である高純度のペグマタイト石英が、地下約20kmの地殻中で形成され、そしてこのペグマタイト層が巨大高地の誕生時に現在の地表の高さに隆起した(或いは巨大高地誕生後も引き続き衝突を繰り返した大型隕石によって形成され続けた)と考えれば巨大高地の形成過程から、同一円周上に分布するのも説明がつくのである しかし、太い赤線で区切った下の部分は、巨大高地の形成後しばらくしてから地球の反対側にある巨大クレーターを埋めるために分裂し様々な地殻変動を重ねながら移動していったものと考えられ高純度石英の鉱床はほとんど失われてしまっている
  更に重要なことは、現在の地球上に存在している大陸の大部分が、この巨大高地に源を発していることである そして、その後(約20億年後)発生した巨大高地(大陸)の分裂時のエネルギーが現在に至るまで幾度となく繰り返してきた大陸の合体と分裂の原動力になったと推測される

上に戻る  次Page  前Page

ご意見ご感想は「こちら」までお寄せください。

Yahooのページ検索、及びGoogle等のサーチエンジンから、このページ(下層ディレクトリのHTMLファイル)に直接リンクされた方は、内容が正しく表示されていません。 左のHOME アイコンをクリックして初期のフレーム画面に戻り、左上のバナー「Quartz&Crystal」をクリックして現れた解説画面から、このページ「2.地球の誕生とSiO2の進化」のボタンをクリックして再表示して下さい。