1.太陽の誕生と「SiO2」の形成          このページや、下層のHTMLファイルに直接リンクされた方は、このボタンをクリックして下さい。

目次  1-1  1-2  1-3  次Page   解説へ ここをクリックすると、このフレームに「水晶と鉱物」の解説が出ます

 
図 1-1 成長過程にある原始星(原始太陽)


  平成元年11月9日付の読売新聞の社会欄に、星の誕生をとらえたという記事が掲載されていた 「星の誕生」は名古屋大学のグループが電波望遠鏡を用いオリオン座にある M42(オリオン星雲:赤緯−5度の赤道上空、1500光年の銀河系内にある密度の高い星間雲で新しい星の誕生の場とされている)付近で観測に成功した
  同グループは、一酸化炭素が高温に熱せられた時に放出する周波数115.3GHzの電波に着目し、新たに誕生しつつある原始星での一酸化炭素の振る舞いを電波望遠鏡で追っていた 太陽などの星の材料となった星間ガスがどのようにして集積していくかを突き止めようとしたのである その結果オリオン星雲付近にある6個の原始星は異常に輝いておりいずれも2方向(図 1-1の上下方向)に一酸化炭素を含む熱いガスを噴き出しているのが発見された
  この事実は、形成初期の原始星が、水素やヘリウムの他にも一酸化炭素などを含んだ星間ガスを水平方向から猛スピードで吸引していることを意味している そして星間ガスの重力エネルギーを熱エネルギーに変えて高温のガス体となりそのごく一部を自転軸にそって上下方向から噴出しているものと考えられる 更にこの現象はその後アメリカの「ハッブル宇宙望遠鏡」によってハービック・ハロー天体でも確認されている つまり原始星の周りには、既に円盤状となって回転している濃密な星間ガスが存在し太陽を初めとする星の誕生は、最初に星間ガスの円盤作りから行われたと言うことができる 宇宙の始めにおいても同様に「ビッグバン」によって生成した膨大な量の水素とヘリウムが何らかの原因で吹き寄せられ至る所に形成された円盤が初期の銀河であると言ってもよい 従って、星が誕生する場合は、星間ガスの円盤の大きさにもよるがかつて銀河が形成された時に渦巻状の円盤の至る所で星が誕生したようにこの原始星の周りの円盤でも、第2、第3の新しい星が生まれる可能性を秘めている

  
1−1.「ビッグバン」と銀河系宇宙                    目次:

  今から約140億年前、宇宙の全てのものが一点に集中していて、これが何らかの原因で想像を絶するような大爆発「ビッグバン」を起こし、宇宙は膨張を開始したとされている この「ビッグバン」によって光速に近い猛烈なスピードで膨張し始めた宇宙はその急激な温度低下のために、わずか10-5秒後には約1兆度で陽子(水素の原子核)や中性子が形成された 更にその数秒後には、宇宙の温度は約100億度まで冷えて原子核反応が始まり、主にヘリウムの原子核が形成された そして、現在の宇宙の基本物質である水素(H)とヘリウム(He)、中でも、その80%近くを占める水素のほとんどは、この一瞬のうちに生成したのである まさに、宇宙の「創世記」と言うことができる
  しかし、我々の体や空気や水の元となる、残り約2%のリチウム(Li)以降の「重元素」の生成は、後の二次的な原子核反応を待たねばならずそれも、数億〜数十億年もの長い時間が必要となるのである 宇宙の創造期の原子核反応で「重元素」が生成されなかったのは「ビッグバン」後の宇宙の膨張があまりにも急激で温度低下が著しかったためと考えられる 熱エネルギーによる原子核反応(熱核反応)に適した、約100億度から10億度までの時間がわずか100秒と非常に短かったことと、ヘリウムの原子核が安定しているためである

(1)「水素とヘリウム」で形成された我が銀河系宇宙
  宇宙の創造期に生成した水素とヘリウムの原子核は、宇宙の膨張と共に次第に拡散していくが、温度の低下(ビッグバン後約10万年で4千度)と共に、それまでバラバラだった原子核と電子が一緒になって原子となり中性化される そして中性化された水素とヘリウムの原子は反発力を失い次第に(ごく弱い力であるが遠くまで及ぶ)物質同士の重力によりゆっくりと引き寄せられるようになった 結果的に、膨張という同一方向の物質の流れに対して重力という横方向の力が加わって方々に淀みを生じそこに物質が集中して重力収縮が始まったと考えられる
  一旦、このような核(銀河の中心)ができてしまうと、かなり遠くまで重力が及ぶようになり、流れの淀みが拡大して大きな渦巻を形成し始める 更に、この渦巻はその中心の核の周りを回りながら渦巻の内部にも小さな核が無数に発生して重力収縮が起こったに違いない そして、周囲の水素とヘリウムをかき集めてどんどん大きくなるに従い中心部では重力収縮によって重力エネルギーが解放され、次第に高温となって光輝くようになった このようにして無数の星団を抱えた銀河が数多く誕生し、大きな銀河団を形成したのである
  我が銀河系は、「ビッグバン」後数億年の銀河団形成初期にできたと考えられている この時期の銀河内で誕生した星(恒星)は水素やヘリウムが濃密に存在したため大質量の星ばかりであった そして、後述するような星の進化が短期間で起こりまるで花火大会のように「超新星爆発」を繰り返し早い時期に活動が低下してしまったものと考えられる 我が銀河系の中心の楕円体部では、年老いた無数の「赤色巨星」が赤く光りを放っているほか銀河系の中心から半径約7万光年の球体の内部に点在する、100個以上の球状星団(数十〜数百万個もの星の集団)にも、同様の「赤色巨星」が多数見つかっている また、銀河系の中心では、大型の「超新星爆発」の残骸である「ブラックホール」が暗黒の世の支配者として活動を続けていると考える天文学者も多い
  一方、銀河系の外側の白く輝く円盤部には、星間ガスや比較的若い星団が渦巻状に分布した3本の渦巻腕が中心の楕円体部から伸びている これらの渦巻腕は、内外一様に220km/秒前後の速度で回転しているため渦巻腕の外側の部分は次第に引きずられるようにして伸び続けているのである 銀河系は、渦巻腕によって外部より「水素とヘリウム」を引き寄せ現在も成長し続けているのかも知れない 我々の位置する太陽系は、真ん中のオリオン腕の内側の縁にあり、銀河系の中心から3万光年弱の距離(円盤の半径は約5万光年)で、一周するのに約2.5億年かかる計算である いずれにしても、この3本の腕の至る所で現在も新しい星が生まれつつあり我々の目には夜空を飾る「天の川」として神秘的な姿をかもし出している

(2)銀河系に存在する星の数とその大きさ
  我が銀河系には、太陽のように自ら光輝く星が約2千億個あるという そのうち、観測可能な星の表面温度からその星の質量を計算した結果ほとんどが太陽の10倍から1/10の範囲に入ってしまう 中には、太陽の40倍近くの質量を持つ星も発見されてはいるが、その数は極めて少ない 逆に、太陽の1/2以下の質量の星(赤色矮星)は暗く赤色に光っていて半径も小さいため観測できるものは少ないが、その数は銀河系全体の90%にも及ぶと考えられている もちろん、最初から水素の核融合が起こらないほど温度が低くて小さい星(黒色矮星)の数は計り知れないもののほとんどは大きな星の周りを回る惑星になっているに違いない
  太陽の質量をとして、これらの星の質量の違いによるグループ別の質量分布や表面温度、あるいは、主系列星(水素の核融合で光っている恒星)としての寿命などを下表に示した

質量範囲 相対個数 質量分布 表面温度 現在の姿 将 来 の姿 主系列の寿命
  M≧50
50>〃>5
 5>〃>0.5
0.5>〃>0.05
  <1 個
  10 〃
  100 〃
 1000 〃
≧ 5 %
  25 〃
  25 〃
  25 〃
 >50千度
50〜13 〃
13〜 4 〃
 4〜 1 〃
主 青色巨星
系 青色星
列 白色星
星 赤色矮星
赤色超巨星→超新星爆発
赤色超巨星→超新星爆発
赤色巨星→白色矮星
(赤色巨星→白色矮星)
   <10 7
10 7 〜10 9 
10 9 〜10 11
10 11〜10 13
 0.05≫M 
>1000 〃
<20 〃
 < 1 〃
黒色矮星
黒色矮星(惑星)
−−−
表 1-1 星の質量の違いによる出現頻度とその寿命     ( )内は推定

  このうち太陽よりも質量の大きい星は、非常に明るいために詳細な観測が行われているが、単独で輝いている(ように見える)星は1/3しかない およそ1/2は、2個の星がお互いの周りを回っている連星であり更には、3個以上の星が複雑に回り合っているものもかなり有ることが分かっている つまり、多かれ少なかれ、星は伴星を従えていると考えられるが星の周りを質量の小さな黒色矮星が回っていても、それを観測で立証することは難しい

  
1−2.星の進化と「超新星爆発」                    目次:

  重力収縮によって、高温・高密度になった星の中心部の温度が1千万度近くまで達した場合は、それ自体で明るく輝くことができるが、重力エネルギーのみでは1千万年も持続できず、通常はそのまま冷えて黒色矮星となってしまう しかし、太陽程度の大きさに成長した星は中心部の温度も高くなるため、1千万度を越えると水素の原子核反応(核融合)が始まる この原子核反応は非常にゆっくりした反応で、最近研究が進んでいる核融合(1億度以上)より温度が低いにもかかわらず原子核反応が進むのは星の中心部が超高密度になっているためである 密度が高いと、プラズマ状態となっている水素の原子核(プラスに荷電)同士の衝突する確率が極めて高くかつ持続されるため、中には同符号の荷電粒子間に働くクーロン反発力の壁をくぐり抜け(トンネル効果)原子核反応を引き起こすものも出てくる しかし、この原子核反応の起こる確率はかなり低いため水素がゆっくり燃えて(核融合を起こして)、一定のエネルギーを長時間放出し続けることができるのだ

(1)「重元素」を生成した星の進化と「超新星爆発」
  太陽程度の大きさの星は約100億年もかけ、水素の原子核反応でヘリウムを合成し続けると言われている しかし、星の中心部に水素の燃え殻であるヘリウムが溜まり過ぎると水素の核エネルギーによる膨張力よりも、ヘリウムの重力の方が大きくなるため収縮が始まる そして、星の内部は更に高温・高密度となって、約2億度でついにヘリウムに点火するのである ヘリウムの原子核反応では主に炭素(C)や酸素(O)を生成するが、この原子核反応は高温であるがためにかなり急激に起こる 星(太陽)はどんどん膨張し始め(実際には、中心部の水素が燃え尽きた時点で膨張が始まる)終いには地球のような比較的低軌道にある惑星をも呑み込んでしまうほど膨張し表面温度が下がって赤い光を発する「赤色巨星」となる
  「赤色巨星」の平均密度は、せいぜい空気程度で非常に小さいにもかかわらず、中心部では依然と温度・密度が上昇し、表面との温度差が拡大するため対流が生じるようになる しかし、表面の重力が極めて小さいために、対流で表面に上昇してきたこれらの炭素や酸素は未反応の水素やヘリウムと共に、大量に宇宙に放出されたと考えられている そして、ヘリウムが燃え尽きかける末期には逆に収縮し最後は薄白く光を発する「白色矮星」を経て寿命を終えるのである
  一方、太陽の約6倍以上に大きく成長した星は、質量が重い分だけ中心部の温度・密度は太陽規模の星より格段に高くなり、水素の原子核反応が早く進むため10億年も持たない場合が多い そして、早い時期にヘリウムの原子核反応が始まって膨張し「赤色超巨星」となる 次に、中心部のヘリウムが1億年も経たないうちに燃え尽きてしまうとヘリウムの燃え殻である大量の炭素や酸素の重力収縮が起こる そして加速度的に温度・密度が上昇し、約10億度で炭素(C)に点火して、酸素(O)やネオン(Ne) マグネシウム(Mg)を生成し始める 更に約30億度になると、ついに安定な元素である酸素(O)に点火して珪素(Si)を生じ、約40億度でマグネシウム(Mg)と珪素(Si)に点火して鉄(Fe)を生成するが、珪素や鉄の生成に与えられた時間は1万年以下と非常に短い
  しかし、このような「赤色超巨星」時代に生成した「重元素」が、未反応の水素やヘリウムなどと一緒に、対流によって宇宙に放出されるためには充分な時間であったと考えられる もちろん、この「重元素」の中には、「赤色超巨星」の内部(中心部よりは温度の低い部分)において各々の原子核反応に適した温度・密度条件の所で同心円の層状を成し段階的に生成され続けていた「重元素」も多量に含まれていたことは言うまでもない
  そして、星の中心部に燃えるものが無くなると急激な重力収縮が起こり、鉄(Fe)などの最終生成物が重力崩壊を起こして押しつぶされ、中性子の固い芯ができ上がる 最後に、この芯をめがけて超高速で落下してきた鉄(Fe)などの「重元素」は、猛烈な勢いで固い芯に衝突するためついに大爆発を起こして想像を絶するような高熱と共に吹き飛ばされ巨星時代に放出された元素をも巻き込んで宇宙空間めがけ秒速数万kmの猛スピードで膨張し始める いわゆる「超新星爆発」である 後には、高速で回転する中性子星や、更に大型の中性子星が完全につぶれてしまい途方もない大きな重力で光も出てこれないと言う「ブラックホール」が残るのみとなる

(2)「重元素」の生成頻度と原子核の結合エネルギー
  星の進化の過程で、宇宙空間に放出された主な「重元素」は、炭素(6C12) 窒素(7N14) 酸素(8O16) ネオン(10Ne20) マグネシウム(12Mg24) 珪素(14Si28) 硫黄(16S32) 鉄(26Fe56)等である この中でも酸素(8O16)は、生成された「重元素」の約半分を占めていたと考えられる そして、これらの「重元素」は偶数の原子番号(元素記号の左下の数字)で質量数(同右下の数字)は4倍数の元素の多いことが注目される これは、ヘリウム(2He4)以降の原子核反応が、核反応生成物にヘリウム原子核が衝突して起こるためと図 1-2 からも分かるように、原子番号が偶数の元素の方が原子核の結合エネルギーが大きく、安定しているためである
  原子核を構成する陽子及び中性子の個々の質量の合計と、原子核の実際の質量は、後者の方がわずかに小さい この差を「質量欠損」と言うが、アインシュタインの特殊相対性理論(E=mc)によれば、質量とエネルギーは同等のものであり減少した質量は原子核内部のエネルギーに変換されている つまり、質量欠損の大きい元素は、それだけ結合エネルギーが大きく安定していると言える
  図 1-2 に、各元素の数ある同位体の中から、天然に存在する頻度の最も高い同位体をその元素の代表とし、その質量欠損から核子(陽子と中性子)1個当たりの結合エネルギーを求め質量数との関係(26Fe56100とする)を示した これからも分かるように、2He46C128O16 に大きなピークがあり、ヘリウムと炭素や酸素はかなり安定した元素である 初期の原子核反応では主にこの3元素が、核反応生成物として多量に生産されたに違いない 特に酸素(8O16)は、原子核反応が進むうえで大きな壁となっていてこの酸素に点火できるかどうかで、星が白色矮星で一生を終えるのかそれとも「超新星爆発」への途をたどるかの分かれ目となっている また、2He4以降の主な核反応生成物(空色の太線)をたどると、やはり酸素(8O16)がひと際安定していることと、更に珪素(14Si28)も同じように結合エネルギーの大きいことが分かる

図 1-2 天然に存在する原子核の結合エネルギー

元素 太陽系 地球 地殻 同(酸化物)
 (H)
  He
  C
 (N)
  O
  Ne
 (Na)
  Mg
 (Al)
  Si
 (P)
  S
  Ar
 (K)
  Ca
  Ti
  Cr
 (Mn)
  Fe

  Ni
 74.39%
 23.68
  0.394
  0.094
  0.873
  0.206
  0.004
  0.071
  0.006
  0.076
  0.001
  0.045
  0.011
< 0.001
  0.007
< 0.001
  0.002
  0.001
  0.136

  0.008
  ---%
  ---
  ---
  ---
 29.53
  ---
  0.57
 12.70
  1.09
 15.20
  0.10
  1.93
  ---
  0.07
  1.13
  0.05
  0.26
  0.22
 34.63

  2.39
  0.14%
  ---
  0.02
  ---
 46.60
  ---
  2.83
  2.09
  8.13
 27.72
  0.11
  0.03
  ---
  2.59
  3.63
  0.44
  0.01
  0.10
  5.00

  0.01
    1.25%
   ---
    0.07
   ---

   ---
    3.81
    3.47
   15.36
   59.30
    0.24
 S (0.03)
   ---
    3.12
    5.08
    0.73
    0.01
    0.12
FeO 3.73
Fe2O3 3.00
    0.01
表 1-2 主な元素の宇宙(太陽系)、地球、地殻に
 おける存在度(カッコ内は奇数番の元素)wt%

  ところが表 1-2 に示したように宇宙(太陽系)に存在する「重元素」の中でも珪素(14Si28)は差程多いわけではない むしろ結合エネルギーの小さい奇数の原子番号を持つ窒素(7N14)の多いのが目につく この理由は、超新星爆発の末期には「ビッグバン」直後の温度に匹敵する超高温(50億度以上)になったためと考えられる つまり、ヘリウム(2He4)以降の規則正しい原子核反応(核融合)はカルシウム(20Ca40)位までで、その後は、各元素中最大の結合エネルギーを持つ鉄(26Fe56)にたどり着くまで複雑な原子核反応が一気に進んだ この時期に酸素(8O16)から生成されたばかりの珪素は溜まる暇もなくすぐ消費されたため、珪素(14Si28)の宇宙存在度が相対的に小さくなったのかもしれない

(3)「重元素」の生成機構と各種原子核反応
  超新星爆発末期の原子核反応の大きな特徴として、超高温・高密度なるがゆえにそれまで支配的であった核融合の他に核分裂(崩壊)も起こったことが考えられる 一般に、鉄(26Fe56)より軽い元素は核融合によって大きなエネルギーを放出しつつ結合エネルギーの最も大きい鉄に近づいていく 逆に鉄より重い元素は核分裂(崩壊)によってエネルギーを放出しながら崩壊を繰り返して鉄に近づくのである
  従って、鉄より軽い元素が核分裂を起こす場合、核融合とは逆にエネルギーを消費することになるが、サイクロトロンなどで大きなエネルギーでも与えない限り通常では起こり得ない反応である しかし、超新星爆発末期の超高温・高密度条件下では各々の原子核(あるいは電子)が猛烈なスピードで動き回るために、核分裂反応も起こったと考えられる その際 中性子が大量に発生して、この中性子がこれまでのヘリウム原子核に代わって主役となり複雑な原子核反応を引き起こしたに違いない これらの原子核反応を整理すると、次の6段階の反応に分類することができる(カギカッコ内は放射性同位元素)

a)ヘリウム原子核反応
  ヘリウム(2He4)の三体衝突(二体衝突で生成したベリリウム4Be8は不安定ですぐ元に戻る)で、炭素(6C12)が生成した後の核反応は、主に核反応生成物にヘリウム原子核が衝突して捕獲吸収される つまり、6C128O1610Ne2012Mg2414Si2816S3218Ar3620Ca40 と、結合エネルギーの大きい元素の間を快速電車のように反応が進むのである 更にその勢いで放射性元素ではあるが、→[22Ti44]→[24Cr48]→[26Fe52]→[28Ni56]と、ニッケルまで到達する また、爆発末期の超高圧下で 12Mg2414Si28→[26Fe52]、14Si2814Si28→[28Ni56] の反応が同時に起こることも予想される
  いずれにしても、これらの原子核反応(核融合)により膨大なエネルギーが放出されたに違いない そして、酸素(8O16)や珪素(14Si28)のような大きな駅では停車時間も長く初期の原子核反応では酸素と珪素の生成量が多かったと考えられる

b)陽子崩壊
  星の中心部の温度が10億度を越える辺りから、通常では起こり得ない原子核反応(核分裂)である陽子崩壊が徐々に進み始める 陽子崩壊は、核融合とは逆に大きなエネルギーを吸収する反応で、1個の陽子(11)を放出するごとに原子番号と質量数が一つずつ減りa)で生成した偶数番の元素から奇数番の元素が生じる この反応は、爆発末期の超高温下では急速に進むと考えられ、12Mg2411Na2314Si2813Al2716S3215P3120Ca4019K39 や、次のc)で生成し始めた鉄からも 26Fe5625Mn55 などの反応で、奇数番の元素がかなり多く生成したと考えられる しかし、爆発初期に起こったと思われる 6C125B118O167N1510Ne209F19 などの反応は、この時点では温度がそれほど高くなかったためか、その頻度はかなり低い

c)電子捕獲
  爆発末期、 a)の原子核反応で 珪素(14Si28)の二体衝突によって大量に生成した、放射性元素の [28Ni56]は、電子捕獲(EC)によって原子核内の陽子が中性子に変わり質量数はそのままで、原子番号が一つ減った[27Co56]に壊変(半減期6日)する 更に、このコバルトの放射性同位元素も電子捕獲や陽電子崩壊(電子捕獲と同様に原子番号が一つ減る)を起こして結合エネルギーが最も大きい安定元素の 鉄(26Fe56)に壊変(半減期79日)する
  超新星爆発を起こした星が約100日間も光輝くのは、爆発による光エネルギーに引き続き、これらの壊変時に大量に放出される高エネルギーのガンマ(γ)線が周りのガスを加熱するためと考えられている そして、この原子核反応こそが珪素(14Si28)を減らし、鉄(26Fe56)の生成量を増やした最大の原因だったと言える また、量的にはかなり少ないものの、[26Fe52]→[25Mn52]→24Cr52や、[24Cr48]→[23V48]→22Ti48 などの壊変も起こり、クロム(24Cr52)やチタン(22Ti48)が生成したものと思われる

d)中性子捕獲
  b)の原子核反応で大量に発生した陽子(11)は、やはりこの時期行き場がなく、高エネルギー状態で動き回っている電子を吸収して中性子(01)に変わる(単独で存在する陽子は、超新星爆発時の超高密度下でないと電子を吸収しにくい) この中性子は電荷が無いために、周りにある色々な元素の原子核と衝突し捕獲され易いのである 特に、a)で生成した数種の放射性元素が、崩壊してしまう前に中性子を捕獲し、 [22Ti44]→22Ti46〜50、[24Cr48]→24Cr50〜54、[26Fe52]→26Fe54〜58、[28Ni56]→28Ni58〜64 というように、質量数の異なる様々な安定同位元素が生成する もちろん、ネオン(10Ne20)やマグネシウム(12Mg24)などの安定な元素にも捕獲され、各々複数の安定同位元素が誕生するのである

e)ベータ(β)崩壊
  原子番号が奇数番の元素は、中性子を吸収すると不安定になり、ベータ(β)崩壊を起こして電子とガンマ(γ)線を放出し原子番号が一つ多い偶数番の元素に壊変してしまう ところが、偶数番の元素は非常に安定していてd)で述べたように、中性子を吸収するたびに質量数のみ増やし続け数多くの安定同位元素を生成するのである 従って、奇数番の元素はなかなかその量を増やすことができないが、炭素(6C12)だけは中性子を2個吸収すると不安定になってβ崩壊を起こし、6C147N14 と窒素に壊変するため、奇数番の元素の中でも窒素(7N14)だけは、例外的にその生成量を増やしたものと考えられる
  また、特殊な例として、カリウム(19K39)が中性子を1個捕獲し、放射性元素となった19K40は、その半減期が約13億年と非常に長く、現在でも自然界にわずかに存在している そして、β崩壊によってカルシウム(20Ca40)に壊変し続けているのである

f)アルファ(α)崩壊
  このように、各元素中 一番結合エネルギーの大きい鉄(26Fe56)は、原子核反応の終点(核融合ではこれ以上エネルギーを取り出せない)となり、おのずとその生成量も多くなったと考えられる また、最も安定した鉄の原子核は、ヘリウム原子核などの同符号(+)の荷電粒子をクーロン反発力で寄せ付けなくなり、鉄より重い元素の生成はほとんど不可能に近い ところが、d)で述べたように、超新星爆発の直後発生したと考えられる電荷を持たない高エネルギーの中性子であれば容易に捕獲することができる そして、引き続き中性子捕獲とβ崩壊が繰り返され原子番号と質量数がどんどん増え続けて量的には非常に少ないものの、資源的には有用な希土類元素や、銀(47Ag)、白金(78Pt)、金(79Au)などの貴金属を生成したのである
  そして最終的には、放射性元素であるトリウム(90Th232)やウラン(92U238)にまで到達し、これまで支配的であったβ崩壊に代わってα崩壊を起こすようになる α崩壊はα粒子(ヘリウム原子核 2He4)とγ線を放出し原子番号と質量数を同時に減らす核分裂(崩壊)である α崩壊は、β崩壊とは比較にならないほど大きなエネルギーを放出するもののトリウムやウランは半減期が100億年前後と非常に長いために、現在でも地球の内部から発生するエネルギー源として細く長く地球を加熱し続けている
  また、トリウムとウランは、α崩壊とβ崩壊を繰り返しながらより安定な鉛(82Pb)まで壊変し続けるのであるが超新星爆発時には半減期の短い放射性元素が、やはり安定な元素であるバリウム(56Ba138)やセリウム(58Ce140)などにも壊変している(Pbの陽子数とBaCeの中性子数はいずれも82で、これを「魔法の数」と呼んでいる) いずれにしても、「ビッグバン」が水素というエネルギーの缶詰を作ったように「超新星爆発」では、トリウムとウランという半減期の非常に長い放射性元素の缶詰が作られ今日の地球に様々な恩恵をもたらしてくれているのである

(4)「重元素」の塊である「コンドリュール」の生成と珪酸塩
  星の進化の過程で、宇宙に放出された「重元素」は、巨星時代にゆっくりと(しかし、長期にわたるため大量に)放出された元素と、超新星爆発時に放出された元素とに分けられる 前者は、炭素(C) 酸素(O) マグネシウム(Mg) 珪素(Si) 硫黄(S) など偶数番の元素であり、後者は、鉄(Fe)以降の重元素や、窒素(N) ナトリウム(Na) アルミニウム(Al) など奇数番の元素である もちろん、未反応のヘリウム(He)や水素(H)は、両者に大量に含まれていたことは言うまでもない
  巨星時代に放出された元素からは、ゆっくりと時間をかけて冷えていく間に色々な化合物や分子が形成された その中でも特に多いのは、水素(H2)を初め、水(H2O)や一酸化炭素(CO)などのガス状分子である また、珪素からは珪酸イオン(SiO4)4-が形成され、この珪酸イオンが金属イオンと反応して、カンラン石(Mg2SiO4)などの原始的な珪酸塩からできた微細な塵(チリ)を生成したことが考えられる この時期、各々の元素は非常に希薄な状態(極低圧)で存在していて反応にはかなりの時間を要するものの、結合力の強さでSi-O、確率の高さでH-Oの反応が優先して進み、結果的に酸素が欠乏し、かなりの量の遊離炭素(C)が生成されたに違いない
  一方、超新星爆発では、巨星の中心部で生成された鉄以降の重元素と奇数番の元素の他にも、周囲の比較的低温部で同心円の層状を成し段階的に生成され続けていた多量の偶数番の元素も一緒に吹き飛ばされたのである そして、これらの元素はよく攪拌されるため超高圧状態から温度が急速に低下していく過程で、アンモニア(NH3)やメタン(CH4)などのガス状分子も合成された 更に、多量の鉄からは酸化鉄(FeO)や硫化鉄(FeS)が生成したほか、やはり酸素不足から、かなりの量の遊離鉄(Fe)が残ったものと考えられる
  巨星時代に放出され、時間をかけて凝集粒に成長した珪酸塩の塵は、超新星爆発時に、瞬間ではあるが鉄の照射と共に高温・高圧状態にさらされたと考えられる 結果的に、内部に未溶融部分を残したまま表面のみ溶融され、全体に丸みを帯びた直径1mm前後の珪酸塩の粒子を形成したのである この粒子は「コンドリュール」と呼ばれ、主に鉄分を少し含んだカンラン石からできている そして、溶融前の凝集粒に含まれていた水分が未溶融部分に取り残され冷却速度が遅かった場合には、カンラン石が変成作用を受けて輝石(MgSiO3)に変わることもあった
  このように、「ビッグバン」によって造られた「水素とヘリウム」から誕生した星は、その進化の過程で、「水素とヘリウム」から様々な「重元素」を造り出した そして、「超新星爆発」によって、水やアンモニアあるいは珪酸塩や硫化鉄など数多くの化合物が形成され再び宇宙に還元されたのである しかし、この間消費された水素の量はわずか10%程度で、生成した「重元素」の量は1%にも満たない 従って、大半の「水素とヘリウム」は星間ガスとしてまた、新たに生成した化合物は星間塵や星間分子として宇宙をさまよい再び星(太陽)として生まれ変わるのを待つことになる

  
1−3.太陽系の誕生と「高温ガス凝縮説」               目次:

  太陽系の誕生について、これまで最も有力な「高温ガス凝縮説」によると、銀河系内に閉じ込められた水素やヘリウムなどの星間ガスから、太陽や惑星が生まれるシナリオは次の通りである
  今から約50億年前、宇宙に漂う星間ガスや塵が超新星爆発で吹き寄せられ、密度の高い星間雲が形成された 星間雲内ではゆっくりと重力収縮が始まり次第に収縮の速度を早めながら中心部は高温となって輝き始め原始太陽が誕生した この原始太陽は、星間雲が持っていたわずかな回転運動(角運動量)をも掻き集め半径が小さくなった分だけ高速で回転するようになる そして、次第に偏平になりながら高温のガス状物質(塵もガス化している)を、遠心力で赤道付近から円盤状に放出し結果的に中心に原始太陽をかかえ、水星の軌道付近から薄く円盤状に広がった高温のガス状星雲が形成された
  この理論によれば、高温のガス状物質が次第に冷えて凝縮することにより、丸い粒となった「重元素」から成る鉱物粒(高温凝縮物やコンドリュール)が生成した そして、これらの粒子が円盤の赤道面上に沈積し、重力収縮が始まって無数の微惑星を形成する 微惑星は、更に長い時間(107〜8年と考えられている)をかけて衝突を繰り返し、現在の惑星が誕生したわけである 水(H2O)やアンモニア(NH3)などの分子は、凝縮過程で固体(氷)や液体に変わって惑星の一部になったものの多量の水素やヘリウムなどはガス状のまま漂っている 一方、原始太陽は重力収縮が進み、中心温度が1千万度を越えるあたりから水素の核融合が開始される そして、この成長過程の一定の時期に、原始太陽から放出されたとされる「T-タウリ型風」によってより太陽に近い惑星付近のガス状物質は吹き払われ、太陽から遠い木星や土星などに捕獲されたと言うのである
  しかし、原始星の形成時に、星間ガスや塵は四方八方から降り積もるのではなく、既に形成されている円盤状の星間ガス(分子雲)や塵が水平方向から吸引されその一部が上下方向へ出ていくという新理論が、最近アメリカで発表され注目を集めていた 本章の冒頭で述べた電波望遠鏡による一酸化炭素ガスの観測結果は、この新理論を立証したことになる つまり、これまでの理論の中心となる高温ガスからの「凝縮過程」は、重要な意見合いを成さないのである 微惑星の主原料となったコンドリュールは超新星爆発によって吹き寄せられた星間雲に既に含まれていて、再度高温に熱せられることなく円盤状の原始太陽系星雲から直接微惑星を形成したと考えることができる 従って、コンドリュールは前項の1-2(4)で述べたように超新星爆発時の超高温・高圧状態で形成されたとするのが妥当であろう
  最近コンドリュールの詳しい電顕観察から、コンドリュールは、原料になったカンラン石の集合体が何らかの大きな衝撃により加熱溶融され更に急速に冷却されたものであることが分かっている その結果、コンドリュールの外側は、完全に溶融された均質なカンラン石で丸い形をしているものの内部には異常に高い転位密度を持ったカンラン石が多量の包有物を含んだまま溶けずに残っているのである この事実は、コンドリュールが「超新星爆発」のような大きな衝撃により瞬時のうちに加熱溶融されたものであることを物語っている また、太陽系の惑星が高温ガスの凝縮によって誕生したのではないとすると既に円盤状となっていた原始太陽系星雲から、直接重力収縮により形成されたことになる つまり、太陽の誕生と同時期に、その質量があまりにも小さいがために光輝く程の大きな発熱を経験したことのない黒色矮星が、木星型惑星として誕生したとしても不思議ではない 従って、太陽自身や木星型惑星の誕生と微惑星を経て誕生したとされる地球型惑星の形成は分けて考えた方がよい
  追記) この章を書いてから約1年後の平成4年5月2日の日本経済新聞に、「名古屋大学理学部の福井助教授を中心とする日米共同研究グループが牡牛座のヒアデス星団で生まれたての恒星のまわりを回る円盤状ガス雲を発見しこれが木星のようなガス状巨大惑星の母体であることをはっきりと確認できた そして、我が太陽系の木星型惑星も 固体の微惑星が衝突を繰り返してできたのではなく太陽の形成とほぼ同時期にガス雲から直接生まれたという説のほうが有力になってきた」と報じられている

上に戻る  次Page

ご意見ご感想は「こちら」までお寄せください。

Yahooのページ検索、及びGoogle等のサーチエンジンから、このページ(下層ディレクトリのHTMLファイル)に直接リンクされた方は、内容が正しく表示されていません。 左のHOME アイコンをクリックして初期のフレーム画面に戻り、左上のバナー「Quartz&Crystal」をクリックして現れた解説画面から、このページ「1.太陽の誕生とSiO2の形成」のボタンをクリックして再表示して下さい。