勇敢なる水兵

三浦 虎次郎

海軍三等水兵

 

明治27年 9月17日、日清戦争における黄海海戦のさなか、午後 3時26分に敵艦「鎮遠」の砲弾が

旗艦「松島」左舷前部下甲板に命中、一瞬にして30名が戦死、70名が負傷した。

「松島」に砲員として乗り組んでいた三浦虎次郎海軍三等水兵は腹部に重傷を負ったが、激痛に耐えな

がら「副長、まだ沈みませんか。定遠は」と尋ねた。向山副長が「定遠は戦闘力が弱ったから安心せい」

と答えると、三浦三等水兵は「天皇陛下万歳」と叫びつつ息を引き取った。

享年18歳10ヶ月。

 

勇敢なる水兵/北  蓮造画

 

勇敢なる水兵

一、煙も見えず雲も無く 風も起こらず波立たず 鏡のごとき黄海は 曇り初めたり時の間に

二、空に知られぬいかずちか 波にきらめくいなづまか 煙は空を立こめて 天津日影も色くらし

三、戦い今かたけなわに 勉め尽せる丈夫の 尊き血もて甲板は から紅に飾られつ

四、弾丸の砕片の飛び散りて 数多の傷を身に負えど その玉の緒を勇気もて つなぎ止めたる水兵は

五、副艦長のすぎゆくを 痛むまなこに見とめけむ 苦しき声をはりあげて 彼はさけびぬ副長よ

六、呼び止められし副長は 彼のかたへにたたずめり 声をしぼりて彼は問う まだ沈まずや定遠は

七、副長の眼はうるおえり されども声は勇ましく 心やすかれ定遠は 戦い難くなしはてき

八、聞きえし彼は嬉しげに 最後の微笑をもらしつつ いかで仇を討ちてよと 言う程もなく息絶えぬ

九、皇国につくす皇軍の 向う所に敵もなく 日の大御旗うらうらと 東の洋をてらすなり

十、まだ沈まずや定遠は この言の葉は短きも 皇国を思う国民の 心に長くしるされん

 

佐世保海軍墓地

長崎県佐世保市

海軍三等水兵 三浦虎次郎之墓

 

定遠の砲弾

 

栄蔵寺

佐賀県佐賀郡東与賀町

勇敢なる水兵 三浦虎次郎君之碑

 

帝國海軍

更新日:2008/03/15