海軍大尉 小灘利春
平成10年
回天烈士ならびに回天搭載潜没潜水艦乗員追悼式
平成11年 2月
大戦中に戦没した回天の搭乗員一〇六名はか隊員を慰霊する式典が、「回天隊」発祥の地、山口県徳山市の大津島において、
昭和37年以来毎年盛大に開催されており、平成3年よりは回天を搭載し戦没した潜水艦八隻、八一〇名の乗員を加え、
宗教色のない追悼式の形で執り行われている。
平成10年の追悼式は、回天特別攻撃隊の第一陣菊水隊が出撃した日より五四年目に当たる11月8日、13時30分より
厳粛に行われた。
御遺族五八名と県、市ほか各種自治体の代表、国会議員、県市議会議員、海陸空の各自衛隊、地元諸団体、会社の代表、
地元有志、旧軍関連の団体など、合わせて約九百人が大津島の丘に立つ回天碑の前に参集した。
御遺族は、北は北海道、西は鹿児島の全国各地から参加され、そのなかには
回天の創始者、故黒木博司少佐の御妹、丹羽教子様のお姿も見えた。
回天記念館は昭和43年11月開館、以来三十年間で延べ三四万人余の入館者を集め、特攻兵器「回天」の歴史的事実を
伝えてきたが、本年一月より休館して研修室、収蔵庫を増築し、展示室を全面改修して展示方法、内容を一新するための
整備工事を実施していた。
この日追悼式に先立って竣工式を行い、再開館した。視聴覚コーナーでは二種類のビデオで説明を受けることができる。
二〇年にわたり活発な演奏活動を続けている「大徳山太鼓・回天」が、漆黒の実物大模型の回天の前で、若い徳山市民男女に
よって奉納された。
勇壮な太鼓の音を聴くうちに、国を、民族を、愛する身近かな人々を護るために、進んで自らの生命を捧げた隊員たちの面影が、
次々と眼の前に浮かび、追憶の涙が滲んでくる。
また式典に先立ち、神戸市役所センター合唱団によって、混声合唱組曲「滄海ようたってー人間魚雷回天−」が奉納され、
前夜は全国回天会徳山大会の席上、
正伝薩摩琵琶普門院流二世宗家、森園史城師によって薩摩髭琶曲「回天特別攻撃隊」が献弾され、力強い琵琶の調べに
参会者一同は深い感動に浸った。
本追悼式は毎年11月の第二日曜日に開催されることになっており、来年は11月14日に決定している。
更新日:2007/09/30