海軍大尉 小灘利春

 

多聞隊の戦果

米海軍年紀:CHRONOLOGY OF WAR AT SEA

平成 7年10月 訳:小灘利春

 

7月16日−8月13日 中部太平洋

日本潜水艦の最後の作戦は「回天魚雷」によって行われた。

 

7月16日から始まった多聞隊の伊号第47潜水艦(艦長鈴木少佐)は7月21日、フイリッピン海で

船団に対し魚雷攻撃を行い輸送船マラソン(MARATHON 7607t)に損傷を与えた。

 

伊号第53潜水艦(艦長大場少佐)は7月24日、船団に対し「回天」2基を発進させ、その1基は

米国の護衛駆逐艦アンダーヒル(UNDERHILL)を撃沈した。

第2回の攻撃は8月4日、台湾東方沖で「回天」2基を発進させたが戦果はなかった。

 

伊号第58潜水艦(艦長橋本中佐)は7月27−28日、グアム−レイテの航路上で「回天」1墓を発進させ、

駆逐艦ロウリー(LOWRY)に損傷を与えた模様である。

 

同潜水艦は7月29−30日、ルソン島東方において護衛艦のついていなかった重巡洋艦インディアナポリス

MCVAY艦長)に対し魚雷6本を発射し、2本を命中させて撃沈した。

同巡洋艦はサンフランシスコからテニアンに原子爆弾の部品を運搬したあとレイテに向かっていた。

全乗組員1,199名のうち、僅かに316名だけが8月2日から8日の間に米国の飛行艇および駆逐艦に

救助された。

 

伊58潜は8月10日、船団に対し「回天」2基を発進させた。

護衛駆逐艦ジョニー・ハッチンス(JOHNNIE HUCHINS)は回避した。

次の各護衛駆逐艦からなる2組の対潜掃討隊は伊58潜の探知に失敗した。

ダグラス・A・マンロー (DOUGLAS.A.MUNRO

ウイリアム・セイバリング(WILLIAM SEIVERLING

ジョージ・Å・ジョンソン(GEORGE.A.JOHNSON

メチパー        (METIVER

ウィッター       (WITTER

 

伊58潜は8月12日、さらに2基の「回天」をLSDオークヒル(OAKHILL)および護衛駆逐艦

トーマス・F・ニッケル(THOMAS.F.NICKEL)に向けて発進させた。

回天はこれら目標の艦腹を擦っていったが、回避されたあと爆発した。

 

伊号第366潜水艦(艦長時岡大尉)は8月11日、パラオの北方500浬において船団に対し「回天」3基を

もって攻撃したと報告している。

 

伊号第367潜水艦は戦果を挙げずに帰還した。

 

注1:発進した回天の搭乗員氏名

伊53  7/24  勝山 淳     :発進は1基のみ

    7/29  川尻 勉

    8/ 4  開 豊輿、荒川正弘

伊58  7/28  伴 修二、小森一之:2基発進

    8/10  水井淑夫、中井 昭

    8/12  林 義明     :発進は1基のみ

伊366 8/11  成瀬謙治、上西徳英、佐野 元

 

注2:伊53より8月4日発進した回天は、上記では戦果なしとされているが、伊53を攻撃中の米国護衛駆逐艦

.  アール・V・ジョンソン(EARL.V.JOHNSON)は魚雷が艦底下を通過したあと爆発して主機ほかに損傷を被り、

.  戦闘不能となった。

.  それにより伊53は脱出、帰還しているので戦果はあった。

 

海軍大尉 小灘利春

更新日:2008/08/17