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懐かしのテレビラジオ録音コレクション

雑感


◆放送業界の調査能力に思う

先日、首都圏の某キー局で番組制作をしている者と名乗る人から、他局の過去の番組名を挙げて、「映像をお持ちでしたらお貸し頂けないか」との問い合わせがあった。私は、「どのような目的でご入用なのかわかりませんが、放送素材としてお使いになるのであれば、私のような一個人でなく、著作権者の制作局もしくはプロダクションにお問い合わせになるのが適切かと存じます。」と返した。

かなり以前には、やはり別の首都圏キー局の子会社(同局名が入っている社名だったので、資本関係もある子会社であろう)の社員から、同じように、「当社が制作している映像ソフトへの採否の参考にするため、1984年に放送された他局の番組の録画を貸して欲しい。」と言ってきた。「放送著作権について心得のあるはずの機関からのお申し出なので、下調べの目的に限るのならばとりあえず応じるが、もちろん本当に使用することになったならば制作局から正式に取り寄せるなど、取り扱いには注意して欲しい。」と返した。

ある時には、当サイトの録音コレクションに興味を持った番組制作会社が、趣味人にスポットライトを当てる番組で紹介することを打診してきて、「番組の中で、お持ちの録音を聞かせてもらうことは可能ですか?」と言ってきた。「私は構わないが、著作権の処理が面倒であることは承知しているのか?」と返したところ、問い合わせてきた人は上司に相談したらしく、「ご指摘の通りでした。申し訳ありません。」と言ってきて、話は無しになった。

これらの事例を経験して、私は以下の2つのことを感じる。

  1. インターネットでお手軽に検索した情報をもとに番組を仕立てようとする姿勢に疑問を感じる。放送業界の人たちのリサーチ能力が衰えてきているのではないか。
  2. 番組制作に当たる業界の人たちに、著作権を始めとする放送素材の扱いに関する常識的知識が欠如しているのではないか。

NHK BS2で、懐かし番組を毎週1つずつ取り上げる「週刊お宝TV」という番組が放送されている。その中でコメンテータが登場して、その懐かし番組の背景や影響について解説するのだが、その内容があまりにも通り一遍で、私のような素人が準備無しで言える程度のことばかりであり、いつもがっかりする。今から20年以上前の、テレビ放送30周年の時の各局の特別番組のほうが、はるかに深い調査と洞察がなされていたように思う。

インターネット上の情報をかき集めれば、お手軽に専門家的知識をでっち上げることが誰にでもできる時代である。放送業界人がそのようなことをやっているようでは、ネットとの融合時代を迎えて、優位を保ち続けることが果たしてできるのだろうか。インターネットを調べただけでは得られないような、汗をかいて足で得たネタを使って番組を作るという、プロ意識を持って欲しいものだと思う。

(2006年7月17日)
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◆放送博物館の姿勢に思う

先日、ライターを名乗る見知らぬドイツ人から英語でメールがあり、「現在、手巻き式テープレコーダの歴史について書籍を執筆している。NHK放送博物館のサイトに写真が載っているテープレコーダについて、同博物館に問い合わせたいので、連絡先をご教示願いたい。」と言ってきた。同館は問い合わせを受け付けるメールアドレスを公開していないので、私はお問い合わせ入力フォームを使って、ドイツからこのような問い合わせがあったので対応してほしいという連絡をした。

なかなか回答が来ないので私から同館に直接電話しようと思っていた矢先に、ようやく同館から電話がかかってきた。

同館 「英語での問い合わせに応じることは難しい。」

私 「テープレコーダの写真に関する問い合わせという簡単なことなのだが、対応できないのか。」

同館 「写真の提供なら有料なので、NHKサービスセンターにお問い合わせを。」

とにかく、たらい回ししようとする態度がありありと感じられた。私が引き下がらず、同館の窓口連絡先を尋ねると、

「今から申し上げる問い合わせ窓口をお使い下さい。」

そして、こともあろうに、私が同館に問い合わせに使った日本語入力フォームのURLを言ってきた。私は、いい加減ブチ切れそうになってきた。

「相手はドイツ人なのです。「名前」や「性別」や「年齢」や「職業」や「住所」を日本語で入力するようになっているフォームに、どうやって入力させるのですか。非常識とは思いませんか?」
(自分たちが英語文書での受け答えをしり込みしているくせに??)

同館はメールアドレスを教えたくないらしく、上司と相談するなど15分ぐらいスッタモンダして、ようやく受付用メールアドレスを教示してもらった。私はそのアドレスをドイツ人に知らせ、肩の荷を降ろした。その後、そのドイツ人ライターが同館に問い合わせたかどうか、けんもほろろな目に遭ってないか、心配ではあるが、私はそこまでは関知しない。

スワヒリ語で問い合わせてくるわけではない。同館に英語で国際電話がかかってくる方が面倒だろうから、電子メールという文書で正確に応対できるように私としては計らったつもりなのだが、それでも対応をしり込みする同館の姿勢は、一体何なのだろう。博物館は、古物を陳列しておくだけが仕事ではない。放送文化の向上のための問い合わせには外国を含め誠心誠意対応することは重要な業務ではないか。ましてやNHK放送博物館は、博物館法に準拠する、日本を代表する専門博物館であり、学芸員ぐらい置いているはずである。英語の文献を読んだり回答したりする程度のことすらできない学芸員がいるのだろうか。

おりしも今、NHKの公共放送としてのあり方が議論されている。放送文化を保存・継承・啓蒙するという公共的役割を全うできない機関ならば、受信料制度を廃止して一民放に衣替えするほうが、スッキリしていいかもしれない。

(2006年7月17日)
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◆過去映像の利活用の制約について思う

私の勤務先は、1964年(昭和39年)の東京オリンピックの際に、NHKと協力して、開会式等の映像を、米国等海外に初めて衛星中継した技術研究機関である(当時は宇宙中継と呼ばれていた)。最近、同機関の展示室の歴史コーナーをリニューアルした際に、NHKに残っている開会式当日(10月10日=開会式を記念して体育の日という祝日になった)夜7時のNHKニュース(きょうのニュース)に登場する同機関の映像を常設展示してはどうかと、私が広報担当に提案した。同機関の衛星地上局の様子を映した取材フィルムの後、おなじみの鈴木健二アナウンサーが、米国の駐在員に電話で中継映像を見た現地の反響の様子を聞いているニュースであった。その「きょうのニュース」は、今から20年以上も前に、愛宕山のNHK放送博物館のロビーで全編エンドレス上映されていたことがあり、録画が現存していることを私が知っていたことによる提案である。昭和30年代のニュース番組そのものの映像(取材映像のフィルム素材でなく)が丸ごとキネコで残っているのは極めて稀なことなので、私の印象に残っていた。

NHKの映像を利用する際には、NHKエンタープライズという会社に申し込み、東京・渋谷の同社に出向いて、ブースで視聴確認して、使用する範囲などを正式に申し込む手順となる。視聴のために映像を探してもらうことからお金がかかり、使用目的にもよるが、最終的には結構な金額がかかる。

私は提案者として、広報担当者と一緒にNHKエンプラに出向き、同映像を確認することになった。

懐かしい「きょうのニュース」のオープニングテーマに続いて、開会式関連のニュースがいくつか続いた後、「宇宙中継成功」のニュースがあった。
この数分ほどのニュースをNHKエンプラ担当者と一緒に見ながら話をしているうちに、この映像素材を活用することのハードルの高さを私は思い知らされた。

私たちは途方に暮れた。NHKエンプラの担当者は、「民放はこれほど厳しくないのですが」と申し訳なさそうに言っていた。

20年以上前に私が愛宕山のロビーで見た、30分ノーカットでエンドレス上映され入館者の目にさらされていたこの「きょうのニュース」も、同じ権利処理をしたのだろうか。権利者(NHK)の関連機関(放送博物館)による上映ならば、映っている人の許諾を得なくてもいいと、誰が何の権限で決めたのだろうか。 私の手元に録画が残っている「NHKライブラリー選集」や、市川森一氏司会の「NHKビデオギャラリー」など、20〜30年前に放送されていた、懐かし番組紹介番組では、上記のような制約にひっかかりそうなシーンが沢山登場していたが、同じ処理を全てクリアーして放送していたとは信じられない。

映像や被写体に関する権利を重視するようになったのは、最近の風潮なのだろう。最近のNHKアーカイブス(番組)が、ごく最近に制作された、懐かし番組とは言えないような無難なシロモノしか取り上げない、つまらない番組になったのは、そのためだったのかと、わかった気がした。

映像の権利者は、過去の映像が利活用される価値を、本気で考えていないのだろうか。何のために映像を保存しているのだろうか。権利とは誰のものなのか。公共の利益との兼ね合いを、大局的に判断できる関係者はいないのだろうか。

さて、からかっているのかと思うような呆れた制約をかけられたものの、私と違って大人で冷静な広報担当は必死に妥協を重ねて、何とか展示にこぎつけた。結局1分ほどに削られた映像だが、許諾費用は100万円を下らなかったようだ。 どんな切り刻まれた、資料価値の低減した映像が展示されているか、機会があればぜひご覧いただければと思う。

(2013年1月15日)
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