【弥生賞】終わってみれば“1強”!Aムーン、力の差見せた

アドマイヤムーン

“2強”の前評判も終わってみれば“1強”。アドマイヤムーン(手前)が能力の違いを見せつける完勝劇で、皐月賞へ大きく前進した=撮影・金子貞夫

第43回弥生賞(5日、中山11R、GII、皐月賞トライアル、3歳オープン、馬齢、芝・内2000メートル、1着本賞金5400万円、1〜3着馬に皐月賞の優先出走権=出走10頭)昨年ディープインパクトが勝った牡馬クラシック第1弾・皐月賞の最重要トライアルは、1番人気に推されたアドマイヤムーンが後方から力強い末脚を発揮、2着グロリアスウィークとの叩き合いを半馬身差制し優勝した。2分1秒5(良)。共同通信杯に続く重賞連勝で、名実ともに皐月賞最有力候補となった。武豊騎手は連覇を果たし、通算でも自身の最多勝利記録を更新する5勝目。ラジオたんぱ杯2歳Sでムーンに唯一の黒星をつけたサクラメガワンダーは、伸びきれず4着に敗れた。

1戦ごとに強さを増していく。アドマイヤムーンは絶好の形で“試走”を終えて、皐月賞最有力馬の評価を不動のものとした。

敵は1頭のみ。唯一の黒星となったラジオたんぱ杯2歳Sでハナ差だけ差し切られたサクラメガワンダーだった。「出たなりで前半はゆっくり行くことは決めてました。そうしたら最大の強敵は後ろにいたので、自分からあえて動くことはないと思いました」。

武豊騎手は悠然と3コーナー過ぎからメガワンダーと馬体を並べて上がっていき、4コーナー過ぎであっという間にライバルを置き去りにした。課題とされている、抜け出した時に気を抜く面は相変わらずだったが、内からきたグロリアスウィークとの叩き合いをきっちり半馬身制して、重賞3勝目を飾った。

「直線でムチを入れた時に左右にヨレました。でも今後修正していけば問題ないです」とユタカは心配していない。そして2回手綱を取ったムーンを、「気性も素直だし、レースに行って難しい方ではない。こっちの指示も聞いてくれるしね。見た目や血統の派手さはないがしっかり走る。物凄いタイムでぶっちぎって勝つことはないが、きっちり最先着してくれる。楽しみな馬に出会えました」と高く評価した。

共同通信杯で2歳チャンプのフサイチリシャールを破り、皐月賞と同じ舞台の弥生賞でサクラメガワンダーに借りを返し、名実ともに最有力候補。松田博調教師は「このあとは本番。ユタカ君に任せておいたら大丈夫。不安はない」と続投を望んでいるが、ただユタカには、若葉S(18日、阪神、オープン、芝2000メートル)に挑む、3戦3勝のフサイチジャンクというもう1頭のお手馬がいる。

「今年は(ディープインパクトがいた)去年と違って、チャンスのある馬が多いです。自分の騎乗馬でもまだまだ楽しみな馬がいっぱいいます」とユタカ。ムーンかジャンクか、それとも? これが今年の皐月賞、最大のポイントなのかもしれない。若葉Sが終わった時にもしユタカがムーンを選んだなら、大冠は、さらに近づいてくるはずだ。

(高尾幸司)

■アドマイヤムーン

父エンドスウィープ、母マイケイティーズ、母の父サンデーサイレンス。鹿毛の牡3歳。栗東・松田博資厩舎所属。北海道早来・ノーザンファームの生産馬で、馬主は近藤利一氏。戦績6戦5勝。獲得賞金は1億6603万円。重賞は平成17年GIII札幌2歳S、18年GIII共同通信杯に次いで3勝目。松田博資調教師はGII弥生賞初優勝、武豊騎手は平成8年ダンスインザダーク、9年ランニングゲイル、10年スペシャルウィーク、17年ディープインパクトに次いで5勝目。

近藤利一オーナー(左)、吉岡美穂(中)、武豊騎手(右)

チューリップ賞のアドマイヤキッスに続き、武豊騎手(右)の手綱で土日重賞Vの近藤利一オーナー(左)は満足の笑み。プレゼンターを務めたタレントの吉岡美穂(中)とガッチリ握手をかわした=撮影・清水幸

★弥生賞男・武豊!連覇で通算5勝目

武豊騎手は昨年のディープインパクトに続いての弥生賞連覇。平成8年ダンスインザダーク、9年ランニングゲイル、10年スペシャルウィークを加えて計5勝。最多勝利記録の更新となった。弥生賞通算は11戦5勝2着4回で連対率8割超えと、驚異の成績を残している。

★近藤オーナー、連日のトライアル勝利に笑顔

嬉しい、土日連続のトライアルG連勝だ。4日のチューリップ賞を同じ松田博調教師と武豊騎手とのタッグで制したアドマイヤキッスとともに、桜花賞と皐月賞、牡牝クラシックの最有力候補を手にすることになった近藤利一オーナーは破顔一笑。

「1勝馬だったキッスが切符を手にした昨日の方が嬉しいけど、まだ私は皐月賞を勝っていないからね。七分の状態で勝つと宣言して、その通り余裕たっぷりのレース内容だったが、本番はそうはいかないから完璧に作って臨んでもらいたいね。先頭に立つと気を抜く課題が残っているが、そのへんはユタカが一番分かっていること。走りっぷりから道悪も大丈夫とユタカは言ってくれたし、5週後が楽しみになった」と本番の皐月賞に思いを馳せていた。

サクラメガワンダー

★サクラメガワンダー4着…本番は変わり身期待

アドマイヤムーンの最大の敵で人気を分け合ったサクラメガワンダー(2番人気、写真)は、身上の強烈な末脚が爆発せず、ディープエアーとの写真判定にもハナ差敗れて、4着に沈んだ。ラジオたんぱ杯2歳S優勝から2カ月と少し。2着だったムーンとの立場は逆転してしまった。

「今日は返し馬の時からイライラして本当じゃなかった」。安藤勝己騎手が振り返るように、スタート前から落ち着きを欠いていた。「ゲートで立ち上がったりして悪い体勢でスタートを切られた」ため、最後方からの競馬。目前にいたムーンをマークして、道中は折り合いよくスムーズに追走できたが…。

1000メートル通過が61秒2という決して速いペースではなかったのに、ムーンはデンと構えて動こうとしなかった。業を煮やしてかメガワンダーは3コーナー過ぎからまくって出たが、呼応したかのようにエンジンがかかったムーンとの脚勢の差は歴然だった。

「相手はムーン1頭。どのぐらいの脚が使えるか計る意味でああいう形になったが、一瞬は切れかかったものの、思うように息の長いいい脚が終い使えなかった」とアンカツ。

それでも全てが終わったわけではない。休み明けで0・6秒差とすれば逆転の目はあるはず。「現時点ではムーンが一枚上と認めざるを得ないが、でも悲観材料にはならない。あちらは抜け出すとソラを使う(気を抜く)し、その虚をつけるようなら、チャンスはある。こちらは久々で息持ちが悪かったのだから、もう少し長くいい脚が使えそうな次走は…」と、アンカツはじめ関係者は、変わり身が見込める本番・皐月賞での逆転を心に誓っていた。

(水戸正晴)

★グロリアスウィーク健闘、叩き合って2着

シンザン記念2着はダテじゃない! 6番人気グロリアスウィークは中団の内でジッと脚をため、アドマイヤムーンと叩き合う形から大健闘の2着。後につながる半馬身差だった。「ゲートを出てから物見してなかなか進んで行かなかったが、直線はしぶとく内から脚を使っていた。背中のいい馬だし、集中して走れれば…」と初騎乗の柴田善臣騎手の評価は上々だ。気持ちと体がうまくかみ合ってくれば、さらなる進化が期待できる。

★ディープエアー、サクラ抑えて出走権ゲット!

大井の内田博幸騎乗で挑んだ5番人気ディープエアーは、直線でジワジワ脚を伸ばして、最後は外から差してきたサクラメガワンダーをハナ差抑えて3着。待望の皐月賞チケットを手にした。「前に行く指示だったけど、スタートの出が今ひとつだったのであの位置(後方から3頭目)。馬場のいい所を通れたし、ゴール前もしぶとく我慢してくれたよ」と内田博はほっとした表情を見せていた。

★スーパーホーネット、5着も距離のメド立った

3番人気のスーパーホーネットは中団から差は詰めたものの5着。朝日杯FS(2着)でフサイチリシャールを追い詰めた末脚の再現はならなかった。「休み明けのせいか、1コーナーまで行きたがって、折り合いをつけるのにちょっと苦労したね。4コーナーで両サイドから寄られたし、残念な結果になったけど、馬の後ろで我慢させる競馬ができて、距離のメドも立った。次につながるレースはできたと思う」と、四位洋文騎手は収穫の多かったトライアルを振り返った。「今度は思い切り乗ります」。皐月賞では不気味な存在となりそうだ。

★関東期待のナイトレセプションは6着

関東期待の4番人気ナイトレセプションは好位を進んだが、直線では弾けずに6着に敗れた。「折り合っているように見えたかもしれないが、馬はアクセル全開で、こっちがブレーキを踏んでいるような状態だった。前回、外国人騎手(ボニヤ騎手)がテンから気合を入れたので、馬が目覚めちゃったのかな。もう少しゆったりと走れるようになれば」と横山典弘騎手は今後の変わり身に期待を寄せる。葉牡丹賞(芝2000メートル・1分59秒9)で2歳レコードをマークしたように潜在能力の高さは折り紙付き。骨折明けを叩かれた次走(未定)に注目だ。


2006年2回中山4日( 3月 5日) 11R
第43回 報知杯弥生賞(GII)
サラ系3歳 2000m 芝・右
(混合)(指定) オープン 馬齢
本賞金: 5400、 2200、 1400、 810、 540万円 発走 15:35
天候:晴  芝:良 
着順 馬番 記号 馬名 負担
重量
騎手 タイム 着差 馬体重 調教師 単勝
人気
1 2 2
アドマイヤムーン 3 56.0kg 武豊 2:01.5   472Kg -6 松田博資 1
2 3 3 (父) グロリアスウィーク 3 56.0kg 柴田善臣 2:01.6 1/2馬身 452Kg -6 音無秀孝 6
3 7 7
ディープエアー 3 56.0kg 内田博幸 2:02.1 3馬身 472Kg -4 池添兼雄 5
4 1 1
サクラメガワンダー 3 56.0kg 安藤勝己 2:02.1 ハナ 472Kg 0 友道康夫 2
5 4 4
スーパーホーネット 3 56.0kg 四位洋文 2:02.1 クビ 452Kg -4 矢作芳人 3
6 8 10
ナイトレセプション 3 56.0kg 横山典弘 2:02.3 1馬身 458Kg 0 後藤由之 4
7 6 6 (市)(地) モエレソーブラッズ 3 56.0kg M.デムーロ 2:02.5 1馬身 490Kg -2 小島太 7
8 5 5
ヴィクトリーラン 3 56.0kg 石橋守 2:02.6 1/2馬身 470Kg -6 田所清広 8
9 7 8 (外) マイネルシュピール 3 56.0kg 蛯名正義 2:02.8 1 1/4馬身 502Kg -4 田中清隆 9
10 8 9 (父) セトウチアポロン 3 56.0kg 田中勝春 2:03.1 2馬身 494Kg +2 堀宣行 10

ハロンタイム  12.4 - 11.3 - 12.5 - 12.6 - 12.4 - 12.0 - 12.7 - 12.3 - 11.7 - 11.6
上り  4F 48.3 - 3F 35.6
1コーナー  6,8,10,5(3,4,9)7,2-1
2コーナー  6(10,8,9)5,4,3-7,2-1
3コーナー  (*6,8)(10,9)5(3,4)(7,2)-1
4コーナー  (*6,8)9(10,3,5)4(7,2,1)

<払戻金>
単勝 02 160円 1番人気
複勝 02 120円 1番人気
03 660円 7番人気
07 550円 5番人気
枠連 2-3 3,160円 7番人気
馬連 02-03 3,620円 8番人気
ワイド 02-03 1,120円 9番人気
02-07 990円 7番人気
03-07 6,610円 33番人気
馬単 02-03 4,740円 13番人気
3連複 02-03-07 17,160円 29番人気
3連単 02-03-07 66,970円 99番人気