新インフルエンザワクチン(商品名:フルミスト)

※2003年にアメリカ食品医薬品衛生局(FDA)に認可されたワクチンでアメリカでは10年以上の安全な実績があります。2011年からヨーロッパでも認可され発売されておりますが、日本では残念ながら未承認です。もう何年も日本版ができることを待ち望んでいたのですが、ワクチン後進国である日本では、まだ開発されるめども立っていません。そのような理由で、輸入して使用開始することといたしました。

フルミストというワクチンで、
鼻に噴霧するワクチンです
4価(今年日本国内で使用されるワクチンと同じA型2種類とB型2種類の計4種類)のワクチンです。
ただし、生ワクチン(生きたウィルスを使用)です。
遺伝子操作で、ヒトの体温になると増殖を止める様に操作された4種類のインフルエンザウィルスを鼻に噴霧して免疫を作ります。簡単に言えば、人工的に鼻に4種類のウィルスを感染させるわけですが、そのウィルスの増殖は途中で止まるために発病しないで、免疫だけが獲得されるという仕組みです。理論は以下のようになりますが、読むのが面倒なヒトは、
期待できる効果まで読み飛ばしてください。
健常者の体温でウィルスの増殖ができない仕組みは、以下の3つの処理を経て獲得されます。
 1.低温馴化 (CA: cold-adapted)
 摂氏25度で効率的に複製するウイルス株である(この温度では、 通常の野生株ウイルスの複製は制限される)。
 2.温度感受性化 (TS: temperature-sensitive)
 多くの野生株ウイルスが効率的に複製できる温度(B型ウイルスに おいては、摂氏37度、A型ウイルスにおいては、39度)ではこの ウイルスの複製が制限を受ける。
 3.弱体化 (ATT: attenuated)
 ヒト-インフルエンザ感染モデルであるフェレットにおいて、古典 的インフルエンザ様症状を発症させない。
 上記処理がなされた結果、このウイルス株は臨床試験において、ウイルスが先祖がえりして病原性を回復する事は認められていません。
通常インフルエンザウイルスは鼻腔から侵入するので、その場所に直接免疫をつけることで発症予防効果が高いと考えられます。鼻腔内に噴霧して、分泌型IgA(粘膜レベルでの抗体)を誘導することで、インフルエンザウイルスの侵入そのものを阻害できます。さらに全身の粘膜へ分泌型IgA抗体の誘導し、防御できます。また、自然感染に近いため、CD8陽性T細胞(生体の防衛免疫の指令塔)を誘導することにより、ウイルス株が違っていても、重症化を防ぐ可能性があります。

期待できる効果
局所免疫IgA誘導により、発症予防効果が高いです。
細胞性免疫を誘導することにより、ウイルス株が違っていても、発症を軽症化させる作用があります(交叉防御効果)。
A型インフルエンザに対する、5歳未満児における発症予防効果は株一致で89.2%, 株不一致で79.2%と驚異的です。(6か月から7歳では発症予防効果は83%。)
CDCは、6か月から18歳までの小児においてフルミストを推奨しています。ただし、接種可能年齢は2歳から59歳まで。
生ワクチンであるため、理論上、インフルエンザ様症状(熱、咳など)を発症する可能性はあります(この場合抗インフルエンザ薬を服用すれば、速やかに治癒します)。
※ただし、接種適応内の健常人で、接種したためにインフルエンザを発症した報告は1例もありません。また、同居する未接種の健常人(老人、妊婦、新生児を含む)にインフルエンザを発症させた報告も1例もありません。
また、従来の不活化ワクチンの予防効果が 4か月程度であるのに対し、約 1 年以上の有効期間と言われており、効果が長く持続します。
予想株が流行株と合えば、特に 13 歳以上では不活化ワクチンの有効性が上回ると言われておりますので、不活化ワクチンとの併用も可能です。その場合は不活化ワクチン規定回数接種後 28 日以上あけてフルミストの接種となります。

接種料金:1回7000円  予約された方しか接種はできません。
                 (キャンセルはご容赦ください)
今回は、初めての輸入のため需要がわかりませんので
1回の輸入本数(今回30本しか輸入していません)が少なく、需要が増えれば来年以降はもう少し安くできると思います。


接種回数
・過去にインフルエンザに罹患または、インフルエンザワクチン接種をしたことがある場合は 1 回
・9 歳未満で上記に該当しない場合は 28 日以上あけて 2 回接種

禁忌
卵アレルギーがある場合
ゲンタマイシンに対するアレルギーが有る場合。
ゼラチンのアレルギーが有る場合
アルギニンに対するアレルギーがある場合

要注意
18歳未満でアスピリン治療を受けている人
重症の喘息患者、あるいは現在喘息の発作が出ているヒト
インフルエンザワクチンでギラン・バレーを発症したことがある人
(薬剤・疾患に基づく)免疫抑制状態のヒト
妊婦あるいは妊娠予定のヒト
授乳婦
造血幹細胞移植など、重度の免疫不全の方と接触する場合


副反応
生ワクチンですので 30〜40%の方は接種後3日〜7日まで鼻炎症状が出現し、その他、咽頭痛、咳など軽い感冒症状を数日認める場合があります。
ごくまれに、発疹、じんましん、アナフィラキシーショック、ギランバレー症候群などの重篤な副反応を起こす可能性は他のワクチン同様に否定できません。

重篤な副反応出現時
ワクチンによる健康被害が起こった場合、国内未承認の輸入ワクチンであるため、公的な補償制度は適用されません。輸入元のmonzenの副作用被害救済制度はありますが、補償は限定的であることを十分ご理解下さい。
            参考:区分      補償金額
               死亡       2,000万円
               障害1級     1,000万円
               障害2級      500万円

※当院では、他のワクチンとフルミストの同時接種は行いません。国内承認済みのワクチンは公的な補償制度が得られるので、万一フルミストと同時接種を行い、予防接種による健康被害が生じた場合、公的な補償制度が受けられなくなる可能性があるからです。