『大工哲弘/ゆんた とぅ じらば』

(DAIKU TETSUHIRO/YUNTA & JIRABA)
《1993年発売、ディスク・アカバナー APCD-1002》

1.鷲(ばす)ゆんた/2.まみどぅーま/3.むんぐるぐばーさ/4.TUBARAMA/5.ZANZABURO/6.猫(まや)ゆんた/7.六調節/8.デンサー/9.望郷哀歌/10.安里屋ゆんた/11.与那国しょんかねー




 沖縄、八重山諸島の民謡歌手大工哲弘が梅津和時らジャズ・フィールドのミュージシャンをパックに作りあげた画期的なアルバム。個人的には大工哲弘のアルバムの中で最も気に入っている。

 「ユンタ」「ジラバ」というのは八重山諸島に伝わる作業労働歌や生活を織り込んだ叙事的な歌らしい。(東亜音楽舎『オキナワン・ミュージック・ガイド』より)
 ここでは、商品として固定化されなかったために粗々しさが残っていると言われるそうした八重山の古い島唄に新しく斬新なアレンジが加えられており、ちょっと古い言い方だがプログレッシヴ沖縄民謡とでも言える音楽が繰り広げられる。

 実験的な作品ではあったかもしれないが、実験作といった聞きづらさはない。何より、バックのミュージシャンの演奏力がすばらしく、この不思議な組み合わせの音楽を実に聞きやすく質の高いものに仕上げている。加えて危険とも思われる試みであったために生まれた緊張感が、作品の完成度を高めているように思える。

 そして、大工哲弘の「声」。これこそが大工哲弘の最高の魅力といえる。「生涯、アマチュア」をテーマとして掲げているからこそ、新鮮な歌が歌えるのだろうか? 説明不用のすばらしい歌は、強力なジャズ・ミュージシャンがバックに加わってもなんら色あせない。

 大工哲弘という人は、民謡界ではじめてジーンズで舞台に立った革命児らしい(『オキナワン・ミュージック・ガイド』より)。そうした斬新な姿勢がこの作品にも現れている。

 この作品での梅津和時との共同作業を経て、その後の『OKINAWA JINTA』『JINTA INTERNATIONAL』といった一連のジンタ・シリーズにつながっていく。
 ヤマトの歌を唄うジンタ・シリーズも魅力的だし、純粋な民謡のアルバムも聞きたいが、この『YUNTA & JIRABA』の続編みたいなアルバムも、ぜひ聞いてみたい。
 『YUNTA & JIRABA』はディスク・アカバナーというレーベルが1993年に発売したアルバムで、その後ディスク・アカバナーは休止し'94年にオフ・ノートが設立されたが、最近、II期ディスク・アカバナーがスタートした。『荒磯のうた』という大工哲弘のアルバムも用意されているという。とても楽しみだ。

1997年5月25日 小林アツシ
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