『友部正人/大阪へやって来た』

(TOMOBE MASATO/OSAKA E YATTEKITA)

《URC URL-1022/1972年1月15日発売》
A面                             B面
1.大阪へやって来た             1.真知子ちゃんに
2.酔っぱらい                   2.梅雨どきのブルース
3.もしもし                     3.まちは裸ですわりこんでる
4.まるで正直者のように         4.公園のベンチで

  <どうもありがとう>
  ピアノ:緒方和也(A-4)/フラットマンドリン:高田渡(A-4)/ベース:宇野
  主人(A-2・4)/ドラムス:江戸門弾鉄(A-4)/ジャスハープ:西岡たかし(A-2)

  詩・曲・ギター・ハモニカ・唄:友部正人        制作:アート音楽出版

  表紙:真崎守/録音:アオイスタヂオ/技術:神成芳彦/写真:川仁忍

赤い厚紙の歌詩カードには、鉛筆で「47 4 6」と書いてある。昭和47年4月 6日に購入したと云う意味だ。 ラジオの深夜放送が花盛りの頃、どこから情報を仕入れたか覚えてないのだが、 大阪の「毎日放送」で 加川良 がDJをしていることを知った。番組名は「M BSチャチャヤング」。DJは、加川良と金森幸介であった。 どんな歌を流していたか、今となってはほとんど覚えていない、はたして音楽 を流しているより2人の話の方が多かったような気もする。その番組である日 流れた曲が僕に衝撃を与えた。友部正人の歌う「大阪へやって来た」。 アルバム『大阪へやって来た』は全8曲入りである。その日の番組で、この中 からどの曲が流れたのか覚えてはいないのだが、「大阪へやって来た」が流れ た事だけは確かである。僕は、これを聞いてレコード屋へ走ったのだから。 「大阪へやって来た」こんな支離滅裂で前後につながりのない曲って当時他に もあったように思う。しかし、それらは内省的で青春だとか人生だとか、ちょ っと聞きには哲学風でちょっぴり背伸びしたい年頃の僕もラジオから流れて来 ると良く聞いたもんさ。でも、自分で金を出してまで手にいれようとは思わな かった。僕の中では、ラジオからたれ流される音楽と手に入れておきたい音楽 は別物だったのだ。 「大阪へやって来た」 日常を見事に切取ってしまった友部正人の詩。それにからまるギターとハモ ニカ。強烈なビートを持つこの歌は未だに僕を捕まえて離さない。そのタイト ルからは「大阪」という大都会を歌う印象を受けるがその実ごく日常的な生活 の匂いを僕は嗅ぐ。 「まるで正直者のように」 このアルバムの中で一番好きな歌。すこしづつ大人になって行くのに必要な 事柄が浮彫りになって行く様は戦慄を覚える程だ。とても静かに歌う友部正人 に、僕は「いつまでも少年でいられるかい?」と問い掛けられているようだ。 僕は「何に」気付けばいいんだろう。 「真知子ちゃんに」 友部正人の歌には赤裸々な恋の歌が多い。この歌からは、そこらへんの恋愛 歌にみられるような「僕は君を守る」風な感触はない。男と女は対等だ、そう 云うことにしておこう。この歌は僕の人生を狂わせたかも知れない。 「梅雨どきのブルース」 嘆きの歌と祈りの歌に分けたら、この曲はどっちになるんだろう。どっちに したって自分以外の力の存在を友部は歌う。 「公園のベンチで」 日々の糧を僕は毎月のサラリーで賄っている。当時(高校時代)は、親に養 ってもらってた。それが普通だ。僕は働き出してからもこの歌が耳から離れず 東北まで旅した事がある。夏休みである、念願の公園のベンチで目覚める事が できた。そして、回りには誰も居なかった。憧景と現実がたまに交錯すること があるみたいだ。そこに、意味を見出すか否かだ。                 ひょろり

 残りの曲について、僕なりの補足。

  「酔っぱらい」

 ほとんど脈絡のない歌詞が続く。そのくせ、そこには濃厚な世界がある。
 その上変化のないメロディ、単調なリズム。だから、そこには濃厚な世界がある。
 これって、ボブ・ディランの影響下にある唄なのだろうが、
 でも、でも僕は、目の前にいた友部正人が、好きになってしまった。

  「もしもし」
 
 もしもしと、友部正人に呼びかけられてしまった。
 僕の猫背もまんざら捨てたもんじゃないのかもしれない。
 もしもしと、あんまり僕に呼びかけるものだから、
 僕は、すっかりその気になって、もしもし友部さん、と呼びかけた。

  「まちは裸ですわりこんでいる」

 何かの拍子につい口ずさんでしまう唄である。
 スッピンで唄われているような、なんだか素人臭さあふれる唄ではないか。
 唄う人と聞く人のその差があまりにもなかった時代に、ついフラフラと舞い戻り、
 「僕に口ずさまれた唄と僕が口ずさまれた唄」まるでそんな気がする。
 
 僕が大阪にいて、唐突に、友部正人は「大阪へやって来た」。そんな強烈な出逢い。

                   98/01/21(水) 00:07 あがった(VYT001343@niftyserve.or.jp)

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