『水玉消防団/満天に赤い花びら』

(MIZUTAMA SHOUBOUDAN/MANTEN NI AKAI HANABIRA)

《1985年3月発売,筋肉美女レコードKBR120》
水面 1.泥のナイフ/2.鬼火/3.まな板の上の恋/
   4.HAPPY END/5.しるし/6.満天に赤い花びら
玉面 1.完全な時/2.ゴブリンの目/3.嘘月/4.残像/
   5.夢の街へようこそ/6.窓の外を

 現在も海外のオルタナティブ・シーンにつながる地平で活動を続ける女性ボ ーカリスト・天鼓とカムラ。その2人がかって在籍したバンド・水玉消防団は 2枚のアルバムをリリースしており、本作品は2枚目にあたる。  世間的には、パンクの初期衝動を凝縮したような1st(『乙女の祈りはダ ッダッダ』)の方が評判が良いようであるが、筆者としてはこの2ndの方が、 一聴したとき、その衝撃度が桁違いに高かった。(もちろん1stは1stで また愛着があるのだけれども)。  1stとの大きな違いは、パンク色を内包しつつも、かなり即興に近いノリ が濃くなっていることがあげられる。これはスタッフに竹田賢一やフレッド・ フリスなど錚々たるメンツが加わっていることもあるが、やはりテクニックの 向上ということが看過できない。単純に言って、技術的な向上が彼女達の欲望 をより自由に表出する方向に働いているようだ。一曲一曲の構成はかなり複雑 さを増しているが、どれもエッジは鋭く、内と外とを反転させるような攻撃性 と緊張感に貫かれている。  特筆すべきはやはり天鼓とカムラの「声」−「言葉」だ。それがバンド全体 が醸し出す微妙な息づかいや「間」との見事なまでの共振を果たす。生理的な 感触を伴うアブスクラクトな言葉の連繋は、ときに音と一塊となって地を這う ようにうねる。  これを単純に「呪術的」とかライナーでの蜷川幸雄のように「恐ろしい」と 括ってしまうことはおそらく正確ではないだろう。どんな既成のイメージにも 回収されないだけの欲望の強度、固有性をこのアルバムは体現している。作品 の完成度という点では、同時期のフリクションやノンバンドのものと比肩され ると思う。  日本のパンクシーンの嚆矢「東京ロッカーズ」と相関を持ちながらも、独自 の世界を築き上げていった彼女達。「ギャルバンの走り」などとも言われるが、 メンバーの半数が30を過ぎて初めて楽器を手にしたことなど、何をとっても 驚異だった。その痕跡は、残念ながら今では2枚のレコード盤でしか確認する ことができない。同時代的に見ておけばよかったと思うミュージシャンは個人 的に数あるが、毎回凄まじかったと言われる彼女達のステージを見逃していた のは、特に悔いが残る。作品のCD再発が待たれる。                     1998.1.19 芳仲和彦

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