『マゾンナ/EJACULATION GENERATER』

(MASONNA/EJACULATION GENERATER)

《1996年発売,アルケミーレコードARCD087》
約31分、全1曲の作品。

 マゾンナ(MASONNA)は、関西在住のヤマザキマゾによるソロ・プロジェクト の名義。MADEMOISELLE ANNE SANGLANTE OU NOTRE NYMPHOMANIE AUREOLE(血ま みれのアンヌ嬢 若しくは 我等がニンフォマニアが 後光に包まれる)の頭 文字を取っている。 音は、徹頭徹尾「ノイズ」である。しかし、優れたノイズ作品が、それと聴 いてすぐわかるように、マゾンナのノイズも、他とを峻厳するだけの特徴を備 えている。一般的な誤解があるようだが、ノイズとはただメチャクチャに大音 量を出せばいいということではない。演奏家によってはそれを一つのスタイル として選択する場合もあるだろうが、表現上の十分条件とは決してならない。 むしろ、音の切り取り方や呼吸が問われてくるし、それらが如実に反映してく る。したがって、非常階段の広重氏の言葉をかりれば、安易な奴の出すノイズ は安易なものにしかならない。「音楽」という構造への依拠がないぶんだけ、 「音」に対峙する姿勢がもろに現れてしまうのだ。  近年、前記の非常階段を始め、メルツバウやインキャパシタンツ、ペイン・ ジャークなど、日本のノイズアーチストは世界のトップレベルに位置を占めて いる。このマゾンナも、ソニック・ユースやベック、ノイバウテン、その他海 外のノイズ、デスメタル系のアーチストから高い評価を受けているが、なによ りその音に対する真摯さが、多くのアーチストを魅きよせてやまないのだろう。  これまで何本かのカセット、CDをリリースしているが、本作品はマゾンナ の表現スタイルの頂点を極めた一枚と言える。最初から終わりまで、果てるこ となく続く凶暴さに満ちたディストーション・ノイズと絶叫ボイス。この絶叫 ボイスの凄まじさは筆舌に尽くしがたい。英国のノイズバンド・ホワイトハウ スは、人間の最も攻撃的な器官としての「声」を挙げているが、マゾンナの絶 叫はその最たるものである。幾重にもエフェクターを通じて変形され、フィー ドバックを繰り返しつつ更に増幅され放出される彼の絶叫は、聴くものに戦慄 と恍惚を与える。絶叫とノイズの彼岸に、この世のものとも思えぬ美しさが出 来する。  優れた作品を作り続ける傍ら、彼のもう一つの功績は、ノイズを視覚的なパ フォーマンスと複合させて提示させたことにある。自閉的なイメージとしての ノイズというのは、彼のステージの場合全く当てはまらない。一瞬のうちに全 身で空間を切り裂くような痙攣的ダイナミズムは、観客をただただ唖然とさせ る。鬼気迫るとしか言いようがない彼のライブパフォーマンスを、一度は体験 することをお勧めする。                     1998.1.19 芳仲和彦

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