岡林信康 金色のライオン


アナログ盤 1973年 CBSソニー

CD CBS SONY CD選書 CSCL1249 税込価格 1,500円

  1. あの娘と遠くまで
  2. 君の胸で
  3. まるで男のように
  4. ホビット
  5. ユダヤの英雄盗賊バラバ
  6. 黒いカモシカ
  7. 見捨てられたサラブレッド
  8. どうして二人はこうなるの
  9. 金色のライオン
  10. 26ばんめの秋

自分の人生を振り返ると、「今の自分がこういうことをやっているのは、あの時、あ の出会いがあったからだ」と思える場面がある。今、ぼくは、ギターを弾き、唄をつく り、唄を歌うということを続けている。その原点を辿って見ると、1973年4月。埼玉県の 田舎町の中学1年生だった時の担任の先生が、教室にギターをもってきて「友よ」を歌 っていた・・・あの時に突き当たる。その先生とは、その後、コンタクトも特にないの だが、あの瞬間・・・ 「ああ、なんてギターを弾いて歌うって素敵なんだろう。ぼくもやりたい。」そう思っ たあの瞬間。そこから今のぼくのギターを弾いて歌う・・・ということが始まったのだ と思う。

「岡林」。それは、とてつもないキーワードだったのだ。その後、ぼくは、むさぼる ように追いかけはじめる。その頃、ラジオをよく聴いていた。そしてラジオで流れてい た岡林の新曲。それがこのアルバムの最後を飾る「26ばんめの秋」だった。

この歌は、イメージを喚起する。入院しているおばあちゃん、姪。そして自分といっ しょにいる君。生きていく時に出会う忘れ難いさまざまな瞬間。そしてその瞬間の心の 動き。情景が浮かび上がる。「神様」ではない一人の青年の心象風景がそこに浮かび上 がる。

1974年当時。このアルバムについては新譜ジャーナル(だったと思う)が全面的に特 集しており、さまざまな背景が書かれていた。ぼくは、それを貪り読んだ。あえてシー ンから身をひき、農業に従事することで自らが生きるということを再確認していた岡 林。そのなかから生まれた唄を松本隆が聴き、感銘を受けたという話。そして、短時間 でのレコーディング等々。ひとつひとつがぼくにとっては伝説を読んでいるかのような 話だった。

このアルバムの参加メンバーとしては、矢野誠(叙情的なキーボード。印象的なフレ ーズの数々。)、鈴木慶一(1曲めのピアノが跳ねている。非凡だ。やはり。)、後藤 次利(ベース)、伊藤銀次(ロビー・ロバートソンのような渋いギターだ。)、鈴木 紙、助川健、それから松本隆(ドラムスプロデュース)となっている。

これがトリガーになって、その後ぼくは、はっぴいえんどにはまって、何度も何度も まさに身体にしみ入るほどはっぴいえんどのアルバムを聴いた。しかしながら、この 「金色のライオン」の松本隆のドラムスが最も身体に染みいってくるのだ。このビート とそして彼の言葉のような抒情を感じさせるドラムス。他の人にはなかなか、ああは叩 けまい。

アナログ・レコードは聴きつぶし、CDが出るまでに間があった。はじめて、「26ばん めの秋」を聴いた後、高校生の頃の古典の教師に「あの、『まるで男のように』という 歌がありますね。あれは三島由紀夫のことを歌ったんだと思うんですよ。」という解醍 を聴き、これまた衝撃を受けたり・・・確かに「そう」みたいだ・・・ということで、 この20年あまりにもぼくは折に触れてこのアルバムを聴いている。

はじめて「26ばんめの秋」を聴いた時、「26才になったらぼくはどう感じているのだ ろう。」などと思いに耽っていたものだ。今、36才になった。しかし、それほど立派な 大人になったような気はしない。いずれにせよ、ぼくは、これからも何度も聴くことだ ろう。

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