ル・シャトリエの原理



 <ル・シャトリエの原理>

 平衡状態で,圧力,濃度,温度を変化させると,その変化をやわらげる方向へ平衡は移動する。

 ル・シャトリエの原理は示強性変数の変化に対する性質であり,体積のような示量性変数の変化には適用できない。
 「反応の勢い」は,示強性変数によって決まるからである。

 従って,体積の変化は圧力の変化に置き換えて考える。



 ル・シャトリエはフランスの実験化学者で,これは経験則であるが,以下に証明する。

 <証明>

 A → 2B ΔH=+50kJ(吸熱反応)

 を考える。

 ◆温度一定で,全圧Pを大きくする。

 K=P/P … @
 P=XP,P=XP … A

 ここで,Kは圧平衡定数,XはAのモル分率,XはBのモル分率である。

 @にAを代入して,

 K=P/P=XP/X
 ∴ K/P=X/X … B

 圧平衡定数は温度一定なら一定であり,K/PはPの増加とともに小さくなる。
 BよりXが減って,Xが増える。すなわち,平衡はBが減る方向に移動する。
 分子数が減って,圧力の上昇をやわらげることになる。

 ◆温度・体積(圧力)一定で,Aを増量する。

 K=(N/V)/(N/V)=N/(NV)
 ∴ N/N=KV … C

 Kは一定であるので,CよりNが増えれば,Nも増える。すなわち,Aを増量すると,平衡が移動してBも増える。
 加えた物質を少し減らすように,平衡が移動することになる。

 ◆温度を上昇させる

 平衡定数は温度によって変化するが,温度の依存性は以下のファントホッフ式で表される。

 dlnK/dT=ΔH/RT

 今,ΔH=+50kJ>0 

 したがって,
 dlnK/dT>0

 温度が上昇すると,Kは大きくなる。すなわち,平衡はBの分子数が増える方向に移動する。
 吸熱方向に少し反応が進んで,温度の上昇をやわらげることになる。

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