"La Jollaからのボトルメール" 第三回
"Bottle-Mail from La Jolla" #3

(1998年の"ごっじら")

平岩"Ted"徹夫6


 ひっさしぶりに書いてみましたが、ひんしゅくを買いそう(笑)。

 特にSF研OBright sider(left siderは川端だけ?!)から....


 もうすぐ日本でも公開されるはずだ。1800円も払う必要のないと最初から申し上げよう。ビデオを借りて見るくらいでOK。いままでのゴジラとレベルに違いはない。それでもあまりにもお金と時間がもったいないだろうとおもう。comedyとしては良くできていると考えることもできるが... SF研OB&OGの"特撮"映画好きの人は以下参照不可としたい。特に沢千代さん、見ちゃダメですよ。


 Godzillaゴジラではない。"ごっじら"と発音する。映画の初頭に日本人のじーちゃんが"ごじら....ごじら....(なまってたよーな気もする)と連呼するシーンがあるのだが、私の近くにいた女の子は変な発音といわんばかりに"ごっじら、ごじら?"とつぶやいていた。

 映画の中のごっじらはゴジラとやっぱり違う生物だった。ゴジラは足の裏に釘が刺さっても一時間位しないと痛みを感じない程度ののろまさ加減だったが、こっちではすばらしく高速に動く。CGとは考えられないほどスムーズ&ワイルドである。狸顔のゴジラに比べると、Ailianに近い形をしている。どうみても"ほんものらしい"。つまり現実にいるとすれば、"こうだろう"と思わせられる形状である。

 映像はいいと思うし、細かい描写もとてもいい。特にNYに上陸して歩き回るところはとてもいいと思う。実際に歩いたら確かにこうなるだろーなと思わせる映像だ。すんなり納得(だまされる)できるのである。この手の特殊撮影映画、特撮にもっともたいせつなのは"もっともらしさ"もしくはconvincingだと思う。その点、今回のごっじらは○であろう。しかし...いままで日本の製作者らはなに考えてつくってたんだろうかと深刻に考えさせられてしまう。従来通りの制作方法をつづけて30年か。一作目から映像は進化したどころか退化したとしか思えない映像だった。結局、カメラの使い方も映像をどう構成するかもなにもしらない人たちが映画を作っていたのだろう。5才位までの子供は、人間なり自動車なり描かせると現実とはかなり異なる描写をする。ひどい場合は人間のからだは一本の線だ。在り来りの絵だ。たぶん日本でいままで映画を作っていた人たちの作画能力はその程度でしかないはずだ。想像力もなく、能力もなく、努力することもなかったのだ。


 でもごっじらはやっぱり"ゴジラ"だった。どこで作っても、だれが作っても"ゴジラ"になってしまうのか?。伝統芸というべきか、何というべきか。

 しなりをは....。あいかわらずである。なんでここまでいつもどーりにせにゃならんのか。ゴジラと名乗る場合には、ダイアグラムの基本形状を継承しなければならないという規則でもあるのだろうか。

 まとめてしまえば以下のとおりだろう。

  1. 南国で、原因不明の災害発生。
  2. 本土近辺で災害発生。
  3. 上陸。
  4. 秘密兵器と戦闘(スーパーXとか(笑)。こっちのニュース番組でこいつの映像がでてきたときは日本人としてすごく恥ずかしかった...)。
  5. 終戦(敗戦でも勝利でもなかったりする)。

 こ、これってもしかすると...

  1. ガダルカナル転進(敗退)。
  2. 硫黄島陥落。
  3. 沖縄陥落。
  4. 本土決戦(九州、関東、や号兵器とか(ただの竹やりのこと。陸軍の秘密兵器。スーパーXと酷似))。
  5. 敗戦。

 もしくは

  1. フィリピン沖熱帯低気圧。
  2. 発達して台風となる。
  3. 沖縄から順次上陸。
  4. 各地に災害発生。
  5. 熱帯低気圧にdown grade。

 おおお、なんという一致。ゴジラとは、アメリカ軍と台風がいっしょになったものではないのか。とすれば、一連のゴジラ(屑)映画が同じシナリオであった理由もあきらかになる。こういうシナリオでないと、大災害として納得できないようになっているのだ、日本人にとって。でも、アメリカでは...成立しないのではないか? アメリカ人の本土決戦といったら、独立戦争しかないではないか。メキシコやスペイン相手の戦争は新たな陣地獲りだったのだし。以下、ごっじらのシナリオにしたがって注意点(焦点もしくは笑点)を列挙する。

  1. 太平洋中部で船が沈むなどの災害が発生する。生き残りが変ないきものを見たとの証言が得られる。そこで命名。ゴジラ。理由なし。おっさんのうわごとが名前になってしまうこの不思議さ(コバヤシ丸ってなんだ? だいたい太平洋中部では蟹工船はないんじゃないか? 缶詰はハングルで書かれてるし...) おもいっきりあやしいフランス人。この映画中の悪役はフランスです。

  2. 次に軍が握っている秘密が(観客に対して)明らかにされる。たいしたことないのに秘密なのである。ゴジラはNYに向かうのだが理由はあきらかにされない。アメリカ軍が活動できるところということで、パナマに上陸したことになっている。無理あるなあ。進路図なんて思いっきり無理がある。迂回するなよ、フロリダ半島を。

  3. そこまで知ってたんなら準備しろよ、迎撃しろよと思うのだがあっさりNYに上陸。SSNはNY近くにいたんじゃないのか? まあ、確かにそうしないと話しはすすまない。

  4. ここからの話しはcomedyになる。タイムズスクエアの魚マークは要注意。軍のタコベル作戦の開始である(tacobellのコマーシャルで、free tacosとのはり紙をはって、tacos3つでゴジラを誘き寄せてつかまえようとする犬が登場する)。さかなを使って誘き寄せようってのは一連のゴジラ映画中白眉の傑作であろう。見ていて笑えること間違いなし。
     市街戦、結構問題が多い(笑点が多い)。市内ではアパッチはよう飛べないだろうし。だいたいあんなに機数、アメリカにあったっけ。味方のヘリコプタが飛んでるのに対空(対物)射撃するし。それからハドソン川にSSNは配置できんと思うぞ。なんで有線の魚雷にしないんだ?。真理子にも映画中に"なんで魚雷を自爆できないの?"と聞かれてしまったくらい。F/A-18はASM-64ハープーンなんてミサイル積んでるし。

  5. この後映画は"Alien"から"Aliens"になる。この展開は新鮮。楽しい。でも...F/A-18の対艦ミサイルで攻撃ってオプションはないと思うぞ。爆弾を使いなさいよ。あるでしょ。レーザ誘導の精密攻撃できるやつが。


 アメリカは新しい敵を求めている気がしないでもない。その一例がゴジラであり、恐竜であり、大統領を襲うテロリストであり、外宇宙からくる異星人か流星なのだ。フランス人も嫌いなのだということも良くわかった。

 それではなぜ、ID4はOKで同じ制作スタッフが作ったGodzillaはだめだったのか? 共にアメリカの外敵を描いたものであるはずなのに。

 今回のゴジラの失敗のひとつに、ゴジラ自身を公開まで出さないという方針をとりつつ関連グッズを売ろうとしたことが上げられている(Newsweek)。公開前からお店というお店にゴジラ関連のグッズ(塗り絵とか、カップとか...)がおかれていたが、テレビの予告編でも本人がでてこないのだからなじめないし売れなかったのは当然だろう。何とも矛盾した商売だとは思うけれど、映画が受けなかったこととは関係ない。こちらではDeep Impactの方が売れているのだ。知り合いの夫婦(初老のアメリカ人)絶賛だったのだ。特に大統領がよかったのことだった。

 理由は明確である。ID4Deep Impactにおいて、アメリカは世界を"守った"もしくは"救った"からである。これは重大な要素である。たとえばGodzillaが、Godzillasであって世界のあちこちで悪さをしたとする。大統領が苦悩してアメリカの科学者が秘密兵器を作ってすべて退治できたという話ならばきっと受けたことであろう(最後にさ、大統領がWhite Houseの前で、核兵器をなくそう、これはわれわれの新たなフロンティアなのだ、なーんて映画の最後にコメントすれば感動的な映画になるに違いない)。だから、Worldwideではない、ローカルな災害映画のごっじらは受けないのである。特にアメリカ人には。映画を見に来ていた子供たち(10から14才くらいか?)は、途中で飽きちゃって映画館で走り回ってあそんでたもんな。がらがらだったし。


 アメリカではまったくだめだったとしても、日本ではいままでのゴジラと同程度には評価されるだろう。あれはゴジラではないという反発も多いに違いないが(沢千代さんなんて、その最右翼になることであろう)、毎度の日本人の性質からしてビデオが出回るくらいのころになれば、評価されているにちがいない。Worldwideもしくはアメリカ上陸に失敗したごっじらは、再びlocalな映画として日本で製作されることになるだろう。釣線をどうにかこうにか、ごまかしながら。


「おまけ」

 最近見た映画についてコメントを。基本的にフラストレーション解消のために見ているから、たのしーという一点を中心に考えている。難しいことはなし、ということで。

  1. Lost in Space

     ご存じ、"宇宙家族ロビンソン"のupdate版である。家族の宇宙船が"Jupitor2"だったりとか、打ち上げ時のJupitor2の外形形状が、jupitorとおんなじだったりして細かいところで楽しめる。あとは映画の"のり"についていくだけ。ついていけないとつまらないかもしれない。私としてはとても楽しい映画だと思う。とてもおすすめ。映像もきれいだし。

  2. Deep Impact

     さんざんな評価だが、無難にまとめた映画といえる。テレビの二時間ドラマとして製作されたんじゃないかと思うくらい無難な映画である。しかし...結構アメリカ人には受けている。大統領がすばらしいという話だった。新聞などのコメンテータはそろいもそろって、善人しかでてこないと文句をつけていたが(悪人がでてくりゃいいのかという気もするが)。映画館でみれば感動するだろうが(特に映像)、ちょっと1800円はもったいないかなという気がする。宇宙船の体当りってのは、ヤマト以来の笑点ではあるが。

  3. Mouse Hunt

     こちらも売れなかったけど、楽しい映画である。なんにも悪いところはない。単純に楽しめばいい映画である。フラッバーもそうだが、この手のDisney映画はデートに最適。とにかく1800円で楽しむ点においては最適だと思う。Deep Impactより儲かった気がする映画だと思う。

「今後の予定」

  1. Gone with the wind

     ついに来ました。今週末からです。テレビでも、映画館でも予告編をみたけどすさまじく映像がきれいになっています。いままでpart1のラストシーン(もうぜったい飢えへんでーと宣言するシーン)なんぞ、黒と赤のコントラストが強くなり過ぎ映像が潰れてましたけど、きっちり夕焼け雲がみえるじゃありませんか。これを見に行かずして今年は語れない?!

  2. Armageddon

     Deep Impactが"流星落下メロドラマ"編なら、こいつは"アクション"編。真理子に言わせると、予告編2分で10回以上爆発を見たわ、というほどのアクションだっ(どこが?)。主役がBウイリスならではになるはず。楽しみ。爆発が、じゃなくて、映画がね。月曜日にはLAtimesにA0版サイズのカラーポスターが付録についていました(getしました。だからなんだといわれても)

 X-filesはパス。この手の超常現象物は見てると主人公達の考察の不備、問題点や、研究方法を考えてしまうので(こういう対照実験をすると...とか)どうにも楽しめない。Mulanは良さそうなので(ロードスターみたいに見放された状態で製作されたものはときどき良質だったりする)、"ドリトル先生"(エディーマーフィーが先生だったりする)とペアで見てこよう。

Tetsuo "Ted" Hiraiwa


「東北大学SF研究会OB&OGエッセイ集」に戻る。
「糸納豆EXPRESS・電脳版」に戻る。
「糸納豆ホームページ」に戻る。