私の声が聞こえますか

#1(キングギドラと私)

れん理英子


 最近(きのうだったな)とても悲しい事がありました。普段まったく映画などは見に行かないのですが、幼い頃から大好きだったキングギドラが戻って来ると言うので、91年最初で最後の映画を見に行ったのです。行かなきゃよかった。

 見ましたか? あれはひどすぎる。私はもとからストーリーに期待なんか持ってないから、別に20世紀の終わりに消滅したソビエト連邦がなぜ23世紀に復活しているのかとか、やって来た未来人が本当に正しい素性の者かどうか確かめずに口車に乗る程日本のお偉いさんはバカなのかとか、歴史を変えろなどと言う大事なことを他国のエライさんに相談もしないでやったら日本はますますヒンシュクじゃないかとか、そんな事はどうでもいいんだけど……。許せないのは、あのわけのわからないE.T.まがいの変な動物がキングギドラになった事なんです。確か、キングギドラは単身、大宇宙空間を越えて来た偉大な宇宙怪獣なんですよ!!! それをあんな……。バカにしてます!!! (おまけに、過去に行ってゴジラの素を移動して戻って来たら「ゴジラのかわりにキングギドラが出現しました」だって。何でいままで存在しなかったはずのキングギドラの名前を知ってるんだ?)きっとゴジラをこよなく愛してる人々も、ゴジラの素があんなものだと思うと泣いただろうなぁ。大体、ゴジラやキングギドラの出生の秘密とはとても神聖なもので、人間ごときがあれこれいじくり回していい事じゃないと思う。おまけにトドメは、あのみにくいメカキングギドラ。なにあれ!?バカにしないで!!!

 思わず興奮してしまったけど本当に悲しかったんです。べつにストーリーはあんなゴチャゴチャややこしい物でなくても、くだらない話でいいんです。

 ただキングギドラの誇り高く美しい姿を存分に見ていたかっただけなのに……。

 ひとつだけいい事がありました。入口で配られた小さな袋の中に「当たり」が入っていて、「ゴジラ怪獣軍団クリスタルバージョンセット」が当たりました。この小さな5体の怪獣たちと共に新年を迎えるつもりです。

 じゃ、よいお年を。

[1991年12月31日]


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