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第49回 “ちよちよのぱあ”
 掲載誌 糸納豆EXPRESS Vol.21. No.2.(通巻第37号)
 編集/発行 たこいきおし/蛸井潔
 発行日 2004/05/01


 唐突ではあるが、最近、とあるトレーディング・カード・ゲーム(笑)にハマっている(笑)。まあ、マジック・ザ・ギャザリングのようなものなのだが、はっきりいって、目から鱗が落ちるほど面白い……のだが、カードの題材となっているパソコンゲーム(笑)があまり大きな声では言えないジャンル(笑)のものなので、広く万人にオススメするわけにはいかないのが非常に残念である(笑)。

 ともあれ、今回はその某カード・ゲーム(笑)に関連したマンガを取り上げてみたい。題して「ちよちよのぱあ」ということで……(笑)。

「谷崎先生は生徒と仲がよろしいですなぁ」
「あ 後藤先生。ははは…」
「私も見習いたいですな。
 どんな話をしているのですか?」
「今は「クラスの男子で一番嫌いな奴」でもり上がってました」

 台詞はコミック電撃大王にて連載中のあずまきよひこの4コママンガ『あずまんが大王』より。

 どの辺がその某カード・ゲーム(笑)と関係があるのかというと、その某カード・ゲーム(笑)のキャラクター・カードに2頭身のたいへんにかあいらしいキャラクターを描いているのが、そのあずまきよひこなのである。

 興味を引かれた方はゲームショップで12枚入りのブースターパックの一袋も買ってもらえれば、どのくらいかあいらしいのかわかっていただけると思う。ひとつだけヒントを出しておくと、キーワードは「LFTCG」(笑)である。まあ、興味のない人はこの辺あまり深く追及しないように(笑)。


 閑話休題(笑)。『あずまんが大王』である。

 いや、これほど名が体を表していないマンガも珍しい(笑)。

 具体的には、とある高校の日常生活をおもしろおかしく描いた4コママンガ、ということになるのだが、その日常というのが、なんといったらいいのか、妙に地に足が着いた感じのリアリティがあって、のほほんとして、そこはかとなくおかしいのである(笑)。

 1ページ目に引用したのは、メインキャラクターの一人である女性高校教師、谷崎ゆかり先生がクラスの生徒と楽しそうに談笑しているところに年配の男性教師が通りかかって……というシチュエーションなのだが、なんだか、こんなことって日本のどこかでほんとに起こっていそうな気がしませんか(笑)?(いくらなんでもそりゃないって(笑)?)

 因みに、ゆかり先生はこの高校の出身で、後藤先生のかつての教え子、という設定らしいぞ(笑)。

「いやーちょっと休み時間にゲーム買いに行ってたのよ。プレステの! それがさー。平日なのに並んでんのよー!
 きっと暇な大学生よ。全く! おかげで遅れちゃったじゃない!」

 と、これはある日授業に遅れてきたゆかり先生の主張する「授業に遅れた正当な理由」(笑)。社会人になってこのマイペースぶり(笑)では、学生時代の後藤先生の苦労が忍ばれようというものではないか(笑)。

 で、この高校にはゆかり先生の高校時代の同級生で女性体育教師の黒沢みなも先生という人もいるのだが……

「おはようございます。黒沢です」
「あのねー。ゆかり休むっていってるの。寒いから」
「ちょっとおじゃまします」
「はいはい。たたき起こしてねー」

 黒沢先生は毎朝クルマ通勤の途中でゆかり先生を拾っていくのだが、冬場になるとこんな一幕も……(笑)。いや、きっと高校時代からずっとこんなことをしているんだろうなあ(笑)。因みにゆかり先生は黒沢先生のクルマの中で、学校に着くまで毎日二度寝しているのである(笑)。

 黒沢先生は根が真面目で、生徒からの信頼も厚く、模範的な教師である。ついでにいうと美人なので男子生徒の間でも人気が高い(ゆかり先生は教え子の生徒たちから「色物」とか「しゃべらなければ美人」とかいわれている(笑))。

 とはいえ、同じ職場にゆかり先生がいると……

「にゃもーー。
 にゃも。今日さぁ」
「あのさ。今まじめな話してんのよ」
「にゃも?」
「黒沢みなもだからにゃも」

 と、これは職員室で黒沢先生が生徒を叱っていたところに何も考えずに乱入してきたゆかり先生、という一幕。ゆかり先生があまり「にゃも」「にゃも」呼びまくるもんで(笑)、後日、黒沢先生は生徒の間でも「にゃもちゃん」としてさらに親しまれるようになるのだが、それはまた別の物語(笑)。

 いやまあ、思わず「なんでこんなやつと…(笑)」と思うような相手と腐れ縁が続く、なんて、けっこうありそうな気がしませんか(笑)?


「大阪ってさー。ブルースリーってブルーが名字だと思ってたんだって」
「あーー。あるかもなー」
「スリーが名字だよね」
「お前もバカだな」

 マイペースなゆかり先生と苦労性の黒沢先生のコンビだけでも十二分におかしいのだが(笑)、しかしこの『あずまんが大王』の真骨頂はゆかり先生のクラスの女子生徒たちののほほんとした日常生活の中にこそある。

 この間抜けな会話に登場しているのは、傍若無人なマイペース少女、「とも」こと滝野智、と、いつもぼーっとしている天然ボケ少女、「大阪」こと春日歩、と、「とも」の小学校時代からの幼なじみの「よみ」こと水原暦の3人。

 基本的には、根っからボケの「大阪」と本人はツッコミのつもりなのだがやっぱりボケの「とも」に、「よみ」がツッコミを入れる、という構図が自然とでき上がってしまっている。

 なお、この会話にはさらに続きがあって……

「なんだよスリーって。3か?
 青3号? 正義のヒーローかなんかか?」
「そーや。1号と2号はどないしたんや?」
…………
「ブルーファイブあたりがジャッキーチェンちゃうかな?」

 ……と、よみのツッコミに対してさらに大阪がボケ倒す、というオチがつくのであった(笑)。

 因みに、大阪は「大阪から来たので『大阪』」という身もふたもないあだ名(笑)をつけられてしまっているのだが(命名者はとも)、誰も本名を呼んでくれないばかりか、1年も経つと本名はほとんど忘れ去られてしまっている(笑)。

 そういえば、東北大SF研でも「岸和田から来たので『岸和田』」という身もふたもないあだ名(笑)をつけられたやつがいたっけ(笑)。まあ、大友克洋デザインの東丈に似ているので「ハルマゲドンの『はるちゃん』」なんて呼ばれていたやつもいたが(笑)。しかしまあ、この手の「あだ名しか呼ばれないので誰も本名を知らない(笑)」って、SFファンダムではよくある話よね(笑)。

「あそこ、ネコの肉使ってるってホント?」
「えーー!? そうなん?」
「うそに決まってんだろ。そんなうわさ」
「でも。意外とうまいな、ネコ」
「そやなー」

 これまたこの3人のやりとりから(笑)。このあたりが先に「妙に地に足が着いた感じのリアリティ」と呼んだ所以なのであるが、あだ名の話にしても、「ネコの肉」の話にしても、なんだか、今までに自分の身の回りでいかにもあったような気がしませんか(笑)? いや、東北大学の学生の間では「びっくりドンキーのハンバーグはミミズの肉を使っている」という都市伝説があったものである(笑)。そういえば、農学部の同級生でそれを鵜呑みに信じていたやつがいたっけ(笑)。

 と、まあ、面白いのでこの3人のやりとりばかり引用してしまったが、同じクラスには長身でナイスバディで見た目がちょっと怖いけど根は少女趣味(笑)の榊さんとか、その榊さんにひそかにあこがれているかおりちゃんとか、10歳なんだけどとても頭がいいので高校に編入してきたこども高校生のちよちゃんとか、まだまだ楽しいキャラクターが目白押しなのである(笑)。


 さて、そのこども高校生のちよちゃんであるが、これこそ『あずまんが大王』が生んだ20世紀最後(笑)のスーパースターといって過言ではない(笑)。キャラクターグッズにはちよちゃんの頭型のクッションなんてのもあるし(笑)、現在東京都内ではちよちゃんの頭を大きく描いた『あずまんが大王』バスなんてものも走っているそうである(笑)。

「ちよちゃんてなんでもできるなぁー。苦手なものないでしょ」
「そんな、ありますよ。えーと…
 あ、早口ことばがにがてです。
 バスガスばすはす。
 バスがすばくはく。
 がすばくはくはく。
 えへへ。」
「あーーっくそう! かわいいなあもう!」

 そのちよちゃん。前述の通り若干10歳の天才少女なのであるが、成績が学年でもトップクラスなのは当然(笑)として、家に帰れば大邸宅のお嬢さま、その割にはとても礼儀正しいし、日常の言動はごく普通の10歳のこども。しかして毎日のお弁当は毎朝自分で作っているし、家の食事当番も両親と分担でやっていたりするという、本物の女子高生(笑)はだしの模範的女子高生なのである(笑)。

 とはいえ、根は10歳のこども、そのこどもらしさと周囲の女子高生たちとの微妙なギャップが、なんとも絶妙(笑)なのである(笑)。

 因みに、前ページの3人にさらにちよちゃんがからむとこんな感じ(笑)。

「ほら12月の事なんつったけ。し、しらす?」
「あ〜?」
「それをいうなら「しわす」ですよー」
「あ」
「だめだよちよちゃーん。ツッコミとったらー」
「そーや。それはあかん」
「あ、あの…すみません!」
「あいつらの言う事をまじめに聞くな」

 と、まあ、そんなこんなですっかり『あずまんが大王』にめろめろ状態のたこいであるが、ふと我に返ったときに、このめろめろぶりが何か他のマンガにハマった時と似ていることに気がついたのである。おわかりであろうか(笑)? ゆうきまさみ『究極超人あ〜る』である。

 高校を舞台に、個性豊かなキャラクターが繰り広げるちょっとまぬけな日常生活。多少の荒唐無稽な設定も、圧倒的な日常生活のリアリティの中に取り込まれて日常の一部となっている世界。そういえば、マンガの外の世界に対して時間の流れがリアルタイムで進行しているという点も共通している(そう。『あずまんが大王』の世界ではちゃんとクラス替えもあるし、ちよちゃんも11歳になったりするのである(笑))。

 あずまきよひこの初のコミックスがアニメOVAのパロディを集めた『あずまんが』……ということまで考え合わせると、この指摘ってけっこうもっともらしい気がするんだけど(笑)。やっぱり面白いパロディを描くマンガ家って、日常の些細なことに関する観察眼が卓越している、ということなんじゃないかな〜、なんてね(笑)。

 昔『あ〜る』をネタにしたとき、「ちゃんと時間が流れているユートピア『ぱらだいす』」という概念を紹介したことがあったが(笑)、『あずまんが大王』はその「ぱらだいす」ジャンル(そんなジャンルがあるのか(笑)?)の久々の大ヒットといっていいのではないかと思う今日この頃である(笑)。


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