お楽しみはこれからだッ!!
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第23回 “その後の仁義なき橋本みつる”
 掲載誌 TORANU TあNUKI 144〜146号
 (通巻第49号)
 編集/発行 渡辺英樹・渡辺睦夫/アンビヴァレンス
 発行日 1992/10/31


 『ゲッターロボ號』は少年キャプテン誌上では常に巻末を独走している。きっと人気投票では最下位なのに違いあるまい(笑)。心外である(笑)。そういえば単行本もちゃんと置いてある書店はほとんどない(静岡では)。『マジン・サーガ』はというと、日本全国どこの書店にいっても山のよーにあふれかえっている。まあ、集英社と徳間書店の営業力の差もあるとは思うが、相対的にいって、『ゲッター』がぜーんぜん売れていないのは間違いあるまい(笑)。掲載誌の知名度自体も雲泥の差なんだから当然といえば当然だが、実に心外である(笑)。

 という話とはまったく関係なく、今回のテーマは“その後の仁義なき橋本みつる”だったりする。

「わざわざ来る事なかったんだ。帰っていいぞ。恵理は俺が捜すから。お前は捜すなよ」
「俺も捜します。見つけたら家に連絡ください」
「お前は捜すな。ムシが好かない。会ってないって言った時の、
 顔が気にくわない」

 花とゆめPLANET増刊1992年9月1日号掲載の橋本みつる「GET DOWN」。賢明な読者諸君は気がついたかもしれないが、前回取り上げた「歓迎と別離」と掲載誌の日付けが同じである。この間、一応花とゆめの本誌と増刊の目次は常にチェックしていたから、見落としがなければ、実に1年振りの新作、ということになる(笑)。もしかすると来年はないかもしれない(笑)。これが最後の作品になったりして。心配だなあ(笑)。


 前にも、花とゆめの増刊でたまに見かけてたちょっと変わったマンガ家がいた。秋月由利ってんだけど、なんていうか、メタファーだらけの一風変わったマンガを描く人だった。那州雪絵の短編「雪女」と同じ増刊号に載ってた「袋かぶり」という話なんか、なかなかヘンな話だった。とある女子高に、いつも頭に紙袋かぶってる女の子が転校してくる。主人公はその袋が気になって仕方ないんだけど、周りの同級生たちは全然気にしないで普通につきあってる。クラスも部活も一緒なんだけど何かと自分に対抗してくるように思えて、何だか気に入らない。そんなある日、怪我をした彼女を家まで送ってくことになるんだけど……。

 ある人のちょっとした癖とか言動とか気になることってのはあると思う。それが自分にとっては凄く気になるけど、気にしない人にはどおってことない、なんてえのは、本当によくある。“袋かぶり”というのはそんなことを象徴しているのか。もっとも、こーゆー解釈をしてどうこうとかいうよりも、作品そのものの雰囲気が何とも奇妙で、いい味出していた。いい味出してたんだけど、その作品以来、この人は姿を消してしまった(笑)。単行本で出ることはないだろうなあ、これも。

 そーゆー前例(?)があるだけに、つい心配してしまう(笑)。この手の人ってどう考えてもマンガで生計立ててる筈がないから、いつマンガ家やめてもおかしくはないんだよね(笑)。

「小野江君ですね。
 家の娘を泣かせてくださいましてどうも」
「す、すみません…」

 今回はGF(ガールフレンド)のおとうさんの台詞特集です(笑)。

 この会話は僕の一番好きな橋本みつるの作品「DANCE AWAY」より。“昨日女の子に好きだって言った。一世一代の大告白(のつもり)だった”というのが冒頭のモノローグ。前にも書いたけど、この人の作品の中の“感情”は、嘘っぽくなくて、なんか、いいんである。そーゆーナマの感情のカタマリがポンポンと無造作に羅列されてる感じ。

 告白したのはいいけど、当の女の子はこともあろうにモスクワに転校してしまうという。それでも自分の感情を止められなくなっちゃった少年は一所懸命頑張って、女の子の気持ちを動かすことに成功する。そして別れの日がやってきた。

 …で、この会話になる訳。好きな女の子がいなくなった後のことなんか考えずに突っ走っちゃった少年は、この時初めて“いなくなる側の”女の子の気持ちについてころっと失念していたことに気づく。ま、この後なんともほのぼのしたオチ(?)がついて、このお話は幸福感に包まれて幕を閉じるのであった(笑)。

 うん、何回読み返してもいい話だなあ(笑)。

 で、今回の「GET DOWN」はというと……。しまったスペースがない(笑)。秋月由利の話なんかしたからだな(笑)。まあ、高校生の少年相手に大人げないことをいうお父さんだったりするのである。全体に、以前の作品より大人びた雰囲気があってなかなか悪くない。次作も楽しみである。と、いいたいところだけど、次作なんてあるんだろうか。また1年後かなあ(笑)。

 それではまた来年(笑)。このTT誌上で。“帰ってきた橋本みつる(笑)”でまたお会いしましょう(笑)。


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