お楽しみはこれからだッ!!
YOU AIN'T READ NOTHIN' YET !!

第10回 “『ママ』ふたたび”
 掲載誌 TORANU TあNUKI 128〜131号
 (通巻第44号)
 編集/発行 渡辺英樹・渡辺睦夫/アンビヴァレンス
 発行日 1990/7/31


 おかげさまで連載第10回を迎えることができました、“お楽しみはこれからだッ!!”。今回は凄いぞ。連載10回記念でハイテクを導入したのだ。そう! この原稿は一太郎で書いているのである。は? どこも変わっていないじゃないかって? いや(笑)、だからね(笑)。ワープロで書いて、手書きで清書しているわけなんだな、これが(笑)。

 えーと(笑)。それで今回のテーマは“『ママ』ふたたび”。

「帰ろうね。魔子ちゃん。みんなまってる。
 校長先生も。おばさんも。
 美加ちゃんも小太郎さんも服部くんも。
 うちのダディもマミィもじっちゃんも。
 このぼくもまってる!!」

 “『ママ』ふたたび”などと言いながら、いきなり『さすがの猿飛』だったりして(笑)。しかしTT誌上では、細野不二彦ばかりとりあげているな(笑)。このコラムをTTでしか読んでない人も大勢(?)いると思うけど、僕のことを熱烈な細野不二彦ファンと思ってしまうかもしれないな(笑)。別にそういう訳じゃないんだけど。その証拠に、僕はつい最近まで『さすがの猿飛』の最終エピソードを読んだことがなかった。コメディのマンガにありがちな傾向だけど、ラストの方になると変にシリアスを気どっちゃうということがよくある。連載当時はそういう風潮が少しうっとおしいと思っていたのでついつい読まないままに終わっていたのであった。でも今、復刻されたワイド版を読んでみると、けっこう泣かせるんだよね、これが(笑)。


「オレなら今の男の方をすすめるな!」
「え?」
「今の仕事で苦労させられてるからな……これでも人間を見る目は肥えたつもりだ。
 男は二通りさ。
 どうにかこうにかして一人前になれるやつと……一生ガキのまんまのやつ!」
「な……なんの話…?」
「あの園長はガキのクチだよ!! オレにはわかる!」

 と、いう訳で本題の『ママ』。

 この会話は、留太郎の誕生日に久し振りに対面した、みさをとみさをの別れたダンナ竹林賢との会話なんだけど、最近のヤングサンデー誌上の『ママ』の展開は、まさにこの会話で予見されていた通りの展開である。

 みさをに振られ、高校をやめ、調理師としての道を選択し、恵とくっつき、なんだかんだしながらも少しずつ成長し、“どうにかこうにかして一人前に”なりつつある萩原行がいつの間にかみさをにとって“気になる存在”になってきている。こうして書いていても思わず赤面してしまいそうになるほどクサい展開だ(笑)。

 いやあ泥沼泥沼(笑)。

 さて、前回『ママ』をとりあげたとき、『ママ』は『めぞん一刻』のアンチテーゼだ、とかなんとか大上段に振りかぶったことを書いた覚えがあるのだけど、現実問題として、『ママ』を読んでいる読者の中で、そんなことを考えて読んでいる奴がいるか、っていうと、あやしいところなんじゃないかと思う。

 『ママ』が今どのくらいの数の読者に読まれているのかわからないけど、そのうちの相当数はかつて『めぞん』の熱心な読者だった、と、しよう。おそらく彼は、『めぞん』を愛読していたのと全く同じ感覚で『ママ』を読んでいるに違いない。彼は“終わらない三角関係”の世界に溺れることに無上の幸福を感じている。『ママ』と『めぞん』の差は、三角関係のこじれ方がちょっとばかり現実的になった、という程度に過ぎない……。

 僕自身、8年くらい前は『めぞん』をかなりのめり込んで耽読していた記憶がある。実をいうと、『ママ』を読み始めたきっかけというのが、佐倉恵のキャラクターに惚れてしまったという単純な理由だったりするんだから、全く我ながら、よく偉そうなことを書けたものである(笑)。

 まさにその点に関して、とあるファンジン(C牧眞司)の誌上で、津田文夫氏から指摘を受けた。津田氏は、五代が男の子のカリカチュアであるのに対し、萩原行は男の子そのものである、として前回の僕の結論を肯定した上で、『ママ』を『めぞん』のエピゴーネンとして評価する、という立場をとっている。

 『ママ』の中には、『めぞん』に対するアンチテーゼとして機能している部分と、エピゴーネンとして機能している部分、二つの要素が混在している。同じ『ママ』というマンガを読んでいながら、アンチテーゼの部分を評価する人間と、エピゴーネンの部分を評価する人間の二通りが存在するというのは、なかなか面白いことだと思う。

 さらに津田氏の指摘によると、『ママ』の物語の中で、佐倉恵という存在はポルノ、それも『めぞん』のポルノとは全く別の、“男”の視点から見たポルノになっている、とのこと

 まあ、なんというか、なかなか痛いところを突かれたものではある(笑)。


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