【TAを使う、その6】【人生脚本】【TAを使う、その6】人生脚本と呼ばれている方法を用いて、シェークスピアの四大悲劇を題材に、人生脚本の縛りに囚われている人物を捜してみよう。 『リア王』■粗筋 ブリテンの老王リアは退位を決意し、国を3分して3人の娘に譲ろうとする。 言葉巧みに父王を喜ばせる長女と次女に対し、愛を言葉に できない末娘コーディリアはリアを怒らせて勘当されてしまう。 フランス王はむしろ感動してコーディリアを王妃に迎える。 リアは約束通り2人の娘を頼るが、裏切られて荒野をさまよい、 狂気にとりつかれていく。 2人の娘と不倫関係にあるエドマンド率いるブリテン軍は、 進撃してきたフランス軍を迎え撃つ。 軍とともにドーヴァーに上陸したコーディリアはリアと再会するも、 捕縛されて殺され、娘の遺体を抱くリアは絶叫して死ぬ。 ■リア王という人物像 リア王は、高齢者の認知障碍をおこしている。そうでなければ、自信過剰な 自分の失敗や判断ミスを認められない、老人特有の頑固者でしかない。 自らのミスを知りながら、自分が認めないが為に死んで行った人々と向かい合うとき、 狂気の檻に逃げ込まざる得ないのだろう。それ以外は死ぬしか無い。 ただのくそ爺。と私はおもう。 『ハムレット』■粗筋 デンマークで国王が急死し、弟のクローディアスが 残された王妃と結婚して王座に就く。 王子ハムレットには、父の亡霊が現れて自分は弟に毒殺されたのだと語る。 狂気を装うことにしたハムレットは恋人オフィーリアに「尼寺へ行け」 などと言い、隠れていたその父、宰相ポローニアスを刺し殺す。 オフィーリアは発狂、やがて水死し、激怒した兄のレアティーズと ハムレットとに剣術試合が仕組まれる。 毒入りの剣と葡萄酒を用いたこの試合で両剣士と王夫妻はすべて死ぬ。 ■ハムレットという人物像 ハムレットは、叔父を父殺しとして仇を討とうとする。 しかし、なぜクローディアスが父を殺したのか。 その謎と殺せる時に殺さなかったのは何故か。 老舗の道楽主人を追い出し、その妻を娶って弟が老舗の主人になるというのは、 歌舞伎や文楽の世話物そのもの。優柔不断の若旦那っぽさが抜けない。 『マクベス』■粗筋スコットランドの将軍マクベスは、戦功により、ダンカン国王から コーダー領主の地位を授けられる。 が、荒野で出会った3人の魔女の「万歳、マクベス、いずれは王になる お方」という予言と、マクベス夫人の叱咤激励に導かれ、ダンカン王暗殺を 計画・実行する。 2人の王子は身の危険を感じて国外へ逃亡し、マクベスは王座に就く。 しかし、「王にはならないが、王を生み出す」と魔女に予言されていた バンクォーに不安を抱き、これも暗殺。その後、殺したバンクォーの幻影を 見るなど、心を乱すマクベスが3人の魔女に再び予言を乞うと、 「マクダフに用心しろ」「女から生まれたものはマクベスを倒せない」 「バーナムの大森林がダンシネインの丘に攻め上って来なければ」 などと予言される。 貴族マクダフがイングランドへ亡命すると、マクベスはその城を奇襲し、 妻子をも殺させる。 イングランドでマクダフは、マルカム王子とマクベス討伐を画策。 マクベスの味方は次々に寝返り、マクベス夫人は夢遊病で狂死。 イングランド軍は、マクベスのいるダンシネイン城へ、バーナムの森が 実際に向かってくるように見せかけつつ襲来する。 ついにマクベスと対決したマクダフは、おれは「母の腹を破って出てきた」 とうそぶいてマクベスの首を取る。マルカム王子が新王に即位する。 ■マクベスという人物像 勇敢だが小心者のマクベスのイメージが湧いてくる。 自分の内なる声という人も居るが、魔女が居なければ ただ使われるばかりの中堅管理職。 しかし乗っ取りをした後は、不安と恐れでまともに幸せに 生きて行けなくなる。 『オセロ』■粗筋 ヴェニスの黒人将軍オセロは美しい新妻デズデモーナを伴って キプロス島に総督として赴任。 旗手イアーゴは、オセロが自分でなくキャシオを副官に昇格させたことを 恨み、このキャシオとデズデモーナとの姦通をでっち上げようとたくらむ。 イアーゴの仕組んだ刃傷沙汰で副官を解任されたキャシオにイアーゴ は、デスデモーナに頼みこめば復職も可能だとささやく。 イアーゴはさらに、オセロを導いてキャシオがデズデモーナに訴える現場を 見せたり、妻のエミリアが侍女を務めていることを利用して デズデモーナが落としたハンカチを手に入れてキャシオの宿に置いたりする。 こうした計略を通して、徐々にオセロが妻の姦通を確信するよう仕向ける。 ついにオセロはイアーゴに、副官はお前だ、キャシオを殺せと命じ、 自分は妻を絞め殺す。 その直後、エミリアが真相をすべて暴露し、イアーゴは妻を刺し殺して 逮捕され、オセロは自殺する。 ■オセロという人物像 人種差別の犠牲か、脅迫的な上昇志向と本来持っている白人への 不信感。裏返せば、自分自身への不安から、人を信頼しきれない。 これこそ人生脚本の繰り返しの悲劇なのだろう。 |
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