【演技を創ろう2】

演技を創りだしていくために


H.登場人物の、舞台の始まりまでの物語を作る。出来る限り台本の記述を用いて。

●グロォリア・ラ・グリーン、本名 ベシィ・グリーンの歴史
1912年頃誕生。ブルーマウンテンで、高校まで過ごす。卒業後ニューヨークへ行き、
ブロードウェイに端役でも出演できるようになる。
10ヶ月前、病気療養のためブルーマウンテンに戻る。
母親・・・・考えてみよう。

1.登場人物の性格を台本を分析して作る。出来る限り台本の記述を用いて。
●ベシィの性格は・・(あなたが考えてみてください。)
●母親の性格は・・・(あなたが考えてみてください。)

2.《演技を創ろう》
○幕が上がるまでの登場人物の出来事を想像してみよう。
ベシィは幕が上がるまで、何をしていたのだろう。
今日は小雨降る中、朝いつものようにダンスレッスンした後、昼から男友達と車で、メリディアンまで遊びに行って、ビルボードを買って帰ってきた。
往復10時間。酔っぱらい運転等の取締のなかった時代、ビールなどを飲みながらのドライブをしてきた。

○母は何をしていたのだろう。(あなたが考えてみてください。)

○シーン1(No.1からNo.17まで)のそれぞれのビジョン。
(その時点でそれぞれが未来に「こうなる、こうなるといい、この未来を作る、」とイメージする未来像)

グロォリアのビジョン・・家に帰ってきた時に、その心を占めていたビジョン・・・#92に記されているような想い
どんな未来を思い描いていたか、想像してみましょう。どんな気分で居たのだろうか。

母親のビジョン・・娘の帰宅を待ちながら、その心を占めていたビジョン・・・#58に記されているような想い
どんな未来を思い描いていたか、想像してみましょう。どんな気分で居たのだろうか。

○台詞ナンバーごとの想像される出来事。

幕が上がって、娘の帰宅を『物語る物音』が聞こえてきます。
「帰宅を物語る物音」とはどんな物音なんだろう。
例えば、
自動車が近づいて止まる音。
自動車のドアが開いて、雨の中おりてくる二人の足音。
家の入り口に立ち止まる音。
ドアが開けられて、男女が抱き合う音。
#1。母が娘の声を聞いて、咳払いをした。
#2。ドアが閉められる音。短い沈黙、続いて男の笑い声。
娘は開けかけた家のドアを閉めて、男とキスをし、男を見送る。
車のドアが閉まって、走り去る音。
家のドアがまた開いて娘は酔っぱらって楽しげにウキウキと入ってくる。
初めて娘が舞台に登場します。
但し当然母親が起きていることに気付いている。
母は気持ちを抑えて<どんな気持ちだろうか、考えてみよう>、じっと待っている。
娘は手のビルボードを、テープルの上に投げ出す。


○演技つくりのための一歩
・さあ、あなたが午前2時すぎに、家族が起きて待っている家に帰って来たら、
どのように家に入ってきて、どんな言葉をどのように声をかけるだろう?


・自分が発する言葉と、家に居る人が返してくる言葉、(親・兄弟・姉妹・旦那様・奥様など)


・ベシィはなぜ#3のように声をかけたのだろう?
(#3娘 あら、お茶っぴき?)


・あなたとベシィの違いは、なんだろう。


・あなたがベシィのコンデション(感情や気分、体調)と似たような経験をした事はなかったか、自分の過去に探してみよう。


・感情の記憶を使って、家に帰ってきて#3を声にしてみると、どうなるだろう。


・母親役から、どう感じたか、フィードバックを受けよう。


・あなたは、今の日本の一般的と考えられる母親が、どのような返事をすると思う?


・なぜ母親は#4のように応えたのだろう?
(#4母 お前、何処へ行ってたんだい?)


・あなたは、母親の#4の言葉で、何を感じる?


・ベシィは、母親の#4の言葉で、何を感じた?


・ベシィは、なぜまっすぐ姿見に向かって行って#5のように答えたのだろう。
(#5娘 (まっすぐ姿見に寄ってゆく)変り映えもしないとこ。)
・・・どんな意味合いだろう。


・あなただったら、#5にどのような意味合いを持たせるのかな?


・ベシィとあなたの違いはなんだろう。


その結果#5は、母親にどのように感じられただろうか。


○演技つくりのための一歩 ポドテキスト
ポドの事例(これは正解例ではありません。こんな事も考えられるとの一例です)

#1. 娘》(舞台外で)キスなど繰り返し、名残惜しく抱きしめられて、やんわりと拒絶する
(母は咳払いをして起きている事を知らせつつ、ひどく体をぴんとさせて緊張している。)

#2. 娘》シーッ(ドアが外から閉められる。短い沈黙、続いて男の笑い声) 今夜のお礼と相手への褒め言葉
(彼女が入って来る。グロォリアは痩せぎす、熱っぽい顔つきのブロンドで、どぎつい感じの化粧が舞台生活を物語っている。
「素晴しい晴れ着」の一つであるくたびれた白いサテンのイブニング・ドレスを着て、
手にビルボードを一部持っているが、それをテープルの上に投げ出す。)

#3. 娘》待っていることがわかっていた、とからかう、母親への気持ちを乗り越えて?

#4. 母》どこへ行っていたか尋ねる・・こんなに遅く迄外を出歩いて・・押さえた怒り、非難が感じられる

#5. 娘》(まっすぐ姿見に寄ってゆく)質問をはぐらかす・・言う必要がない、母には関係ない。

#6. 母》気になる男の素性を尋ねる

#7. 娘》(姿見に映った自分を熱っぽく眺める)とぼける。

#8. 母》おまえのやっていることは、無意味なことなんだよ。

#9. 娘》わかってるわよ、しつこく言わないで。
#10. 母》なぜ落ち着いてくれないの?

#11. 娘》え?(いきなり鏡からふり返る)あたしはもうその話はしたくない

#12. 母》どうして男と遊びまわるのか?

#13. 娘》わかったわよ、お母さんと一日家にはいたくないのよ。

#14. 母》なに言ってんだか、声だって掠れて疲れきっているじゃないか。

#15. 娘》ほっといてよ、いつもどおりよ!

#16. 母》もっと賢く過ごせないのかい?

#17. 娘》わたしは十分自分のやっていることを分かっているわ。ほっといて頂戴。 

○演技つくりのための一歩 
やるべきこと、考えておくこと、理解しておく事、全てわかってきた。

雨の降る暗い夜道、ほの暗い明かりが漏れてくる一軒家に、
君は車で帰って来た。

さあ台本を置いて、稽古をしよう。




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