【演出の独り言】

《演出の現場》

■演出の緊張

演出が台本片手に役者さん達と向かい合う時、何度かご一緒した役者さんだと それほどでも無いのだけれど、かなり緊張しています。
聞いた話ですが、どうも役者さん達も、初めての演出には、結構緊張するらしい。
この緊張感が好きと言う人もいるかも知れないけれど、大抵の演出は
自分が緊張するのに馴れていないから、顔なじみのある役者さん達と仕事をしたがる傾向にある。
私は、役者さん達より、初顔合わせのスタッフに緊張する。
私はほとんどスタッフの仕事を知らないから、自分の要求がどの程度分かってもらえるか、
実現してもらえるか、楽しい提案があるか、などをスタッフに求めてしまう。
それでスタッフには舞台稽古でかなりキレル時がある。
要請した事を全く理解されていないと知るのが、情けない事に舞台稽古になってしまうからだ。
これは結局自分が悪いのだけれど、通し稽古ではそこそこ雰囲気出してくれるので、
安心していると大やけどする。まあ、この失敗には懲りないなァ。何度も繰り返している。

緊張するよりしない方が楽だから、わたしはスタッフは馴染みに付きあって欲しいと思う。
役者さん達とは、稽古の中で馴染むけれど、自分の半身として
ほとんど任せっきりのスタッフの仕事は、急ぎ働きの時程、
出来の予想がつく馴染みに仕上げて欲しいと思うな。
急ぎ働きといえば、若い演出に創作作法としてアドバイスしたい。
芝居を早く仕上げようと思う時には、逆に辛抱が必要なのを分かって欲しい。
読み合わせを辛抱強くやってみるとか、セリフの入っていない時から立ち稽古するとか、
作り上げる芝居の世界に、役者さん達がしっかり馴染んでいくのを待つ事が、
結局芝居を早く立ち上げるのに役立つ。
焦ってミザンスツェーナを決め打ちしたりセリフの言い回しや物言いを
振り付けしたりしない方が、最終的に新鮮な舞台を観客に提供できる。
まあ、何ごとも辛抱なのですね。
口の悪い役者は怠惰の演出、無能の演出なんて言うけれど、
「果報は寝て待て」って言うじゃない?!


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