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赤外写真を勉強する
ツヅラ岩
 赤外写真について一般的な解説を書こうとしても、私も本で読んだ程度の知識しか持ち合わせていないので、 優れたものにはならないと思われます.そこで、解説のあるページのリンクだけ載せることにしました.
 これから初めて赤外写真を撮ってみようと、初歩的な知識から身につけたいと考えるのであればリンクを辿ってみてください.
Infrared Characteristics
一般的な基礎知識が充実.赤外フィルムといわれているものでも、それぞれの製品によって特色があることがわかります.
Spectral Sensitivity of B&W Infrared Film
さまざまなフィルターの透過性、さまざまなフィルムの感度特性はこのページが参考になります.
赤外写真入門 国産赤外フィルムを出しているコニカの提供する赤外写真の入門.

赤外写真に関連した個人のサイト
 ネット上には優れた個人サイトが存在する.ページ作者や投稿者の経験を元にした 情報などは、メーカが提供するデータシートや市販されている書物と異なり、未確定な部分を含めて実用的だ. Marco Pauck's Infrared Photography ? Some Personal Experiences
 中でも、各種のフィルムを比較したページが中でもすごい. フィルムを選ぶために見入ってしまうのでがないだろうか.

A Comparison of B/W Infrared Films


WJ's Photo Homepage このサイトの情報も膨大だ.赤外写真を撮るにあたって疑問に感じることがあったら先ず見てみるべきだろう.
Homepage of Jaap Los

book  また、入門書としては、Amherst Media社から2001年出版されたAdvanced infrared photography handbookをお薦めします. 私も先日この本を購入し、十分知っているつもりでいた赤外写真も、意外と知識不足であることに気づかされま した.
Advanced infrared photography handbook
赤外フィルム
films製造元が公表しているデータでまずは参考にすべし.
このような情報をいとも簡単に得られることに、 インターネットの力量を実感する.私が写真を始めたころは、書籍に掲載されていたわずかな知識を元に試行錯誤でやらざるをえ なかった.そのころ、データシートなるものは、専門家の使うものと考えていて、メーカに請求しようなどと私は考えもしなかったので ある.
赤外フィルム
HIE HIE
 赤外フィルムといえばまずはこのフィルムからといった感じの製品.特殊用途用の雰囲気が強く、メーカーはCIの異なるさまざまな現像液のデータを公表している. 全暗黒下での装填など使いやすいフィルムではない.コダックの製品だけに入手性は比較的良い.コニカ赤外が応じなくなる800nm以上の赤外域で撮影する場合の選択肢.
maco820 Maco 820c
 2000年に発売されたという新製品.HIEとKonicaの間を狙った製品という感じのもので、 科学向けなど特殊用途ではHIEに代わるとは思えないので、どのようなマーケットを狙っているのか不明. 赤外写真愛好者を目的に発売されているようにさえも思われる製品だ.
konika コニカ赤外750
 750nmに感度ピークがあるという国産品.入手なしやすい上、きわめて使いやすい. 海外でも販売されていて、数少ない赤外フィルムのバリエーションの一つとして愛用者もいるようだ.24枚撮りだけであったり、年に一回だけ製造される点など風変わりなフィルムでもある.
フィルムによる効果を比較するため、私の撮影した写真を参考までに載せて おきました。使用したフィルターはすべてR60です.
HIE
Konica 750
kasa
wanakura
Ilford SFX200
セミ赤外フィルム
どちらかというと一般の白黒フィルムであるが、赤外域まで感光するようになっているもの.利点は通常のモノクロフィルム同様に扱えて極めて容易.効果は緩く、どぎつくない.
ILFORD SFX200セミ赤外フィルムで、720nmにピークを持ち740nmあたりまで感度をもつ特性のフィルム. 日本でも発売されていたので、私も一時期使用していたのだが、いつしか店頭から消え最近は入手できなくなってしまった.R60フィルターとともに通常のモノクロフィルムの感覚で使用していたので、赤外らしい効果はなかったが、 専用のフィルターは、R72相当であるのでかなりのwood effectが現れるのではないだろうか。 海外では今でも販売されているが、輸入元の中外写真薬品のページにも記載がないことから、輸入がやめられたように思われる.
Agfapan APX 200 Sやはり、セミ赤外フィルム. アグファ社が製造している.同社のwebにはsurveillance purposesとあり特殊用途用である.400sといった 製品も存在している.データシートを見るかぎり特性はそれほど興味深いものではないが、試してみたい気のするフィルムである.35mm、17mの 長尺で販売されているようだが簡単には入手できそうにない.
 ところで、セミ赤外フィルムの用途は意外にもこのtraffic surveillanceにあるようだ.Pauck氏のwebによれば、Agfapan APX 200 S類似のフィルムに、Ilford SP816T、Kodak TSF SO-033などが あるそうだ.前者の特性は同社のSFX200にきわめて類似しているというから特に入手してみようとは思えない.後者Kodak TSF SO-033は700nmあたりまでしか感度を有していないというから、これもあえて購入して検討するには値しないのではないだろうか.
氏のwebのテストの細かさは並外れているから、フィルムを選ぶ前に一読をお薦めする.

フィルター
 Wrattenのようにゼラチンやポリエステルで作られたフィルターと、ガラスやプラスチックで 作られリングでレンズに固定できるものある.HOYA、Schott-Glassなどのメーカ がそれぞれ独自に番号をつけているので、どれを選んでよいのかわかりにくい.
 歴史的な経緯からか、Wrattenがもっとも標準に扱われているようで、フィルムメーカの 提供するデータや、書籍の記述にはこの系列のフィルター番号が使われているのが普通だ.
 それではWrattenを使うべきかというと、実際に使用する場面では、特に私のように山だとなおさら、持ちあるきやすく手軽に レンズに装着できるスクリュー式のガラスフィルターの方が使い勝手が良い.
 したがって一般には、目的の効果をもつWrattenフィルターと類似の特性をもつ製品を探しだす必要が生じる.
主なフィルターメーカ
Kodak Wratten filter  HOYA  Schneider optics  schott glass
 少しみにくいが、代表的なフィルターの互換表がこのページには あるので参考になるだろう.  国内では、フジフィルムから販売されている富士フィルター(ただしシート)が種類も豊富で入手性もよい. フジフィルム.Webには、Kodak(Wratten)との対応表も準備されていて便利だ.
可視フィルター
可視光部分も透過させ、一眼レフのファインダーでも被写体を確認できるフィルターである.フィルターを装着したまま、ファインダー越しにピントあわせも可能だ. したがって、このフィルターによる赤外効果はそれほど見込めないのはいうまでもないことだ.逆にこの点を生かした自然な写真を作ることができるのが魅力だ.
R60:赤色のフィルター.一般に赤外用フィルターといえばこれである.Konika750との組合わせはもっとも一般的な赤外写真といえる. KenkoのR1もこの特性であると思われる.580nmから透過し、600nmでは50%を透過させる.通常のモノクロフィルムのコントラスト用にも 使われているように可視光も十分透過する特性だ.Wrattenの#25A、富士フィルターのSC60がこれに相当する.
利用者も多いのだろう.製品も多い.  ニコンフィルター R60  コンタックス レンズアクセサリー R60  Kenko R1  Cokin RED  Tiffen #25
R64:褐色のフィルターで光害カットの目的で天体写真の愛好者が使用しているようだ.発売元の Kenkoのパンフレットやwebにはフィルターの光学特性が一切載っていないので、特性は不明であったが、 分光光度計で透過率測定したものが、星空雑記帳 光害カットフィルター にあり、名前の通り640nmで透過率50%となっていることがわかる.Wrtten#29相当のフィルターということになる.
Kenko R64
赤外域フィルター
730nmあたりまで人間が知覚できるので、厳密には可視光も透過しているフィルター.赤外写真の効果を得るために通常使われるフィルター.
R72:赤外域フィルターの定番となっている.Wratten89B相当品で、680nmから透過し始め720nmで50%の透過となる. このフィルターはほぼ可視光をカットする.フレームを決めとピントあわせは、フィルターを外した状態で行わなければならないから三脚は必需品. HOYAのスクリュー式ガラスフィルターRM72は、本格的な赤外撮影を手軽に行うために必須のアイテムである.価格も比較的安いが、HOYAの製品は 国内で販売されていないので入手はちょっとやっかい.
HOYA RM72  Schneider optics B+W 092
遮光性フィルター
 可視光を完全に遮断し、赤外線のみ透過するものである.フィルムによって使用できないなど 決して赤外効果を得るのに一般的とはいえない.私も今のところ使用経験がとぼしい.これらのフィ ルターとHIEの組み合わせはかなり被写体を選ぶ.独自な効果を有効に使いこなすのは相当難しようだ.
Wratten#87系列:  可視光を完全にカットする遮光フィルターの系列で、特性で4種のバリエーションがある. もっとも低域まで延びている87でも、50%透過が795nmあるので、Kinica750では使用で きない.#87A(HOYA RM90が相当)は880nmから透過し始めるから、もっぱらHIE用とい うことになる.もし選ぶならHOYA RM90であろうが、価格は250$ほどするので、私も手を 出していない.HOYA、Tiffen、B+Wはスクリュー式のフィルターを製品に持つので、87B以外はスクリュー式でそろうことになる. HOYA RM90(87A相当)  Tiffen#87.  Schneider opticsB+W 093(87C相当).  Lee filter 87(シートタイプ#87).87



Maco820c
maco820c いまどき、新たにモノクロフィルムが発売されるとは不思議な感じがしますが、 世の中には、物好きが多いのです.赤外写真愛好者の最近の話題はこのフィルムに集中しているのではないでしょうか.  新製品に手を出さずにいられない私には、この新顔Maco820cを購入する衝動を断つことはできませんでした.
しかし、冷静に考えて、このフィルムをあえて使う必要があるのでしょうか. このフィルムの特性をスペックシートから拾い出してみるなら、
820nm以上も感光させることができる.
粒子特性が良い.
高いシャープネス.
アンチハレーションコーティングを持つ
などというものが主になるでしょう. したがって、コダックのHighspeed Infrared(HIE)フィルムのように、真の赤外域で撮影可能であり、 粒子特性の良くなっている点が、この製品の売りのようです.

一方、私が思うにこのフィルムは決して使いやすいものではありません.理由をあげてみることにしましょう.
1.国内で売っていません
当然のような気がしますが、扱う代理店がないようで(私が見つけていないだけかもしれませんが)、海外から取り寄せることになります. ネットを利用して国境を意識することなく品物が流れている現代、購入自体は難しくは ありませんが、やはりフィルムだけに心配もでてきます.
温度 ひとつは、空港で行われているであろうX線検査.通販で購入した荷物に、 送られてくる途中どの程度被爆する危険性があるのか、暴露したからといって感光するとは 限らないわけですが、この種の問題は現像するまでわからないだけに気にはなり続けます.
 それと、輸送中は冷蔵状態ではなくなってしまうわけで、 データシートに記載のある13度C以下の保存を守らない場合、どの程度特性を劣化させているのか、特殊なものだけに 若干気になるところではあります.
[追記]以前「1.国内で売っていません!」と書いたのですが、実は輸入元があり、 国内でも購入可能なことに気づきました.グレイス・フォト・リミテッドがMaco製品を販売しています.
若干高価ですが、グレイス・フォト・リミテッドMACO・モノクローム製品価格&お買い物 から購入できます.
2.現像液も入手困難!
 データシートにはXTOL、LP-DocufineLC、LP-GRAIN liquidが載っていますが、前2者は、このフィルムのメーカの製品のようで入手は難しそうです. 若干気になるところではあります.
 
 XTOLはアスコルビン酸を使用した新世代の現像液として、欧米ではよく使われているようですが KODAKの製品でありながら、日本では発売になっていないようです. したがって、フィルムと同時に海外で購入してしまうほうが良いかもしれません.
XTOL さらに詳細はこちらのページ
 [2002年12月追記]驚くことにこの点も解決しました。今夏(2002)から、コダックは日本国内でもXtolを発売 しました。難点は5リットル溶解用パッケージのみであって、個人で使用するには大きすぎることでしょうか。


3.装填は暗室で!
装填 3つめに、装填(もちろん処理も)は完全に暗室状態で行う必要があります. コダックのHighspeed Infraredを使うことを思えば、この難点は同じなのですが、コニカ赤外のように気楽に使用できるフィルムではないと いえます.

4.低感度!
 それほど感度は高くありません.赤外域の撮影で三脚を使うのは当然で、この点はあまり問題にならないかもしれません. 特に可視光を遮断するフィルターを使う場合、構図を決めるのに三脚は絶対必要になります. しかし、HIEはf11で1/125で切れますのでかなり高感度で、この点を利用して、山を歩いていて気に入った風景にシャッターを 切るという、Infrared filmの手持撮影をしてきた私には、この点はちょっと不便に感じられます. このフィルムの参考となるEI値は、50から100あたり(下を参照)のように思われます.


 以上の点を考えるとHIEからこのフィルムに変えるかどうか悩むところでしょう.私が思うに、HIEは粒状性においてのみ難点があるわけでして、この点を気にするかどうか(もちろん気になります)が、 この新製品をあえて使っていくかどうかの分岐点なのではないでしょうか.
 ところで、これらの障害は解決できるのでしょうか. 3番め4番目のものは、撮影に伴い手間が増えるだけのことですから、本人がそれを使うと決めた以上問題にはなりません.1番目の点は国内でも販売されていることが判明したので、無事解決しました.
 そこで、ここでは、当初私に使用を躊躇させた理由である現像液の問題を、汎用D76で現像できることを確認し解決することにしました.


Maco820cをテストする
私がいつも使用しているイルフォードのID-11を使って現像することにしました.ID-11はD-76相 当品とされていますので、D-76を使った現像データをwebで探すことにしました.いくつかのデータが見つかるのですが、いず れも値が大きく異なります.現像時間は、撮影時の露出との兼ね合いで決まるのですから当然といえば当然のことです. 赤外フィルムでが、通常フィルムのように、ISO何々で撮影してその露出を保証するというようにデータが取られていないから でしょう.Free style Photographic SuppliesのページにはD-76を使って現像した場合、14分現像、red25Aフィルター でEI125とあり、87ではEI6とあります.まずは、この値をスタート地点とすることにしました.
 Wrattenフィルター25は580nmから透過し、R60フィルターとほぼ同じ特性と考えることができます.良く出まわって いるKENKO R1はフィルター面の色の感じからR60相当であると私は考えていますので、この値が適用できると思われます.
 Wratten87は740nmから透過し可視光を遮断するタイプのフィルターです.そこで私の持つ中では、HOYA R72が このようなフィルターであるので使用することにしました.コニカなどより、さらに赤外域の広いフィルムを使うことになるのです から、フィルターはできればR72を使いたいところです.
 この2つのフィルターを使い撮影してみました.さしあたって、カメラのISO設定を25にして1絞りステップで上下2絞り を段階撮影することにしました.
現像処理
 このフィルムは、現像前にアンチハレーションコーティングを溶解するために、水洗が必要です.データシートに従い、1分間おこないました. 現像は、ID11原液未使用を24度Cで使用しました.24度Cで行ったのは、単に現像時間を短縮するためです.メーカーは20度Cで現像 した値を掲載しているので20度Cで行うべきでしょう.
 攪拌条件は、最初の30秒間は連続攪拌、その後、25秒待って5秒間の攪拌を 繰り返すというきわめて一般的なものです.20度C、14分間現像したことに相当す る9.5分で現像を終え、停止、定着、水洗をします.

結果
 いずれでも1絞りアンダーで、下の例のように、なんとか見られる写真が 撮影できています.したがって、このフィルムはISO50相当の露出で使えたことがわかります. もっとも、カメラの露出計は可視光用に作られているので、赤外域の光線の量は 計測されていないはずです.したがって今回の状況(天気、光線具合)下で、この結 果が出たにすぎないことも確かですので参考値にすぎません.
R60 R72
R1フィルター R72フィルター
 少しはお役にたてたでしょうか.この結果を利用することによって、まったくゼロの段階から手探りで始めるよりは、 少しは手間が省けるのではないでしょうか.対象がまったく写っていないネガを得られる可能性は下げることには寄与できる はずで、このテスト結果を公開することにしました.  みなさんの成功例、失敗談をぜひお寄せください.


 前回のテストでどうにか使えるという感触を得れた私は、フィルターによる露出値の違いを検討することにしました. 同時にそれぞれのフィルターの表現の差も比較できることになりました.使用したフィルターは3種類.もっともありふれた、Kenko  R1(R60?)、HOYA R72、それと以前購入したまま使用されていなかったKenko R64を持ち出しての比較です.R64は褐色 のフィルターで、そのネーミングは640に透過点があるからでしょう.
 光線条件は、梅雨の合間の晴天の午後河原で撮影したものです.カメラのISOは50にセットして撮影しました. 現像はID11原液(未使用)、24度C、9.5分と前回とまったく同様です.
KENKO R1 filter
f8 f11 露出計値の時に画像が灰色がかっているのは、スキャナーが補正(自動になっている) したからだと思われます.適正値はアンダーぎみにあり、今回のISO設定50による撮影より、ISO100あたりに変えて撮影できそ うです.
露出計の値 0.5絞アンダー
f16
1絞アンダー
HOYA R72 filter
f5.6 このフィルターでは、赤外フィルムの効果は見事(可視光は遮断しているのであたりまえ)に 現れています.露出は、R1同様ISO100あたりにセットして、段階露出すれば、適正な画像が得られそうです.
0.5絞オーバー
f8 f11
露出計の値0.5絞アンダー
f16
1絞アンダー
KENKO R64 filter
f5.6 R1同様、ISO100あたりに設定し、段階露出することができそうです. このフィルターは、赤外フィルムらしい効果(木々の葉が白く写っている)が現れていることがわかります.ただ、まだ中途半端です.
0.5絞オーバー
f8 f11
露出計の値0.5絞アンダー
f16
1絞アンダー

Konica750
Konica Konica Konica
 唯一の国産赤外フィルムKonica750.惰性で使用してきたフィルムであった. 最初からモノクロフィルム+αくらいの効果しかないのではないかという誤った思い込みがあって、箱に書いてある60分の一、 絞り5.6を中心に上下1絞りづつの段階露出.うまく写ればもうけものくらいの気持ちで使ってきて、裏切られなかったのである. HIEではうまく写らなくて試行錯誤してきたのと対象的である.
 容易さゆえにあまり愛着のないフィルムであったのだが、実はこのフィルムは良くできたフィルムであるように最近思えてきた. 冒頭にあげたAdvanced infrared photography handbookを読んで、一口に赤外フィルムといっても製品によって感度特性が ずいぶん違うことに気づいたのが始まりだ.
 それまでの私の頭にあった感光特性は、ILFORDのSFX200のチラシでみた、全般にフラットな通常モノクロフィルムの特性を、 ほぼそのまま長波長側(赤外域)に延長したものである.すなわち赤外フィルムと通常のフィルムは感光レンジの違いに過ぎないと 思っていたのであるが、本当は製品によって感度のピーク波長やその連続性が大きく異なっていたのである.
r64 r72
R64R72
 中でも際立っているのがこのKonica750である.青色域と750nmの赤外と2つのピークを持ち、その間はまったく途切れてしまっているのである. いったいどのような効果を狙うためにこんな特性にしてあるのか考えていると、目的は他にあるのではないかと思えるようになった.
 このフィルムは650nmまでほとんど応じないから、赤色域をフィルターを使ってカットする必要がなくなり感光特性の短波長側にあるピークの部分さえ 遮断してやれば十分である.R60フィルターは580nmから透過させてしまうのであるが、この部分には応じないのであるから、 可視光域の像を十分切り落とせてしまうのである.しかも、人間の目はこの赤色域は見ることのできるものであるから、ファインダーをのぞけばそこには像がある.
 開発の真相は知らないのであるが、撮影をしやすくするために、乳剤をこういう特性にしたのではないかと私には思えてくるのである.
 このフィルムを使う限り赤いフィルターで十分なのである.試しに、R64と真っ黒のR72、2つのフィルターで比較してみれば 両者に効果上の差はほとんどみられない.  一方どちらのフィルターを使うかで三脚の要不要は決まる.使い勝手はまったく異なってくるのである.

Ilford SFX
R64 2.8 R64 5.6 R72 2.8
R64 f2.8R64 f5.6R72 f2.8

Kodak High Speed Infrared Film (HIE)
R64 R72 87
KENKO R64HOYA R72Tiffen 87
 赤外フィルムの真打登場.HIEはかなり癖の強いフィルムではあるが、その最強の性能ゆえに手放すことができない.上の三枚は、このフィルムとフィルターの 組み合わせをテストしてみたもの.片手間なテストだけに露出も一致していなかったりするから、これだけで比較するのは難しいのではあるが、R72と87で、赤外 効果が抜群であることがわかる.一方、予想に反してR72と87の間ではあまり差がみられない.
 やはり、写真で重要なのは何を写すのか。そのために適切な道具だてを作ることなのである.フィルターの光学特性の値から、何かどぎつい効果 が出てくることを期待した私は誤まっていたようである.この写真ではR72で十分な効果を得ている といえそうだ.出費で考えれば、R72は87の半分しかしない.つくづく重宝なフィルターである.



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