|
この会では、今まで韓国への旅行をしてきませんでした。戦後の韓国農業の変化はわが国と同じように著しく、いわば両国の農業がほぼ「併行近代化」のような姿を示してきました。そういうところを歩いても興味が薄いだろうという気持ちがありました。 今回は、短い日程ですが、韓国農村の伝統的行事と、農業変貌の実態を訪ねます。 ひとつは、密陽百中の豊年祈願の祭りです。農民たちが「農者天下之大本」と大書した幟を掲げる古い祭りの熱気を私たちも共感できたらと思います。 次いで、韓国最南端の済州島へ渡ります。この島の戦前を私は少し知っているのですが、火山斜面を利用した牛馬の放牧、海岸平野などでのモロコシや陸稲の小規模な栽培、海女による潜水漁業などに依存する貧しい島でした。それが1970年頃を転機にして、この島の農業は、韓国一の先進的園芸地帯へと変貌してきています。 後進農業から先進農業への変化の中にみられる明暗の辺りに注目して、この島の生活と風景にふれてみたいと思います。
※アジア太平洋農耕文化の会については ※パンフレットのダウンロードは 【 旅程 】
|
|
| ■面白い、百中ノリ 百中ノリは昔から続く稲刈り前の農民の「遊び」です。農民は生きるために大地を耕し、その合間に豊作を祈り自分たちで遊んだのです。 私たちは韓国の各地で「演奏」と「踊り」だけになったサムルノリを数多く見てきました。密陽百中ノリに出会うまで、サムルノリはこんなものだと思っていました。サムルノリはいつのまにか「遊び」であることを忘れて「演舞」になってしまったのかもしれません。 しかし、百中ノリは違います。もともと百中ノリは人に見せるためのものではありませんでした。綱引きや力自慢など農民の楽しい「遊び」です。「遊び」だから気取ったところがありません。百中ノリには密陽の土の匂いが染みついています。 |
![]() |
| 動画 |
動画 |
| ■愉快な、百中ノリ 私たちは、百中ノリの稽古場にお邪魔したことがあります。稽古場には見たこともない楽器がならんでいます。農家の暮らしの中にある、どこにでもあるような道具が、智恵と工夫で立派な楽器になるのです。水瓶に水を入れて叩くだけの実に単純素朴なムルチャンゴ。二つの壺の蓋に皮を張ってつなぎ合わせたサチャンゴ。この二つは百中ノリ独特の楽器です。牛のえさ箱をひっくり返しただけの打楽器まであります。 百中ノリ保存会のメンバーと酒を酌み交わすと、歌って踊って愉快な大宴会が始まります。韓国の茶碗と箸は金属製だから割れる心配がありません。百中ノリのメンバーにかかると、これが立派な楽器になってしまいます。「茶碗をたたくなんて、お行儀が悪い」。こんな日本的な常識は、あっという間にぶっ飛びます。 |
|
| ■時は百中・所は密陽 いざ「農者天下之大本」の幟の下へ 旧暦7月15日は二十四節句の一つである「百中」にあたります。百中ノリは「百中」の前後の辰の日と決まっています。今年の百中ノリの本番は9月8日になります。 田植えに始まり、草取りなどの忙しい作業をすべて終えた時期。そして稲刈りまでに台風が来ることがないように豊作を祈る時期。百中ノリは農作業に追われる農民にとって収穫前の束の間の遊びだったのです。 密陽では稲作を中心に唐辛子やエゴマが栽培されてきました。密陽の山と川と田畑を背景にすると、歌に、リズムに、踊りに、遊びに、命が宿ります。 今年も、この日に、この地で、「農者天下之大本」の幟を押し立てて、百中ノリが始まります。 |
|
| |